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第42話 ザック回想記。その1

予告を詐欺りました。

ブックマーク、感想、評価ありがとうございます。

 ザックが再びコンビニにやって来たのは、傷だらけでやって来た日から、2日目の事だった。


『テロンテロン。テロンテロン』


 今日も今日とてルーチンをこなしていたら、店内ベルが鳴ると同時に、入り口にある店内マットにザックがいた。


「……こんにちは」

「いらっしゃいませ。てかザック、どうかしたのか? 暗いぞ?」


 ちょうど雑誌の品出しをしていて、入り口近くにいた俺はザックの元へと向かってみると、ザックは別れた日よりもゲッソリとした顔をしていて、ちょっと目が虚になっている。


「あっ、蒼。聞いてくださいよ。それがですねーー」

「ふむ。何やら深刻な話のようだが、一先ず先にアレをくれぬか?」

「……王様」

「えっ? ふぇっ! 王様!?」


 ゲッソリとした原因をザックが話そうとした瞬間に、王様が割り込んで俺に手を差し出して、アレをご所望される。

 もちろん王様が言うアレとはエロ本の事であり、雑誌担当者が来た瞬間からそわそわし始めて、俺が雑誌の品出しをしている後ろを、ずっと付いて来てうざかった王様は、九死に一生を経たザックのその後の話よりも、いま目の前にある納品された雑誌の山の中にある、エロ本の方が大事なのだそうだ。


「えええぇっ!? 本物? えっこれ本物なの?」


 自分の国の王様が目の前にいる自体に慌てふためくザックには目もくれず、ずっと俺の前に手を差し出してエロ本を所望する王様に、俺はそのブレない王様の態度に若干の尊敬と、多大な呆れを感じてしまった。


「ザック、落ち着いて話を聞きたいから、ここではなくて向こうで話を聞こう」


 立ち話もなんだし、俺が作業中に他の事も一緒に出来ない性分なので、ザックの話はイートインで話そうと提案をし、ついでに「まだか? ここに入っているのがエロ本ではないのか?」とうるさかった王様も、イートインへと向かってほしい。


「それじゃあ王様も、うろちょろと邪魔なのであっちで待っていてください。陳列が終わったら呼ぶので」

「なんと殺生な!」

「いや、ここで買ってもすぐに読めないじゃないですか」


 この世の終わりの様な顔をした王様であったが、すぐに買ってもここで読むのを禁止しているのだから、10分くらい静かに待ってて欲しい。


「それはそうだが。だが、一刻も早くエロ本を手にしたいではないか!」

「……うわぁ」

「えっ? エロ本って言った? いま王様がエロ本ってーー」


 王様の王らしからぬ発言に、ザックは目を白黒させているが、残念ながらここでの王様はこれが平常運転なので、早めに慣れて欲しい。

 ついでに、この対処法も覚えてもらうために、ストッパーを呼ぶ。


「宰相さーん。教皇様ー。王様が仕事の邪魔してきまーす」


 王様と共にやって来ていた宰相さんと教皇様を呼ぶと、2人はすぐに来てくれた。


「はぁ。全くあなたは」

「ハッハッハッ! このエロ親父め!」


 宰相さんは冷めた目で、教皇様は高笑いしながら現れて、王様の首根っこを掴んだ教皇様に引き摺られながら、イートインへと回収していった。


「さぁ、ザックもイートインへ。俺はまだこれが残っているけれど、10分くらいで終わるから。その間買い物しててもいいぞ?」

「あっ、うぇ。宰相? 教皇? うぇ!?」


 これ。と言って雑誌の残りを指差すが、一度に三人もお偉いさんと会ったザックは、完全に混乱しているようで、俺と、イートインに向かったお偉いさん三人を交互に見る。


「前に説明があっただろ?」

「ハッ! 確かにそんな話を聞いたような……。あれって本当の事だったんですね」


 どうやらここの説明を受けた時のザックは、話の半分は冗談だと思っていたようで、実際に王様達を見た事で、やっとアイリーン達の話が真実なのだと納得し、うんうんと頷きながら、宰相さんに小言を言われている王様達を見つめた。


「いや、それにしても王様がエロ本とか……」

「いやな、ここだけの話。王様の奥さんが恐妻らしくてさ。色々あるらしいよ」


 ザックは王様を見つめて呆れたように呟いたので、ここだけの話として、その原因もポロリと話すと、ザックは困った様な顔をした。


「ははっ。それは……聞きたくなかったっすね」

「まぁ最近は夫婦仲は円満みたいだけどな」



 ○


「それじゃあ、ザック。どうぞ」

「ウッス」


 その後、雑誌の陳列が終わったので俺に呼ばれて、ホクホク顔でエロ本を買った王様と、和菓子ミックスを5袋買って、1袋目の半分を食い尽くした宰相さん。同じ過ちをしないように、チビチビとお酒とあたりめを嗜んでいる教皇様に、ザックのこれまでの話を説明した俺は、やつれているザックに話を振った。


