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第16話 胡椒と言うテンプレ

ブックマーク、感想、評価ありがとうございます。

「蒼。たいそう美味であったぞ。して、紙ナプキンなどは置いておらぬのか?」


 雑貨の品出しをしていた俺を王様が呼び止めて、ペペロンチーノの感想を言う。

 ペペロンチーノの味付けの主な材料はニンニクと塩と唐辛子。そして油なので、王様の口周りがリップでも塗ったみたいにテラテラしていた。


「あぁー悪い。ここ、そういうのは商品しか置いて無いんだ。紙ナプキンはおしぼりとかだからこっちかな?」

「ん? 商品があるのなら良いのではないか?」


 席を立った王様を陳列している場所へと案内しつつ、無料提供していないことを説明すれば、王様はあまり理解していない様な顔をしたので補足も足しておく。


「店によりけりだけど、フォークみたいに無料で提供している場所もあるんだよ。ただ、そういうのは売り上げに直接関わらないから、やっている店とやらない店が出てくるんだよな。

 ほい、ここがお手拭きのウエットシートで、こっちが8-10のお絞り」


 レストランなどに置いてある紙ナプキンなどはここには置いていないので、ウエットシートとお絞りを王様に勧め俺はレジへと向かうが、直ぐに王様に呼び止められた。


「蒼よ。種類が多いのだが、どれを選べば良いと思う?」

「いや、俺に言われても分からねぇから。人によっては体質とか値段。触り心地で決めるんじゃないか? あとは、これとこれが手も口も使えるって書いてあるからそういうのを選べば?」

「ぬぅ。ではこれを買ってみるか」

「はい、まいど。袋には入れる?」

「いや、そのままでよい」


 王様が買ったのは筒状タイプのウエットシート。その購入した物に、買った印であるテープを付けて王様に手渡せば、王様はウエットシートを前にして固まった。


「……うん。貸して」

「すまぬ」


 どうせ使い方を読んでも分からないのだろうと判断して、俺がシートを取り出せる様にして王様に取り口を向けてレクチャーする。


「ここのウエットシートを引っ張ると、一枚取れるから引っ張ってみて」

「おっ? おおっ! これは湿っておるな」

「あはは。ウエットだからな。んで、ここをパチンッと鳴る様に蓋をするんだ。

 ここが開いたままだと中のシートが乾燥して、除菌効果のある水分が抜けるから、ここは絶対にパチンと鳴るまでちゃんと蓋をするんだぞ?」

「よし、分かった! 早速ヴォルフに教えてやらないば!」


 俺が実際にパチンパチンと何回か蓋の開け閉めを見せると、王様はワクワク顔で宰相さんの方へと向かう。


「にしても、あの量を10分も掛からずに食べるとは、王様早食いだなぁ」


 王様が買ったペペロンチーノは、宰相さんが買ったカルボナーラよりも一回り以上大きいサイズのパスタで、同じ位に食べ始めたはずの宰相さんのカルボナーラが、まだ四分の一ほど残っているから王様がいかに早食いなのかが分かる。


「さて、品出しの続きでもするかな?」


 俺は中途半端だった雑貨の品出しに戻った。

 最初の頃は、この品出しが出来るまでに時間がかかった。理由は先にやらなければならない仕事を覚えるのに必死で、どうしてもやらなければならない訳ではない品出しは、後回しになっていたからだ。


 それに、なんとか仕事を覚えて品出しに手が出せるようになっても、品出しする種類も多かった。

 俺が働いているコンビニだと、クールやホットドリンク、雑貨にカップ麺にお菓子、あとはタバコや箸やスプーンの補充もしているし、それ以外にも夕勤時で出し切れなかった商品を品出ししている。

 夕勤の子達も品出しをしてくれているが、夕勤の子達は20時から21時頃に来るアイスやおにぎりなどの納品の品出しにてんやわんやしているので、その前にしか品出しすることが出来ず、残った物が必然的にこっちに回ってきてしまうのだ。

 それに夜勤時は比較的暇なのに対して、昼から夕勤は場所のせいかお客様が結構やって来るらしい。

 だから納品が多い日には時間内に品出しが終わらないので、毎回すまなそうな顔で帰って行く。


「今は仕事にも慣れたから、俺が帰るまでには全部終わるけど、スーやムーが来てくれたおかげで今まで以上に楽になったな」


 掃除関連に関しては、抜群の能力を発揮する8-10スライムのスーとムーのおかげで、俺が本来やらなければならない掃除の仕事を、丸々2匹が代替わりしてくれている。

 そのおかげで俺に余裕という名の時間ができたので、雑貨の品出しを終えて、王様に構われてウザったそうにしている宰相さんに助け舟を出すことにした。


「宰相さん。そのカルボナーラはお口に合ったか?」


 俺が宰相さんの隣に立ってそう問いかけると、ちょうど最期の一口のカルボナーラを口に含んだ宰相さんは、コクリと頷いた。


「……あぁ。これはかなりの美味であった。これは確か卵、チーズ、生クリームで作れるのだったな?」

「そうだけど? 何? 向こうで作ってみたい感じ?」

「あぁ。チーズ以外の材料は、向こうの世界では安価な物だ。たが、そのチーズも少し高いと言うだけの物で、高級品だから町民全てが手にできないと言うわけではない。だからこそ、できれば私と同じ幸福を彼らにも授けたいのだ」


