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第14話 なるほど、よく分かった。

ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。

「ふぅ、雑誌終了。にしても、今日の雑誌は付録多過ぎ。いつもより時間かかっちまったな」


 王様とアイオーンはついさっき買い物を済ませると、早速中身を拝見したいと異世界へと帰って行った。

 王様はエロ本を買ったら直ぐに読む気満々だったが、さすがにコンビニの店内でエロ本を読むのは俺が禁止にした。

 いくら夜勤時に人があまり来ないとしても、来る時には来てしまうのだ。そんな時に店内でエロ本を読んでいるおっさんがいたらドン引きな上に、いまだとSNSで直ぐに拡散される危険もある。


 俺がSNSについてアイオーン達に教えると、それを聞いたアイオーンは目を閉じて地球神と交渉を始めた。


 結果として「地球神がね、こっちの人間が僕達異世界人を撮ったりした時は、絶妙にアニメ仕様のぼかしをしてくれるんだって!」と言っていたので、何とか身バレにならなさそうでよかった。

 にしてもアニメ仕様のぼかしって、謎の光とか謎の湯気とか、暗転とかだろうか?


「まぁ、SNSは地球神様がフォローしてくれるみたいだが、ヤバくなりそうなことはやらない方がいいに決まっている」


 雑誌の納品時に出たゴミを、ゴミ箱に捨てながらそんなことをぼやく。


「にしても、あの二人……。いや、アイオーンは神だからどうでもいいけど、王様は二時間近くここにいたが仕事は大丈夫だったんだろうか?」


「仕事は大丈夫なのか?」と俺は王様に聞いたら、「大丈夫だ。この時のために前倒しで今日の分は終わらせてある!」と言っていたので大丈夫だと信じたい。


 というのも、俺が働いているコンビニは日付が変わる頃に雑誌が来るのだが、その中にエロ本があるかもしれないと俺がぽろっとこぼしたら、王様が「是非それも頂こう!」と欲しがったのだ。

 ただ、二時間ほど待って貰わないと納品されないので、その間は王様とアイオーンは付き添いでイートインスペースで酒盛りを始めたのだ。

 ただし、王様はこのあと公務があるかもしれないとのことなので、味見程度にしか飲めないのを非常に残念がっていたのに対して、付き添い役であるはずのアイオーンがガバガバ飲んでいたのには、さすがに俺も王様に同情した。

 アイオーンがやったのは、酒好きには拷問に近い所業なのだ。


 一応酒盛りする時の注意事項として、店内で大声を出したり他のお客さんの迷惑にならず、ゴミや食べカスを散らかしたり、店内の備品を壊さなければ何をしても良いと言っていた。

 あと、俺が帰る時まで爆睡するなってのも伝え、それをアイオーンが向こうに戻った時に広げてくれるそうなので、任せることにしている。


 なんでも、誰かが8-10スライムに名前を付けた瞬間にその人物のところにワープして、飼い主としての諸々のルール説明をするらしい。


「にしても、アイオーンの奴。二時間でワイン三本は飲みすぎだよなぁ。それを味見程度にしか飲めなかった王様はツマミを貪るように食べたけど……。それにしたってワインをプラコップで飲むのとか。あれは地味にウケたなー」


 アイオーンと王様はどちらも手ぶらでこっちの世界に来たので、ワインを飲むためのグラスが無いことにどうしようかと悩んでいたのだ。

 だったら飲むなとも思ったが、「見た目を気にしないなら紙かプラスチックのコップならあるぞ」と、王様とアイオーンを雑貨スペースの陳列されている場所に連れて行けば、アイオーンは前回来た時に見た記憶があったのかあまり驚きはしなかったが、王様の方が商品の価格や品質に感激して、同じ棚に陳列している紙皿と、隣の棚にある数種類のツマミも購入していた。


 どうやら、昨日アイオーンが異世界へと帰った時に買っていた、チーズ系スナック菓子を王様と半分こしていたらしい。


 支払いの時にも一悶着あり、総額で三千円以内に収まったことに王様はかなり驚いて、本当にこの値段でいいのか? ここまで安くて商売が成り立つものなのか? と言っていたくらいに安く感じたらしいけれど、俺からしてみたら二人で酒盛りするにはやや高めの金額だと思った。俺だったらビールとツマミで五百円以内に収まる。


