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第44話 ザック回想記。その3

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 アイリーンはザックが捕らえた虫系モンスターを聞いた瞬間に、「さすが異世界の商品だわ」と思った。

 それと同時に、つい最近王都にやって来て、あまり都会に馴染んでいないザックがやりそうな事を考えたアイリーンは、今後のことを考えてザックに忠告をしたのだが、言われた方のザックは意味が分からないというように、キョトンと目を丸くした。


「えっ? なぜに10匹だけなんすか?」


 アイリーンの忠告に対して、やや不満そうな声音で聞くザック。

 ザックとしてはギルドで全てを換金し、心配をかけたであろう母や妹に対しての、お詫びの品を豪華したいと言う思いもある。


「はぁ、いいこと。なぜ10匹なのか教えてあげるわ。まずは、今現在の虫系モンスターの素材が高騰しているから、たとえ10匹でもそれなりの稼ぎにはなると思うの」

「へー。そうなんすか?」

「確か、状態にもよるのだけれど、モスキィー1匹で大銅貨3枚にはなったはずよ」


 アイリーンが働いている「春の訪れ」にやって来る客達は、大金を動かせる貴族や富豪が多いのだが、そんな中にも高ランクの冒険者であれば大金を持っているので、お店にやって来る人もいるのである。

 そんな高ランク冒険者の相手をするアイリーンにも、最近の冒険者ギルドの情報は入って来る。

 さらに今朝方、アイリーンは自ら冒険者ギルドに赴いて、モンスターの相場を確認しているので、これは確かな情報であった。


「ってことは、小銀貨3枚ってことっすよね」

「ええ。それだけあれば、ご家族に送るお詫びの品も、十分なのが揃えられるのではなくて? それに、王都で女性が行きそうなお店ならば、私が紹介出来るわよ」


 これはザックにとってみても、有難い申してであった。


「それは助かるっす。2人共水仕事があるんで、手荒れを気にしているみたいだったんすけど、いい店あるっすかね?」

「もちろんよ。小銀貨3枚以内で、手荒れに効くクリームを売っているところがあるから教えてあげるわ」


 アイリーンにお店の事を聞くまでは、何か甘い食べ物をと考えていたザックであったが、女性が好みそうなお店を網羅しているアイリーンが紹介してくれるならば、食べ物ではなくて実用的な物の方が良いだろうと考えた。

 食べ物ならば、別の機会に家族全員で食べに行った方が、美味しいに決まっているからだ。


「次に、ザックはこの前まではEランクの冒険者で、最近Dランクの冒険者になったのよね? そんなザックがいきなり沢山のモンスターを持って来たら、何かしらの噂になると思うの」

「あっ。あーー」


 思いもよらなかった事を言われたザックは、仮にそうなった時の事を考えて顔を顰める。


「なんか、面倒くさい事になりそうっすよね」


 入りたてとは言えど、何度も冒険者ギルドに行った事があるザックは、高ランクの冒険者が時たま低ランクのクエストを手伝ってくれる際に、まるで死肉に群がるモンスターの様に、その高ランクの冒険者に群がる冒険者達を見た事があるので、自分もそんな風に群がれる可能性を考えて、眉間に皺を寄せた。


「しかも、ザックがこんなにモンスターを狩れる冒険者だと知れ渡ったら、あなたを置いて逃げ出した冒険者達が、ゴマを擦りに来そうじゃない?」

「うわぁ……それは嫌っす」


 ザックが死にそうになった元凶を思い出した。

 8-10スライムのサーナと出会えて、コンビニという異世界に行ける事になった事には感謝をしているが、だからと言って、あの時に見放さずに居てくれたら、死にそうな思いもしなかったし、家族に会えない絶望も抱かなかったのにと思ってしまう。


「それと、これが一番の問題点なのだけれど、虫系モンスターを収納しているのって、そこにいるスライムでしょう? 一応私達が契約しているスライムは、アイオーン様の命で秘密になっているのよ。

 そんなスライムからモンスターを取り出したら、そのスライムは何だって事になるじゃない」


 実はアイリーンやザック達が契約している8-10スライムは、アイオーンの命令で他言無用となっている。

 その理由は、たった100匹しかいない8-10スライムなので、誰か1人が纏めて所有しない様にするためだ。

 単体の8-10スライムですら、現状100匹しか存在しないのでレア度が高く、さらに異世界コンビニに行けるとなると、その利用価値を見いだして独占しようとする輩が存在するかもしれないからだ。


