第58話 豊富で迷う
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新しい異世界人こと、エルフのフロスティアとドワーフのドルネゴは、自己紹介を終えると早速店内を物色し始めた。
フロスティアは光の加減で金色の様な、黄緑の様な髪をストレートに伸ばしており、それをだいたい腰の辺りで、ふんわりとリボンで1つに結んでいる。
服装は二次元などで見かけるエルフの服装に似ており、腰の辺りには弓と矢筒がある。
もう1人のドルネゴは、ツルンとスキンヘッドでタンクトップ。下は作業着の様なものを着ており、首にはタオルが巻かれている。
肩周りや腰回りに工具を装着しているので、これがドルネゴの仕事着なのかもしれない。
「ほうほう。これはたまげたもんだ。こんなに綺麗に加工されているガラス瓶は初めてみたわ。しかもどれにも酒が入っていると言うではないか!」
「へぇ。この生野菜、カットされているから調理する時に便利ね。それに、肉も魚もチーズも揃っているわ」
店内をウロウロと物色しながら、それぞれが手に商品を持って品定めしているフロスティアとドルネゴ。
アイオーンとアイリーンの2人が、このコンビニの事や、異世界人目線での買い物の仕方や、向こうに商品を持って帰った時の注意事項などをあらかた教えていたので、俺は特に説明することが無かったが、流石に王国のトップ3である王様、宰相さん、教皇様もお客として来るなどと教えられたフロスティアとドルネゴは、目が点になってしまっていた。
「ううむ。手持ちがちと厳しいが……ええい! 悩んでも仕方がない。これ、全部買うぞ!」
お酒売り場でウロウロしていたドルネゴだったが、やっと商品を買う決心がついた様だ。
主に酒だけが入ったカゴを持って来たので早速会計を済ませた。
「どれもこれも見たことない名前の酒だが、かえってそれがいいな! まだまだ俺が知らねぇ未知な酒があるってことじゃねぇーか」
ドルネゴは散々悩んだ結果、上から順番に1本ずつ商品を買ってコンプリートを目指す様で、今回はワインを数本で5千円近く使っていた。
初めての買い物で酒オンリー、しかも5千円相当をポンっと支払えるんだから、流石ドワーフだな。
「やっぱりドワーフは酒なんだな。物の見事に酒オンリーじゃん。ツマミ一切無しとか」
ドルネゴが持って来たのは白や赤のワインのみで、ツマミ類も無ければ、コップとかも無いのである。
「たわけ! 初めて飲む酒はツマミ無しで楽しむのが礼儀だろ。そんな、ツマミなんかと一緒に飲んだら酒本来の味が分からなくなるじゃねーか!」
「コップとかーー」
「はぁ? これくらいだったら直だろ! 直!」
近くにあるワインを1つ取って、クイクイッと直飲みの動作をするドルネゴ。
「……まぁ、汚さないなら許可する」
「へっ。これくらいなら出禁をくらうほど酔わないから、安心しろや」
すでに王様と教皇様の出禁話をドルネゴにもしてあったので、彼らの二の舞にはならないことを祈る。
「どうする? ビニールに入れるか?」
流石に5本ものワインを持って行くのに、そのままでは持ちにくいだろうと手提げ袋に入れるか聞いてみたが、ドルネゴは首を振った。
「いやぁ、いらんわ。確か8-10スライムなら中に入れられるんだろ?」
「あぁ、そうみたいだな。それに、入れたら目録が出てくるみたいだぞ」
俺自身は試した事は無いが、たしかザックがその様なことを言っていたはずだ。
「ほう。想像以上に便利だな。おい、ドゥー!」
「……ドゥー?」
ドルネゴの良く通る声でドゥーを呼ぶと、陳列棚の下からドゥーが現れた。
どうやら他のスライム達と一緒に床掃除をしていたらしい。
「よし。これと、これ以外を入れてくれ」
「ドゥー!」
ドルネゴが両手で待っているワイン以外をドゥーが取り込むと、再び床にべちゃっと落ちて戻って行くドゥー。
「それじゃあ、早速。向こうで試飲といきますか!」
「いや、その量で試飲って言わんし」
俺の呟きも聞こえないほどルンルン気分のドルネゴは、両手にワインを持ち、スキップをしながらイートインコーナーの方へと向かった。
