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第20話 50円で買えるもの

ブックマーク、感想、評価ありがとうございます。


※プロローグの描写を少し変更しました。

「ってな訳で、アイオーンの所為でこことリカルドの世界が繋がったって訳だ。分かったか?」

「分かったー!」

「ちょっとー! 僕の所為ってなにさー!」

「はいはい」


 俺の説明に元気よく手を上げて返事をしたのが、異世界からやって来たリカルド5歳。

 子供特有のサラサラの赤毛に茶目、犬系のホンワカとした雰囲気の可愛らしい子供だ。


 そして、見た目はリカルドよりお兄さんっぽいのに、言動が残念なアイオーンは軽く遇らう。


「まさかさぁ、元凶のアイオーン様がここの説明をしなきゃいけないのに、マシンガントークをぶちかました所為で俺が一から説明をし直さなきゃならないとは、思いもしなかったなぁ」

「……うにゅぅー。猛省してます」

「次からは頼んだぞ」

「あいあいさー!」


 そう、最初はアイオーンに8-10の説明を任せていたのだが、まさかリカルドを入り口から一歩も動かさずに、8-10についてのマシンガントークをかますとは思ってもいなかったのだ。

 それを見かねた宰相さんが、リカルドをイートインスペースへと案内して椅子へと座らせると、先程買ったレーズンバターサンドを1つリカルドに手渡して、俺と王様を呼んだと言う訳だ。

 俺が8-10についての使い方や注意事項、王様が異世界に戻った時の注意事項を説明した。


 アイオーンに翻弄されたリカルドは、最初はキョトン顔で話を聞いていたが、途中から王様や宰相さんが食べ物の話題を振り、手付かずだったレーズンバターサンドを食べさせると、目を輝かせて話を聞いていた。


「へー。リカルドの家は商店なのか」

「うん。雑貨屋さんだよ。あとね、僕の他にもお兄ちゃんとお姉ちゃんがいるよ。お兄ちゃん達はね、お父さんとお母さんのお手伝いをしているんだけどね、僕はちっちゃいからって教会(きょーかい)でお勉強なの」


 あらかたここの説明を終えて、今度はリカルド自身のことを教えて欲しいと言えば、リカルドは身振り手振りで一生懸命話す。


「そっかぁ。リカルドは小さいのに偉いなぁ」

「えへへー」


 リカルドの頭を撫でて褒めると、嬉しそうに笑う。可愛い。


 リカルドは5歳の男の子で、両親と、上に17歳と15歳の兄と姉がいる。

 異世界で働く場合は見習いの10歳になってからなので、リカルドは10歳になるまでは教会で、基礎の勉強や簡単な仕事を覚えるらしい。


 その補足を王様と宰相さんが説明してくれたが、元々は、向こうの世界の子供は見習いの期間にならないと働けないが、両親は生活費を稼ぐために働かないといけない。

 その間は祖父母が居れば面倒を見て貰えるが、居なければ両親の代わりに子供を見る人が居ないので、手が空いている近くの家を託児所として預けるそうだ。


 それを今代の教皇様が、教会で5歳から9歳の子供を預かり、簡単な教育を施して将来有望な子供を作ると宣言したらしい。


 元々は孤児達に施していた教育を、他の子供達にも施そうという話から始まった。

 親達は、最初は孤児と同じ場所に向かわせることに不安視していたようだが、見習いの期間に教えることを教会が先に教えてくれるのであれば、その分店での研修期間が無くなるので、商店に関連する住民から徐々に受け入れられていった。

