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第22話 怪しい奴ら(異世界side)

ブックマーク、感想、評価ありがとうございます。


色々と立て込んでしまい、今週はこれだけです。

(最近、怪しい奴らがいる)


 自室の机の上に置いてある書類をペラペラと捲りながら、レイセント・スターラインは物思いに耽った。

 書類に書かれている人物達はここ最近、毎日決まった時間になると、必ず部屋から人を遠ざけて1人になるのだと、書類には書かれていた。

 そして、一度部屋に閉じこもると数時間は出て来ず、また部屋から出て来る際には、何故かご満悦の表情をしていると言う。

 しかし、何故ご満悦なのか、中で何をしているかなどを聞いてみても、その2人は誰1人として何も言わないのだそうだ。

 そんな2人に共通しているのは、何故か見慣れぬスライムを所持しているということだった。


「ふぅむ。おそらくは、そのスライムが鍵を握っているのだと思うが、しかし、どうやって話を切り出そうか」


 子飼いにしている諜報員から報告の書類を受け取り、ここ数週間の間で、王と宰相の2人が不可解な行動を取るようになったと、書類に書かれているのを見た時は我が目を疑った。

 特別何かをしているというわけではないらしいのだが、だからといってこのまま見なかったことにするのも問題がある。

 最初の頃は、王は再び脱走癖を拗らせたのかと思ったが、宰相も一緒となると話は変わってくるのだ。


「ふん! 2人してコソコソと怪しい行動を取りおって、儂を仲間外れにするとはどういうことだ!」


 幼少の頃より顔馴染みで、幼馴染であったはずの2人が、自分に内緒で何か企んでいることを勘付いたレイセントは、これは直談判だと息衝きながら部屋を後にした。




 神がいるこの国で、レイセント・スターラインは、王国内にある教会のトップである、教皇の職に就いている。

 元々王や宰相と同い年の幼馴染であり、大人になったいまでも、時間が合えば3人で飲み交わすほどに良好な関係を築けている。


 だが、その良好な関係が変わろうとしていることに、レイセントは苛立ちを感じていた。

 いや、苛立ちよりかは悲しみ、と言った方が正しいのかもしれない。


 自分抜きで、何か一大事でもやらかそうと企んでいるのか、それとも何か病気なのではないか、はたまた、ただの偶然か。

 ただの偶然だったらどんなに良いことか。


 そんなことを思いながら教会の廊下を歩いていると、外に子供がいた。


「あれは確か、リクルドの所のリカルドだったか? あそこで一体何を……っ!?」


 窓から外を見下ろした先にリカルドが居るのだが、そのリカルドはしゃがんで四つん這いになった状態で、植木の下を覗き混んでいると思ったら、そこからスライムが出てきたのである。


「いくら最弱種とは言え、子供にスライムなど!」


 スライムは大人にとって見ても、ある程度の歳を超えた子供でさえも倒される程に、最弱な生物として有名ではあるが、だからと言って年端もいかない子供が相手では、その身に危険が及んでしまう恐れがある。


 基本的にスライムは、その体全体が溶解液の様になっており、直接触らなければこれと言って害がないほどに強い訳ではないので、退治する際には肌に直接触らせない様にして核がある場所を狙えば、素人の冒険者でも安全に倒せる部類の生き物である。


 だが、生身でその体に触れてしまうと、如何なるものであっても徐々に溶けてしまう性質を持っている。

 例外として、従魔契約をすればある程度の命令を理解することが出来るので、溶かす行為を禁止することが出来る。


 だが、それがいま子供の目の前にいるという事実に、レイセントは焦っていた。


「クッ、間に合えばよいが! 身体強化!」


 自身に身体強化の魔法をかけて、窓を勢いよく開けると、レイセントはそこから飛び降りた。

 この時は、王や宰相のことなども忘れて、目の前の子供の危険に意識を取られていた。


「つぅ! 歳を取るものではないな」


 高さはおよそ3階の建物に匹敵する場所から落ちたのだから、普通の人間であるならば良くて骨折、最悪、打ち所が悪ければ死亡する事もあるが、レイセントは華麗に着地を決めるとそのままリカルドがいる場所へと走った。


「リカルド! なっ、何をしているリカルド!」


 焦るレイセントがリカルドの元へと到着した時には、スライムの近くにアーチ状の光るゲートが出現しており、そこにリカルドが入ってしまった後であった。


「間に合え!」


 そう言って手を伸ばして、まだゲートに入っていないリカルドの服を掴もうと手を伸ばしたにも拘わらず、その手は空を掴んだだけで、リカルドはゲートの中へと入ってしまった。

