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86話

いつも読んでいただきありがとうございます。


この度、初めてレビューを書いていただけました。

そういったことをどこに書いていいかわからなかったので、ここにてお礼をさせていただきます。


アルカード グリー様ありがとうございました。












「そういえば、シズカさんは王城に?」


「いや、連絡をしてから王城に向かう予定だったが、彼女は仲間?従者?になった3人を迎えに行くと言ってすぐに別れた。」


おや、別行動していたのか?


「一緒にいなかったのですか?」


「どうやら、シズカ1人に指名の依頼が来ていたらしいな。その依頼の間だけ別行動していたようだ。」


へぇ、そんなこともあるのか。


「まぁ、その依頼も無事に終わったみたいだし、ちょうど合流するところだったみたいだけどな。合流したら今日ここに来るはずだぞ?」


ん?そうなの?


「あぁ、魔王討伐に向けて必要な物を買うと言っていたからな。きっとここに来るだろう。」


……たしかに、シズカさんなら来そうだ。


「あ、でも勇者なのに城に行ったりはしなくていいんですか?」


「あぁ……それは、な。なんというか、勇者は行動の自由が許されている。魔王の討伐に力を貸してくれさえすれば他は基本的に自由なんだ。それに……」


なんか言いづらそうだが、何か言いにくいことなのか?


「シズカの場合は他の4人の勇者と、うまくいっていないからな。あの4人に気を使ってる城の者たちは4人の勇者の機嫌が悪くなるような人物を城へ近づけたがらんのだ。」


あぁ、なるほど。


「だから、基本的にシズカさんは自由なんですね。」


「そういうことだ。」


それはそれでよかったのではないだろうか。シズカさんは現状、楽しんで生活しているし、煩わしい権力の巣窟にわざわざ出向くこともない。仲の良くない4人にも近づかなくてよくて、信頼の置ける仲間は側にいる。悪くない環境だろう。

ここへ来るときの顔も初めて来た時が思い出せないほど明るい表情をしているし。


「おかげで私はしばらくシズカ会えていないのよ。タローから仲間が3人できたとは聞いたけど、紹介もされてないのよ?ひどいと思わない?」


プンプンと怒るマリア様。まぁ、本当に怒っているわけではないのだろうけど。


「まぁ、なかなか城にも行きにくいでしょうし仕方ないですよ。仲間3人は平民ですから。招かれてもないのに城へは入れないでしょう?」


いくら勇者の仲間と言っても功績も何もないただの平民が簡単に入城できるとは思えない。


「タロー様、ちょうど来たようですよ、シズカさん。」


「ん?そうなの?出迎えてあげてくれる?ここ通してくれればいいから。」


ロシャスは屋敷に近づくシズカさん達を敏感に察知したようだ。



▽▽▽▽▽



「タローくん、こんにちは!あ、あれ?マリア様?それにじいやさんにアンドレさんも。」


ロシャスに迎え入れられ、リビングへとやって来たシズカさんが、マリア様達がいることに驚きの声を上げる。


「久しぶりね、シズカ。元気にしてた?」


「はい!マリア様のおかげで、気ままに元気に生活できてます。」


なんとも快活な返事である。


「あ、そうだ。みんなを紹介しなきゃ。今一緒に活動してるリュトスとカラナとヤークです!」


一緒に来ていた3人を紹介する。


「話はタローから聞いていたわ。はじめまして、3人とも。」


「「「は、はじめまして。」」」


ぎこちなく頭を下げる3人。


「シズカ様、この方達は……?」


あぁ、この赤毛の女が誰か知らなかったのか。


「え?あ、えっと、こちらがフレンテ王国第3王女のマリア様、そのお付きのじいやさん。で、こっちの人が近衛騎士隊2番隊隊長のアンドレさんだよ!」


「「「え、ええーー!?」」」


驚きの声をあげながら目を見開く3人。


「な、なんでこんなところにそんな人たちが……あっ!!」


リュトスはそう呟きながらなにかに気づいたように声を上げだと思ったら地面に片膝をつき、頭を下げる。


「も、申し訳ありません。王族の方とは知らずに、無礼な態度を。」


さすが元貴族。敬意を払い、礼儀をただしたわけか。

それを習うように、カラナとヤークも同じ姿勢をとる。


「ここではそのようなことしなくて構わないわ。タローなんてそんなこと一度もしたことないし。」


「え?あ、すんません。そういうの疎いんで。」


と、とばっちりくらったー!


