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第68話 3つのプリン

ブックマーク、感想、評価ありがとうございます。

今後の更新ですが、ブックマーク付けた小説が溜まっているので、消化したいがために週一更新です。

さらに、日曜日から月曜日の更新になります。

「ご馳走様ー」


 仕事が終わり真っ直ぐ家に帰って来た俺は、婆ちゃんと優子が作ってくれた朝食を食べ終えた。

 クタクタになっていた俺の体にエネルギーを補充出来たので、食べ終わった食器を流しに持って行く。

 今日の朝食は炊きたてのご飯と、自家製の梅干、胡瓜と大根のぬか漬け、オクラの味噌汁にオクラとトマトのおかか和え。後は厚焼き玉子と鯖の塩焼きでした。


 ……田舎特有の品数の多い朝食だったが、ペロリと全部今日も美味しく頂きました。


 食器を流しに置いて水に浸けておき、部屋へと戻ろうとした俺の背中に向かって、婆ちゃんが話しかける。


「はい、お粗末様。それにしても暑くなってきたわねぇー。熱中症になっちゃうから、蒼も部屋ではクーラーを付けなさいよ」

「分かった〜」


 7月もそろそろ終わりそうになっているので、太陽が出た瞬間に一気に温度が高くなってしまう。

 そのせいで熱中症に気をつけるように促すニュースや、町からのお知らせの放送でも気をつけるようにと1日1回は流れるのである。


「……なんか、蒼ちゃん機嫌良い感じ? なんかコンビニで良いことでもあったの?」


 すれ違った優子からそんなことを言われるが、言える内容でない。

 何故なら、この後には特別な3つのプリンが俺を待っているからだ!


「いや、何でもないぞ?」

「本当に?」

「まじだぞ?」

「……ふぅーん」


 適当に誤魔化したけれど、サッパリとした性格の優子はそれ以上は追求することもなく、畑に行く準備を始めた。


 この時期は、あまり暑くない日の出と共に畑仕事をするのは高齢のタエ婆と爺ちゃんで、朝食を食べ終わった後に、今度は優子が畑に出かける。

 その後は、爺ちゃんと婆ちゃんがお昼ご飯を持って行き、3人でお昼を食べた後に畑仕事をするのが日課だ。


 その間に俺に任されているのは、洗濯物と風呂掃除だ。

 ただ、スイッチを押すのは婆ちゃんか優子。洗濯物を畳むのはタエ婆ちゃんなので、実際の俺の仕事は洗濯物を干すだけである。

 なので、洗濯終了の合図が鳴るまでは何も出来ないのだが、今日はその間にやることが俺にはあった。


「お婆ちゃんも言っていたけれど気をつけてよね、蒼ちゃん。蒼ちゃんの部屋日当たり良いんだから、油断していると熱中症になってぽっくりよ。そうなったら、ベット下。パソコンの中のあれやこれやが、衆人環視にお披露目されちゃうわね」

「うぐっ!」


 ……ぽっくりって単語よりも、俺的にはその後に続く単語の方が怖いんだが!


「分かってるって。そっちこそ直射日光にガンガンに当たるんだから、日焼け止め塗って適度に休憩入れろよ」

「はーい。行ってきまぁーす」

「行ってらー」


 優子を見送った俺はサッサと自室に移動すると、ぽっくり後の展開が怖いので部屋のエアコンを起動させて、腹と背中にへばり付けていたスーとムーをテーブルに置いた。


「スー!」

「ムゥー!」


 薄くペッタリと俺にくっ付いていたスーとムーは、コンビニから帰る時から今までずっと息を潜めて俺にくっ付いていたから、一仕事終えたとばかりに溶けたハムスターの様な形状でダランとリラックスしている。


 夜勤ならばまだ7月に入ったばかりの時は、ギリギリまでスーとムーが隠れられるような服で出勤出来たけど、今はもう夜でも半袖でないと暑い時期だから出来なくなった。

 ズボンのポケットも考えたけれど、入れたらぽっこりしちゃうから苦肉の策で俺の体にへばり付かせたけれど、意外とスーとムーがひんやりと冷たかったので快適だった。


「さぁ、待ちに待ったプリン! スー、プリンを出してくれ」

「スーー!」


 俺の呼びかけに応じたスーが、テーブルに3つのプリンとコンビニでグラタンなどを買うと貰えるスプーンを出現させると、いそいそとスプーンの包装を食べる。


「すっかりと異世界での習慣が根付いているな」

「スウ?」


 スーは無意識みたいだが、8-10スライムは異世界でコンビニ商品のゴミを出さないと言う使命を持っている。


 こっちでもゴミの問題が深刻となっているのに、技術力に雲泥の差がある異世界でこっちのゴミを出してしまったら、最初は微々たるものだったとしても処理が出来ないから、後々環境破壊真っしぐらになってしまう。


