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47話











ザンバラと別れ、少し街で迷いながらも、無事に店へとついた。


「ご主人様おかえりなさーい!」


「ただいま。今日はもう店仕舞いの時間か。」


「そうですよ!もうすぐ片付け終わります。」


店に着くと、ジーナが店の前の掃除をしているところだった。


なんだかんだで半日は店の手伝いをサボってしまった。


ほんの少しだけだが、店の片付けを手伝い、皆で屋敷へと戻る。

その夜、ザンバラについてロシャスに相談してみた。


「と、いうことがあったのですが、どう思われますかロシャスさん。」


「ひどい者ですね。自分の利益しか目にないのでしょう。」


「だよねぇ。それでなんとかならないかなあと。あ、食事を提供することになってるから手が空いている誰かが朝持っていってあげてくれる?」


なにやらロシャスがじっと俺を見てくる。


「…え、なに。そ、そういう趣味はちょっと…。」


「そんなわけないでしょう。手が空いている者を考えてみただけです。」


あ、俺ってこと?俺が1番手が空いてるってこと?そうですか。そうですよね。はい、薄々気づいてはおりました。


「……まぁ、それはその日の朝に考えるとして、なにか情報がないかと思って。」


「サブレ子爵の情報は今のところ特にないですね。少し探りを入れてみましょう。」


「そうだな。あまり騒ぎ立て過ぎない程度に。」


さすがにロシャスも数多くいる貴族全てを知ってるわけないか。人族の国も多数あるわけだしな。


「それと、こちらも1つご報告が。」


「報告?」


「はい。最近ラビオスの店を嗅ぎまわる者がおります。今のところなにを探っているのか、なにがしたいのかわからないので放っておいておりますが、ご注意下さい。」


なんと……。そんな輩が現れたか。


「大方味付きポーションについてだろうなぁ。商売敵かなぁ。」


「そんなところでしょうな。」


「スミスカンパニーって商店として成り立ってるけど、普通に考えて卸業でもやってけるから損しないんだよな。」


材料採取から生産、そして販売まですべてがスミスカンパニーだけで完結してしまっている。


「それはどういうことですか?」


「例えば、今は味付きポーションを販売してるのがスミスカンパニーのみだろ?でも、その味付きポーションを色んな店で買えるように客のターゲットを冒険者や一般人じゃなくて、商人にするわけ。それでも結局味付きポーションを作れるのは今のところうちだけだろうから、儲け自体は変わらないってこと。むしろかなり増えるだろうね。」


相手が商人となれば単価は少し安くなるけど、売れる量が桁違いになるはずだし。


「なるほど、たしかに。販売の規模が大きくなりますからね。」


「そういうこと。ま、それはそれで商人じゃなくて今度はポーションを作る人たちから恨まれそうだけど。」


「それはそうでしょう。」


「だから今くらいの小規模で個人相手の販売量を制限して販売するくらいがちょうどいいんだよ。買える量が制限されれば、他の物を買わなければならない状況にもなるから。」


「そうすれば、今までと同じように他の店でも物は売れるということですか。」


「そう。販売量は落ちるだろうけどね。でもそれは新しい店が出てくれば起こることであって仕方のないことだし、その店に負けないように自分の店の品揃えや、品質、販売方法、販売価格など色んなことを工夫するようになる。それが発展につながるから悪いことじゃないと思う。行き過ぎなければだけど。」


価格競争は悪くない。だけど低くなりすぎるのはよくない。品質の良い物にはそれなりの対価がなければならない。でなければ生産者は生活できないのだ。


「そうやって技術や物は新しく進化していくのですね。」


「そうだと思うよ。」


言うほど簡単ではないだろうけど。


「それはそうと、今の話してて思い出したんだけど、ザンバラが騙された商売方法っていいと思わない?」


「……タロー様、ついにそんな外道に。」


「おい、違うわい。新人冒険者に分割で装備を与えることだよ。冒険者の生存率をかなり向上させると思うんだけど。」


ついにって、俺が外道になる兆候を感じていたのか、ロシャスや。


「元手が全くない者からすればかなり助かる話でしょうな。」


「装備は質の良い物揃える。もちろん駆け出しに見合う物、高価ではない物を格安で。それを分割払い。支払いが終わるまでは次の装備を購入できないとか、分割払い利用できないとかの制限や、支払いはギルドで依頼達成の一部から差し引かれるとかそういう細かな仕組みは必要だろうけど。」


「色々と細かく決めなければ裏で悪巧みする者も出てくるでしょう。」


「そうなんだよね。ある程度は仕方ないと思う。それはこっちで対処するしかない。スミスカンパニー相手にセコいことしようとするとどうなるかしっかりと教え込む。そうすればそのうちそんなことするやつもいなくなるだろうし、それも含めて新人冒険者のためになるだろう。」


