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第69話 プリン大会貴族編(異世界side)

ブックマーク、感想、評価ありがとうございます。


 私はヴォルフ・エクスマーレ。

 この王国では宰相の役職に就いており、王であるコンラート様と、教皇であるレイセント様とは幼馴染であり、従兄弟同士だったりもします。


 何せ血の縁が複雑怪奇な身分の貴族であるので、コンラート様は私の父の兄の息子で、レイセント様は母の妹の息子になります。


 つまり前王は私にとっての伯父さんでもある上に、その前王に嫁がれたのが母の姉となるのだから、家系図を製作する時には注意しながら作らないと、とんでもなく見にくい家系図が出来てしまうのです。


 まぁそんな話はさておき、私は今とても気分が良かった。

 何せ今日は待ちに待った、プリン大会の貴族部門の開催日です。

 私の口はすでに、あの異世界にあるコンビニの食べ物が基準となっているので、中には口にするのも憚られる様な、出来の悪いプリンが出てくるかも知れませんが、それでも甘いもの好きな私としては、期待せずにはいられない日でもあるのです。


「では皆の者よ。時間となったのでプリン大会を開催する! 今回のプリン大会の得点の方法は、我々審査員の持ち点10点からの評価となる。点数の合計点が多いものが、今回のプリン大会の勝者となる! では、最初の参加者よ、前へ!」


 王の言葉と共に、割れんばかりの拍手が会場に響き渡り、私はその光景を壇上の上から見下ろしていました。


 今回の貴族のみで開催する今日のプリン大会は、普段は大勢を集める社交界などで使う広場を、少しアレンジして使っています。


 まずは、普段は王家の者のみが座れる壇上を片付けてたり改築したりして、私たち審査員が座れる様にしました。

 右から騎士団長、王妃様、王様、私、アイオーン様の順番で座っています。

 その下には、普段は均等にテーブルなどが配置されているのですが、今日は不自然な空間を空けた先に、今回参加していない貴族たちがこちらを興味深そうに見ています。


「やはり、甘い物を審査すると分かっていますから、女性の方々が多いですね」

「うむ。大体7対3と言ったところか」


 コンラート様が言うように、普段とは違いご婦人方の比率が高くとても多く、会場がとても華やいでいる様に見えます。


 今回の招待客は、各家代表者として1人のみの招待とさせて頂きました。

 理由は簡単で、審査をするのは私たち5人だけですが、招待客にもプリンの実食をお願いしているからです。


 ……ただ見ているだけというもの、つまらないですからね。


 なので、プリン大会の参加者たちには招待客全員分のプリンを用意させているのですが、やはり各家だけでもかなりの数あるので、参加者の負担にならぬ様にと思っての采配です。

 もし仮に普段通りの招待客を招くとしたら、200名から300名の貴族が参加したことでしょう。


 ……まぁ私としては、これでプリンの素晴らしいさを全員が知り、デザートの質が上がることを祈っているのですが、どうなるでしょうね?


 そんなことを思っていると、その不自然な空間を進んで来る、ややぽっちゃりしたご婦人が進んできました。


 彼女の名はリニエリクス男爵夫人。

 参加者は身分の低い者から順番に審査を受ける事になっているので、参加者の中で一番身分が低い彼女がトップバッターです。


 彼女たち参加者は別室にて待機しており、それぞれの料理人が作ったプリンを持参して、出番が来るのを待っています。


「この度は、新たに素敵な催しを開催してくださりありがとうございます。今回は、私が自慢する料理人たちと共に作り上げた、極上のプリンを献上したいと思います」


 さて、そんな期待をしていた私の目の前には、『私を食べて』と言わんばかりのプリンがコトリと並べられる。


「……ほう」


 器はやや品質に劣るガラス細工ですが、濃い黄色のプリンが入っていて、そのプリンの上にはオレンジ色をした、ネットリとしていそうな物が飾りとして乗せられています。

 さらにその上には、ちょこんと何か種のような物が乗っていますね。


「まぁ、可愛らしいプリンですこと」


 色合いや飾り、盛り付け方が貴族としては地味としか言えませんが、向こうのプリンを知っている私にとっては些細なことです。

 私と同じく、向こうに馴染みのあるコンラート様やアイオーン様も同じでしょう。


 けれど、王妃様であるエンリステラ様がどう思うのかまでは分かりません。

 更に隣の騎士団長であり、コンラート様の護衛騎士でもあるディッケルトにいたっては、レイセント様と同じく脳筋なので、プリンの飾りがどうとか、器の細工の美しさなんて物は何も考えていないでしょう。


 ……はぁ、早くプリンが食べたい!


