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大根と王妃②  作者: 大雪
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第1話

ああ愛しの大根。

また戻ってくるまで白く輝いていて。


「それは無理でしょう。帰ってくる頃には残りの大根は全て干されているか、漬けられている筈です」

「くっ!!やっぱり大根の保存についてもっと研究しておけば良かった!!」


迎えに来た使者達を待たせ、果竪かじゅは残りの大根達に別れを告げた。

そんな果竪を屋敷の使用人達は優しい眼差しで見守った。

長年果竪に仕えていたせいかもう誰も突っ込もうとはしなくなった。


果竪と大根の仲を温かく心から応援している。


それでいいのか使用人達。


「うぅ・・私の大根達と畑達、そして愛しい野菜達を宜しく御願いします」

「お任せ下さい王妃様!また此処に来られるときには凪国一の大農園となっている事でしょう!!」


元々屋敷の周辺は大自然ではあったが、野菜などの作物が育つには土の栄養がなかった。

そこを努力して開墾し、充分に土地に栄養を与え養分たっぷりの土壌へと変えたのが果竪だ。

おかげで、屋敷周辺の畑は毎年見事な実りをつけた。

その他にも、色々と工夫した結果、自然と畑作の見事な調和、コラボレーションが実現したのだった。



そのせいか、屋敷周辺の村々は果竪のことを『神!!』と崇め奉っている。

一応、崇めている方も崇められている方も神族ではあるのだが・・。



「うぅ・・・すぐに帰ってくるからね、私の大根達!!」



野菜の保管庫で大根を抱き締め嘆く姿は異様を通り越し見る者全ての心を打った。



ああ大根



私の大根



「ここで大根に向けて一句」

「さあ行きましょう」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!私の大根への愛の告白がぁぁぁぁぁぁぁっ」


心を伝えることは大切だ。

言わなければ伝わらないこともある。

けれど果竪は熱い重い――ではなく、熱い想いを伝える間もなく明燐めいりんによって迎えの馬車に叩き込まれたのだった。


そうして使用人達の見送りの下、護衛に守られた馬車は出発した。




雲一つない快晴の青空。

まるで王妃の王都帰還を祝っているかのような空に、明燐は窓の外を眺めた。


暖かな日差し、窓を開ければ穏やかな風が車内に吹き込んでくる。

本当に、穏やかで良い天気だ。

自然と心が浮き足だってくるのが抑えられない。


「王都までは馬車で1週間ですか・・・本当に、ずいぶん遠くに居ましたね」


あの日、追放された果竪に付き従い王都から離れた時は確か大雨だった。

バケツをひっくり返した雨の中出発した馬車。

雷が鳴り響き、途中洪水や山崩れが起きている中、ようやく辿り着いた屋敷に明燐は呆然とした。

いや、明燐以外の者達もそうだっただろう。

果竪を慕い付き従った者達は、屋敷の有様に誰もが言葉を失った。



屋根には穴が空き、壁や柱は朽ち果て、今にも崩れ落ちそうだった屋敷。

庭も荒れ果て雑草が生い茂り、枯れて朽ち果てた木々が幾つも倒れていた。


幽霊屋敷


その言葉がお似合いのそこは、どう考えても人が住む場所、いや住める場所ではなかった。


けれど、果竪だけは違った。

その屋敷に目を輝かせ、此処が自分の新しい場所だと言い切った。

驚く自分達に果竪は手を入れれば何とかなる。

住めなければ住めるように工夫すればいい。

きっと果竪にとってはそこが自分の理想の場所に思えたのだろう。


そうして、自ら近くの村々に赴いては交渉し、安く材料を手に入れ、自ら屋敷の修復にとりかかった。

噂は聞いていたのだろう。果竪を王妃だと知る村人達はいくら元々が庶民の出だからといって自分で屋敷の修復など無理に決まってると好奇心丸出しで見学に来ていた。

しかし泥だらけになって働く果竪にいつしか村人達は手を貸し始めた。

そうして何時しか屋敷は修復され。昔の面影が全く思い出せないほど立派なものへと変わったのだった。



果竪は手伝ってくれた村人達に恩返しとして自分の持てる知識を伝授した。

作物を作るには不毛の地だった土地は何時しか養分豊かな大地へと変わり、多くの作物が収穫出来るようになった。村人達の生活は大いに改善され、生活も前よりもずっと豊かになった。