 故に、王様を始めとした8-10スライムを所持している面々は、8-10スライムを所持していても、それを他人に話した事はない。


 現状唯一教皇のみが職権濫用で8-10スライムを所有する事が出来たが、その時に携わっていた面々は、アイオーンが自ら出向いてお願いという名の脅しをしている。


「あっ、確かにそうですよね。……それじゃあ、この中のどうしよう」

「手持ちの袋か何かに入れておきなさいよ。その間、御者のおじさんは私が見たてあげる」


 これと言ってサーナを撫でるザックであったが、アイリーンはウインク付きで自信満々に言うと、御者のおじさんの元に向かった。


「おじ様〜。王都まで、あとどれくらいかしらぁ〜」

「あっあと、はっ半刻く、くらいだべ」


 色っぽく艶っぽく熱っぽい、色気を感じる声音で御者のおじさんに語りかけるアイリーンに、おじさんは可哀想なくらいに挙動不審になった。


 アイリーンの色気に夢中になり、楽しそうに会話をしている2人。

 その間にザックは2人に背を向けて、アイテムポーアから麻袋を取り出すと、サーナをその中に入れた。


「サーナ。モスキィーを10匹出してくれ」

「サナッ」


 ザックの命令を聞いたサーナは、ブルルンと大きく揺れると、その揺れに合わせる様に次々とモスキィーの死骸を袋の中に出していく。


「サナッ!」


 ブルルンブルルンと揺れていたサーナが止まると、袋の中はモスキィーの死骸で一杯になった。


「良し。ありがとうな、サーナ」

「サナー!」


 麻袋の中からサーナを取り出したザックは、感謝と共にサーナの頭を撫でてお礼を告げると、キュと麻袋の口を閉めてベルトの空いている所に結ぶ。


「今まではこのアイテムポーチでも大丈夫だったっすけど、今後は大きめのリュックも持っていた方が良いかもっすねぇ。それか高いけれど魔法のポーチでも買っちゃうかなー」

「終わったかしら?」


 現状の装備に不満を感じたザックがそう言い終わるのと同時に、アイリーンが戻って来た。


「はい! 姐さん。ありがとうっす」

「ふふ。よろしくてよ。そうそう、王都まではあと四半刻の半分だそうよ」

「おっ、ならあともうちょいっすね!」


 御者のおじさんから聞いた残りの時間をザックにも伝えると、2人は王都に到着するまでの間、この後の事について話し続けた。


「さぁ、お二方。王都に到着しましたよ」


 御者の予想通りの時間で王都に到着した。


「ありがとうねぇ、おじ様」

「いやぁ、こんなべっぴん乗せれたんだ。仕事仲間に自慢出来らぁ」

「うふふ。そんなこと言って〜」


 すっかりとおじさんを魅了したアイリーンは、別れ際まで素晴らしい対応をして、またアイリーンのファンを作り出すと、ザックを伴って冒険者ギルドまで向かった。


「さぁ、サッサとモンスターを換金して、お詫びの品を買って、早く家族に会いに行かないとね」


 冒険者ギルドに向かう道中で、アイリーンが微笑みながら言う。


「そうっすね。きっと母さんもサーナも、心配していると思うっす」

「ついでに、私に対してのお詫びの品を買ってくれても良いのよ?」


 今もザックの帰りを待ちわびているだろう2人を思い、力強く頷いたザックに対し、アイリーンは茶目っ気を込めてそう言うと、ザックは破顔して肯定した。


「あはは。ここまでお世話になったんすから勿論っすよ。ただし、お金の範囲内でなら奢ります」

「あら、ちょっとはしっかりして来たかしら?」

「昨日と今日で、だいぶ揉まれたっすからね!」

今回の小話

御者A「聞いてくれべさ。今日の朝、すんげぇ別嬪さんを乗せたんだよ!あんりゃあ女神様だったべ」

御者C〜F「へっ、そんな女子居るわけねぇべさ!」

御者B「……お前ぇさが言うのは、こんな髪のこんな服のこんなボインじゃなかったか?」

御者A「それだべ。それだべ!んでパッチリお目目のプルルン唇で、かぁーー!エロっぺえ姉ちゃんだったぞ!」

御者C〜F(なっなんだと!)


再びアイリーンが乗車しないかと、1週間ほど御者のおっちゃん達がソワソワしたとか、しないとか。

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