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第35話 プリン大会勃発

ブックマーク、感想、評価ありがとうございます。


 1週間の出禁が解禁となり、久しぶりに王様を含めた面子で楽しく語らっているのを、背中で感じながら仕事をしていたら、「一応、蒼が発端なので」と宰相さんに呼ばれた俺は、何だろうと思いながら王様達がいるテーブルへと向かった。


「結局、王国全てにプリンのレシピを公開して、『新レシピ、プリン大会』として、王主催で開催する事態になりました」


 甘栗をポイポイと口に放り込みながら、宰相さんはそのように言ったが、軽い気持ちで教えたプリンのレシピが、何故か王主催のデザート対決にまで発展していた。

 何故だ? 何故こうなった?


「それにしても、この甘栗と言う木の実。美味しいですね。ついつい、手が勝手に動いてしまいます」

「……此奴、今食べている分で、さっきの大袋2つが空になるのだぞ。信じられるか、蒼? 見ているこっちが腹一杯になる」


 王様によると、中身が無くなった甘栗の大袋は2つあり、今宰相さんが食べているのがちょうど2つ目の大袋、最期の1つの様で、これを食べたら小袋8つ分を食べた事になるそうだ。

 ここのコンビニでは、甘栗は大袋と小袋が売られていて、甘栗の小袋が4つ入ったのが大袋として売られている。

 どうやら甘栗は宰相さんのお眼鏡にかなった様だが、相変わらず甘味だけはよく食う人だ。


「それにしても。昨日の今日で、随分と大事になりましたね」


 2日前にプリンの存在を教え、昨日プリンの作り方を動画で教え、オーソドックスな作り方を紙に書いて渡したら、何故か今日になってそんな報告をされた俺は、こんな事になるとは想像もしていなかった。

 本当に、何故ここまで大事になった!


「私が城の料理長に、あちらの世界で本当にプリンを作れるのかどうかの実験も兼ねて、プリンのレシピを渡して試してみたのです。

 もちろん、最初はこのレシピはどうしたのだと言われましたので、蒼の提案に乗ってアイオーン様から頂いたものとして話を進めました」


 実はレシピを教える際に、発案者が誰かで揉めるのではないかと話をしていたのだ。

 どうもこのプリンの作り方は、異世界基準で考えると突拍子のないやり方らしいので、宰相さんやアイリーンから広まった際に、細かい説明は2人には出来ないし、レシピを教えた俺は異世界へと渡る事は出来ないので、俺達の代わりとして、アイオーンに身代わりを頼んだのである。

 こういう時に、身分が神であるアイオーンは便利だ。


「その後、一応見た目はプリンっぽくは完成したので、その出来た分を上層部にも食べてみてもらったところ、食べた全員から大好評を得てしまいまして、プリンの作り方をせがまれたのです」

「それでな、この時に儂も食べたのだが、儂はピーンときた。このプリンと言うのは、異世界コンビニにある商品に違いないと!」


 出禁中だった王様は、当然の事ながらプリンの試食会に居たようで、プリンを一口食べた瞬間に、プリンの出所を察知したらしい。


「それで私の元に王がやって来て、ここで買ったバリエーションが豊富なプリンを見せたところ、王主催のプリン大会になったのです」


 なんでも、プリンはプリンでもコンビニで買ったプリンは、商品毎に味や食感に違いがあり、さらに材料も、平民が手が出せないほど高い食材は使われていないと分かったので、王国全ての住民に、一斉にプリンのレシピを公開する事にしたのだそうだ。


 それが何故、プリン大会にまで発展したのかと言えば、コンビニで売られているプリンに触発されて、プリン大会を開催すれば、向こうでも多種多様のプリンが作られるのではないか? と言う考えからだそうだが、実際の所、王様が色々なプリンを食べたいと思っているのではないのか? と、俺は考えている。

 だって、それぞれのプリンを一口だけ味見をした王様が、もう一口と宰相さんにお願いしたが、一口もくれないケチな奴だったって愚痴ってますもん。


「儂はそこまで甘い物は好いておらんが、若いシスターと子供達が張り切っておるようでな、再来月を楽しみにしておったわ」


 一方で、教皇様自身はそこまでプリンに興味は無さそうだったが、プリンのレシピが教会まで広まったところ、張り切ったシスターと孤児達が盛り上がり、毎日の晩餐のデザートがほぼプリンになってしまったと、プリンのレシピを広げた宰相さんと王様を睨みつけた。


