表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/73

第65話 2人と2匹のパーティ(side異世界)

ブックマーク、感想、評価ありがとうございます。

うっかり予約忘れてました。

 私たちはお金稼ぎのために、パーティを組んで初めての魔の大森林へと、ガタゴトと荷馬車に乗って向かっていた。


「魔の大森林・獣へ行くとなると、先に私が手数料を払うから、帰りの分はザックにお願いしていいかしら?」

「了解っす」


 王都から1番近い魔の大森林で出るモンスターの種族は蟲だけれど、今日は獣へと向かうと決めていたので手数料が発生する。


 元々魔の大森林は広大で、龍が住む山を中心にその周囲の森を魔の大森林と呼ぶのだけど、王都から近い大森林の蟲から時計回りに、獣、両生類、鳥の順に4分割されている。

 各々の種族が君臨する森へ行くには、荷馬車で1月以上掛かるほどの距離となっているから、その対策として各森の入り口には転移スキルを持っている引退した冒険者や、まだ年若くお金のない魔術師などがいる。

 その人たちが他の森の入り口に転移してくれるのだけど、転移1回の料金は6人以内のパーティで中銀貨1枚、と、中々にいいお値段をしている。

 けれど転移スキルを持っている人は少ないし、1月掛かる距離を一瞬で移動できるのだから、中銀貨1枚でも、もし荷馬車で向かうと考えると旅費などがない分かなり安いとなる。


 それに私たちは2人だけど、もし6人パーティで往復をした場合は1人小銀貨数枚で済むから、高価な獲物を求めて転移する人は後を絶たない。


 そんな行きと帰りの転移で掛かる料金を、私たちはそれぞれが払うことで決めると、魔の大森林に着くまでの間にそれぞれの戦闘スタイルを話し合う。


「フロスティアは後衛で弓、風と水の魔法を使えるんすよね。あとは場合によってはレイピアも使うってことっすけど、苦手なのはあるっすか?」

「あまり苦手なのはないけれど、近接になった場合に、金属系の防具を着込んでいるタイプのモンスターに当たったら、場合によってはレイピアが折れちゃうかも知れない感じかしら? 遠距離だったら魔法でどうにか出来ちゃうんだけどね」

「あぁー。確かにこれだけ細いと、打ち所が悪ければポキっていきそうっすもんね」


 チラリと腰に差しているレイピアを見たザックは、ウンウンと頷く。


「そうなのよ。どうしても1人だけでクエストに出ていると、近接に持ち込まれる時が何度もあって、すでに何回か折っているのよね」


 冒険者をそこそこの年月でやっているので、武器も防具も何度も壊れたし、その度に新品の物に変えていたせいで、あまりお金が貯まっていない。


「そういえば、フロスティアはパーティは組まなかったんすか?」

「……最初の方は組んでた時もあったけど、色々とトラブルが起きてからはソロよ」


 ちょっと遠くを見つめながら、過去にあった色恋沙汰から発展した刀傷沙汰を思い出してしまった私は、ふるふると頭を振る。


「ご愁傷様っす。これでも食べるっす」


 聞いてはいけない、触れてはいけない話題に手を出したと察したザックから、8-10で販売されている飴というのを貰った。

 異世界の商品で、向こうでザックがプラ素材って言う理解不能の包みに入っている飴玉を、布の小袋に移し替えている場面に一緒にいた時があった。

 その時にその場に居た全員に、ザックは飴をプレゼントしていた。もちろん、私も貰った。


 私もその場に居たから貰ったけれど、それは丸くて甘くて、それだけでも美味しいのに果物の味がするので、私も買おうか悩んでしまうほどに美味しい。

 けれど、それよりも先にチョコ系のお菓子をコンプリートしないとね。

 異世界のチョコ系菓子って、毎週新しいのが出るって言うから頑張って稼がないと。


「はぁ。ありがとう。それで、ザックの方は近接メインの土魔法が使えるんだっけ?」


 ザックから貰った飴を、コロコロと口の中で転がしながらザックに聞く。

 ザックも飴を食べならが頷く。


「そうっすよ。ただ、元々農家だったもんすから、剣よりも農具の方が今だに扱い易いし、魔法も攻撃よりもそっち系の方が充実しているっす」

「でも無いよりはマシだし、その時その時で対策を考えましょう。それにもう着いたみたいだしね」


 話しているうちに森の入り口へと着いたので、私たちは荷馬車から降りると転移する行列に並んだ。


「2人でも中銀貨1枚ですよ」


 行列の先頭になった私たちに、初老の男性が困り顔で聞いてきた。

 おそらく私たち2人を見て、お金を持っているか不安になったんだと思うけど、ちょっと前に8-10の殺虫剤で荒稼ぎ出来ていたから、転移するお金は持っている。


「分かっているわ。獣へ送ってちょうだい」

「はいはい。では、獣ですね」


 男性がスッと手を動かすと私たちの足元に魔法陣が浮かび、ハッと気付いた時には蟲の入り口とは別の所に立っていた。


「はぇー。転移って初めてっすけど、本当に一瞬なんすね」


 いつも見慣れている蟲の入り口とは違う、あらゆる大きさの動物の骨が積み上げられた獣の入り口を見て、じわじわと実感が込み上げているザックに、私は転移魔法についての豆知識を教えてあげる。


