表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/102

5話

 







 ふはははは、美人の受付と話してもないし、登録するカウンターに行ってないからテンプレを回避することができたぜ。

 よくある新人に絡む冒険者うんぬんも、まさか買い取りカウンターに新人が来て登録してるとは思わないだろう。してやったりだ。


 たまたまだが。


 とりあえず冒険者登録も出来たし、門兵さんにお金と仮身分証返すか。

 と、思ったものの、すぐに返すとどうお金作ったのか疑われそうだからやめとくことにした。


 門兵さんに軽く挨拶をして外へ出て、町の近くにある薬草などが採取できる森まで来た。


「やっぱり草は多いし、いまいちどれが薬草と魔草なのかわからないな」


 そう思いながらなんとなく生えてる草に鑑定をかけてみる。


【薬草】

 ポーションの材料になる草。結構どこにでも生えてる。


「おわっ!? 鑑定できた。そりゃできるか。一気に楽になったな」


 草の見分けがつけばあとは摘んでいくだけなので、適当な数摘んで帰ろうと思って気がついた。


「入れる物がない……」


 小さな草とはいえ、数が多ければ結構な荷物になる。どうしたもんかと考えたが、いい案も思いつかないので、今日のところは持てるだけ持って帰ることにした。


 自分のステータスに索敵スキルというのがあったことを思い出し、周りの状況を把握するために使用してみる。すると、周囲の魔物などの存在が手に取るように認識できることがわかった。


「魔物は近づいてきたら倒す方針にしよ」


 基本、魔物は人間を餌として認識しているらしい。つまり近づいて来る魔物は、俺を食おうとしているわけだ。

 薬草、魔草を摘みながら、近づいてくる魔物を倒して、討伐証明部位と魔石を確保していく。


「結構奥まで来ちゃったな。ゴブリンが持ってた武器とかも売りたいから持って帰るとすると、さすがにもう持てない……帰るか」


 ゴブリンは襲った人や、人が放置していった武器を器用に使うことができるらしい。


「ゴブリンが盾を持っててくれたおかげ少し多めに持って帰れるのはラッキーだな」


 薬草や魔草、巾着に入らなかった討伐証明部位や魔石をまとめて盾に乗せて持ち、さて帰ろうと思ったその時、索敵範囲の隅の方に人が集まってる場所があることに気づいた。


「ん?なんであんなに奥の方に人が集まってるんだろ? まあ、とりあえず気にしなくていいか。暗くなる前に帰りたいし、よく考えたら今日なにも食ってないから腹減った」


 街に向かって走り出した時には腹が減ったことで頭がいっぱいになり、なに食べようか考えてばかり。おかげでその人の集まりのことはすっかり忘れていた。


 時間も時間なので街へ入る門に列はできていなかった。今日何度目かの同じ門兵に軽く挨拶して、冒険者ギルドへ向かう。


 とりあえず依頼完了を確認してもらうために列に並び、少し待つと自分の順番になる。


「本日はどのようなご用件でしょうか? ボカの冒険者ギルドは初めてですかね? 冒険者登録ですか? それともそれらの買い取り依頼でしょうか?」


 美人受付嬢は盾に乗せた物を見ながら聞いてきた。


「いえ、実はさっきハンナさんに登録してもらいまして、常時依頼を受けたので、依頼完了報告に来ました」


「あ、そうなのですね。それではギルドカードの提出お願いします」


 笑顔で話しかけられ気後れしそうになる。

 ほんま美人や。


「カード確認しました。それでは、討伐証明部位などをこのトレーにお乗せください」


 トレーにゴブリンの右耳10個、グレイウルフの牙5本、スライムの魔石6個、コボルトの右耳3個、薬草45本、魔草40本を提出した。


「あ、魔石はスライムの討伐証明ということになるのですが、他の魔石と区別がしづらいので、魔石として買い取りしますので、あちらでお願いします。」


 そう言われたので、魔石は手元に戻した。


「では、確認と計算しますので少々お待ちください」


 手早く確認と計算作業が行われ、それほど待つことなく再び呼ばれた。


「タローさん、確認と計算終わりました。確認お願いします。ゴブリンの右耳10個、グレイウルフの牙5本、コボルトの右耳3個、薬草45本、魔草40本で、ゴブリンの討伐が1匹5ダル、グレイウルフの討伐が1匹7ダル、コボルトの討伐が1匹5ダル、薬草1本3ダル、魔草1本5ダルですので合計435ダルです。お受け取り下さい」