最初は好奇心から見に行った王妃。

けれどその王妃が与えてくれた多くのものに、また王妃の人柄に村人達は心から慕うようになった。



果竪は王妃としての資質を十二分に備えていると明燐は思う。


何度もくじけそうになる自分達を励まし、屋敷での生活を豊かなものとした。

最初は帰りたいと言っていた者達は今では屋敷を終の棲家にしたいと言い出す者まで居た。

果竪さえいれば何処にでもいける。



そう他の者に思わせられる事こそが、上に立つ者に必要な能力の一つだろう。



果たして、果竪以外の誰がこの国の王妃に相応しいのか。



そんな相手が本当にいるのか。



明燐は本気で疑問に思った。


「ねぇ、果竪。やっぱり」



ムギュ



窓から果竪の方に向き直った瞬間、明燐の顔に何かが当たった。

柔らかくモコモコの感触。これは


「・・・大根」

「のヌイグルミvv見てみて〜〜、この前作った新作のものよvv」


等身大(大根ではなく果竪の)の大きさをした大根のヌイグルミを抱きながら果竪はにこにこと笑った。


って、大根のヌイグルミ?


そこで気づけば、馬車の中にこれでもかと大根のヌイグルミがあった。

しかも、自分の隣や果竪の隣に大根のヌイグルミが座っているし。

そういえば、先程から何か狭苦しいと思った。

一応、この馬車は10人乗りの大型馬車だ。そこに乗っているのは自分と果竪の二人だけ。

荷物は全部馬車の上と、別の馬車に積んである為、本来なら広々としている筈のこの車内。

しかし、今や定員一杯に人が乗っているよりも狭苦しかった。


床にもヌイグルミ、天上からも小さなヌイグルミがぶらさがってるし。


「っていつの間にこんなに乗せてたんですかっ!」

「明燐の気づかない間に」


そりゃそうだろう。気づいてたら一匹残らず外に出していた。

ってか自分の気づかせないようにしてこれだけの大根を何処かに隠していた果竪が凄い。

まさか某猫型ロボットのポケットでも持ってるんじゃないだろうか?


「凄いでしょう〜vv昨日徹夜で作った大根ゴレンジャーvv」


色違いの戦闘服を着た5つの大根のヌイグルミ。

徹夜で何を作ってるんだ。


「やっぱり、旅には心の癒しがいないとねvv」


心の癒しだとしてもこんなにいらん。

王都で出迎えに来る人達がこれを見たら無言で扉を閉められかねないではないか。

へたをすれば屋敷に強制送還されかねない。


はっ!まさか果竪はそれを狙って!!


いやいや、それは考えすぎだろう。

明燐は自分の心を落ち着けた。


リラックス効果は緑色がいいと言うので大根のヌイグルミの葉っぱの部分を見ながら。

干されている大根人形だったらたぶん無理だったがこれらのヌイグルミは瑞々しい生大根。

問題は全くなかった。


「明燐、暇だから大根について私と熱く語り合わない?」

「何で年頃の乙女が大根について語らなきゃならないんです。しかも熱く」

「愛する存在を語るときに冷静さはいらないのよ」

「いや、寧ろ冷静に考えましょう。それに暇だから大根について話すだなんて大根を暇つぶし程度にしか考えてないようで失礼じゃないですか?」

「はっ!それもそうね!!大根のことは厳粛なる国会の場でそれこそ大切な法案を決めるかのように話し会わなきゃっ!」


いや、絶対話し会わないし。

何で法案決める場所で大根について話あわなきゃならないんだ。


「そうね!!そうよ!!親しみやすい大根だからって、暇つぶしの話は駄目よね」

「寧ろ暇つぶしで話して下さい。間違っても法案を決めるような場で大根の話をしないで下さい」

「なんで」

「なんででもです」


凪国の名産が大根だと思われたらどうする。

凪国の名産品は『海燿石』だ。間違っても大根ではない。


「とにかく、王都ではあんまり大根大根って言わないで下さいね。大根王妃だなんて言われたらどうするんですか」

「感激する」


はっ!喜ばしてどうする自分っ!!