 宰相さんはよっぽどカルボナーラを気に入ったのか満足気な顔でそう言うと、それに便乗して王様も乗っかって来た。


「それならば、このペペロンチーノのと言う物の作り方も向こうで広めるのはどうだ? これも見たり食べたりした限りでは高価な食品は使われていないだろう?」

「そうだな。絶対に欠かせないのはオリーブオイル、ニンニク、鷹の爪……だから唐辛子かな? あとは塩や胡椒をーー」

「なっ! 胡椒だと!」

「蒼! 君はいま胡椒と言ったかな?」


 俺がペペロンチーノの材料を挙げていたら、胡椒と聞いた2人の目の色が変わった。

 と言うか、いまにも襲い掛かりそうなくらいの迫力で迫り来る2人。


「ちょちょちょっといいか? 2人とも怖い怖い! それにそっちっだと胡椒が高級品かもしれないが、こっちだと安価で手に入るんだよ!」


 俺が異世界系のライトノベルやネット小説で有名な、胡椒は高級品と言うテンプレに当たりを付けて2人を引き剥がすと、王様は目を輝かせ、宰相さんは顎に手を当てて考え始めた。


「何と! 聞いたかヴォルフよ! こちらには胡椒が安価で手に入るそうだぞ。ならば手に入るだけーー」

「いえ、それは止めておいた方が良いと思います」

「何故だ!」


 王様の言葉を遮った宰相さんは、王様の質問には答えずに俺と王様の目を交互に見て、言葉を探るようにしながら紡ぎ出した。

 王様はそれを聞いて駄々っ子のように「なぜじゃ! なぜじゃ!」と繰り返しているが、宰相さんはガン無視なので俺もそれに便乗させて貰う。


「蒼。このお店にも胡椒はあるのですか?」

「あるにはあるけど、うちで売っているのは1種類だけだぞ?」



「どう言うことだ蒼? 胡椒は1種類だけではないか! まさか、蒼のところには何種類ものーー」

「王は黙っていて下さい。では蒼。その胡椒を我々が買おうとした場合、どれくらいの値段でどれだけの量を売ってくれますか?」

「ちょっと待っててくれ」


 俺はそう言い残して胡椒が置いてある場所に向かうのだが、王様と宰相さんの胡椒に対する執念は強いのか、俺の後を付いて来たのでそのまま売り場に案内すると、胡椒の瓶詰を取って2人が見えるように立ち上げる。


「これがうちのコンビニで置いてある胡椒。これ1瓶で170円くらいかな。あっ、あと塩胡椒もあった。これは塩と胡椒をブレンドしたやつで、これ1つで200円くらいだな。それで、いま置いてある2つを合わせると全部で6個だな」

「これが胡椒だと?」


 右手に胡椒。左手に塩胡椒を持って2人に見せると、王様と宰相さんが瓶の中の胡椒を見つめ、王様の輝いていた顔から怪訝な顔に変わり胡椒を食い入るように見ているので、俺は瓶を振りながらこれが胡椒であることの説明をする。


「そう。王様達が見たことのある胡椒がどんな物なのか知らないけれど、これは胡椒の粒を粉末にしたやつ。んで、こっちはそれに塩も入れたやつ」

「ふぅむ」


 俺の説明に、王様は納得したのかしていないのかは表情を見ただけでは分からない。だが、宰相さんは違ったようだ。


「ほう、すでに粉末になっているのですか。1つ相談なのですが、これを大量に購入したいと申し出た場合、蒼はどう思いますか?」

「大量ってどれだけ?」

「そうですね。これらを10や20ほどですかね」

「それ1回だけで済む話?」

「いえ、出来るならば……。毎日は望みませんけれど、週に1度や10日に1度の頻度で買い取りたいですね」


 指を1つ2つ立てながら言う宰相さんに、俺にとっての出来ることと望みを言うのだった。



「テンプレは先にやってしまいなさい」とお告げを受けた気がした。

だから蒼達が胡椒の話で盛り上がったから、予告していたタイトルに行かなかったんだ!←言い訳


次回予告

「個人で楽しむ分なら」

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