 近くにいたスライムまでもがその場には消え去り、ポツンとレイセントだけがそこに立っており、呆然とゲートがあった場所を見つめているだけであった。


「なっ何たることだ」


 目の前でゲートに入って行き行方不明になったリカルド。

 このままでは、どう親に説明すればよいのかと頭を悩ませる。

 目の前で起きたことをそのまま言って見ても、誰も信用しようとは思えない内容に、レイセントはどうしようかと思ったのだが、ここである事に気が付く。


「そういえば、リカルドのそばにはスライムが居たはず。じゃが、そのスライムも姿を消しているところを見ると、もしやするともしやするかもしれぬのか?」


 それは、数時間前に諜報員が持って来た書類に書いてあったこと。


【王と宰相の側に、見慣れぬスライムが存在する】

【そのスライムが出現した辺りから、王と宰相の謎の行動が始まる】

【決まった時間に部屋で1人となると、数時間後にはご満悦で部屋から出てくる】


 これらを考えてみると、この場で待っていた方が王と宰相の謎にも突き止めることが出来そうだと、レイセントはどっしりと胡座をかいて、リカルドが戻ってくるまで待つことにした。





 待つこと1時間後。

 レイセントの勘は当たった。


「あれ? 教皇(きょーこー)様? そこで何しているのですか?」

「おぉ! リカルド、やっと戻って来たか!」


 レイセントがリカルドが消えた辺りを監視していると、再び光るゲートが出現して、そこからリカルドと、リカルドに抱きかかえられたスライムが出てきた。


「リカルド! 何処にも怪我はないか?」


 すぐに立ち上がったレイセントは、ゲートから出てきたリカルドを捕まえると、頭の先から足の先までを触って怪我が無いかを確認するが、当の本人はキョトン顔でされるがままになっていた。


「教皇様。どうしたのですか?」

「この馬鹿者! どうしたもこうしたもあるか! お主がスライムと一緒に居るところを見たから危ないと思って助けに来たら、当のお主は謎のゲートの中へと入って行く始末。心配するに決まっているではないか!」


 レイセントの剣幕に、事の次第を把握したリカルドは、しょんぼりとした顔で頭を下げて謝った。


「ごっ、ごめんなさい」

「あうー」


 そんなリカルドを慰めるように、腕の中のスライムが触手を伸ばして頭をナデナデする様を、レイセントは奇妙な物を見るように?見ていた。


「教皇様?」


 チラリと自分を見つめるリカルドの視線に気が付いたレイセントは、ひとまずリカルドの頭に手をやり、一通りの注意をする。


「いいか。先程は叱ってしまったが、あれはリカルドを心配してのことだ。君はまだ5歳なのだろう? ならば、1人で魔物に近付いたり、何処に繋がっているか分からないゲートになど、入ってはいけないよ。君の親や家族が心配するからだ」

「はい」


 言葉の意味をしっかりと理解した様に見えるリカルドに、レイセントは満面の笑みを浮かた。


「うむ。君は頭が良いな」


 そのまま数回頭をポンポンすると、リカルドから目線を下げてスライムへと移る。


「ところで話は変わるのだが、このスライムは見たことが無いがどういうものなのだ? それとゲートの先では何があった?」


 リカルドの身の安全もそうだが、それと同じかそれ以上に、幼馴染と繋がる可能性を掛けて、レイセントはリカルドに問いかけた。


「あっ! えっとね。凄かったの! もうすんごかったの!」


 頬を赤らめながら一生懸命に説明するリカルドに、ウンウンと相槌を打ちながら所々質問を織り交ぜながら聞いていたレイセントは、全てを聞き終わると満面の笑みを浮かべていた。


「成る程成る程。よく分かった。ふふふ。フハハハハ。こうしちゃあおられん! 早速そのスライムと同種のスライムを捕まえなばならん! アッーハッハッハッー! 待っておれ、コンラート! ヴォルフ!」

「うふふ。教皇様楽しそうだねー」

「アーウー!」





 そして早速この日から、諜報員達を総動員してのスライム狩りが始まった。

 全国各地に散らばっている諜報員達は皆優秀であり、8-10スライムがレイセントの元に届くのは、時間の問題となっていた。

今回のこぼれ話

見た目が老けている順

一位王様

二位教皇

三位宰相


戦闘能力

一位教皇

二位宰相

三位王様


王様不憫!


次回予告

「三人集結!」

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