第23話 三人集結!
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『テロンテロン。テロンテロン』
「やっほー! 今日も僕がやって来たよー」
「ごきげんよう、蒼。確か今日は、お菓子の新商品が出る日ですよね?」
「今日はどんな娘が……ふぉふぉふぉ」
「おっさん。顔が見せられない顔になっているぞ」
「おっと。それはいけないな」
リカルドが来てから1週間。
今日も今日とて喧しくアイオーンが来店すると、それに続いて宰相さんと王様もやって来た。
この3人はだいたい同じ時間にやって来ることが多い。
「宰相さん。今日はたしか、甘い系は2種類か3種類、商品が出てたな」
「そうですか。それは買わねばなりませんね!」
そう言うと、早速宰相さんはお菓子売り場へと向かって行った。
宰相さんは毎週火曜日になると、テンションが高くソワソワしながら来店してくる。
その理由が、毎週火曜日はお菓子の新商品が出ると教えたからだ。
ちなみに今日見た新商品は、キノコとタケノコの新商品だった気がする。小袋タイプでは無く箱タイプだったから、かなりのキノコとタケノコが宰相さんの腹の中へと消えて、あっという間に無くなるはずだ。
そうそう、俺はキノコ派である。
たとえ戦争になろうとも、俺はここで断言して異論は認める。
キノコ派の理由は、あの軸の部分のサクサクした所が好きだからだが、とりあえず新商品が出たら両方買ってしまうので、どちらかというとキノコ派ということになるのだろう。
と言うわけで、宰相さんが通常のキノコタケノコを買った時に、異世界人にもキノコタケノコ戦争の話をして、どっち派かを聞いてみたところ、宰相さんは美味ければどちらでも良い派で、王様とアイオーンはそこまで興味は無いらしい。
リカルドはそもそも甘い物を普段食べていないことから、どちらも甘くて美味しいキノコとタケノコに優劣を付けられないらしく、うーんうーんと頭を悩ませてしまった。
帰る時などしょんぼりとしながら、「キノコとタケノコ……どっちか決めなきゃダメなの?」と潤んだ瞳で見つめられてしまったので、こんな質問をしてごめんと謝っておいた。
他にも新商品は来ていたが、残念ながらポテチ系の新商品だったので、甘い物好きの宰相さんの眼中には入らない。
『テロンテロン。テロンテロン』
「お兄ちゃん。こんにちは」
そして、アイオーン達が来てから少しするとリカルドがやって来るのだが、今日はその後ろにもう1人連れて来ている様だった。
「ほうほう。これはリカルドが言うように、どれもこれも初めて見る物ばかりではないか!」
白髪で白髭の白いローブを身に付けている、全身白尽くめの筋肉隆々のおっさんがいた。
「あっ! レイセント!」
「えっ? やっぱりレイセントも来たんですか?」
雑誌付近でうろちょろしていた王様は、ちょうど入口が見える通路にいたので、すぐに全身白尽くめのおっさんに気付いた。
そして王様の声に反応して、宰相さんがお菓子売り場の通路からひょっこり顔を覗かせた。
「おーー! コンラート、ヴォルフ。やっほ!」
片手を上げてニカっと笑ったレイセントと呼ばれたおっさんに、王様と宰相さんが近付き手を拳にすると、3人で上下と正面で打ち合う。
どうやら、この3人はだいぶ仲がよろしいらしい。
「ほら、やっぱりこの子が来た辺りからレイセントも来ると思ってました」
「それにしても、随分と遅かったな」
「何だと! それなら2人とももっと早く教えてくれても良かったのではないか? それと、色々と噂になっているぞ」
おっさんらが入口でワイワイとしているが、その足元では背の小さいリカルドが囲まれている状態で、立ち往生している。
それが見えた俺は、リカルドを呼んだ。
「リカルドー。リカルド」
「おとと、何? お兄ちゃん?」
おっさん達の足の柵から出て来る際に躓いてしまったが、トテテと可愛らしく走って来たリカルドに、俺はしゃがみながら白いおっさんを指差して聞いてみた。
「なぁ、リカルド。リカルドはあの白いおじさんのこと知っているのか?」
「ん? 教皇様のこと?」
おっと、きょーこーって教皇って事だよな? って事は、またもやお偉いさんの来店か。
にしても、俺の想像する教会の関係者って感じには見えないな。
どちらかと言えば、騎士とか凄腕の冒険者って言われた方が、ストンと納得する見た目だ。
「はぁ。平凡な俺には、リカルドが心の癒しだよ」
「ん〜?」
リカルドの頭を撫でつつそんなことを呟いても、リカルドには理解出来ていないみたいで、首をかしげる。
そんな俺達に影が差したので上を覗けば、俺を上から覗き込む様に身を屈めている教皇様と目が合った。
「貴様がここの主である坊主か! リカルドがいつも世話になっている。それに、リカルドから話を伺っているぞ」
「どうも。東蒼です」
「これはこれは。儂はレイセント・スターライン。あそこの神の推薦で教皇の職に就いた者だ」
立ち上がって会釈と共に自己紹介をすれば、教皇様は見惚れるほど貫禄のある会釈を交えて返してくれた。
だが、最後の言葉にえっ? と俺は振り向いてしまう。
もちろん精一杯背伸びをしながら、アイスを覗き込んでいるアイオーンをだ。
「あっ、あれの推薦ですか?」
「そうだ。元々騎士見習いとして己を磨いていたのだが、王や権力のある貴族も招かれた卒業式のパーティの時に、アイオーン様が直々に現れて宣言されてしまってな?
