第29話 女の嗜み
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異世界から初めての女性客であるアイリーンは自己紹介を終えると、口角を上げてニコリと微笑みを浮かべた。
その時に、褐色の胸元まであるストレートの髪を、サラリと耳に掛ける。
それだけの仕草なのに、絵になるような美しさだ。
それに、100人中98人は色っぽい美人と答えるであろうアイリーンに微笑まれている俺は、サッと目を逸らしてドキドキと高鳴っている胸を摩る。
「……よろしく。俺は東蒼。このコンビニの店員だ。それと、アイオーンからここについてのこととかを聞いたと思うが、分からないことがあったら聞いて」
何とか平静を装って声を出してみたものの、微妙に上擦っている様に聞こえたが大丈夫だろうか? 気付かれてないよな?
「えぇ。ありがとう。けれど、何もかも初めて見たものだから、分からないことだらけで困っちゃうわね」
アイリーンは視線を上下左右に動かして店内を見たが、自分の常識外の事態に戸惑っているようで、片手を頬に当てて困ったように笑う。
それと同時に初めて見る物に興味を持っているようで、困ってはいるものの店内を物色している様から、関心は強いようだ。
「だろうなぁ。そっちからしたら、ここは何もかもが初めて尽くしだろうからな」
「そうなんだよぉ〜! ここにある全てのものが初めて見る物ばかりだからさ、新鮮で新鮮で楽しいんだー!」
「はいはい」
心底楽しそうに言うアイオーンの頭をポンポンと叩き、アイリーンの方を向く。
「まぁ、気になる物があったら俺でもいいし、アイオーンにでも聞いてよ」
「うん! 僕に任せてよ!」
俺に指名されたアイオーンは、胸を軽く叩いて自信満々に言う。
アイオーンはほぼ毎日来店しているおかげで、殆どの商品を把握していると言っても過言では無いので、商品の説明係には適任なのである。
「うふふ。ありがとうございます。アイオーン様。……それで、さっきから気になっていたのだけど、蒼は私じゃなくてどこを見てるの? なんか私を見る度に目線を逸らすわよね?」
「うぐっ」
アイリーンは揶揄う様な表情を浮かべながら俺を見上げ、俺がなんて答えるか楽しそうに待っている。
実は先程からアイリーンの方を見ないように、必死に視線を逸らしていたので、図星を刺された俺は返答に困った。
先ほども言ったように、アイリーンは美人さんで色っぽいのだ。
さらにアイリーンは日本でも見かける、ドイツの祭りであるオクトーバーフェストで、女性の給仕が着ているような衣装っぽい服装をしている。
その衣装の特徴としては、大胆に胸元が開いているのだ。
そこにギュギュッと男の夢とロマンである、おっ……いや、胸の谷間がハッキリと分かるほどの巨乳が詰まっているのである。
それに田舎に来てから出会う家族以外の女性陣は、パートのおばちゃん達やバイトの子達ばかりなので、ここまで性に直結しそうな女性を見るのは初めてだ。
むしろ、俺が今まで出会った女性達と比べるのが烏滸がましいと言われるほどの破壊力を、アイリーンは持っているのである。
そんなアイリーンを見ようとすると、ついつい目線が胸元に行ってしまうほどに刺激が強すぎるので、気を付けて視線を逸らしていたのだ。
こんな美人に、キモいやら変態だなんだは言われたくは無い。
「いや、その。俺にはそれが目の毒というか。いや、ご褒美でもあるんだけど」
「あぁ! これのこと?」
ちらりと視線を谷間に向けて、『それ』と指を差して示せば、アイリーンは両手で胸を持つとプルンプルンと揺らす。
「あわわわ!? ご馳走様です」
もう言葉にもできないほどにプルンプルンと揺れる胸に俺は思わず合掌してしまったが、アイリーンはそんな俺の行動を平然と受け止めると、自分の胸を揉み揉みしながら言う。
「うふふん。好きに見てよろしくてよ。けど、こっちの世界の男性も胸は好きなのね。まぁ、私はそれを売っているんだけど」
「ん? 売っている?」
「そう。私、【春の訪れ】って言う娼館で働いているのよ。それで、お客の一人に、これは絶対に高価な物だからって言われてスライムをプレゼントされたの」
「キシュー!」
「それがこの子。キッシュって名前を付けたの。それでこんなことになっているんだもの。人生何があるか分からないわね」