手持ちがすっからかんになったとしても、酒でルンルン気分になれるだなんて、流石ドワーフ。
ワイン瓶から直接飲んで、ワイン2本を試飲と言っちゃうなんて、流石ドワーフ。
「ねぇ、蒼。相談があるの」
「ん? 何でしょうか?」
そんな事をドルネゴの背中を見ながら思っていた俺に、少し困った様な顔をしたフロスティアが声をかけた。
「私。冒険者になりたてで、あまり自由に使えるお金がないのよ。それに向こうに戻る時は王都側の魔の森になるから、なるべく日持ちして簡単に食べられるものが良いんだけど、何かあるかしら?」
そう言ったフロスティアが持っているカゴを見てみると、まだ何も手につけていない様で空っぽである。
なので俺は少し考えて、フロスティアの懐事情を確認した。
「ふむ。ちなみに今日の買い物は、予算どれくらい使える?」
「そうね。だいたい千円以内に収めてくれると嬉しいわ。それで2〜3日分くらいが理想なの」
「ちょっと、その金額で2〜3日は厳しいかもしれないぞ」
「分かっているわ。一応保存食はあるし、森で食べれる物とかもあるから、1日3食分ってわけじゃなくて大丈夫なの。
ただ、ずっとそればっかりも味気なくて」
「なるほど。なら、ちょっと考えてみるよ」
千円で2〜3日はちょっとギリギリって所だが、取り敢えず提案だけはパッと何種類か思い浮かぶので、それをフロスティアに伝えてみよう。
その中から選ぶのはフロスティアだ。
「俺が千円以内でおススメするなら、取り敢えずはこの食パンだろ。あとはこっちの惣菜コーナーのサラダシリーズ。
ポテサラとかマカロニとかカボチャとか色々あるし、それをパンで挟んで食べると結構腹に溜まるんだよ。
俺は食パン2枚に半分ずつ乗せて食べてたな」
「蒼でお腹一杯になるなら、私はその半分でも良さそうね」
俺が最初に提案したのは、食パンオンサラダシリーズだ。
ちなみに俺一押しの食べ方は、バターやマーガリンを塗った食パンに明太ポテトサラダを乗せて、さらにチーズも乗せてトーストで焼くとさらに美味いのだ!
ただ、バターもチーズも入れると予算オーバーになりそうだし、トースターに似た道具が異世界にあるのか分からないので、ここの説明は残念ながら省略だ。
「そうそう。フロスティアは肉も魚も食べるのか?」
俺は惣菜コーナーの一角を見て、フロスティアに聞いた。
「そりゃあ食べれるけど、どうして?」
「いや、こっちでエルフって言ったら菜食主義な種族ってイメージがあるんだよ。
まぁ、こっちのエルフは想像の産物だから、中には肉も魚も平気で食べるエルフもいると思うが」
「ふぅん。まぁ、私も脂身たっぷりのお肉だったり、物凄く生臭いお魚とかは食べれないけど、けれど普通に食べるわよ」
「そっか。ならこのハンバーグとかミートボールとかも、パンに挟んで食べると美味いと思うんだが、ただ温めて食べた方が美味しい商品だから、何か温める方法が思いついたら試してみるのもいいかも」
サラダシリーズは100円とちょっとのお値段で、それと同じくらいの値段で売っているこのハンバーグとかもフロスティアに勧めてみたが、こっちは温めて食べた方が断然美味しいので、こっちは後々って感じだな。
「あとは甘い物系でドライフルーツやナッツ、チョコとかもある。
予算的にドライフルーツとナッツはちょっと高めだけど、チョコだったら100円くらいで買えるのがいっぱいあるぞ」
「えっ、こっちのチョコってそんなに安いの?」
「あっはい。そんなに安いんです」
今回の小話
・全て翻訳しております。実際はいつもの鳴き声です
『スー、ムー、ドゥー、ティア、キッシュ』←スライムの名前は念の為。
ス「やぁ。ここでは僕達はお掃除のお仕事をするんだよ」
ム「洗い物と棚はもう終わっているから、床を一緒に掃除しようね」
ド「了解であります!」
テ「ハイなのです!」
キ「ほーい。皆一列に並んでー」
中略
ド「あ、ご飯落ちてる。うまうま。あっこっちにもいる。えい」
ドル「おい、ドゥー!」
ド「あっ、なんだよー。ご飯逃げちゃったよー」
ドゥーが言っているご飯は想像にお任せします。