楽して稼ごうなんて思わないような制裁が必要だ。


「ふむ、たしかにそうかもしれませんね。」


「ま、急いでやることでもないし、頭の片隅にでも覚えておいて。」


俺は忘れそうだからね。


「はい、かしこまりました。」


「少し話が逸れてしまったけど、サブレ子爵と周りをうろつく者については少しずつ探りを入れる感じでみんなに伝えるよ。無理はしない程度でね。」


「それがよろしいでしょうな。あとは王女様に相談してみてはいかがですか?」


「……考えておこう。」


どのみち貴族が相手となれば王女様にも相談しなければならないかなあとも思ってたしね。

あまり相談したくないけど。

それに、最悪サブレ子爵にはなんの前触れもなく突如消えてもらえばいいことだし。


そんなダークサイドな考え方をしながら1日を終える。

次の日みなに集まってもらって昨日のこと、サブレ子爵のこと、店を探る者、ザンバラ達へと朝食を運ぶことなどを伝えておく。


「えぇ、俺が行きますとも。」


「いってらっしゃいませ。」


誰が食事を運ぶかの話になった時に1番暇なのが俺ということが明確な事実として証明された。


みなは忙しそうに働いていることがわかっていたさ。そりゃ、俺だって…………あれ?

俺って結構なんもしてないよなぁ。みんなにスキルも与えて有能になったし、俺の存在価値が薄れていっている……。俺必要なのかな?


そんな悲しいことを考えながらザンバラの元へと向かう。


「おはようございまーす!ザンバラさーん!」


ザンバラたちは廃墟となった建物の地下で生活しているようだ。

その建物に入ったところでザンバラを呼ぶ。


「…本当に来てくれたんだな。」


「約束は守る主義ですから。とりあえずこれ食事です。一日分はありますので。」


「すまない。恩にきる。それで、これが例の剣だ。」


剣を受け取り鑑定を使う。


「…これ綺麗に作ってありますけど、ミスリルは一切使われていないですよ。」


「……ほ、ほんとか?」


「えぇ。やられましたね。」


「はぁ。完全に騙されていたようだな。」


「そういうことになります。まぁそもそもが騙す前提のことですから。そんなに落ち込まずに。」


「あぁ。だが、タロー様に出会えてたことは幸運だったよ。」


あはは、買いかぶりすぎである。俺は道に迷っただけだし。


「とりあえず今日はこれで。また明日来ます。」


廃墟街から抜け、店へと向かい、そこから屋敷へと向かう。


「あ、タロー様帰ってきた!王女様が来てますよ!」


なんでだ。タイミング良すぎではないか?


「きゅ、急用を思い出した!」


「ダメです!」


クロが素早い…

逃げようと後ろを向いた瞬間目の前に回り込まれた。

しかし、両手を広げて通せん坊する姿が実にキュートである。


「よしよし。」


「にひひひ。」


とりあえず撫でておいた。


が、その撫でてる間に両手でホールドされ、嬉しいのだが、逃げられない。


「離してくれよ、クロー。」


「ダメです!」


前から抱きつかれたまま歩くのは無理があるのではないだろうか。

すると、スルスルと俺の体をよじ登り、おんぶをするような格好になった。

たしかに歩きやすくはなったが…両手で首に巻きつくように抱きつき、足は腰の部分でがっしりとホールドされている。


「はぁ。しかたない。どこにいるの?」


「リビングです!屋敷の!」


「おっけー。行こうか。」


トボトボとリビングに向かうと、王女様とアンドレとじぃやがいた。

いつぞやの組み合わせと同じである。


「こんにちは。お待たせいたしました。」


「御機嫌よう、タロー。」


アンドレさんはいつものようにおちゃらけていなく、ビシッとして騎士のようだ。

……あ、そういや騎士だったわ。


「なにか御用でしたか?」


「いえ、アンドレから新たに女の奴隷を買ったと聞きましたので、様子を見に来たのです。やっと来れました。」


なんの様子を見にくんの?ねぇ、なんの?