 なのでそうならないためにも、異世界に戻って行った皆がゴミを出さないように、8-10スライムが証拠隠滅するのだが、それが癖になってしまったのか何なのか、ゴミ箱に捨てることが出来るから大丈夫なコンビニでも、8-10スライム達はゴミの証拠隠滅をしたがるようになってしまっていた。


「まぁ、ゴミが減るのは良いことだけど、それはそれで今はこっちだよ。こっち!」


 俺はスプーンを握りしめて、目の前のプリンに期待を高まらせた。

 このプリンはもちろんあのプリンで、決してコンビニで買って来たプリンではない。

 異世界で作られた、王様、宰相さん、アイオーンが太鼓判を押した上位3位のプリン達である。


 事の発端は今日の夜勤時のことで、珍しく4時頃に来店した王様達だった。



 ○



『テロンテロン。テロンテロン』


「いらっしゃい……あれ? 今日は随分と遅い来店だな」


 普段であれば0時頃に来店する王様やアイオーンが、今日は珍しく深夜4時を過ぎた頃に来店したのだ。

 2人の後ろにいる宰相さんに至っては、何故かすこぶる機嫌が良い。


「ふふん。まぁね。何せ今日は午前から午後までプリン大会だったからさ!」


 今日も今日とてテンション爆発のアイオーンは、両手をブンブンと振り回す。


「あぁ、今日がプリン大会だったか。確か貴族のみのプリン大会だったんだろ? どうだったんだ? ってか、宰相さんの機嫌が良いからどんなんだったか分かるけれど」

「ええ。大変素晴らしい出来のプリンが何点かあったので、私としては大変実りのある大会だったと思います。この後のプロ部門では期待している料理人が、平民部門ではアイリーンがいるので、私としては当日が楽しみでしかたありません」

「蒼に渡すプリンも持って来ているぞ」


 3人とも手ぶらで来店しているが、俺のために上位3位に入ったプリンを持って来てくれると約束してくれていたのだ。

 きっと王様か宰相さんのスライムに、プリンを収納させて持って来たのだろう。

 それに甘い物には目がない宰相さんがここまで言うのだから、プリン好きの俺の期待も高まる。


「ありがとうございます。家に持って帰ってから食べますね」

「おや? すぐに食べないのかい? 蒼の感想も聞きたいと思っていたんだけど」


 アイオーンは俺がプリン好きだということを知っているから、すぐに食べないのを不思議に思っているようだが、今は一応仕事中だし、あと2時間もすれば朝の人と交代になるのだ。

 それくらいなら俺も我慢出来る。


「あと2時間だけだが、これでもまだ仕事中だからな。味の感想は明日にしてくれ」

「ふむ、そうじゃな。アイオーンには関係ない話かもしれぬが、儂らも仕事を抜け出して来た身じゃ。そう長居は出来ぬ」

「そうですね。まだ城内では今大会の感想で盛り上がっているはずなので、私達も戻らなければ不審に思われるかもしれません」


 同じ主催者だけれど、今回のために色々と仕事が残っている王様と宰相さんは、最初から俺にプリンを渡すだけのつもりだったらしい。


「そっかー。ならしょうがないね。味の感想は明日聞くことにするよ」

「おう。プリンありがとうな」

「良いってことよ! 蒼もある意味主催者みたいなものだからね」

「では、こちらが上位3位のプリンです」


 宰相さんのスライムであるリチャードから取り出したプリンを、宰相さんから受け取る。

 受け取る際に、軽く宰相さんから各プリンの順位と味の感想を貰ったあと、3人は異世界に帰って行った。


 ○


 そんな訳で今に至る訳だが、早速3位のプリンから食べたいと思う。


「では、人生初の異世界プリン。いただきまぉーす!」


今回の小話


コンビニにて、宰相さんからの説明の際に、繊細で美しい加工がされたガラスの容器に乗せられたプリンを見た蒼。


「うわ、高そう。食べたらとっととスーの中にしまっとこ」



家にて、ガラスを割らないように細心の注意で食べ始める。


「傷付けるのが怖かったから、プラのスプーンを持って来て良かったわ。幾らになるのかわからないけど、貴族の私物の弁償なんてただのフリーターには無理無理!」


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