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第63話 一芝居〜その2〜(side異世界)

ブックマーク、感想、評価ありがとうございます。


うっかり予約投稿忘れてました。

 昨日のうちに、私の今日のシフトを午前中だけにして貰っていたので、仕事を終えるやいなや、私は教会へと足を運んでいました。


「忘れ物は無いでしょうか?」


 教会へと入る前に、今となっては数少なくなった、村にいた時から使っていたお気に入りのポーチの中身を確認します。


 ポーチの中身は少量の銅貨。これは教会への献金となります。

 それとは別に、お兄ちゃんから貰ったお小遣いの小銀貨が1枚。こちらはこの後でリカルド君との小芝居の時に使う予定です。

 他にはハンカチにお気に入りの手荒れクリーム。身嗜みを整えるための櫛や髪紐も入っているので、どうやら忘れ物は無いようです。


 さらに、自分の服装や髪型をチェックします。

 今日の私は夏を意識した水色のワンピースに、おさげにした2つの結び目に、白の髪紐で小さなリボン結びにしています。

 この格好はこと前にお兄ちゃんがリカルド君に知らせている筈なので、リカルド君も私が来たことが分かると思います。


 ……お兄ちゃんがミスをしなければですが。


「すーー。はーー。……よし!」


 教会の敷地の前で深呼吸をした私は、いざ中へと入って行きました。


「まず最初は、リカルド君に私だと分かってもらうために、祭壇でお祈りをしなくちゃですね」


 今回の小芝居の肩書きはこうなっています。

 私が兄の無事を感謝し、祭壇で神々にお祈りを捧げます。

 そして帰ろうとした時に、私がハンカチを落としたとリカルド君に呼び止められるのです。

 この作戦の立案者は姐さん改、アイリーンさんです。

 なんでも向こうでの書物の中に、今回の作戦の内容があったらしいのですが、その時のアイリーンさんのテンションが異様に高かったようなのです。

 なので、この作戦で何故あんなにテンションが上がるのか、訳が分からないとお兄ちゃんは言っていました。


 他にもパンを咥えて走るだとか、小さい子を助ける為に馬車の前に飛び出すとか言っていたようですが、私もよく分かりません。


 ですが今回の作戦を成功させる為に、まずは祭壇へ行き、神々へ感謝の祈りを捧げて来なければなりません。

 なので私は、教会の入口近くにいたシスターに声をかけました。


「すいません。神々へと祈りを捧げに来たのですが、ここでのお祈りが初めてなので、どうすればいいのか分からないのです」

「大丈夫ですよ。私が案内しますので、何も心配する必要はありません。では、祭壇へと案内しますね」


 私が声をかけたシスターは、お母さんよりも少し若いです。


「さぁ、こちらになります」


 優しい笑みを浮かべるシスターの先導の元、私は祭壇へと向かいます。

 その途中、ちらほらと子供達が見えました。

 きっとあの中の誰かが、リカルド君に違いありません。


「お祈りをする神々は決まっていますか?」


 祭壇へ着くと、シスターから声を掛けられました。


「はい。どの神々が該当するのかは分かりませんが、中々クエストから帰らない兄を心配した時に、私は神々に兄の無事を祈ったのです。

 その次の日には、兄は無事に帰って来てくれたので、私の声を聞いて下さった神々に、感謝のお祈りをしたいと思っています」


 これはあらかじめ決めていたことです。誰かに聞かれたら、こう答えるように言われていました。

 それに本来であれば、兄の窮地を救ったのは8-10スライムのサーナと、その時に異世界コンビニいた面々となるのですが、そのことは8-10スライムの話にも繋がってしまうので、関係者以外には誰にも話すことは出来ません。

 なので、今回は神々に祈りを捧げるということに決まったのです。

 一応間接的ではありますが、8-10スライムの生みの親はアイオーン様ですし、嘘は言っていないのです。


 ……だって、むやみやたらに異世界の話をしてはいけないと、ヘルメス様にも誓ってしまいましたし。


「そうですか。お兄様がご無事で何よりです」

「はい。これも神々の御導きだと思っています。少ないのですが、これは感謝の気持ちとして、献金させて下さい」


 そう言って私はポーチの中から、小銅貨を数枚シスターに手渡します。


「まぁ、ありがとうございます。ですがこう言うのは、たとえ少なくとも気持ちが大事なのですよ。

 また困ったことがありましたら、気軽に声をかけてくださいね」

「はい。ありがとうございます」


 一礼して去って行くシスターを見送った私は、このまま帰る訳にもいかないので、祭壇に跪き手を組んで、兄を救ったアイオーン様、私と契約を結んでいるヘルメス様に祈りを捧げます。


(アイオーン様、ヘルメス様。そろそろプリン大会ですね。お2人も大会へお越しになられるのですか? 私はお兄ちゃんとフロスティアさん。それにリカルド君の4人で、平民部門とプロ部門を見て回る予定です)


 もはやお祈りではなく、近況報告みたいになってしまいましたが、しょうがないことなのです。


 それほど私は、今回のプリン大会を楽しみにしているのですから!