 睨まれた宰相さんは、私のせいではないと言うように王様の方を見て、2人から睨まれた王様は、そそそっと目線を明後日の方に向けた。


「にしても、大会って再来月なんだ」


 突然決まった事だから、結構早い時期に開催されるのかと思ったら、2ヶ月も先の話だった。

 俺、その時まで覚えていられる自信が無いぞ。


「えぇ。なんせ王国は広いですからね。来月までが参加の締め切りで、再来月からは予選を含めた大会にする予定です」


 昨日決まった事なので、まだ詳しい大会の内容は細かい所まで決まっていないが、参加募集締め切りである来月の月末までには、細かい大会の内容を決めるのだそうだ。


 何でも、貴族経由で各領地の民にレシピを公開して、そこから練習期間や王都へやってくるまでの準備期間を考えると、どうしても1月半は開催までの準備期間にしないと、地方の民は参加出来ないらしいのだ。


「おかげで仕事がてんこ盛りですよ」

「何だ? 大会にはお主も審査員として参加させる予定だぞ?」

「では、仕方ありません。張り切りましょう」


 そう愚痴をこぼした宰相さんであったが、王様から言外に、「プリンをいっぱい食べれるぞ」と言われた宰相さんは、速攻で前言撤回して張り切りだした。


「僕もこのレシピの発案者として、大会の審査員で出るんだ! 美味しいプリンがあったら、持って来てあげるね」

「おっ、サンキュ!」


 アイオーンもレシピ原案者として、大会に参加するらしい。

 今から楽しみだと話していると、店内ベルが鳴る。


『テロンテロン。テロンテロン』


「蒼〜〜! まだプリンって余っているかしら〜〜!」


 アイリーンが店内へとやって来ると、慌てた様に俺を探して駆け寄った。


「いらっしゃい。アイリーン。今日は宰相さんはプリン以外を買ったから、いっぱいあるぞ」

「それは良かったわ!」


 そう言って買い物カゴを手にしたアイリーンは、早速売り場へと駆け出したのだが、すぐに戻って来て王様達を前に、スカートの両端を持ち上げて軽く膝を曲げる。


「尊き方々を前に、お見苦しい姿を晒し、申し訳ありませんでした。(わたくし)アイリーンと申します。以後、よしなに」


 前に話に出ていた事をアイリーンは覚えていたようで、若干顔色が優れない様子であったが、心の準備があったのか、堂々と優雅な美しい所作だった。


「何、気にするでない。アイリーンよ。もうそなたの所にも、プリン大会の事が広まったと言うとこだろう」

「王様の言う通りにございます」

「ならば顔を上げたまえ。どうせ、先の行動も、ここのプリンを参考にしようと思いたったが、ヴォルフが根こそぎ買い占めると思って焦っていたのだろう」


 ウンウンと頭を上下に動かして、先ほどのアイリーンの行動理由を察知した王様は、「分かる。分かるぞ」と言うと、アイリーンを暫し見上げる。


「……ふむ。アイリーンに時間があるならば、民がどこまでこの大会を期待しているのか、聞かせてもらおうではないか。それに、男だらけのこの場にやっと華がやって来たのだから、暫し儂らに付き合え」

「……王様さ、鼻の下伸びてるぞ」

「おっといけない」


 アイリーンの美貌と、同じ目線の高さにある豊満な胸に釘付けとなり、だらしなく緩んだ顔になった王様に突っ込むと、キリッとした顔に戻りはしたが、これまで聞いていた王様の話と、今の王様の態度を見たアイリーンから、笑みがこぼれた。


「ふふ。王様ってば、噂通りのお人なのですね。では、お言葉に甘えてお邪魔致します」


 持っていたカゴを元に戻し、その間に王様達が席を詰めて空いたスペースに、自分が座る用のイスを持ってきて座ると、早速平民が今回の大会においてどう思っているのかを、一平民として話しだした。


今回の小話


王「おいこら、ちょっと待て。儂の噂とはどういう事だ」

ア(あっ、いけない。ついぽろっと)

教「何だ? こいつは何かやらかしたのか?」

王「おいおい。儂が毎回やらかしている様に言うでないわ」

宰、蒼、ア神『いや、そのやらかした事で盛り上がりました』

王「……あああぁぁぁぁ! 王としての威厳がぁぁぁぁぁ」

蒼「それだよ。それ」


次回予告

「虫が出る季節になりました」

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