明燐は自分の失言に心の中で舌打ちした。


愛する大根の名を加えて大根王妃。

果竪が喜ばないわけがない。


って、これじゃあ果竪は大根と結婚しているような感じではないか。

果竪の夫は大根。


その時、明燐の脳裏にこの国の国王にして果竪の夫の姿が思い出された。



果竪の心は大根に奪われた



なんて知れたら



『国王命令です。今日よりこの国から大根は一切合切廃棄します』



いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!大根農家からクレームがくるっ!!


何時もは冷静で民思いの国王だけど自分の妻に関することだけはとてつもなく心が狭い。

それこそ、果竪の作ったヌイグルミも全て処分するだろう。

自分の怒りを全てぶつけてから。


国王には現在愛妾と呼ばれる存在が居るのだから、別に王妃が何をしようともはや興味がないのではないかという考えは明燐にはなかった。

というか、そもそもあの国王が果竪から興味を無くすなんて事は信じられないし。


「果竪!!御願いだから王都で大根は禁止っ!!」

「何でっ?!」

「この世から大根消されたくないでしょう!!」


当然嫌がる果竪だが此処で説得しなければ本気で大根を消される。

明燐は必死だった。


「私から大根取ったら何が残るのよっ!!」

「沢山残るから大丈夫!!」


暴れる果竪を押さえつける明燐。

もし此処で護衛が馬車の中をのぞき込んでしまえば妖しくも淫靡な『百合』の世界がお目見えするだろうが、厭な予感がしていた護衛達は皆聞かなかった事にした。

この世には見ない方がいい事もあるのだ。


と、その時だ。


ガタンと大きく馬車が揺れる。



「きゃっ!!」



明燐が後ろに転がりその上に果竪が覆い被さった。


どうやら馬車が急停止したようだ。

と、馬の甲高い嘶きの声が聞こえてくる。


そして、護衛達の怒声が響き、緊迫した空気が伝わってきた。


「な、何?」


バタンと馬車の扉が開く。


「おいっ!!馬車から出――」


人相の悪いひげ面の男が扉を開け怒鳴り散らすも途中で言葉を止めた。



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!十人並みの女が絶世の美女を押し倒してるぅぅぅっ!!」



ドゴっ!!

バタンっ!!



ひげ面の男の顔面を蹴飛ばし扉を閉めた果竪。

今だ呆然とする明燐を後ろにしてゼェゼェと息を吐いた。



「顔だけじゃなくて思考と言葉も失礼ねっ!!」



確かに自分は十人並みで明燐は絶世の美女だが改めて言われるとムカツキが込み上げてくる。


「果竪、大丈夫ですか?」

「あんなのにやられるほど私は落ちぶれてないわ」


しかし更に果竪の神経を逆なでする事態が起きる。


「とにかく、外に出てきゃっ!」


いきなり扉が開き、近くに居た果竪がはね飛ばされる。

明燐が悲鳴をあげた瞬間、馬車に一人の男が乗り込んできた。

先程のひげ面男とは比べようもないほど精悍で見目麗しい年若い男性だった。

20才を少し越えた位だろうか?

