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43話








翌日から、新しく入った4人を冒険者登録したり、店の説明をしたりする。


ゲートのことや地下の森のことなどのことは教えるか迷ったが、教えておいた方があとあと楽な気がしたので教えておいた。

4人とも開いた口がしばらく閉じることはなかったく、終始驚いた顔していたが、俺はそんなみんなのお口に虫とか入らないのだろうかと、変な心配をするだけであった。


「と、まぁ今日はうちの事情を色々知ってもらって終わってしまったけど、明日からは働いてもらうからよろしく!」


4人とも頷くだけである。


「なんか心配事でもあるの?」


なにかトラブルがあってからでは困るので先に聞いておいた方がいいだろう。労働環境はクリーンがいいのよね!


「…貴族でないとは聞いていましたが、はるかに想像以上のことで…ちゃんと働けるのか不安というか…。貴族の家にお仕えするよりも大変と言いますか…。」


アランの心配ももっともかもなあ。


「心配ないよ、ちゃんと働けるから。でも、うちのことは極秘事項ばかりだからね。言いふらさないことだけは約束してくれ。」


神妙な顔をして頷く4人を見てちょっと心配になるが、スキルの調整もするし大丈夫だろう。

そのうち慣れるはずだ。


「ちょうどみんないるから明日からの予定を聞いて欲しいんだけど。」


「なにか特別な計画でもあるのですか?」


ライエが後ろから聞いてきた。

近くにいるときはいつも後ろで護衛のように控えるのが彼女のポジションとして落ち着いているようだ。

やりたいようにさせているが、美人が後ろにいるとなんだかそわそわする。


「4人も入ったからしばらくは4人のレベルアップをするために、交代でラビオスのダンジョン攻略に専念しようと思う。」


「たしかに、ダンジョンならば下層に行くにつれ、魔物のレベルも上がるので経験を積むにはちょうどいいかもしれませんな。」


ロシャスの言う通りである。ついでにラビオスのダンジョン攻略も目指せて一石二鳥だ。


「基本的には4人組を2組で攻略する。アランとタニヤ、サリナ、ミーシャの4人から2人ずつ。で、こちらから2人ずつ。」


「他の人は店ですか?」


「そうそう、ジーナの言う通り他の人は基本的に店の営業と、あとは新しくラビオスにも店舗を作るからそちらの準備、それとみんなのご飯の準備とか畑仕事ってとこだな。」


在庫を少し余裕を持って準備もしたいし色々忙しくなりそうだ。


「4人のスキルの調整が済んでいれば、セレブロでも大丈夫なのでは?」


「トーマたちはあそこで余裕だろうけど、いきなりは無理だよ。パーティー組むから一気にレベル上がるかもしれないけど、やっぱり感覚とか慣れないとだし、そもそも戦闘すらしたことないはずだから。」


「ではしばらくセレブロでの材料採取は休みと?」


「うん、今急いで欲しい物もないし、だいたいの物は揃ってるから。」


「わかりました。」


「セレブロはダンジョン攻略し終わったらまた探索を始めよう。この4人も連れて、交代で探索と、採取を進める。」


元々メンバーはこれで納得してくれたようだ。


「他に聞いておきたいこととかある?」


「…あ、あの!」


「ん?ミーシャなに?」


「私…武具を作ることならばまだ未熟ですが少しはできます。しかし戦ったことはないので、力になれないかと…。それに皆様の持っている武器は見たこともない形で、素晴らしい武器です。鍛冶ができるといっても、私はまだそんなもの作ることができません。あと、スキルを調整とか、セレブロとかダンジョン攻略とか、話についていけなくて…。」


「大丈夫、大丈夫。鍛冶の実力はすぐ上がる。これは俺が作ったものだけど、素人が作ったようなもんだから、ミーシャが力をつければもっといい物ができるようになるはずだ。」


これは料理スキルのことから考えても予測できる。スキルに左右されるこの世界、スキルレベルが高いだけでやれることの幅もクオリティも上がる。それに加えて基礎的な知識とか技術とか持っているなら尚更いい仕事ができることだろう。

俺の言葉を聞いてミーシャの目が見開かれた。


「こ、これはタロー様が…。」


「そうそう。それで、スキル調整はあとでやるからわかるとして、ダンジョン攻略は明日から過ごしていけばわかる。セレブロも知ってる人は知ってる名前だけど、そのうちわかるから大丈夫。つまり、大丈夫だ!」