「あとは帰る時に、このハンカチを落として……と」


 私はポーチの中のハンカチを確認すると、来た道を歩いて外へと出ました。

 あとはここから敷地外へ向かう途中でハンカチを落としたら、私のミッションは終了です。


「…………」


 ちらほらと子供達が遊んでいるのを確認した私は、シナリオ通りにハンカチを落とします。

 そのまま落ちたハンカチに気付かないふりをして、私は敷地外へと向かいます。


「お姉さん。このハンカチはお姉さんのですか?」


 敷地外へと向かう石畳が、あと少しで途切れそうな所で私は声を掛けられました。

 くるりと振り返った先には、ニコリと笑っている男の子。


 その子は私のハンカチを、若葉の刺繍がしてある私こハンカチを、両手で差し出してくれています。


「はい。私のです。拾ってくれてありがとうございます」


 私の頭1つ小さいその子にお礼を言うために、私は膝を屈めてお礼を言うと、顔が近くなった私の耳元で、ポツリと男の子は言いました。


「サーナお姉ちゃん?」

「……はぅっ!」


 小首を傾げて円らな瞳で、私のことをお姉ちゃんと呼ぶ男の子に、私はズキュンと心臓に一撃を受けてしまいました。


 私は4人家族の末っ子だったので、家族で平穏と過ごしていた時は、妹か弟が欲しいと思っていたことがあります。

 今となっては、そんな願いもさらさら叶うとは思っていませんでしたが、まさかここで夢を果たすことが出来るとは思いもしませんでした。

 お兄ちゃんも勿論大好きですが、それとこれとは話が別です。私も一度はお姉ちゃんと呼ばれてみたかったのです。


「はい。私はサーナです。リカルド君ですか?」

「はい! いつもザックお兄ちゃんが、サーナお姉ちゃんのお話をしているの」

「あっ、そうなのですか?」

「うん サーナお姉ちゃんが……あっ、何でもないの」


 ふるふると首を振り、何でもないと言うリカルド君ですが、これは後でお兄ちゃんに問い詰めねばなりませんね。


「…………あら、そうですか」

「そうなの」

「なら、しょうがないですね」


 ホッとするリカルド君の様子を見て、お兄ちゃんが私に関しての内緒話を、異世界でしたのは明白です!


 私が絶対に行けない場所で、私が知らない人相手に、私についてのことをペラペラと話すだなんて、お兄ちゃんにはどんなお仕置きをお願いしようか、後で考えておきましょう。


 今はまず、リカルド君と仲良くなるのが先決です。


「では、リカルド君。このハンカチを拾って下さりありがとうございます。お礼に、一緒にご飯でも食べませんか?」

「はい。喜んで!」


 2人で予め決められていた台詞を言い終わると、私達は露店区域へと向かいました。

 露店区域で、私達が楽しそうに色々なお店を見て回るのも、今回のミッションには含まれているので、あとは時間とお金の許す限り、めいいっぱい楽しむのです!


「リカルド君。今日の為にとお兄ちゃんから小銀貨を貰ったのです。まずはどこかのお店で、食べ物でも買いましょうか?」

「僕もお腹ぺこぺこなの。サーナお姉ちゃん、一緒にご飯食べよう」

「はい。もちろんです!」


 その後は色々なお店の商品を食べてみて味の感想を言い合ったり、装飾品や雑貨のお店などを冷やかしつつ、時には広場でのんびりと休憩をしながら、時間の許す限りリカルド君と遊びました。


「それじゃあ、またね。リカルド君」

「うん。今度はザックお兄ちゃんも呼んで、一緒に遊ぼうね!」


 そろそろ夕方になりそうな頃、私達は手を振って別れました。

 お兄ちゃんから貰ったお金はほとんど使ってしまいましたが、私のことをペラペラと話した代償です。

 これでも安いくらいですよ。


 そんなことを思っていると、少し先にお兄ちゃんが歩いているのが見えたので、私は走ってお兄ちゃんに飛び付きました。


「うわっ!」

「お兄ちゃん! リカルド君とお友達になろう作戦、大成功です!」

今回の小話


ザック「てな感じで、ハンカチ落とし作戦は上手くいったっすよ!」

アイリーン「まぁまぁまぁ。それで、リカルドとサーナの関係はどうなのかしら?」

ザック「どうなのって、普通の友達……っていうか、サーナはリカルドのこと弟として可愛がりますって言っていたっすよ」

アイリーン「そうじゃない。そうじゃないけど、そこから恋愛に繋がるかもしれないし、まだまだ観察要因ね」

ザック「うちの妹使って何やってるんすか!」

アイリーン「おほほほほほほーーー!」


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