 硬貨の入った袋を出して、カウンターに置いてくれた。


「それにしても、薬草と魔草は間違っていた草が一本もなかったですし、数も多かったので驚きました。すごいですね。これからも頑張ってください」


 満面の笑みを向けられ、慌てる。


「あ、ありがとうごじゃいます。」


 美人に褒められて噛んだ。


 とりあえず噛んだことはなかったことにして、魔石の買い取りをしてもらうために、ハンナさんのいる買い取りカウンターに向かう。


「ハンナさーん」


「おや、戻ってきたのかい? おつかれさん。初めての依頼はどうだった?」


「なんとかなりました。魔石の買い取りお願いできますか?」


「はいよ、ここに出しておくれ」


 差し出されたトレーに魔石24個を乗せる。


「結構な数あるじゃないか! 全部ゴブリンかい?」


「いえ、ゴブリンとスライム、グレイウルフ、コボルトです」


「ん? グレイウルフの毛皮は剥ぎ取らなかったのかい? あれば買い取れるけど……」


「実は荷物入れる袋持ってないことに気づきまして諦めてきました」


「あら、そうだったのかい」


「それで相談なんですけど、明日も同じような依頼を受けようと思っていまして、明日は朝からいこうと思うので、素材とかももう少し増えるかなと思ってるんです。ギルドで荷車みたいなものって貸し出しとかしてないですかね?」


「貸し出しなら冒険者ギルドでしているから、朝ギルド職員に声をかければ貸してくれるよ」


「そうなんですか。よかった、ありがとうございます」


「うん、それじゃ少し待っておくれ」


 魔石の買い取り計算を待つ間、ステータスの確認を行うことにした。


 名前:タロー

 性別:男

 年齢:15

 種族:人族

 職業:見習い商人

 レベル:19

 HP:1300(27500)

 MP:500(27500)

 STR:400(8500)

 VIT:550(8500)

 DEX:500(8500)

 AGI:500(8500)

 INT:700(8500)

 スキル

 体術Lv1(Lv10)

 剣術Lv1(Lv10)

 火魔法Lv1(Lv10)

(水魔法Lv10)

(風魔法Lv10)

(土魔法Lv10)

(雷魔法Lv10)

(光魔法Lv10)

(闇魔法Lv10)

 治癒魔法Lv1(Lv10)

(空間魔法Lv10)

(時空魔法Lv10)

 生活魔法Lv5(Lv10)

(無詠唱Lv10)

(索敵Lv10)

(鍛治Lv10)

(錬金術Lv10)

(薬師Lv10)

(全耐性Lv10)

 鑑定Lv2(Lv10)

(隠蔽Lv10)

(スキルオペレーターLv10)

(棍術Lv4)

(突撃Lv3)

(吸収Lv2)

(分裂Lv2)

 解体Lv2


 加護

(全能神の加護)


 またレベル上がってる。

 それに解体のスキルが増えている。しかもLv2?

 どういうことだろか。解体なんて魔石取るくらいで解体という解体してないのにLv2になるのか? まさかこれも加護の効果か? 全能神だしな……。

 ま、スキルを自力で覚えやすいのもありがたいし、感謝しとこ!


「タロー、終わったよ」


 自分の中でじいちゃんのおかげということで解決させたとき、ちょうどハンナさんに呼ばれた。


「今回のも全部銅貨8枚で買い取るよ。全部で192ダルだね。はいよ!」


 ゴブリンが持ってた剣とかって、たぶん鍛冶屋とかが買い取ってくれるんだよな?


