第17話 個人で楽しむ分なら
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「まず1つ。宰相さんが言っていたことは出来るちゃあ出来る」
「おおっ! それは凄いではないか!」
「ただ、出来ればしないでくれると助かる」
「何故だ!」
俺の一言一言に一喜一憂する王様。そして俺が胡椒の大量購入を止めてほしいと言えば、仰天した顔で俺に詰め寄るので王様を宥めつつその理由を簡潔に言う。
「はいはい王様、落ち着いて。
別に買うなって言っている訳じゃないんだ。ただ、そこまで大量に買うのをしないで欲しいって言ってるんだ」
「その理由は?」
「えっと、まず胡椒自体が月に10本売れるかどうかの商品なんだ。なのに今月から40本から80本近く大量に売れれば何事かと思うだろ? それで俺以外の人間が王様や宰相さん達に気付くって言うか、不審がられるのを避けたいんだよ」
飛びかかりそうな王様を手で制している宰相さんが続きを促してくれたので、俺が胡椒の大量買いに反対の理由を説明すれば、宰相さんはこのことを事前に察知していたのか、すぐに理解を示してくれた。
「それに、そっちの国での胡椒が高価な物だとしたら、そっちの住人でここに来れる奴が来たらそいつらも大量買いをする可能性があるだろ? だから後々遺恨が残らないためにも、最初からの大量購入は控えて欲しいんだ」
「やはりそうですよね。いまは私達だけですが、その後に100人近い人達がこちらに来るとなると、こちらでは胡椒が安価だとしても100人の人間が毎日たくさんの量の胡椒を買えば、普通は不審がられますよね」
「そうだなぁ。一度にってものあるし、1月の売り上げの累計がぶっ飛んだ量になるとちょっとなーって感じだな。毎日数本ずつ買われても、1月での胡椒の売り上げが極端に増えていれば、それはそれで先に爺ちゃんに不審がられそうだ」
爺ちゃんの感はかなりの確率で当たるから、出来ればこの異世界のメンバーが知られないようにしたい。
何がどう転んで、俺達に突発的な何かか襲い掛かるか分からないからな。
「では、買うのを諦めろと言うことか?」
やはり王様は胡椒を諦めたくないのか、難しそうな顔で腕を組みつつ俺達を睥睨しているが、別にそう言うわけではない。
「大量買いをしなければ良いんだよ。だから、自分用に月に一度、一本くらいなら買ってもいいんじゃないか? あとは店内に残っている分を早い者勝ちとか?」
希望の数をお取り寄せをしないで、店内にある分の早い者勝ちであるならば、そこまで不審がられない数の売り上げになるはずだ。
それに王様が期待している胡椒だが、王様が想像している異世界の胡椒よりも品質が低くて匂いや味が劣っている可能性だってある。
その場合、もし異世界産の胡椒の方がいいと判断するかもしれない。
仮に何らかの問題が出たら、その時に考えよう。
「てな訳だけどさ、どうする? 買ってく?」
「「もちろん」」
悩む素振りも無く即決で買う事を決めたのは良いが、ここに売ってあるのは粉末状の胡椒と塩胡椒なので、念のための味見をしてみることを俺が提案した。
「そっちの胡椒と味が違うかもしれないからさ、一応味見くらいはしておいた方がいいと思うんだ。あぁ、あと王様」
「何だ?」
「そっちにオリーブオイルって油ある?」
「オリーブオイル?」
ちょうど調味料コーナーに来ていたので、王様が気に入ったペペロンチーノの材料の1つであるオリーブオイルを王様に手渡す。
「はい、これ。この油なんだけど、ペペロンチーノを作るならこの油が一番合うと思うんだ。だから、そっちの世界でこの油の風味に近いのが合ったらそれを使うといいと思う。
宰相さんのカルボナーラも、チーズの風味が変わるだけで結構味が変わると思うから、色々なチーズで試してみることをお勧めするよ」
日本でもオリーブオイルって商品だけで何種類もあるし、ペペロンチーノやカルボナーラも同じ名前の料理のはずなのに、作り方も使う食材も調理する人によってバラバラだから、ここは異世界風ペペロンチーノとカルボナーラを作ってもらおう。
なにも、コンビニの味が完成品と言うわけではないのだ。
