第4話 スーとムー
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アイオーンの手の中に収まっている2つの物体は透明で、プルルンとした質感をしている。
こいつ曰くスライムって事らしいが、
「きな粉と黒蜜かけたら美味そうだな」
「えっ? これ食べたいの?」
ポツリと、俺は思った事をそのまま呟いたのだが、それを聞いたアイオーンはドン引きした顔で俺を見て、若干俺との距離を離そうとしている。
俺としては美味そうな見た目をしていたから言っただけで、実際に食おうとは思ってないんだが。
「いや、俺の世界にこんな見た目の食いもんがあってさ」
「えぇー。変なのー」
変なのーとアイオーンは言うが、スライムと言われて想像するのは、ドラ○エの青いスライムとか、女神○生の緑色のドロっとした見た目のスライムとかを思い浮かべたのだが、実際にアイオーンが出したスライムは、それらとは全く見た目が異なっていた。
葛餅と言う食べ物を知っているだろか? もしくは水饅頭と言う食べ物の方が見た目が近いかもしれない。
「それで、このスライムが何だよ?」
「えっへん! このスライムにさ、さっき言っていたことを全部つぎ込んだんだよ。取り敢えず、この2つは蒼の分だからあげるね」
そう言われて、俺の掌に乗せられた2つのスライムは何の反応も無く、俺がむにむにと揉んでみても、これといった反応を返さない。
「なぁ、これって役に立つのか? 全く動かないんだがーー」
「そりゃあそうだよ。まだそれはスライムの器をしたただの物なんだから。だから、これから蒼がこの2つに魂を入れるんだよ」
「……はっ?」
アイオーン曰く、まだこのスライムはスライムだがスライムじゃないらしく、スライム擬きなんだとか。このままだとスライムの性能を持ったただの物なので、これから魂を入れる作業をするとの事だった。
んでだ、早速アイオーンの指示のもと、スライムに魂とやらを入れる事となった。
やる事は簡単で、1つは俺の体の一部を与える事。
「おぉ、溶けてる。溶けてる」
「そりゃあスライムだもん」
俺は体の一部で毛髪を選んだ。こういうのだと血とかの体液を与えるのが2次元的には有名だが、一応仕事中なので血が出る行為はやめておいた。
あとは血液の次に有名な唾液とかだが、これはただ単にスライムとキスしたくなかったのと、涎を垂らす様な真似を30前のおっさんがしたら、絵面的にキツイと思ったのでやめたので、消去法で髪となった。
爪は残念ながら深爪派なので、切るところが無かった。
「髪でも良いのか?」と言う俺の問いに対して、アイオーンの許可は取れたので、ハサミで2本分の髪を切りスライムの上に乗っけると、モゴモゴとスライムが動き出し髪を取り込むと、徐々に溶けて無くなる。
これで1つ目はクリアだ。
「次にこの子達の名前を付けてあげてよ」
2つ目は名前を付ける事。
これはすぐに終わった。
「じゃあ、スライムから取ってスーとムー」
「安直だなー。まぁ、いっか。これでこの子達は新しい種族となり、蒼の従魔になったよ」
「従魔って……うおっ! 目玉が出来てる」
さっきまでは透明で何も無い、ただ丸いだけが特徴のスライムだったのだが、今は小ちゃいながらもパッチリとした目玉が出来ていた。
「お、お、おおおおい、め、目玉が!」
「そりゃあそうだよ。だってスライムって目玉があるものだろ?」
知らねぇよ! と内心で思いつつ、恐る恐るスライムを突いてみる。
「……」
「……」
触り心地には何の変化もないが、スライムが反応を返す様になっていた。
俺が片方のスライムをツンツンと突いてみると、くすぐったそうな素振りをみせただけで、俺に実害が無いと判断してからは揉みしだく様に触っていると、気持ちいいのかトロンと目蓋を閉じてされるがままになる。
その反応を見ていたもう1つのスライムは、最初は自分の片割れを見ていたのだが、今はジッと俺の事を見ている。
つまりはあれか? 自分はまだかと言う無言の催促か? しょうがないので空いている方の手でスライムを掴むと、むにむにと揉む。
途端にトロンと目蓋を閉じて俺にされるがままになる。
「よし! あとはこの子達がここのスライムだっていう目印が欲しいんだけど、何か無いかな?」
「だったら、ここのロゴでいいんじゃないか? ちょっと待てよ」
アイオーンに尋ねられた俺は、期限切れで裏が白紙になっているチラシを束ねて、メモ用紙代わりとなっているそれから1枚取ると、ボールペンで「8-10」と書いて、それをアイオーンに見せる。
「これってどういう意味なの?」
「それはこのコンビニの社名を略したやつだ。正式名称はエイトテンって言う。大手コンビニ業界の中の1つだな」
「ふーん。なら、これがいいかな」
メモ用紙を見ているアイオーンに俺がそう説明すると、納得した様子でいまだ俺に揉みしだかれているスライムの頭上? に手をかざした。
するとスライムが発光したのだが、それは一瞬で収まり、収まったスライムの額の辺りには『8-10』の文字が入っていた。
「青がスーでピンクがムーだよ!
せっかく名前を決めてもらったけど見た目が同じじゃあ、どっちがどっちか分からないと思ってね。区別出来るように色分けしておいたのさ。
さぁ、これで転移装置兼換金装置兼翻訳装置兼蒼の従魔の完成だね!」
アイオーンはそう高らかに宣言し、それに答えるように、青で『8-10』と書かれたスーと、ピンクで『8-10』と書かれたムーが、左右対称で手を上げるように触手を伸ばした。
「あーなんだ。これからよろしくな。スー。ムー」
俺はスーとムーに挨拶をした瞬間に、大変な事を思い出した。
蒼が思い出した大変な事とは……。
次回予告
「スーとムーの実力。アイオーン初めてのホットスナック」