「ゴブリンが持ってた剣とかが少しあるんですけど、それはここじゃ買い取ってないですよね?」


「剣とかは鍛冶屋とか武具屋にもってけば買い取ってくれるよ。安いとは思うけどね。」


 あ、宿のことも聞いてみるか。


「ありがとうございます。あと、この辺でいい宿ってないですか?」


「ん? 宿かい? それなら大通りを門の方へ少し行くと 宿り木 って宿があるからオススメだよ。私の妹夫婦がやってるのさ。」


「そうなんですか。じゃあ、そこ行ってみます。ちなみに鍛冶屋は近くにありますかね?」


「ここから一番近い鍛冶屋はギルド出て門の方へ向かうとすぐにある、ハンマーの看板の店だ。同じ方角だから宿り木行く途中に寄ってみな」


「ありがとうございます」


 お礼を言ってギルドを出る。とりあえず全部で809ダルか。宿屋が一泊いくらかわからないけど、とりあえず泊まれるだろう。


 少し歩くとすぐに鍛冶屋が見つかった。買取価格は安いって言ってたけど、そんなにいい武器なわけでもないし、持ってるだけ邪魔だから売ってしまおう。


「すいません!」


 鍛冶屋に入ったが、店員らしき人が見当たらなかったので、とりあえず声をかけてみると、奥からムキムキの厳つい顔のおやっさんが出て……くると思ったが、ひょろっとしたメガネのおっちゃんだった。


「あいよ、いっらっしゃい。なにか武器をお探しかい?」


 下がったメガネを直しながら、おっちゃんが聞いてきた。


「あの……いらない武器を売りたいんですが、買い取ってもらえますか?」


 売る予定の剣2本と盾を見せながら聞いた。


「はいはい、いいよ。とりあえずそれらを見せてくれるかね?」


 剣と盾をおっちゃんに手渡す。


「うん、これは安物の剣と盾だね。剣は片方は研げばそのまま安物として、売れるけどもう片方は、鋳つぶすしかない。盾はそのまま安物として売れる。全部で大銅貨1枚にしかならないけどいいかい?」


 もっと安いかと思ったけど、大銅貨1枚になるならいいか。


「はい、大丈夫です。それでお願いします」


「はいよ、じゃあ、これ」


 差し出された大銅貨を受け取る。


「お前さんは、冒険者だよね?武器はその小さな剣だけかい?」


「はい、今は冒険者になったばかりでお金がないので、とりあえずこれで活動してます」


「うむ……駆け出しの頃は苦労するだろうね。本当はしっかりした武器を持つべきだが、なかなかそうもいかないしな。そういう子たちには安物の剣も立派な武器だし、安物でもなるべくちゃんとしたものを売りたいものだ」


 おっちゃんが言ってることは鍛冶屋として尊敬できることだな。


「お主が売ってくれたような武器も、安く仕入れて丁寧に手入れして、安く売ることができれば、駆け出しの冒険者も助かるってもんだ。またなにかあれば売っておくれ。そして、お主もはよ駆け出しから抜け出して、少しでも使いやすいものを買ってくれるようになってくれたら嬉しいね」


「そうですね、身を守る大切な武器ですからね。命あっての冒険者ですよね」


「うむ、そうだ。よし、お主の剣も研いでやるから貸しなさい」


「え? いいんですか?」


「あぁ、いいさ。少しでもいい武器を使わねばな。今日はサービスだよ。少し待っていなさい。」


 俺の剣を受け取りながらにこやかに言ってくるおっちゃんは、駆け出し冒険者にとって、きっと頼りになる人なのだろう。


 武器をみながら少し待つと、 おっちゃんが戻ってきた。そして研ぎ終わっただろう、剣を差し出してくれる。


「ほれ、研ぎ終わったぞ。また武器が必要なとき、売りたいとき、研ぎが必要なときは顔出しな」


「ありがとうございます」


 優しいおっちゃんにお礼を言って鍛冶屋を出る。

 とりあえず今日やることは終わったかな。さて、宿屋へ向かおう。


 宿屋へ向かいながら、周りを見ていると、やはり、奴隷となっている獣人が少し多いように感じた。奴隷じゃない獣人も普通にいるが、たまに見受ける感じからすると、獣人への人あたりは強いように思う。いわゆる人族至上主義のような感じなのかもしれない。モフモフは素晴らしいのに嘆かわしいことである。