 こっちの世界で言うならば、幼稚園や小学校と言った施設だ。


「教会か……。奴もそのうち来そうだな」

「ええ。間違いなく私達のことに気が付いて来ると思いますよ」


 リカルドの頭をわしゃわしゃ撫でくりまわしていたら、王様と宰相さんが思案顔でぶつくさ呟いていたが、残念ながら俺の耳には言葉として聞こえていなかった。


「ねぇ、お兄ちゃん。ここってお金無いとダメなんだよね?」

「まぁ、そうだな」

「んー。僕、いまこれだけしか無いの」


 そう言って、リカルドがズボンのポケットから取り出したのは小さな銅貨。アイオーンが前に持っていた銅貨より、一回りか二回りほど小さい。


「取り敢えず、スライムで換金してみれば?」

「うん。アインよろしくね」

「アウー!」


 ポイっと銅貨をアインに投げ込むと、チャリンと50円玉が出た。


 どうやら小銅貨が50円で、大銅貨が500円くらいの価値になるようだ。

 ちなみに、向こうの世界では小銅貨1つで小さいパンが1つ。果物なら物によっては2〜3個買えるらしい。


「50円かぁ。うーん」

「確か、ここの物の殆どが100円以上するのですよね? 何か買えるものがあれば良いのですが」


 スライムから出てきた硬貨にアイオーン、宰相さんが、50円で何が買えるかと頭を悩ませる。


「なんなら、儂が幾らか奢っても良いぞ?」

「えぇ! ダメだよ王様。パパが、人から何もしないでお金貰っちゃダメって言われてるもん!」


 それを見ていた王様がリカルドに提案をしたが、提案されたリカルドはブンブンと音がなりそうなほど頭を振った。

 さすが商人の息子。金にシビアだ。


 だが小さい子供がせっかく来たのに、何も買えずに帰るだなんてそんなことをさせたくは無いのだろうが、50円でも買える物はある。


「3人とも大丈夫だって。ちゃんと50円でも、コンビニには買えるものはある。おいでリカルド」


 そう言ってリカルドを伴い駄菓子コーナーへと向かうと、俺はリカルドに質問した。


「リカルド、このお金は全部使って大丈夫か?」

「うん。教会でね、お手伝いをすると貰えるの。お家に帰る時にね、いつもそのお金で、パンとか果物とか買って食べるんだよ」

「へー。リカルドはお勉強もして、お手伝いもしてるのか。偉い偉い」

「えへへー」


 再びリカルドの頭を撫でくり回し、褒められてご機嫌のリカルドに、ここの使い方もレクチャーしながら駄菓子を買った。


「いいかリカルド。もう一回説明するが、ここに買いたい物とお金を置くんだ」

「はい!」

「自分が持っているお金と、買いたい物の値段を見て、足りるかどうかもちゃんと計算しないとダメだぞ!」

「僕ね、算数得意なんだよ! 頑張る!」

「よし、あとは分からないことがあったら、いつでも俺に聞きに来いよ」

「分かった! ありがとうお兄ちゃん」

「おっおう。じゃあ、これはリカルドの物だ。あっちの王様達が居るところで食べような」

「はーい!」


 元気に返事をするリカルドに、買い物袋を持たせて王様達がいる場所へと戻った。

 王様達3人は、俺が何を買ったのかが気になるようで、リカルドが持っている袋をジッと見つめている。


「結局、蒼は何を買ったの?」


 その中で興味津々なアイオーンが、リカルドに急かすように質問した。


「……えっと、分かんない。お兄ちゃん」


 袋の中身をテーブルに広げたリカルドは、しばらく駄菓子を見つめた後、俺に助けを求めた。

 商品の説明をしていないから当然だし、パッケージを見てそれが何かは、日本人じゃなきゃ分からないだろう。


「だろうな。俺が選んだのはこの飴とカルパスに、コーンポタージュ、明太子、シュガーの美味棒だ。ちなみに全部10円」

「やっす!」


 俺が商品の説明をしたら、驚きの安さにアイオーンはもちろん、声には出していないが王様達も驚いているようだ。


 リカルドだけがキョトンとしているが、それはすぐに歓喜の顔に変わった。


「これ、美味しー!」


 開け方を知らない上に、5歳のリカルドでは開けること自体がまだ難しそうなので、そんなリカルドの為に、全部の駄菓子を開けて渡すと、早速リカルドは美味棒のコーンポタージュに手を伸ばして、リカルドにとっては大きな一口で食べた。

 その途端、驚きの表情から歓喜になるまではあっという間で、ニコニコと幸せそうな顔で美味棒を味わっていた。


他にも10円のガムが買えるのですが、腹が膨れないのと、異世界にガムが無さそうなので、今回は選択しませんでした。

リカルドが、誤ってごっくんでもしたら大変ですからね。


次回予告

「お兄ちゃんと言われて」



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