そう言って笑うアイリーンが、やけに色っぽい理由が判明した。
それに、聞くところによるとアイリーンが働いているところは所謂高級娼館であるらしく、男達に春を売っていると言ってもアイリーンは女神と言われるほどの娼婦で、かなりのお金と客の信頼性が無いとなかなか体を売らないらしい。
そのアイリーンの足元では、8-10スライムのアイリーン専用キッシュが、フンスフンスと上下運動をしている。まるで、どうです? 自分は凄いでしょう! とアイリーンにアピールしているように見えて微笑ましい。
それをアイリーンはヒョイっと拾うと、自分の豊満な胸にぽちゃんと置いた。
「わお」
まさかのスライムの扱いにびっくりだ。
良いなキッシュ。是非ともそこと交換して頂きたいほどに、羨ましいポジションである。
「それでアイリーンはさ、お金は持っているのかい? ここではさっき説明した通り、僕達の世界のお金をこっちの世界のお金に変えないといけないんだ。それに、お金がないと何も買えないんだよ。もし無いんだったら一旦戻ってからまた来るといいよ」
一緒にアイリーンの話を聞いていたアイオーンは、自身の失敗談を元にした注意をアイリーンに説明をする。
「そうだな。アイオーンの二の舞になるな」
「もう! あの日以降ちゃんとお金持ってきてるでしょ!」
あの日とは、アイオーンが初めてここに来た日のことで、あの時は少しお金が足りなくて俺が不足分を出したのだ。
「そうだったわね。でも大丈夫よ。ほら、ここにあるから」
「ちょっ! 何処から出したんだよ!」
アイリーンの手には小さい銀貨が2枚あるのでお金の心配は無くなったが、銀貨を入れていた場所に度肝を抜かれた。
「何処って貴方が好きなここよ。こ・こ」
前屈みになり、俺が見やすい場所に胸の谷間を持って来たアイリーン。たがしかし、その谷間にはキッシュが鎮座している。残念!
「二次元以外で初めて見たわ」
そう、アイリーンは胸の谷間から銀貨を取り出したのだ。
谷間にはキッシュが乗っているのだがそれを片側に移動させると、左腕で両乳を持ち上げて右手を谷間に突っ込んで銀貨を取り出したのだ。
「こんなの女の嗜みよ。誰だってやっているわ。こうでもしないとお金取られちゃうもの」
アイリーンが言うには、アイリーン達の世界ではスリなどのコソ泥が存在しているため、財布とは別にお金を隠し持っているのは常識なのだそうだ。
しかもたちが悪いことに、スリを働く人の中にはスリに特化したスキルを持っている者が存在しているため、気付かれずに盗まれることが多いらしい。
「へぇ。正確には服の裏にポケットを作ってあるのか」
その証拠にと、アイリーンは靴の中やスカートの裏に隠し持っている硬貨を見せてくれた。
「そうよ。新しい服を買ったら内側にポケットを作るのは、私達の常識よ。流石に服の中に手を入れる馬鹿はいないからね」
「ふんふん。確かにそうだね。男物の服だとこうはいかないけれど、女物だったら盗む時に難航しそうだね」
一緒にアイリーンの話を聞いていたアイオーンは、凄い凄いとアイリーンを褒める。
「うふふん、これは女の知恵よ! それで、とりあえずは店内を一周してきて良いかしら? せっかく来たんだもの。何が売ってあるのか気になっていたのよ」
「あぁ、分かった。それじゃあ俺も仕事に戻るから、何かあったら呼んで」
「えぇ。うふふん。お買い物〜。おっ買い物〜!」
足取り軽く俺達から離れたアイリーンは、テンション高く店内の商品を1つ1つ手に取って見ているので、俺もその場から離れて仕事に戻った。
「じゃあ、僕は牛丼と温玉を買ってリカルド達のところへ行こうーっと!」
「おっ、さっそく俺のオススメを買いますか」
「蒼が昨日食べているのを見て美味しそうだったからね!」
今月は週一更新になりそうです。
理由→地上波で見たいと思う映画が多い
例
「とある魔術の」
「斉木楠雄の」
「三度目の」
「海賊と」
とかとか。
今回の溢れ話
ア神「ねぇねぇ。それ何を食べているの?」
蒼「あっ? 牛丼だけど?」
ア神「ふーん」ジーーーー
蒼「えっ? 何、食べたいのか?」
ア神「うーーーん。いや、明日買ってみて食べてみるよ!」
蒼「そか。これに温玉乗っけるのが俺のおすすめだから、やってみろよ」
ア神「分かったんだよ! 明日やってみるよ!」
次回予告
「分からないのでggr」