「…4人は今仕事で外に出てますので…。」


「4人も!4人も女奴隷を!」


「…3人です。1人は男ですから。」


「そんなに変わりないですわ!」


この人一体なにしに来たのだろうか。

暇なのだろうか。

アンドレも本当に報告してやがるし。まったくなんてこった。

ちなみに少々殺気を込めた目でアンドレを見ると知らぬ存ぜぬという顔をしているが、額に冷や汗を浮かべていることを俺は見逃さない。


「…クロ。とりあえず降りてお茶とお菓子お願い。」


「はーい!」


クロは俺を拘束したままであった。お茶をお願いするとやっと解放される。


「タロー様のところにいる女性たちはなぜみな綺麗なのでしょう。」


それは俺も疑問である。

みんなはもともとのハイクオリティ。美人揃いである。

それに加えて、食事は最高級で栄養も満点、運動もして、風呂も毎日入れて、快適な環境で寝れる。

綺麗にならないわけがない。

まぁ、最初からみんなが美しく可愛いからこそだが。


「うーん。栄養のある食事と清潔でストレスフリーな生活でしょうかね?」


「そういう理由なのかしらねぇ。不思議だわ。それなのにまだ女奴隷を増やすとは……なんて人なのかしら。」


それは俺が悪いのだろうか…。


「4人とも今日の帰りは遅いと思いますので後日紹介しますよ。」


4人は今日もダンジョンへと繰り出している。他の交代制の4人と計8人はダンジョンを順調に攻略している。

そろそろ100階層に到達するのではないだろうか。

ダンジョンで手に入る装備や道具も使えるもの、使いたい物は各自使ってもらうようにしているが、なまじ素のステータスが異常なうえ、全耐性スキルをもっているスミスカンパニーのみんなは、マジックアイテムなどを使ってはみるもののあまり必要ないなと思えるものも多いらしく、倉庫にたくさん溜まって来た。

ダンジョンのかなり下層であっても、今のところセレブロで手に入る素材には劣るので必要なもの以外は集めていない。一応売れるかもしれないのでマジックバックに保管はしているが希少素材と言われる物は溜まっていくばかり。依頼にある物は冒険者ギルドに売るのでその分は金になっている。

あとは、ものすごくたまにだが、エリクサーや上級ポーションなども手に入る。こういうものが高額で取引されているのだろう。

スミスカンパニーでは俺が作れるし、在庫も確保してあるのでそこまで必要としていないが。


マジックバックや結界石などは人気があるので売り出している。特にマジックバックは良い物でもたいした容量でもないので他の店よりも安く売り出している。俺たちは使わないし。

結界石は、「結界石4つで囲われた中は結界で守られる」というものだが、その質にも差があり、低級程度の結界石ではゴブリンやスライムなどのかなり低ランクの魔物しか防げない。中級程度になれば通常の街道に出る魔物をだいたい防ぐことができるため、野営をして旅をする商人や冒険者に人気である。


「ふぅ。やはりタローのところで飲むお茶が1番おいしいですね。」


「みんなのおかげです。ところで、これよかったらあげますよ。」


そういって取り出したのは前にダンジョンで手に入れた毒耐性の付与されたネックレスである。小さいルビーのような赤い宝石がトップにあしらってあり、その石に毒耐性が付与してあるようだ。

その宝石の名前は「ルビー」。地球と同じだった。謎である。細かい組成とかはわからないが、赤い見た目に名前がルビーなのは覚えやすくて俺としては助かるが。


「こ、これは?」


「たまたま手に入った物です。マリア様に似合うと思ったので。それに毒耐性は身につけていて損はないでしょう?」


見たときにマリア様の赤い髪にピッタリだと思ったのだ。それに命を狙われているなら毒で存在を排除しようとするものもそのうち出てくる気がするし、ちょうど良いかと思った。


ネックレスのチェーンなどはあまり良い物ではなかったので、メタルリザードの外皮を加工し作り直してある。チェーンや石留めもシンプルだが細かな細工をしておいたし気に入ってくれると良いが。


それにしてもこれを作っている時、自分の器用さに驚いた……ま、スキルやステータスのおかげだが。


「た、たしかに、毒耐性が…しかも催眠耐性まで。それもかなりの高度な耐性ですよ、お嬢様。それに…結界も?結界も付与されているようです。1つのアクセサリーに3つも効果があるものなんて見たことありません。」


俺の取り出したネックレスを見つめながら、じぃやも驚いている。

メタルリザードの外皮で作ったチェーンには催眠耐性を付与した。毒耐性も限界まで高度な物に作り変えてあるのでそんじょそこらの毒では毒殺される心配はないだろう。

あと、石を留めている台座には一度だけ有効な結界も付与してある。

毒と催眠が防げて、一度だけだが不意打ちも防げるとなれば、とりあえずはなんとかなるのではないだろうか。



………あれ?これってもはや俺の自作じゃないか?

しかもよく考えるとやり過ぎた感が半端ない。

アイディアは元のアクセサリーからだからな、うん、どっかでネックレスが見つかってもおかしくないはず。


……深く考えないようにしよう。うん。


「タロー、そこまで私のことを……。」


「と、思ったけどやっぱりあげるのやめよう。」


王女様が変な思考に走りそうになってるのであげるのをやめようかと。


「……嘘です。冗談です。ください。」


王女様が真剣な眼差しで……というより射殺されそうなほどの目力で訴えてくる。

ついでにじぃやまでもが真剣な眼差しだ……もはや血走っている。


「……差し上げますとも。そのためにあるのですし。どうぞ。」


「ありがとう、タロー。大切にします。」


惚れ惚れしそうなほどの笑顔でお礼を述べてくる。


スミスカンパニーの皆を見慣れていなかったら俺のHPはゼロになるところだろう……。


意外にも危険人物である。


ちょうどいいからサブレ子爵のことを聞いてみようかな。









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