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第11話 買ったはいいけど保管する場所はあるのか?

ブックマーク、感想、評価ありがとうございます。

 聞いてもいない王様の性癖を披露されて思わず突っ込んでしまったが、俺の発言が聞こえていないのか再び雑誌を一つ取り、表紙に写っている女性を見てニヤニヤするエロオヤジ。


「あぁー。それ全部持っていると重いだろ? このカゴにいれていいから使って」


 すでに王様は、片手で数冊のエロ系雑誌を持っていて、この調子だと腕が大変なことになると思った俺は王様の足元にカゴを置いた。


「あぁ、すまない」


 会話はしたが、俺の方を見ないで真剣な表情で雑誌を吟味している王様。ぱっと見は物凄く絵になるんだが、俺は騙されない!

 なんせ吟味している手に持っているそれは、どこからどう見てもエロ本だからな!


「よし! これを全てくれ!」


 結局、ここに陳列されているエロ本を全てカゴにいれて、それを両手で持って俺に見せて来る王様。

 会社に勤めていた時にコンビニへ行った時や、いまコンビニで働いている時にエロ本の一冊や二冊を買っていく人を見た事はあるが、ここまで大量に買いに来る客なんて初めて見た。


「……あぁ。それじゃあ、こっちに来てくれ」


 結局全部買うのかよエロジジイ。と若干引きつつも王様を連れてレジへと向かう。

 俺も返品する用の雑誌を持ってレジへと向かい、会計をする。

 ちなみに返品作業は裏でする作業なので、先に王様の会計を済ませておく。


「全部でこれくらいするんだけど、こっちの現金って持ってます?」


 エロ本の合計金額が二万近くした。

 この二万という合計金額は、公共料金やプリペイドカード以外を購入の時ではあまり見ない金額だ。

 逆に公共料金フィーバーな時があって、その時は五万、十万近い金額になる時がある。

 その度に、ひぇー前に住んでいた家賃一ヶ月分ー! とか、定期半年分ー! とか思ってしまう俺。

俺は口座引き落としだったからどのくらい使ったとか、正直覚えていない。

通知が来ても、ふーん。で、チラッと中身を見たらすぐにゴミ箱へポーイだったからな。一応個人情報だからシュレッターにはかけていたが、それに今は爺ちゃん家に住んでいるから、家賃、水道、光熱費にガス代が浮いているので、社会人をしていた時よりも給料はガクンと落ちたが、何故か貯金が貯まる謎現象が起きていた。


「うむ。アイオーンよ、確かこのクラスティーナで換金が出来るのであったな」

「そうだよ! 昨日換金できるのをお金以外でもお願いしといたから、宝石とかでも大丈夫だよー!」


 そう。アイオーンの言う通りで、向こうの硬貨以外での換金もできるようにこっちの地球神にお願いをしていたのだ。


 昨日来た時にフライヤーを買っただけで現金を無くしたアイオーンは、お土産を買いたいと地球神に駄々をこねていたのだ。

 しかし、持って来た硬貨は使用済み。そのあとに何か持っていないかと、青狸が焦った時に「これでも無い、あれでも無い」と、道具をポケットからポイポイ出すように、アイオーンもポケットから得体の知れない物をそこら辺にポイポイと出していたら、砂つぶ程度の石が床に落ちた。

