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第27話 高級娼婦のアイリーン(side異世界)

ブックマーク、感想、評価ありがとうございます。


この話は男女関係の内容を含みます。

嫌な人はスルーで!

 日が沈んだ夜空には大きな月、それと星が散りばめられている。

 さらに宿屋などから溢れる窓明りで、王都の大通りは街灯が少ないにも関わらず照らされていた。

 その大通りには今日稼いだ金で酒を飲むんだと意気込む冒険者達や、やっとこさ王都に到着したのでこれから宿に向かう商人達。

 さらに仕事場から家や宿屋に帰る人々が通り、大通りは昼よりは少ないものの人通りはある。

 しかし、その大通りから小道に入った先は宿屋の窓明かりも無くなり、月と星の輝きも建物に邪魔をされて影になっている。


 そんな大通りから小道に入った先にある寄宿舎の一室で、アイリーンは月夜を眺めながらつまらなそうに呟いた。


「ふぅ。今日から10日間もお酒も仕事も出来ないだなんて、暇で暇でしょうがないわ」

「仕方ないわよ。私達は女なんだもの」


 窓辺に腰掛けて溜息を吐きつつ呟いたアイリーンの言葉に、隣の部屋で同じ様に月を見ていた女が答える。


 彼女達はこの王都で高級と言われている娼館の娼婦達で、本来この時間であれば娼館で男達と楽しくお酒を飲んだり、指名されて追加料金を払うなら性的な相手をしているのだが、彼女達はとある理由によりその仕事を休みになっている。


「あら? でもリズは今日で終わりでしょう?」

「まぁね。だから明日からは馬鹿な男達を相手しなきゃ」


 男を下に見るような発言をしたリズは心底めんどくさそうにそう言ったが、仕事場ではそんな素振りも見せずに男達を手玉に取っていることをアイリーンは知っている。


 何せ10年の付き合いなのだから、好みの食べ物から男のタイプ、さらには得意な体位や好きな性行為までも知っている仕事仲間であると、アイリーンは認識している。


「えーー。でもいいなぁ、私月のものよりも男相手にしている方がいいわぁー」

「あぁー、アイリーンのは重いものね」

「本当よ。この10日は苦痛よ苦痛!」


 アイリーンが嫌々仕事を休んでいる理由は、毎月来る女性特有の症状で、この時期になると上から仕事を休むようにと言われている。

 アイリーンが働いている高級娼館では、娼婦達の待遇は他の娼館よりも良いのだが、それに比例して娼館で働く娼婦達に求めるスキルも高い。

 特に話術を含む接客術、立ち居振る舞い、性行為などで、娼館が求めるランクに達していないと門前払いにされてしまうほどである。





 そんな中、アイリーンがこの娼館に来たのが15歳の時で、元々は違う娼館の下働きをしていた。


 アイリーンの母がその娼館に勤めていたために、生まれてから4〜5歳までは他の娼婦が産んだ子供達と一緒に育てられて、それ以降からは娼館の下働きをさせられていた。

 主な仕事内容は娼婦達の身の回りの手伝いや部屋の掃除、客である男が来たら荷物持ちや部屋で待っている女の元に送り届けたり、時たま指名した娼婦が遅れる時などの話し相手になったりと、こうやって幼い時から働かせることで、客に目通りを済ませて成人したら直ぐに客の注文が取れるようなシステムであった。


 故に、アイリーンも男達からの下卑た目線に晒されながら働いていたが、アイリーンは賢かった。

 どのように相手をすれば男達が喜ぶのか、どのようにすれば安い女だと思われずにすむのかを、他の娼婦達を見て考え学んで実践した結果、アイリーンの初めての相手になりたい男達が殺到する事態になったのである。


 しかし、アイリーンが14歳の時。ここで転機が起こった。


「君が噂の娼婦見習いか」

「ーーっ!?」


 娼館の一階でいつもの様に働いていたアイリーンの元に、20代後半の男が話しかけた。

 アイリーンは振り返り声をかけた男を見たのだが、その男を見た瞬間に固まった。


 この辺りでは見慣れない整った顔立ちに、薄紫色で観察されているようにアイリーンを見る瞳。スラリと細身だけれどしっかりと鍛え上げられている肉体に、男性では長めな紫紺色の髪を1つに束ねて左肩から垂らさせている。

 男が身に纏っている服なども、上等な物だとすぐに分かる。


(この人……。今の私だと満足させられるか微妙なところね)


 声をかけてきた男を一瞬で上から下までちらりと見たアイリーンが思ったこの男の第一印象は、男の尊厳を尊重して見せれば単純に喜ぶ他の客とは違い、一枚も二枚も上手であると感じさせる雰囲気に、あまり長く一緒に居たくないと思わせる相手。であった。


「ふぅん見目は悪くないようだし、君の仕事ぶりを見ていた限りでの所作も平民の割には綺麗だ。あとは君が成人した後の性技をどれだけ物に出来るかだが……。君、私の店で働かないか? ここの待遇より良い場所を提供しよう」