長身の体をするりと馬車に滑り込ませ、明燐の体を押さえつける。


「貴方達は」


もしかしなくても賊。

馬車が急に止まった事や護衛達の叫び声、外から聞こえる怒声や刀を切り交わす音などから推測すればその答えは簡単すぎるほど出た。


「お静かに。私達と一緒に来て貰いましょうか。抵抗しなければ手荒なことはしません」

「な、護衛達は」

「オレの仲間達が相手をしています。ただ半分は既に倒れていますがね。ああご心配なさらずに。殺してはいません。但し、2〜3日は動けないとは思いますが」

「そんな・・」

「それより、一緒に来てくれますね?凪国王妃」

「貴方達は一体何が目的――は?」

「目的は勿論貴方ですよ、王妃」


そうして何だか熱い眼差しを自分に向けてくる男に明燐は何だか嫌な予感がした。



もしかしてこの男は自分を王妃と間違えているのだろうか?



はっ!果竪はっ!



さっき開いた扉にはね飛ばされた果竪。

慌ててその姿を探すが、どうやら逃げようとしていると思われたらしい。

男の拘束が強くなる。


「抵抗しないで下さい」

「いえ、抵抗ではなく――って果竪っ!!」

「はい?ってうわぁ!」


そこには、それはそれは大きな大根空高く持ち上げた果竪が立っていた。

開いた扉から更に乗り込もうとしていた男達すらも怯えて微動だに出来ないで居た。



「ひ〜と〜を〜は〜ね〜と〜ば〜し〜て〜良〜〜〜い度胸ね〜〜?」



地獄のそこから這いずり上がってくるかのような声音がよりいっそう恐怖をそそる。


動いたら殺られる。

きっと誰もが思ったに違いない。


「ってか、何人の友人にのし掛かってるの?」

「あ、え、いや――って!!動かないで下さい!王妃がどうなってもいいんですか?!」


男が明燐の首筋に刀を突きつける。

そんな男に果竪は怒鳴った。


「王妃は私よ!!」

「は?」


男だけではなく、外に居た男の仲間達も同じく間抜けな声をあげた。


「え・・いや、そんな嘘は。どう考えても凪国国王の妻は此方の美しい」

「いえ、果竪が王妃です」


本来なら自分が王妃だと言って果竪を守るべきだが、そうすると余計に果竪の怒りに火を注ぎかねないと気づいた明燐は素直に言った。


「な、なんですって?」

「ですから、果竪が王妃です。凪国国王の唯一の妻にして正妃」

「嘘・・」


呆然と呟く男に、様子見に馬車を覗き込んでいた彼の仲間の男達も騒ぎ出した。


「あんな十人並みで胸もない男みたいなのがか?」

「いや、絶対男だろ。女であんなに胸がないなんてありえないし」

「そうだよ、お頭が押さえつけている女の方が美人で女らしくてしとやかで」

「それにたおやかで清純可憐だし」

「胸も大きくて腰も引き締まってて、あの美人の国王にお似合いだぜ」

「やっぱり、そっちの美人が王妃じゃないか?」

「だよな。そっちはあまりにも平凡で」

「胸真っ平らだし」


ぶちんと何かが果竪の中で音を立てて切れた。


「おい!失礼だぞ」


明燐を抑えている男が仲間を叱咤するが、果竪の王妃ではなく男疑惑に対する談義は留まることを知らない。


「けど、お頭。王妃っていうからには」

「馬鹿にするなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


完全に切れた果竪が暴れ出す。

特大の大根を持って外へと飛び出し片っ端から男達を殴り飛ばす。


「ひぃっ!!」

「ぎゃあ!!」

「うわぁぁぁぁ!!お助けぇ〜〜」


白い大根が紅く染まる。

最終的には持っていた大根が真っ二つに折れると、果竪は馬車の車輪をバキンと壊してそれを男達に投げたり、近くの岩や大木を投げつける。


丁度馬車が襲われた場所が岩や大木が近くにゴロゴロしている森の中だっ為か、武器になるものは沢山あった。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!誰か助けてぇぇぇぇぇっ!!」