 それがどうやら鉱石のかけらだったようで、そのかけらにスーとムーが反応した。


『そちらの硬貨以外にも、宝石や鉱石を換金出来るようにしました。いま私が譲歩できるのはここまでです。これ以上迷惑をかけるなら……分かりますよね?』


 と地球神にそんな風なことを言われたアイオーンは、無言でコクコクと頷いた。アイオーンのおねだりに譲歩したけど、脅しをかけたって感じだ。


 そのあとに換金でできたお金でワインとチーズのスナックを買ってニッコニコで帰って行ったのだ。


「では、この宝石でどうだ? かなり小振りの物なので、装飾品に使用しようにも我々の品格に合わないと言われていたのだ」


 そう言って王様のスライムであるクラスティーナに、宝石をポイっと入れる。するとクラスティーナから五人の諭吉達が出てきた。


「ほう。これがこちらのお金となるのか」

「ああ。こっちだと一万、五千、千の三つが紙幣。五百、百、五十、十、五、一が硬貨って言われている。お金は何円って言って、円が最後につくぜ」


 隣のレジから紙幣と硬貨を持って来て、王様とアイオーンに見せる。

 何故隣のレジからかと言えば、会計中のレジはドロワーが開かないからだ。

 あと二千円札っていう紙幣はあるが、あれは今では珍獣扱いにされているくらいに滅多に見ない紙幣なのではぶいた。


「で、これで全て買えるのか?」

「もち……。そう言えば、あとニ〜三時間すれば雑誌の納品が来るんだが、もしかしたらこれ系の雑誌が来るかも知れないんだが、どうする?」

「なん……だと! 買うに決まっているではないか!」


 俺のところでは日付変更線辺りで雑誌の納品が来るので、そのことを王様に伝えるとかなりの勢いで食い付いた。


「さいで。あっ、そのエロ本って買ったはいいけど保管する場所はあるのか? ほら、奥さんとか恋人とかがいた時にさ」


 俺は親切心で王様に忠告した。

 あれは俺が中三の時だった。俺の友人の一人である神谷からエロ本を貰ったのだ。

 どうやら神谷の兄貴から譲られたエロ本であるらしく、それが巡り巡って俺の元にやって来たのである。


 俺が中三の時にはネット環境も今より良くなかったので、エロ関連はもっぱらエロ本だっだ。

 んで、貰ったエロ本は当然隠す。隠すのだが、何故か母ちゃんが全部見つけてしまうのだ。見つかった本はどうしてか分からないが勉強机の上に置かれて、そこに母ちゃんのメッセージが添えられていた。


 そのメッセージには、

『母ちゃん的には、26Pからの女の子が好きよ!』って、うわぁぁぁぁぁ! 母ちゃん中身見たのかよぉぉぉぉ! って発狂したっけ。


 ある時はベットの隙間に、またある時は本棚の奥の方に隠しておいたのに、悉く見つかってしまった時の俺の心境と言ったら地獄でしかなかったのだが、王様にはその心配は必要無かったようだ。


「大丈夫だ! なんせわしにはこのクラスティーナが居るからな!」

「って言うと?」


 ずいっと目の前に出された、王様専用のスライムであるクラスティーナ。

 それを見て俺は首を傾げたが、王様の続きの説明をアイオーンがしてくれた。


「ほら、8-10スライムにインベントリ機能を付けたでしょ? それで契約者以外には使用出来ない設定だから、スライムにアイテムを入れておけば見つかる心配も無いってことだよ!

 まぁ読んでいる最中に見つかったり、仕舞い忘れた時はどうしようもないけどね!」

「ふーん。なら大丈夫か」


 アイオーンの説明を聞いて、それなら大丈夫かと思い目の前のクラスティーナを軽く突いた。

 クラスティーナはスーやムーとの見た目の差がほとんど無い。

 唯一の違いと言えば、8-10の色が黄色ってことだけだ。


「スーー!」

「ムッムー!」


 そんなことを思っていたら、スーとムーに呼ばれた。

 どうやら頼んでいた洗浄が終わったらしいので見に行くと、そこに新品のようにピカピカになった道具類。

 普段洗っただけでは中々取れなかった、こびり付いた汚れなどが綺麗サッパリと無くなっていた。


「おぉすげぇ綺麗になっているじゃん! スーとムーは偉いなぁー!」

「スッスー!」

「ムッムー!」


 あまりの有能さにスーとムーを撫でていると、ふと思ったことがあった。


「ってか、改めて思ったけど、このスライム達の性能ってマジでヤバイな」


 汚れを綺麗にすることはもちろん。異世界からの転移に換金、さらに翻訳にインベントリの機能まで付いているとか、このスライム達は一体どこに向かっているんだ?





次回予告

「消えた王様」

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