 そんなことを考えながら歩いていたら、目的の宿屋へと到着。

 扉を開けると左手にカウンターのようなところがあり、同い年くらいの明るい茶髪をポニーテールにした可愛らしい女の子が立っていた。

 その奥には食堂らしき場所が見える。


「いらっしゃい! 宿り木へようこそ。お泊りですか?」


「はい、ハンナさんに教えてもらってきました。一泊いくらですか?」


「あ、ハンナおばさんの紹介なんですね!一泊大銅貨3枚、朝夕の食事付きで大銅貨4枚です!お湯が使用したいときは銅貨1枚でご用意できますが、ハンナおばさんの紹介ですし、お湯の代金はサービスしときます」


 笑顔で教えてくれ、サービスまでしてくれた。ハンナさんにも感謝だ。

 大銅貨1枚でだいたい1000円くらいの感覚だろうか?宿代と考えたら安いな。少しお金貯まったら違う街にも行ってみたいし、あまり長居する気は無いけど、まだ色々情報不足でもある。


「じゃあ、とりあえず食事付きで5日でお願いします」


 銀貨2枚を出しながら答えた。


「はい、かしこまりました。銀貨2枚、ちょうど頂きます。お名前をここに記帳してください。こちらが部屋の鍵です。2階の右手側の奥から2番目の部屋をお使いください。今日のお食事はどうされますか?」


「お腹ぺこぺこです。食べたいです」


「ふふふ、わかりました。すぐ用意できるので、お部屋に荷物を置いたら奥の食堂へお越しください。あ、私はアニーと言います、よろしくお願いします」


「俺はタローです。しばらく厄介になります」


 名前を書いて鍵を受け取り、俺は2階の部屋へ向かう。

 部屋に入るとそこはベッドと小さめの机と椅子があるだけのシンプルな部屋だった。とりあえず荷物を置き、空腹がつらいと訴え続ける腹にもうすぐ飯が食えるぞと励ましの言葉をかけながら、食堂へ向かう。腹に話しかけるとか、空腹のせいで頭までイカれてしまったのだろうか。


 食堂はいい匂いで満たされており、食事中の人が何人か座っていた。


「タローさん、食事持ってきましたよ。今日のメインはグリーンボアの肉を焼いた物です!」


「グリーンボアですか。美味しそうですね。ところでグリーンボアってなんですか?」


 食べながらアニーに聞いてみた。日本にいた頃のラノベなどによる偏った情報から考えると、ボアって言うくらいだからイノシシかなにかかな?それにしてはさっぱりした肉だなあ。シンプルだけどなかなかうまい。


「え? グリーンボア知らないんですか? グリーンボアはグリーンボアですよ! こう、長くてニョロっとした…鳥の卵とか丸呑みしちゃうあいつですよ!」


 ブフォッ!! 蛇じゃねーか!!


「…あ、あいつですか。グリーンボアって名前なんですね。あははは、とてと美味しいです」


「それはよかった。ゆっくり食べてください」


 立ち去るアニーを横目に、少し吹きそうになってとっさに口を手で押さえたときの汚れを拭きとる。

 それにしてもびっくりした。まさかのヘビか。どうりで鶏肉みたいなさっぱりした感じな訳だ。おいしいからヘビでもなんでもいいんだけど、さすがに予想外であった。でもうまい。


「ふぅ、食った食った。ごちそうさま。」


「はーい、片付けはしておくのでそのままにしておいてくださーい」


 奥からアニーではない声が答えてくれた。今のがハンナさんの妹さんだろうか。そのままでいいと言うことなので、食器をそのままにして部屋へ向かう。途中アニーと会ったので、お湯をお願いしておいた。


 部屋に入り一息つくと、アニーがすぐにお湯を持ってきてくれた。


「予想はしてたけど、風呂に入れないのは辛い。風呂付の家を買うことを目標にしようかなぁ」


 ボヤきながら体を拭いて、クリーンアップをかけ、ベットに入ったらすぐ眠りについてしまった。










2018.9.23 編集

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