「そうだな。なら、この油も買っておこう。たが、この胡椒の味見だったな。儂はもうくちくなっているのだが」
至極残念そうな顔で、自身の腹をさする王様。さすがにあの大盛りペペロンチーノを完食したとあって満腹のご様子だ。
「でしたら、私が味見役を引き受けましょう。王に比べると量も少なかったですし、元々私はお酒をあまり嗜まない代わりに食事を取っていたのでまだまだ入りますからね。蒼、味見をする為のオススメは? あと、出来れば食後に甘い物を欲しいのですが」
王様とは違いこちらは元から大食漢だった様で、まだまだお腹の調子は平気そうだったが味見をするだけならば、少量で打って付けの商品がある。
なので、食後のデザートの方を気にせずに味見が出来るはずだ。
「胡椒と塩胡椒の味見に打ってつけなのは、ゆで卵だな!」
それで、いざ味見である。
宰相さんは塩胡椒と胡椒、それにゆで卵1個入りを買って、それを昨日王様が買っていた紙皿の上に、剥き終わったゆで卵が入っている。
殻と梱包していた紙は宰相さんのスライムであるリチャードが美味しく頂いた。
ゴミも出さずに美味しく頂くスライム。マジ万能。
「この胡椒はあまり匂いが強くありませんでしたが、こちらの胡椒は開けた瞬間に香りが鼻の奥まで突き抜けますね」
最初に塩胡椒、その次に胡椒の蓋を開けて匂いを堪能した宰相さんは、ゆで卵を手に取り紙皿の空いたスペースにお互いが混じり合わない様に、端の方に塩胡椒と胡椒を入れる。
「では、ムグムグ。ほうほう。こっちは……おぉ! これはこれは」
ゆで卵の先端に胡椒を押し付けて、先端に満遍なく付いていることを確認すると口の中に入れて味わう。
「どうであった!」
身を乗りだして聞いてくる王様を手を前にだして押さえ、口元を王様が買ったウエットシートで拭うと、胡椒の感想を語った。
「まず、こちらの塩胡椒ですが、これは向こうでも流行ると思いますね。
淡白で味気ないゆで卵の味を、ここまで引き立たせるとは思いもしませんでしたし、他の食品と合わせることも可能かと思います。
例えば肉と野菜の炒め物などにこの塩胡椒を使えば、普通の宿屋の料理よりも数倍は出来の良い料理となるでしょうし、ただの肉や魚にまぶして焼くだけでもかなりの美味になるはずです。
ただ、やはりこちらの粉末状の胡椒の場合は、向こうの胡椒に比べると風味などが一段落ちる印象に思えましたね。味自体は確かに胡椒なのですが、何でしょう? 匂いや風味が弱く感じるのです。
ですが、胡椒の代替え品としてならば充分だと私は思いましたので、私は今後もこの2つを購入しますね」
どうやら宰相さんの合格点を頂けたようだ。それを聞いた王様は、紙皿に微妙に残っている塩胡椒と胡椒を指に付けて舐めとる。
「何しているんですか? はぁ、王なのにみっともない」
それを見た宰相さんは呆れ顔で、額に手を当てて溜息を吐く。
「いや、お主だけ味見とか羨ましいとは思ってはおらぬぞ?」
「それって、完全に羨ましいと思ってるって言ってんのと同じだぞ?」
王様の弁明を聞いた俺は、思わずつっこんでしまった。どう考えても宰相さんが羨ましかったに違いない。
「王様なんだから、胡椒とかいつでも食べれるだろ?」
俺が想像する王様を言ったのだが、王様の顔振りを見ればどうやら違ったらしい。
「うぅむ。そうもいかなくてなぁ。こっちでは少量の胡椒を販売している所が一ヶ所しかなく、それを儂の国を含めた6ヶ所の国々が競う様に取引を交わしているのだ。
ゆえに、儂であっても中々口にする機会がある訳では無いと言うことだ」
「ちなみに胡椒を販売しているのは小さい島国で、そこに住んでいる人々から食べ物や必需品の物々交換で取引を交わしているのですが、海域がちょうど強い魔物が出ることや、その島国から我々の国に来るまでにかなりの距離があることから、割高になってしまうんですよ」
「儂の国以外だと、聖都、魔術国家、獣人国、魔界、あとはエルフやドワーフなどの少数国家などが競っているな」
「おお! 一気に異世界って感じのワードが!」
「それはそうと蒼。オススメの甘味を早く紹介しなさい」
「アッハイ」
どうやら宰相さんは、かなりの甘党さんだった様だ。
次回更新までお待ち下さい。
今度こそ。
次回予告
「和菓子にハマる」