 しかし、まだ食べるわけにはいかない。

 このプリンを提出した男爵夫人から、食べる前のプレゼンがあるのだから。


「では、リニエリクス男爵夫人よ。一言お願いしようか」


 コンラート様の勧めを受けて、リニエリクス男爵夫人は自信に満ちた顔で、今回持参したプリンについての説明をします。


「えぇ。こちらのプリンには、私の領地での名産である南瓜を混ぜています。更に上の飾りと種にも南瓜を利用しておりますので、優しい味わいのプリンが出来上がりました。どうぞ、お召し上がり下さいませ」


 リニエリクス男爵夫人は堂々と言い切り私たちにプリンを勧めたので、私はスプーンを手に取り、先ずはプリンのみを食べてみました。


「わぁ! これ、美味しいね!」

「ありがとう存じます。アイオーン様」


 先に声を上げたのはアイオーン様でした。けれどアイオーン様の言うように、南瓜を混ぜたプリンは南瓜独特の優しい甘さがする、とても美味しいプリンでした。


 南瓜を練りこんでいるせいか、通常のプリンに比べると多少のザラつきは感じますが、けれど何回も南瓜を漉しているのでしょうか? それほど気にならないです。

 さらに、上に乗っているのと合わせて食べると、さらに南瓜の味が際立ちます。


「私はこのプリンは好きですね。普段の砂糖をふんだんに使ったデザートとは違い、こちらは南瓜の素材の甘さを前面に出しているので、くどい甘さがなくて食べやすいです」

「ありがとう存じます」


「ふむ、儂もこのプリンは食べやすくて好きじゃ」

「ありがとう存じます」


 ここまでは賞賛の感想が出ていますが、後の2人はどうでしょうか?


「ええ。私も貴方の言うように、このプリンは食べやすいと思いますわ。けれど、ここに出すのならばもう少し見た目を華やかにする努力は必要でしょうね」

「貴重な助言ありがとう存じます」

「私は特にありませんな」


 エンリステラ様からは見た目に対する注意点を述べられましたが、味については満足しているようです。

 ディッケルトに至っては、もう何もありません。おそらく、今後もこんな感じでしょう。


「では、得点に移る。アイオーンから!」

「10点!」

「9点です」

「9点じゃ」

「7点ですわ」

「8点」


 アイオーン様から順にプリンに対しての点数を言い渡しますが、やはり私たち異世界を知っているメンバーは高得点ですが、エンリステラ様は見た目の評価で少し点数を落としたみたいですね。

 ディッケルトはちょうど私やコンラート様、エンリステラ様の中間ですか。


「……リニエリクス男爵夫人、43点!」

『ーーーーーーーー!!』


 最初から中々の高得点に、会場から溢れんばかりの拍手と歓声が鳴り響きます。

 実際に彼ら、彼女らもリニエリクス男爵夫人のプリンを食べたので、納得の点数だったのでしょう。


 これは幸先がいいかもしれません。

 この後も、美味しいプリンが出ることを期待したいです。


 と思っていたのですが、次に登場した男爵のプリンは酷いものでした。

今回の小話。


男爵夫人の審査結果後。


宰「ふふふ。1人目から幸先がいいですね。この調子で沢山のプリンが食べられるならば、朝食を少なめにしてきた甲斐があります」

王「確かに、リニエリクス男爵夫人のプリンは美味しかったせいで、全て食べてしまったからな」

宰「えぇ。あと12個のプリンが食べられますね!」

王「そうか。……あと12個か。儂は早まってしまったかもしれんな。途中で飽きる未来が見える」

宰「そうですか?12個なんてペロリじゃないですか」

王「それはお前だけだ!」

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