「待ちやがれこのヤロウっ!!」


次々に血祭りに上げられていく部下達に、お頭と呼ばれた男は焦った。


今も大木を投げつけている果竪という少女が王妃であるのは間違いないだろう。

けれど、自分達が想像していた王妃というのはもっとこう深窓の姫君という感じだ。

確かに王妃は庶民出身だが、あの国王に見初められるのだからそれ相応の美女であるに違いないと思っていた。


なのに実際には平凡な少女。

しかも、対等どころか圧倒的な力で部下達を追いかけ回している。


「はぁ・・はぁ・・・よくも年頃の乙女の心をズタボロにしてくれたわね」

「ひぃぃぃぃぃ!!すいませんもう言いません貴方は絶世の美女ですっ!!」


追い詰められた最後の部下が必死に命乞いをする。


「謝罪はともかくとしてあからさまな御世辞はいらんわっ!!」

「ちょっ!やめて下さい!」


明燐を連れてお頭である男が部下の前に飛び出してきた。


「・・・ふっ・・良い度胸ね。明燐を人質にしようだなんて」

「ち、違いますっ!!」

「さっきは首に刀つきつけてたでしょうが!!」

「あ、あれは!!でももうしませんっ」

「当然よ!!やったら許さないわよっ!!」

「す、すいません――って、それよりもう十分でしょう?!部下を許してくださいっ!!」

「十分?あれだけ胸が小さい、ブス、王妃らしくないと言われた私の心の傷の深さに対しての報復が十分?」


ブスとは言ってない。

しかし、そんな言葉が果竪に伝わるとは思わなかった。


「大根のごとき真っ白な心を穢されたこの恨みっ!!晴らさないで死ぬなんてできないわっ!!」

「は?大根?」

「すいません幻聴です、気にしないで下さい寧ろ気にしないで」


明燐が必死に自分を捕えている男に言い募る。


「ふふふふふ・・・みんな道連れにしてやるわ」

「果竪!落ち着いてっ!!」

「末代まで祟ってくれるわ・・・あはははははははうふふふふふふふふ」


完全に果竪が壊れた。


頼みの綱である護衛達は皆倒れていて使いものにならないし。


「くっ・・仕方ない、こうなったら」


腰の刀に手をかける男に明燐は悲鳴を上げた。


「やめて!!果竪を傷つけないでっ!!」

「傷つけませんよ、気を失わせるだけです」


そう男が言った瞬間だった。



ドン―――



空気を振るわす様な重い音


俗に言う銃声が辺りに木霊する。


男が守るように明燐を抱きしめた。


「きゃっ!」

「誰だっ!」


男が辺りを見回す。

そして、その視線が果竪の方に向いた時、完全に血の気が引いた。


右肩から噴出す血が衣服を染め、地面を赤くぬらす。

反面、顔から血の気が失われ、果竪はその場に倒れた。


「お、おいっ!!」


果竪に追い詰められていた男が果竪を抱き寄せる。

完全に意識を失った体は重かったが今はそれ所ではなかった。

血が流れ続ける肩を押さえつけて止血する。


「いやあ!果竪っ!!」


明燐が果竪に駆け寄る。


「一体何処から・・いや、誰がこんな事をっ」


自分の仲間ではない。それだけは確かだ。

王妃に危害を加えないように厳命していたし、無用な戦いや殺害はしないように皆心得ていた。

こんな風に、銃で狙撃など絶対にしない。


あたりの気配を探ったが、既に気配はなかった。

というか、自分にすら気配を掴ませずに狙撃するなんて・・。


「お頭っ!!このままじゃこの王妃様まずいぞっ!!」

「くっ・・とにかく、根城に帰るぞっ!!」


根城に帰りさえすれば自分達が信頼する確かな腕を持つ名医が居る。

彼ならばきっとどうにかしてくれる筈だ。



そうしてお頭と呼ばれる男は仲間達を起こし、果竪と明燐を連れてすぐさま根城へと駆けたのだった。



帰郷編と予告していましたが、果竪達が無事に王宮にたどり着けるのは何時になることか・・。

次回、王様を初めとした王宮の人達が出ます♪

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