宣言されてしまったからには、儂はもう騎士ではなく教皇の道を歩まねばならなくなった。全く困った神だ」
肩を竦めてそう言った教皇様。
「ん? だって、レイセントが教皇になった方が面白そうじゃん?」
こっちの話が聞こえたのかアイオーンが話に混じったが、教皇様の身の上話に俺は同情を禁じ得なかった。
全くもって俺と同じ様な境遇だ。
「それはもう。苦労されたんですね」
「そんな事はない」
「ええ。王の言うとおりですよ?」
俺が教皇様の境遇について同情の言葉をかけた時、それに待ったをかけた人物がいた。
教皇様と仲良しである、王様と宰相さんだ。
「へ?」
即座に否定された展開に、俺が思わず王様と宰相さんの顔を行ったり来たりしながら見れば、2人はお互いの顔を見て頷くと、教皇様のヤンチャエピソードを赤裸々に暴露し始めた。
「元々こやつが騎士になる話は聞いただろう? つまり、腕に自信がある上に神からの推薦を貰った様なものでな。元々権力しか持っていない上層部のアレコレを、こやつは文字通りの肉体言語という武力介入で解決したのだよ」
「それで教皇の地位に就いたかと思えば、今度は新たな法案をポイポイと立案しましてね。リカルドが教会のお世話になっているのは知っていますよね? それもレイセントが立案したものなのです」
それ以外にも、あの時の教皇様はあーだこーだ。あの時だって腕に物を言わせてどうのこうのと話が続いて、もう俺が聞いている意味が有るのか無いのか分からない状態となっている。
「それに、貴方。ここ1週間は至る所で目撃されているではないですか!
私の元に、至る所から報告が来ていたのですよ?」
「もしやお主、アレも使ってスライム探しをいたのではないか?」
「えっ? アレってアレですよね? 仕事を放置して何しているんですか!」
「煩いぞ! じゃから、お前達が最初からスライムのことを儂に話しておれば、儂もこの様な強硬手段なんぞに手を出さなかったわ!
それに、あの時はスピード勝負だったからこそ、子飼いの者達を使ったに過ぎん。
おかげで、1週間もかからずにこのメリルを手に入れられたのだ!」
懐から取り出されたのは、いまはもう見慣れた存在である8-10スライム。
それにしても、教皇様の名付け可愛いな。
「ねぇ。お兄ちゃん」
呆然としながら3人を見ていた俺の服を、リカルドがクイクイと引っ張ったのでそちらを向くと、リカルドはモジモジしながら俺を見ていた。
「どうした? リカルド」
「あのね。お菓子買いに行っていい?」
小さい子供には3人の話、改め言い争いは長過ぎて飽きたのだろう。いままで我慢していたのか、チラチラと俺と3人を見比べている。
「勿論だ。好きなお菓子選んでおいで」
「うん!」
今回のこぼれ話
諜報員A「お前、例のスライム発見したからって、教皇様からボーナス貰ったんだって?」
諜報員B「うへへ。金貨1枚貰っちまった」
A「マジか! めっちゃ羨ましー」
B「けど、あのアイリーンちゃんに全部注ぎ込んじまった」
A「マジか! バカだなー」
次回予告
「ワンカップとイカとイカとイカ」