「その分転移魔法は、魔力をたんまり使うみたいだから連発は出来ないみたい。だから転移1回の値段が中銀貨1枚ってのもあるのよね」

「ほぇー。転移魔法って凄いんすね」

「まぁね。さぁ、早速時間ギリギリまで稼ぐわよ!」

「うっす! 頑張るっす」


 私たちは意気込むと、早速魔の大森林・獣へと踏み出した。




「ザック、右、3時の方向からイノシシが来るわ。そのウサギは私が倒すから、イノシシの牽制をよろしく!」

「了解っす!」


 これでもう何度目の戦闘か。

 最初は森の浅い部分で連携を試し、何回か戦闘を挟んだのちに段々と森深くまで来ていた。

 けれど、私たちの実力なんて高が知れているので、そこまで深くまでは来ていない。

 むしろ森の奥はCランク以上のパーティが推奨で、それでも帰ってこない人が毎月出ているくらい、ここのモンスターは強い。


「エアカッター!」


 予め練っていたエアカッターを、ザックが退いた瞬間にウサギに向かって放った。

 放ったエアカッターはウサギの顔面に直撃して、立派な角を破壊するとともに、頭もかち割れ状態となっている。


「ティア、ウサギの回収よろしく!」

「ティアー!」


 頭が潰れて完全に死んでいるウサギを回収するために、私の防具も兼ねていたティアをウサギの死体に向かって投げて、私は草むらから飛び出したイノシシに向かう。


「さぁ、来いっす!」

「pugoooooo!」

「アースウォール!」

「pugga!?」


 イノシシは遠ければ、直線の突進しか攻撃方法がないので、それを利用して出来るだけ頑丈なアースウォールをザックが作ると、スピードが乗っているのが運の尽きで、アースウォールを回避出来ずに突っ込んでしまうイノシシ。

 ザックは突進でアースウォールが壊れてもいいように直ぐに回避していて、壁を回り込んでイノシシへと向かっている。

 ものの数秒だけれど、イノシシの動きが完全に止まっている上に、直線上に誰もいないこの状況で、私は最大攻撃力を誇る弓を射る。


「水の精霊よ。我が求めに応じ、貴方の力を分け与えよ。敵を穿つ矢を我が手に。

 風の精霊よ。我が求めに応じ、貴方の力を分け与えよ。敵を穿つ力を我が矢に!」

「うおっ!」


 弓を打つ。

 私のとっておきの攻撃は、アースウォールを貫通してイノシシへと到達すると、そのまま一直線に矢が貫通して通り抜けた。

 日に何度も出来る攻撃ではないけれど、時間も時間だから短期決戦でとどめを刺しておきたかった。


「今のやつ、何度見ても凄いっすね。僕が作ったアースウォールは貫通してたし、……これって、場所的に背骨無くなってるっすよね?」


 ちょうど眉間と尻尾の付け根より上から血が出ているので、背骨も無くなっていると思う。


「まぁそうでしょうね。けれど、もう日がオレンジになってきたから、早く帰りたかったのよ。まさか森の入り口付近でイノシシが来るとは思わなかったけれどね」


 夜の魔の大森林は、昼とは打って変わって熟練の冒険者が万全の準備をしてても命が危ない。

 ここも昼の草食獣の代わりに、夜になったら肉食獣が頻繁に出て来るらしいので、早く撤退したかった。


「そうっすね。けれど最後の最後に大物が狩れたっすから、今日はおやっさんのところで肉パーティっすよ!」

「なら、さっさと帰りましょう」

「うっす! ふふーん。にーく、肉肉ー!」


 サーナにイノシシの死骸を回収させたザックは、鼻歌を歌いながら軽い足取りで入り口へと向かう。

 私はそんなザックの後ろ姿を見ながら、浮かれているなぁと思いながら付いて行った。


「ザック、今日でお肉は結構取れたけれど、明日からはどうする?」

「そうっすね。今日狩った肉で数日分は余裕があると思うっすから、別の場所に行ってもいいし、まだここで連携を高めるのもいいっすよね」

「そうねぇ。今日は大量に狩れたし、転移料金がネックだけれど、今日の換金でいくらになるか見てからでもいいかもね」


 それに、さっさと王都に戻って汗を流したいわ。

今回の小話


少し前の話。

冒A「うやぁ、また虫素材の値段下がったな」

冒B「なんでも、この前2人の冒険者が大量に持ち込みしたから、その素材が潤沢で値下がりしたらしいぜ」

A「マジかー。しかも、この資料見る限りじゃあ近場は全滅だな。中間から奥の素材じゃなきゃ元が取れねぇぜ」

B「まぁ、最近はその冒険者以外にもバンバン素材の持ち込みがあったからな。流石にもうあの値段にはならねぇさ」

A「まぁ虫が出ない冬は全滅な分、春過ぎは稼ぎ時だからこその値段だったからな。低ランクにはキツイかもだが、これが普段の値段だったな」

B「そうそう。逆に他所の街には売れんじゃないか?」

A「おう。その手もあるな。ただ、俺たちはBランクだぜ。ここは大物狙いじゃなきゃな!よっしゃ!今日も一日頑張るぞー」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