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(・ω・U)フユ・フラベルと魔の料理  作者: 乙羽
(U・д・)犠牲者5フラベル家の使用人たち
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13/18

本編

※注意※

ちょっとグロいかもしれません。





緑色で粘り気のあるでろでろとした物体。

たくさんの羽虫のような物が浮いた赤い液体。

近付くと唸ったり噛みつこうとしてくる黒いゼラチン物質。

そして棒のような長い足が4本生えた黄色の塊。


これらは先ほど私が作った料理です。

上から目玉焼き、コーンスープ、クッキー、ハンバーグのつもりです。


しかし、目玉焼きはヒューヒューと不安気に鳴いていますし、クッキーも目玉焼きとハンバーグを威嚇するようにグルグルと鳴いています。

ハンバーグはトコトコとテーブルの上を自由気ままに歩き回っています。

コーンスープだけがグツグツと静かに煮え続けていました。

皿に移してから30分以上経ちますが冷える気配がありません。


おかしいですねぇ。

レシピ通りに作ったのに、どれも写真と全然違います。


私付きの使用人、ティナさんに意見を求めてみましたが

「下級貴族の私には上流階級の方のやることは分かりません」と言われてしまいました。

料理に階級は関係ないと思うのですが……。


うーん……それにしても困りました。

実は、妹たちに「二度と料理をしないでください!」と言われてしまったのです。

二人とも泣いていました。

なので、こっそり作ったのです。

そのせいで誰かに意見を聞くこともできません。


いつか婚約者であるツキ様に手料理を振る舞いたいと思っているのに……。

ツキ様はお優しいので一口くらいなら食べてくださるかもしれませんが、それでも不安です。

それに、せっかくなら美味しいと言って欲しいのが乙女心というもの。

せめて食欲をそそる色になってくれれば良いのですが……。


緑色の目玉焼き

赤いコーンスープ

黒いクッキー

黄色いハンバーグ


どれもペンキのようにのっぺりしていて美味しそうではありません。

どうしてなんでしょう?


原因が分からないことには対処のしようがありません。

どれも難しい料理では無いはずなのですが……。


目玉焼きなんて熱したフライパンに油を引いて卵を落とすだけです。

白と黄色にしかならない筈なのに私の目玉焼きは緑色でした。

ひょっとしてフライパンが熱すぎて焦げてしまったのでしょうか?

だから緑なのですね。

納得です。


ということは、他の料理も熱量に注意すれば写真通りに出来上がるかもしれません。


私はそう思いながら、目玉焼きにフォークを突き立てました。


「ぎゃあああああああぁぁぁぁ!!!」


目玉焼きの断末魔が部屋中に響き渡ります。


うるさいですね。

クッキーとハンバーグが怯えているではありませんか。

料理なのですから、料理らしく静かにしてほしいものです。

叫び声で私が料理をしたことがバレてしまうではありませんか。

また妹たちを泣かせるわけにはいかないのです。

早く食べて証拠隠滅してしまいましょう。


私はフォークで目玉焼きをキコキコと切りました。

なんだか金属に刃物を突き立てたような嫌な音がします。

目玉焼きは切り口からヘドロのような液体を流していました。

液体は空気に触れると沸騰するように泡を立て、蒸発していきます。

液体がすべて蒸発すると、目玉焼きはしぼんだ風船のようにペショリと皿に張り付きました。

ずいぶん小さくなりましたね。


口に入れてみましたが水分がないのでパサパサして飲み込めません。

味はプラスチックに似ています。

食感はサランラップです。

先程、全ての水分が蒸発してしまったのが原因でしょう。

液体が流れ出る前に口に入れた方が良さそうですね。

次からはそうしましょう。


私は目玉焼きをゴクンと飲み込むと、パラパラとレシピ本を捲ります。

コーンスープのページにたどり着きました。

コーンスープの写真は私の作ったスープとは似ても似つきません。

何度もレシピを見ながら作ったので、作り方は間違えていないはずですが……。

一体どういうことなんでしょう?


私はため息を吐いてコーンスープにスプーンを差し込みました。

ジュッという音をたて、スプーンが溶けました。

またスプーンを壊してしまいました。

今日だけで5本目です。


仕方ありません。

お行儀が悪いですが皿に直接口を付けて飲むとしましょう。


私はコーンスープを一気に飲み干し、続いて歩き回っているハンバーグを捕まえました。

ハンバーグはジタバタと暴れていましたが、気にせず胴体と足を引きちぎります。

ハンバーグの足が手の中でボキボキと折れる感触がしました。

胴体はビクンビクンと痙攣していましたが、切り分けるとすぐに動かなくなりました。

ハンバーグには口が無いのか叫び声は聞こえませんでした。


ハンバーグも写真通りではありませんね。

そもそも、ハンバーグというのは歩き回るものなのでしょうか?

うちの料理人たちが出してくるハンバーグは歩いていなかったと思うのですが……。


さて、ハンバーグを食べ終わった私はデザートのクッキーに手を伸ばします。

クッキーはブルブル震えながらも果敢に私の手に噛みつきました。

ブニッとした感触が私の指に当たっています。


どうしてブニッとしているのでしょう?