「それじゃあ簡単に、向こうに帰った後から話すっす」


 それは俺も知りたい事だったので、ザックに頷いて続きを促した。


「向こうに帰った時は、まだ日があったので先に寝床を確保しに向かいました」


 そうしてザックは、異世界に戻った話を始めた。


 ザックはスライムのサーナと共に、ザックがサーナと契約をした場所に戻った時、そこには数え切れないほどにいた、蚊に類似したモンスターである『モスキィー』の姿は無かったそうだ。


 だが、今は居なくなっていても、再び何処からかやって来る可能性と、もう日が暮れそうになっていたので、急いで王都には帰らずに、安全な寝床探しを開始したらしい。


 そして少しすると、風除けに良さそうな倒木と、適度に開けた場所があったので、その倒木を背にして眠ることに決めたザックは、明かりと暖取り用の焚火を準備する為に落ち葉や枝を拾い集め、早速コンビニで買ったライターで火をおこすと、何処からともなくあの音が聞こえたそうだ。


「げっ! もう来たんすか? じゃあアレだ。蚊取り蚊取り」


 遠くから聞こえていたモスキィーの羽音がだんだんと増えて、ザックの方へ集まって来るのが分かったので、急いで蚊取り線香を取り出し、その内の2つに火を付けて煙が出るのを確認すると、ザックから1メートルほど離れた場所に設置をした。


 なぜ2つの蚊取り線香を使ったのかといえば、1つだと煙が風によって流されると考えたからだそうだ。

 本当はザックの四方を囲む形で、蚊取り線香を設置をしようかと思ったそうだが、それよりも先に、数メートルまで接近した蚊が、ボトッ、ボトッと、突然と次々と落ちるのを見たザックは、2つでも充分だと思ったからだそうだ。


 その後、日が暮れたので軽い夕飯をとったザックは、虫の羽音を気にしつつも明日の事を祈りながら早々に眠ったのだが、ここで思わぬ事が起きたそうだ。


「うわっ。キモっ」


 次の日。日の光を感じて起きたザックの周りには、無数の虫の死骸がザックを中心に、綺麗な円形の形であったのだという。


 時折ピクピクと動く虫の足を眺めながら、コロッケパンとサラダを食べたザックは、コロッケパンの美味しさに感動したり、肉じゃないけど肉にも劣らない美味さの、サラダの上に乗っかっているシーチキンに感動したりして、サーナに少し分けたりしながらも、満足な朝食を取った。


 その後、辺り一面にある虫の死骸に引き攣る頬をひと叩きして、目の前にある無数の虫の死体を、一体一体トドメを刺す作業を開始した。


「おっ、終わった」


 朝の涼しい時間帯にもかかわらず、じっとりと汗をかくほどに大量にあった虫の死骸を処理したザックは、サーナに全てを取り込ませると、王都にいるアイリーンが所持しているスライムの、キッシュの場所をサーナに探させた。


「キッシュはどっちだ?」

「サナー!」


 キッシュの場所を探したサーナの指差す……この場合は、触手指す方へとザックはサーナを肩に乗せながら向かった。


 一直線でキッシュの方へと向かう事になるが、森を抜けさえすればザックでもどうにかなるので、サーナが示す通りに進んで行く。


 夜から朝にかけて、大量の虫が集まっていたせいか森と平原の切り目に差し掛かるまで、モンスターと遭遇せずに無事にたどり着いたザックは、森の入り口にいる1人の女性、しかも昨日知り合ったばかりの女性がザックの元まで来るのを、ただ黙って眺めていた。


「あっ、貴女は!」

「こんにちはザック。無事に戻ってこれたようで良かったわ」


 そう、ザックの目の前には、にこやかに微笑むアイリーンがいたのである。

この話からザック回です。

どこまで続くのか分かりませんが、時系列的にはコンビニから帰ってからの、異世界での話。


今回の小話

朝食後30分後の話。


ザ「やっぱり蒼の言う通りに、水買っておいて良かったー! 見てよこれ。虫の体液でナイフがベッタベタなんだけど」

サ「さなぁー」

うわっ汚い。こっち向けるなな顔

ザ「だよなぁ。はぁ、まだあるからナイフ洗ってもういっちょ頑張りますか」


次回予告

「ザック回想記。その2」

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