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(・ω・U)フユ・フラベルと魔の料理  作者: 乙羽
(U>ω・)犠牲者2妹ハル・フラベル
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本編

どこまでも続く青い空。

小鳥のさえずり。

お庭には色とりどりの花が咲き乱れています。

きっと素敵な一日になるでしょう。


私たち以外は。







おかしいです。

ここは食堂だったはずです。

毎日、家族でご飯を食べている場所です。


そんな日常空間であるこの場所でお兄様が泡を吹いて倒れています。

お兄様の前には皿に入った緑の物が……。

な、何なんですかあれは?

わからない!

怖いです!


と、とりあえず何かが置いてあって……。

それで、私の目の前にお姉様が作ったというコーンスープが置かれています。

……コーンスープです。


色は真っ赤ですしプカプカと羽虫のようなものがいくつも浮かんでいます。

しかし、これはコーンスープです。

お姉様がそう言っていました。


お洒落なスープ皿に注がれた真っ赤な液体は煮立ったかのようにブクブクと泡を吹いています。

普通に見えますが、もしかしたら保温式の皿なのかもしれません。

そうでなければ何十分も冷えずにこのままな訳がありません。

マグマじゃないんですから。


……マグマ?!


ああ、びっくりした。

自分の発想に驚きました。

マグマなんて料理できるわけが無いじゃないですか。

ほら、泡の隙間ではユラユラと小さな羽虫のようなものがいくつも漂っていますし。

本当にマグマなら溶けてしまっているでしょう。


ところでこの虫のようなものは何ですか?

虫……なわけないですよね。

お姉様が私に虫を食べさせようとするわけありませんし。


「おかしいですねぇ。今度こそレシピ通りに作れたはずなんですが」


私の疑問をよそに、お姉様はそう言って首をかしげています。


あ、レシピを見られたんですか。

何と言う名前のレシピでしょうか?


私が予想するに天使ラジエルの書物かウィッカの魔導書。

またはエルトダウン・シャーズかクタート・アクアディンゲンだと思います。


まさか、お姉様の横に置いてある『猿でも出来る簡単料理100選』ではないでしょう。

そんな普通のものを見てこれが出来るわけがありません。


お姉様がうっかり料理の本と魔導書を間違えてしまったに決まってます。

まったく、お姉様ったらうっかり屋さんなんですから。

仕方ありませんね。

そんなところもお姉様の魅力の一つなんですけれど。


ところで私はこの虫のようなものが気になっています。

怖いですが聞いてみましょう。


「お姉様……この虫のようなものは何でしょうか?」

「嫌ですねハル。コーンに決まってるではありませんか」


あ、コーンでしたか。

そうですよね。

コーンスープですものね。

入っててもおかしくはない……コーン!?


コーンってこんなでしたっけ?

私の記憶ではコーンとはトウモロコシのことなのですが違ったでしょうか?

こんな羽虫みたいな形でしたっけ?


ああ、でもお姉様が私に嘘を吐くわけがありません。

ということは私の記憶違いでしょう。

コーンはこんな見た目です。

羽虫みたいな形をしているのです。

そうに決まっています。


「そろそろ冷めたでしょうか?」


そう言ってお姉様がマグマ……じゃなくてコーンスープにスプーンを入れました。

ジュッ……と言う音がしてスプーンから焦げたように煙が上がります。

上がった煙にお姉様が首をかしげながらスプーンを抜きました。

スプーンは柄しか残っていませんでした。


……あれ?

スプーンって金属でしたよね?

こんな簡単に溶けるものでしたっけ?


ひょっとして一般的なコーンスープというのは金属すら溶かすのでしょうか?

それ、人間が食べて大丈夫なやつですか?

モンスターとかに投げつける武器とかでは無いですよね?


というより金属が溶けるのにこの羽虫のようなものは何故溶けないのですか?

意味がわかりません。


「まあ、困りましたね」


私は声も出ないほど驚いているのにお姉様はいつも通りです。

さすが私のお姉様です。

いつだって冷静ですね。

私は精神的に限界なのでこの部屋から出て行ってもよろしいでしょうか?


「新しいスプーンです」


お姉様付きの使用人がスプーンを私に差し出しました。

お姉様ではなく私に。

ま、まさか私に……これを飲め、と……?


お姉様がニコニコと私を見ています。

使用人は無表情で立っています。

私に逃げ場はありません。


「い……いただきます」


私は意を決してスプーンを握りました。


「ま……待って……ください」


その時です。

お兄様が……さっきまで泡を吹いて倒れていた、あのお兄様が……起き上がったのです。


「……フユの料理を食べるのは……兄である……僕、の仕事……です」


お兄様が弱々しい声でそう言って私からスプーンを奪います。


「まあ、お兄様ったら」


お姉様は頬を赤らめていました。

私は思わぬところからやってきた救世主に心から感謝しました。

しかし、お兄様は大丈夫なのでしょうか?

心配です。


お兄様は私を見て頷き、それからお姉様を見て青い顔をしました。


「僕の妹は天使。僕の妹は天使なんです。天使が劇物を作るわけがありません。そう、フユは天使です。だからこれを食べても平気です」


な、なんかブツブツ言ってます。


「ハル……後のことは頼みます」


お兄様はそう言ってコーンスープを口に含みました。




そして、バタリと倒れました。


「お、お兄様ああああぁぁ!?」


私はお兄様の背中にすがり付いて泣きました。


「まあ、そんなに美味しかったでしょうか?」


お姉様がとんでもない勘違いをしています。

私はお姉様の「次は何を作りましょうか?」と笑う声に恐怖で震えました。


もう何も作らないでください!



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