キメ顔をして言い放つ。


後ろでライエもキメ顔をしている。可愛い……が、なぜキメ顔したのか不明だ。


「全然大丈夫には聞こえませんが、まぁ、言う通りですな。」


ロシャスが辛辣なのに同意してくれている……俺の感情が弄ばれている……。


「色々慣れる必要はあるけど、そんなに大変じゃないと思うから、頑張ろう!」


こればかりは頑張ってもらうしかあるまい。

しかし、その辺にいる人たちよりはよっぽど楽な生活ができるはずだ。



それから、スキルの調整をして驚かれ、さらにひと騒ぎあったが、これで驚くことは大方一通り済んだのではないだろうか。

彼らにしてみれば一生分驚いたかもしれないが。


翌日から、商人ギルドで昨日ロシャスが見てきてくれた家の買い取り契約をしたり、その部屋の掃除や開店準備、ダンジョン攻略など予定通りのことをして過ごす。


▽▽▽▽▽


開店準備を終え、明日には店を開けると言う頃には4人もBランク冒険者程度には成長していた。


準備期間はそれなりに時間がかかったとはいえ、早すぎではないだろうか?


ラビオスのダンジョンもすでに40階層まで攻略が進んでいる。俺も何度かダンジョンへと潜ったが、王都のダンジョンとの違いはあまりなく、セレブロを知っている今のみんなにしてみればあまり旨味もないようだ。

本来は、ある程度下層まで来る実力のある冒険者ならば素材や、宝箱から出る様々な道具などを売却することでかなりの儲けは出るようだが。


そしてダンジョン攻略も早すぎではないだろうか?


ラビオスでのポーションの販売は味付きの物を全面に押し出して販売していくことにしている。

情報の早い者はすでにこのポーションの存在を知っていて話題にしているらしい。冒険者は街を渡り歩く人も多いため、商品の品質さえ優れていれば、こういう情報の拡散にはものすごく助けになる。


「タロー様に言われた通り、時折、味付きのポーションの話をしている冒険者がおりましたので、近々そのポーションを扱う店が開店するらしいと話しておきましたよ。」


ナタリーが話しただけでも2組の冒険者に開店の情報を流したというのだから、他の皆が話したりすることも考えれば、冒険者の間に開店の情報が出回るのも時間の問題だろう。

人は自分の知っているマル秘情報のというのを、人に話せずにはいられないもんだ。とくに冒険者のように、人より上に存在したいと考える人が多い分野ではその傾向が強い気がする。


「明日からラビオスの店も開店する。2店舗になるし、同時にダンジョンの攻略もするから大変だろうけど、よろしくお願いします。」


皆を集め、頭を下げお願いする。


「頭をあげてください。私達は当たり前のことをするだけです。タロー様にの側にずっといるためになんでもいたしましょう!」


「いや、それはたぶんライエだけだから。」


ライエが高らかに宣言したが、そこまで考えてるのはきっとライエだけだろう。

なぜか、「え?」っといった表情で周りを見回すがわかってないのはライエだけだ。みな、愉快そうに笑っている。


「私達は苦労などなにもしておりません。タロー様のやりたいようになさればよろしいかと思います。それはきっとこの世界の人たちのためになるのだと思います。その手助けをできるなら、喜んでお手伝いいたしましょう。」


「ありがとう、リーシャ。みんなも無理はしないで、自分の体調を一番に考えてね。こんなことやりたくないと思えば言ってくれればなにかしら対応するつもりだし。」


リーシャがありがたいことを言ってくれる。感謝だ。


長々と話していてもしかたないので、明日の開店に備えて解散した。


しかし、ひとつ思い出したことがあり、ミーシャを呼び止める。


「ミーシャ、ちょっと待って。」


「はい、なんでしょうか?」


「今って長剣と盾を使ってるんだよね?これ、よかったら使ってみて。使ってみて自分の扱いやすい方を使ってくれればいいからさ。」


そう言ってマジックバックから取り出したのは、この世界へ来てまだ数日と言う頃に出会った盗賊、アドルカスの使用していたバトルアックスだ。

やはり、ドワーフにはこの辺りの武器が似合うのではないだろうかと言う勝手な思い込みからの提供だ。

だが、小柄なミーシャにはでかすぎるだろうか。手渡すとき、小柄なミーシャの体には大きすぎるバトルアックスがさすがに心配になる。


「こ、これは…。」


しかし、予想とは裏腹に軽々と持ち上げ、幼さの残る体躯に巨大なバトルアックスがなぜかとてもしっくりときた。


「ちょっとしたツテで手に入れたんだけど、かなりいい物みたいだからミーシャにどうかと思って。」


「…タロー様ご存知だったのですか?」


ん?なにやら話がおかしな方向に向かい始めた気配。


「え?えー、いやぁー…。」


「やはり知っておられたのですね。」


なんか納得された。

正直に話せ!知らないことは知らないと言うんだ!