「えっ?」

「私はアレクサンドロ。【春の訪れ】と言う娼館を束ねている。私の物になれ」


 突然勧誘されたことに驚いたアイリーンだったが、直ぐに笑顔を浮かべると男に謝罪した。


「誠に申し訳ありませんお客様。私は既に高額の予約を受けております」


 アイリーンが言うように、アイリーンの初めての相手になりたい男達がその権利を競い合い、今では大金貨2枚にまで競り上がっているのである。

 アイリーンが成人になる前日まで、つまり今日までに1番高値を付けた人が権利を持つことが出来て、現在は大商会のオーナーが1番高値を付けている。


 ここでの硬貨の種類は12種類で、銅貨、銀貨、金貨、白金貨となっていて、さらにそれぞれが大、中、小と分かれている。

 小から中、中から大に繰り上がるには5枚の硬貨が必要で、1つ上の硬貨に上がる場合は10枚の硬貨が必要となる。


 一般的に平民が1日に稼ぐのが小銀貨1〜3枚であり、宿屋で一泊する場合は1日で大銅貨5枚から小銀貨1枚。

 アイリーンが働いているこの娼館で女を買う場合は、中銀貨〜大銀貨が必要となるので、アイリーンに掛けられている初夜の権利が如何に高いかが分かる。


「あぁ。それなら私が君に大金貨10枚を掛けられる。君が直ぐに私の元に来れるのならば、この金額を今直ぐ払う準備は出来ている。どうだ? 私の元で働かないか?」


 そう言って握手を求めるように差し出される手を見たアイリーンは好戦的に微笑んだ。

 この男から見て、ポンと大金貨10枚を出せるほどに自分の価値が高いと評価してくれたことを嬉しく思うのと同時に、この男の元でなら自分は違う世界を見ることが出来るかもしれない期待を胸に、差し出された手を取った。


「そこまで期待されたのならば、私は貴方の期待を裏切らない存在になってみせるわ」

「よろしい。では、これからよろしく頼む。アイリーン」





 この出会いから10年の月日が経った現在、アイリーンは【春の訪れ】の高級娼婦へとなっていた。

 この10年で、元々美しくなると言われていたアイリーンは、25歳となって女性が羨む美貌と肉体を手に入れていた。

 その中でもアイリーンは、【春の訪れ】の中でそれぞれに特化した技能を持つ娼婦の称号である、女神と言われる存在になっており、他の娼婦達の羨望を受けている。

 その中でアイリーンは、接客術の高さから対人の女神と言われている。

 女神の称号は他にも、性の女神、舞の女神、常勝の女神、とアイリーンを含めて4人の娼婦が女神の称号を持っている。


「そうそう聞いたわよ。アイリーン。昨日の客から変なプレゼントされたんだって?」

「そうなのよーー。お金は持っていた人なんだけどさ、何かこのスライムは絶対に高価な物だから、君にプレゼントするよって渡されたのよ? 信じられる?」

「いやー。変な人ーー! スライムなんかプレゼントするんだったら、宝石の1つでもくれって話よ!」

「本当よねー。何でスライムなんかーー」


 その時、扉を叩く音がして2人の会話が途切れる。


「アイリーン。明日から必要な物を聞きにやって来た」

「はい。今すぐ開けますわ。アレクサンドロ様」


 扉の前に立っていたのはアレクサンドロだ。


「体調は大丈夫か? それで、今月もいつも通りかな?」

「ええ。まだ大丈夫です。物については、本当はお酒も頼みたいのですけれど、飲むとさらに重くなってしまうので諦めます。それ以外はいつも通りで大丈夫ですわ」

「そうか、あまり無理はしないように。お休み。アイリーン」

「はい。お休みなさいませ。アレクサンドロ様」


 扉が閉まった瞬間に、アイリーンはベットへと飛び込みジタバタと身悶えた。


(今日もアレクサンドロ様は素敵だったな。見目は良いしお金も持っているし、それに……客とやるよりも断然アレクサンドロ様の方が気持ちいいのよね。はぁ、またアレクサンドロ様とやりたいな)


 そんなことを考えていると、ぷにんと柔らかい物に当たった。

 例のスライムである。


「そうだった。これ、どうしようかな? うーん。アレクサンドロ様って触手プレイはお好きかしら? そうだったら使い道はあるかもしれないけど。と、なると名前を付けなければならないわね。そうねぇ。キッシュにしましょう! 私の大好物!」


 その日はそのままスライムの名付けを終えるとさっさと寝てしまったアイリーンであったが、いつも起きる時間よりも、早めに何かに叩き起こされて目覚めたアイリーンは驚愕する。


「えっ? 何でスライムが転移魔法を使えるの?」

「キシュー!」

「えぇーー。ちょっと引っ張らないでよー」


 寝惚け眼でまだはっきりと覚醒していないアイリーンを、キッシュと名付けられたスライムが転移ゲートへと誘導して渡らせると、アイリーンは見知らぬ場所へと立っていた。


「あらぁ? ここ、何処かしら?」

「キシュー!」


 そのアイリーンの足元では、8-10スライムのキッシュがやり切ったと満足気の表情であった。

今回のこぼれ話

アイリーン「はぁ、今日もアレクサンドロ様は素敵だったわ!」

リズ「分かる! それすっごく分かる……けど」

ア・リ「物凄い絶倫にアブノーマルプレイ!」

リ「まぁ、私は求められれば何でも嬉しいんだけどね! はぁはぁ」

ア「さすが性の女神」

アレク「おや? 楽しそうですが何の話ですか?」

ア・リ「いや、アレクサンドロ様って絶倫にアブノーマルなプレイですよねって」

アレク「えっ? 私は普通の性癖ですが」

ア・リ「えっ?」

アレク「えっ?」


次回予告

「リカルドお菓子のために頑張る!」


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