リュトス許さぬ。


「いや、しかし……。」


「リュトスはいつも堅いんだよ。マリア様がいいって言うんだから、いつまでもそれを続けている方が不敬だよ!」


「はっ!わかりました!」


シズカが言うと素直に従うリュトス。


「……シズカの言うことは素直に聞くのね。」


「なんか、すごい躾けられてるんですよね、シズカさんに。」


こんなやりとりが一通り終わったところでシズカさんが今日来た理由を尋ねる。


「それで、シズカさんは何か用だったの?アンドレさんが買い物に来るって言ってたけど、それが来た理由?」


「あ、そう!魔王が出るってアンドレさんから聞いたから、昨日3人を迎えに行って、今日買い物に来たの。」


「何が必要なの?」


「……何が必要なんでしょうか?」


買いに来た方が尋ねてどうするよ。


「常に準備している物を少し多めに持っておけばいいだろう。とくにポーションの類は多ければ多いほど助けになるはずだ。」


アンドレさんがアドバイスをする。


「うーん、そうか。じゃぁ、ポーションを少し多めに買っておこうかな。他は使ってない薬がまだあるし。」


シズカさんたち異常状態を回復する薬は必要ないが念のため持っている。それらは誰かを助ける時にしか使うことはないだろう。


「了解です。装備とかで必要な物は?」


「タローさん、矢があれば売って欲しい。」


あ、ヤークは弓がメイン武器だもんな。


「わかった、矢は倉庫にあるから後で持ってくる。」


ヤークが矢を買うときはいつも他の店で買っている。その理由は簡単で、俺の店では矢を扱っていない。ダンジョンから持ち帰る少し希少な、魔法の効果が付与されている矢が少しあるくらいだ。ただ、ヤークはそういった矢をタイミングを見計らいうまく使い分けるので、普通の矢と魔法付与された矢をストックしているわけだ。