「…いや、知ら…」


「はい、ご想像通りこれは父が作った物です。」


Oh,no…なんてこった。


「タロー様が父の作った物を持っていてくださったとは思いませんでした。」


「…俺も持ってるとは思わなかった。」


正直な感想である。

しかし、ミーシャはバトルアックスを愛おしそうに見つめ、聞いていない。


「以前、将来有望な若い冒険者がいたそうです。その方のために作った、父の武器の中でもかなりの傑作の一つだと聞いています。父が語っていた形、性能そのものですし、何よりここには父の名が記してあります。」


まさかの名前入りである。

聞いてもいないのに色々と説明してくれた。


「…そ、そうだったんだね。」


「その冒険者の方が亡くなったか使わなくなったのかわかりませんが、ここに…私の元に来たことに何か意味があるのかもしれません。タロー様ありがとうございます。」


……深く考えすぎなのではないだろうかミーシャさん。まぁ、運命と言えばそうかもしれないが。回り回ってミーシャの元にたどり着いたこのバトルアックスはミーシャに使われるためにここにあるのかもしれない。


「使う使わないはミーシャに任せるけど、お父さんの作った武器だ、大切にしてあげるといい。」


「はい、ありがとうございます!」


勢いよく頭を下げ、元気に走り去っていくミーシャを見送る。


それにしても優秀な冒険者か…。

アドルカスがその冒険者なのか、それともアドルカスに命を取られた冒険者なのか。

正確なところはわからないが、まぁ気にすることはないだろう。盗賊の頭が使ってたとか言いづらいし。

ミーシャが喜んでくれたことだけでよしとしよう。


▽▽▽▽▽


そして次の日、ついにラビオスで店をオープンさせる。

店の位置は中心街から少し小道に入ったところにあるので特別目立つわけではないが、他にも店舗が並ぶ通りの一角だ。

噂を流した効果もあり、大繁盛というわけでもないが初日から店内には常に客がいる状態であった。


「さすがにポーションの売れ行きはいいですねぇ。お陰で他の薬品関係も売れていきますし。」


「冒険者にとっては生死を分けるかもしれない物だからね。そんなギリギリの状況なら味は関係ないけど、普通に怪我したりした時に飲むなら飲みやすい方がいいに決まってるし。」


「そんなもんですかねぇ。」


昼食を取るために交代で休憩をしていたとに、フランクとタイミングが同じだったのでたわいも無い会話を交わす。


「フランクは今までポーションを使ったことない?」


「えぇ、高級品でしたからね。村にはいくつか置いてあったみたいですが、村で生活してるぶんには大した怪我はしませんでしたし。私が村にいた頃は周辺の魔物も村の近くまで出てくることほとんどなく、怪我といってもたまに切り傷を作るくらいでしたから。」


「やっぱり、一般の人には高級品なんだな。薬関係も治癒魔法も。」


「えぇ、簡単には手が出せないです。タロー様のところで働いてからは忘れてしまいそうになりますが、貴族と冒険者や商人、町で暮らす平民、村で暮らす平民、生活の水準は驚くほど違いがあります。」


「その差は埋めるのはなかなか難しい問題だ。」


「差こそあれ、生活が辛いとかそういうことはないんですけどね。まぁ、それは個人個人がその生活にどう向き合ってるかによるかもしれませんが。」


「そうだよな。人間って周りを見渡して他人との比較をしてたらいつまでも幸せにはなれない。今の自分に精一杯向き合い一瞬一瞬を一生懸命生きていれば幸せになれると思う。」


まぁ、周りの影響というのも少なからずあるからそれだけでなんとかなるというわけではないとは思うが。

特にこの世界では階級が上になり権力を持てば持つほど横暴な人が増えている気がする。その権力を振りかざしたり、魔法の才能、剣技の優劣によって、多かれ少なかれ個人差はあり、簡単には割り切れないところも多分にある。

力に抗うのは簡単なことではない。

だが、ステータスとスキルという物が存在する世界、それを鍛え上げればいいと考えればある意味平等であるともいえる。全ての人が等しくステータスやスキルをあげれるかどうかはわからないが。


フランクと話しながら、せっかく行商してるんだから少しはそういう村に安くポーションや石鹸を下ろせるといいなぁと、理想を描きながら、美味しい昼食を食べ進める。






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