クッキーというのはサクサクしているはずなのに。

クッキーは妹のアキに教えてもらったものなのでレシピがありません。

記憶を頼りに作ったので作り方を間違えたのかもしれません。


そういえばアキと一緒に作ったときは黒ではなく青でした。

やはり作り方を間違えたのでしょう。

メモを取るべきでしたね。


私はそう思いながら懸命に指を噛んでくるクッキーを口に放り込みました。

わやわやとした食感です。

クッキーというよりゼリーのようです。

味はありません。


どれもこれも美味しくありませんでした。

ちょっと泣きそうです。

これでは、いつまでたってもツキ様に手料理をお出しすることが出来ません。


これは独学では厳しいかもしれません。

プロに習うのが一番でしょう。

私は我が家の料理長パトリックさんを訪ねました。

パトリックさんは30代くらいの優しそうな男性です。


「フユ様が料理……ですか」


私がお願いすると、パトリックさんは困ったような顔をしていました。


「お願いします!ツキ様に手料理を食べていただきたいのです!」


そう言って私は頭を下げます。

ここで断られたら頼る人がいません。

何故なら、私は妹たちから料理を禁止されているのです。

お父様もお母様もお兄様も妹たちに賛成しています。

料理の先生なんて、とてもじゃありませんが雇ってくれないでしょう。


「うーん……教えて差し上げたいのは山々ですが、今は仕事がありますので」


頭を下げる私にパトリックさんは言いました。


そうですよね。

お忙しいですよね……。


「ご迷惑も考えずに申し訳ありません」

「いえ、明日なら大丈夫ですよ」


ショボンとする私にパトリックさんがそう言います。


「本当ですか?!」


嬉しくなった私ですが、パトリックさんの「ええ、明日は非番ですから」という言葉で肩を落としました。

お休みの日に教えてもらうわけにはいきません。

かといって、お仕事中に教えてもらうわけにもいきませんが……。


私がそう言うと、パトリックさんは「では、こうしましょう」と言いました。

こうしましょうとはどうするんでしょう?

顔を上げる私にパトリックさんが言います。


「私たちの作る料理を見学して作り方を覚えるのです」

「それは良いアイデアです!」


こうして、私は邪魔にならないところで厨房の見学をすることになりました。




.*+;゜*・+;゜*・+.゜*.


厨房は戦場とはよく言ったものです。

厨房の中は料理長のパトリックさん含めた三人の料理人たちが忙しなく動いていました。


「な、鍋の中におかしなものが?!」

「パトリックさん大変です!チキンが空を飛んで逃げました!」

「大根から赤い血のようなものが!!」


みなさんとても忙しそうです。

私もお手伝いした方が良いでしょうか?

ですが、素人の私が手を出すと余計に手間がかかってしまうかもしれません。


「きゃああああぁぁ!」


そんなことを考えていたとき、一際大きな悲鳴が聞こえました。


そちらに目を向けると、ラベンダー色の巨大な何かが鍋から飛び出しています。

何かはブクブクと膨らみ天井まで達すると

バンッ!

と音を立てて弾けました。


ラベンダー色のベチャベチャしたものが周囲に飛び散ります。

私の方にも飛んできましたが、ティナさんが守ってくれたので汚れずに済みました。

しかし、近くにいた料理人たちは頭からそれを被ってしまったようです。

みなさん一様に呆然としています。


「みなさん大丈夫ですか?」


声をかけると、料理人たちがハッとしたように私を見ました。


「だ……大丈夫です」

「あ、フユ様のお召し物が汚れますのでこちらに来てはいけません」


パトリックさんと女性の料理人メリーさんはそう言ってくれました。

優しいですね。

ちなみに、メリーさんは羊の獣人です。


私が「お片付けなら手伝えますが」と言うと、メリーさんは顔色を変えて

「そんな!滅相もない!」と慌てて言いました。


ですが、私だけここで見ているのも変ですし……。

そう思って、なおも言葉を続けようとすると、ティナさんが私の肩を叩きました。


「片付けの邪魔でしょうし、私たちは失礼した方がよろしいのではないでしょうか?」

「ああ、そうですね」


ティナさんの言葉に私は頷きます。

パトリックさんは忙しそうに他の料理人たちに指示を出していました。

お忙しそうですが、何も言わずに去るわけにはいきません。


「パトリックさん。お忙しそうですので私はこれで」

「あ、そうですね。申し訳ありませんお嬢様のお役に立てずに」

「いえ、私こそお忙しいときに邪魔してしまって。また機会があればよろしくお願いしますね」


私がそう言うと、パトリックさんはひきつった顔で「ええ……また」と言いました。

やはり迷惑だったのかもしれません。


「やっぱりあの噂は……」

「しかし、お嬢様は食材に触れていないのに」


厨房を出るとき、そんな声が聞こえてきました。

噂って何でしょう?

私は首をかしげながら厨房を後にしました。



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