「スー、ムー。一旦休憩にしようか」

「スー!」

「ムッムッ!」

「その前に廃棄を取らないとな」


 スーとムーには店内の掃除を任せていた。スーとムーのおかげで、今日やる予定の三分の一はすでに終わっている。俺だけだったらまだ掃除にたどり着けないので、本当にこの二匹? が来てくれたことには感謝している。


「おっ、今日は珍しくデザートの廃棄があるな」


 他の店は知らないが、このコンビニのオーナーは俺の爺ちゃんなので、廃棄が出た場合は持って帰らないならば好きなだけ食べていいことになっている。

 ゆえに、一人暮らしのおっちゃんや大学生、それにパートのおばちゃん達なんかは食費が浮くと喜んでいる。


 俺も食費が浮くのはありがたいが、さすがにこの時間に食べるのはデブまっしぐらになりそうだから、他の皆の様に素直に喜べないが、ついつい美味そうだから食べてしまう。


「今日はこのシュークリームと、あーとーはー、ミートソースにするか」


 俺は廃棄のミートソースパスタを取りレンジで温めている間に、飲み物を買っておく。気分によってまちまちだが、ずっと一リットルの紙パック飲料を買っている。

 理由は安いからであり量もあるので、勤務時間中はそれ一本で十分だからでもある。あと、最大の理由がポイントが付くって事もある。

 同じ量のペットボトル飲料を買おうと思ったら、水だと安すぎてポイントが付かないし、ジュースだと値段が高いのだ。

 だったらスーパーに行って買った方が半額だと思ってしまう貧乏性な俺。


『チン!』


「アチチ」


 買った果物水と温まったミートソースパスタを持ってバックヤードに移動して、食べ始める。


「ほれ、スー。あーん」


 フォークに巻き取ったミートソースパスタをスーの元へ持っていけば、うにょんと変形してクリオネの捕食の様にフォークに絡まる。

 そのままフォークを引き抜けば、スーの体の中にパスタだけが残り、徐々に溶け始める。

 ムーにも同じ量を与えて、俺と食べようとした時に、店内ベルが鳴った。


『テロンテロン。テロンテロン』


「いらっしゃいませー?」


 不自然に語尾が上がってしまったのだが、その理由が先ほど帰ったばかりの王様が再び来店したからである。

 なぜかその後ろに見知らぬ人を引き連れて。


「初めまして蒼。私はヴォルフだ」

「初めまして。東蒼です」


 王様の後ろにいた人は、王様と比べると幾分か装飾などが控えめの出で立ちだが、頭が良さそうで冷徹って感じの人だ。ついでに眼鏡をかけており王様と同年代っぽい印象だ。


 そんな人から握手を求められたので、俺はレジから出てそれに応じる。


「ここのことはアイオーン神と、ここにいる馬鹿からすでに聞いている」

「あっ馬鹿?」


 ちらりと王様の方に視線を向けると、スッと目を逸らされた。


「えっ? 王様、何やっちゃったの?」

「私は何もしておらん」

「確かに何もしていないな。そのせいで私がどれだけ駆けずり回ったことか!」


 異世界での宰相という役職に就いているヴォルフは、怒りが冷めやらないのか王様がやらかした事の顛末を俺に語った。


「なるほど、よく分かった。俺は王様が悪いと思うぞ」

「何故だ!」

「ほら、蒼もこう言っているではないか!」


 宰相さんがここまで怒るのも無理はない。初めからここに来る前に王様が説明していれば済んだことだからだ。


「だが、私がこのスライムのことを説明してもヴォルフは信じないだろう!」

「いや、鑑定付きで説明してくれれば信じたさ」

「しかし、そうしたら君にバレてお忍びで好きな時に来れないではないか!」

「当たり前だろう! 君は王なのだぞ!」

「……取り敢えずさ、それまだ続く感じか? 俺飯の途中だったから食べて来ていい?」


 二人が延々と言い争う雰囲気で、俺が完全に空気になっていたからここに俺が居なくてもいいと思っての発言だった。


「そうだな。店内で騒いですまない。適当に店内を見て回るので、こちらのことは気にしないで大丈夫だ」


 宰相さんは片手を上げてそう言ったので、俺はお言葉に甘えてバックルームに向かう。


「なら、私は向こうに帰ーー」

「帰ってもいいが、あれを見るために帰るのだったらヴィクトリアにチクるからな」

「そんな殺生な!」


 そんな会話を背中で聞きながら、俺は少し冷めたミートソースパスタとシュークリームを完食した。


次回予告

「和菓子にハマる」


次回更新までしばらくお待ちください。

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