「あとは3人ともそれなりの装備だからそのままの方がいいか。体に馴染んで来たところだろうし。」


「あぁ、このままで十分だ。」


リュトスは本当に偉そうに話す。ま、こいつも見下していたり悪気があるわけではないのだが、癖だろうね。


「3人とも、シズカのことよろしくね。」


マリア様が3人に向かって声をかける。


「「「はい!」」」


そして3人も気持ちのいい返事をする。それを嬉しそうに見ているシズカさん。


「よし、3人とも戦うか!」


この戦闘狂はさっさとどうにかするべきだと思う。

庭借りるぞー!と言って、3人を引きづるようにしながら庭へと向かっていくアンドレさんを見送り、俺はお茶を一口飲む。


「そういえば、タロー。このお茶いつもと違う味よね?」


「あ、え?そうでしたか?」


おや、違うか?あ、これは店で出してない方のお茶か。


「これは店で売ってないお茶ですね。」


「売ってない?店に出てない種類もあるの?」


「店に出てない物がほとんどです。店に出して売っている物はうちで飲むお茶の一部ですから。」


「そ、そんなに種類があるの?店に出てるだけでも5種類はあるのに。」


んー、ざっと5倍以上はあるかな。マーヤが割とお茶好きで、なにかと新作を作っているから増えていくばかりだ。


「いつもいろんなものを混ぜ合わせて新しいものを試しているようなので。その中でも美味しい物とか、みんなに評判の良いものは作り置きしてあるんです。」


そして、多くのお茶の中からさらに飲みやすく万人受けしそうなものを店で売っているわけだ。


「そうだったの。いいわね、気分によって違うお茶を楽しめるなんて。羨ましいわ。」


「タローくんは贅沢な生活してますよね。周りのみんなはすごくいい人ばかりですし。」


それにいたっては激しく同意する。


「って、あれ?シズカさんはアンドレさんの特訓についていかなくてもいいの?」


「え?行った方がいいかな?」


いや、行かなくてもいいだろうけど、行ったもんだと思ってたよ。


「あの3人は大丈夫かしら。戦闘力に関して言えば、アンドレはあれでもこの国1、2の実力なのよ?」


「逆にアンドレさんが大丈夫か心配ですよ、俺は。」


心を折られないだろうか。

マリア様は首を傾げ、俺の言葉が理解できないような仕草をする。

まぁ、3人の実力を知らないからな。今や弓が得意なヤークと近接戦闘してもアンドレさんは敵わないだろう。


久々に会ったマリア様とシズカさん。2人は会話に花を咲かせ、しばらく楽しいひと時を楽しんでいた。


「……。」


と、そこへ無言のアンドレさんが帰ってきた。


「3人ともおかえり。」


シズカは少し困惑気味な顔の3人を笑顔で迎える。


「アンドレ、どうしたのですか?」


「……マリア様、今回の魔王討伐の件ですが、恐らくは無事討伐することができるでしょう。そしてタローの出番もないと思われます。」


と、俺を睨むように見ながら報告をする。

俺を睨むな、俺を。


「……どういうこと?」


「この3人、城にいる4人の勇者より余程強いです。」


あーぁ。ちゃんと戦ってしまったようだな。


「……え?それは本当なの?」


「はい。手も足も出ませんでした。」


と、肩を落とすアンドレさん。

アンドレさんの説明によると、模擬戦ということで初めに3対1で戦ったが、一瞬で降参させられたらしい。そのあと、リュトスとヤークと1対1で戦ってみたが、文字通り手も足も出なかったということのようだ。

そして、近衛騎士の隊長に簡単に勝ててしまった3人は、自分たちの実力を改めて実感し、嬉しい反面、信じられないと言った感じだ。まさか、国のトップに名が上がるような実力者に勝てるほどとは思っていなかったのだろう。


「……そうなの。タローといると、現実が現実なのかわからなくなるわね。ここだけ、世界が違うみたいだわ。」


おぉ、マリア様上手いこと言うじゃないか。たしかにここだけ、周りとは違うことは自覚している。


「まぁ、それは置いといて。」


と、俺。


「置いておけるかー!どうなってんだー!」


と、アンドレさんが泣き叫ぶが、とりあえず無視して話を進めることにしよう。


「シズカさんは魔王討伐まではどうする予定なんですか?」


「うーん、今まで通り依頼を受けながら戦いの経験を積む予定。でもしばらくは4人で常に行動しようと思うし、王都からあまり離れないつもり。もしくは隣国まで先に足を延ばすかもしれない。」


それならすぐに対応できるしな。


「他の勇者たちはどうなんですか?」


「彼らも今まで通りよ。王城を拠点に王都付近で訓練。早いうちに隣国へ入る予定ね。あとは各自で必要な物を買いに行ったりはするかもしれないけど。」


「基本的には国が物を揃えるじゃないんですか?」


「えぇ、装備もポーション類も揃えるけど、基本的には最低限の物だからね。自分で必要な物は自分で探して買った方がいい物が見つかるかもしれないから。」


そうだよな。魔道具とかでも自分が欲しい物は自分で探した方が欲しいものが見つかるだろう。


「でも装備に関していえば、国で揃えられる最高級を揃えることになっているし、ポーション類も上級ポーションとか、効果の高いもの最低基準として与えるはずよ。」


それなら勇者たちも文句はないだろうな。きっと。


「シズカの装備には断然劣るけどね。」


と、付け加えるマリア様。

あれはかなりの高性能である。簡単には手に入らない。


「騎士団としてもタローのところで売っている味付きポーションは俺のところで優先して使うからな!勇者の分はない!普通のポーションを使うことになるだろう。」


アンドレさん……ひどい男である。

気持ちはわかるけどな。自分で買い付けに来てるわけだし。アンドレさんがいなければ俺も売ってないだろうしな。


「幸い、この国にシズカの装備を知る者はいないわ。シズカの装備を知られればどこで手に入れたか探られ、めんどくさいことになりかねないわね。」


そうだ、知られては困る。一応、マリア様の知り合い商人が偶然手に入れた物を売ってもらったことにしているが、シズカさん用にできているあの装備をその言い訳でどこまで通せるか分からんからな。


そのあとも魔王に関する話や、それに関連した今後の予定などを話してその日はみんな帰って行った。

ヤークは矢を、マリア様はちゃんと石鹸とお茶を買って帰った。ちなみにお茶はいつもと違うものをご所望だったので売ってない味を売っておいた。







次回投稿は9月23日(日)の予定です。

少しいつもより遅くなります、申し訳ございません。


レビューを書いて頂き、今まで以上に多くの人の目に触れることが増えました。ありがとうございます。今後とも皆様に楽しく読んでいただけるよう、頑張りますので、よろしくお願いします。

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