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40/102

40話








前に出てすぐ、戦闘が始まるが、僕とトーマさんはとりあえず相手の攻撃を防いだり受け流したりしながら、受けに徹する。


「はははー!避けるのはうめぇじゃねーか!いつまで逃げ回れるかなあー!」


僕が相手している2人は笑いながら攻撃を繰り出して来る。

しかしこんな攻撃を防がない方が難しいというレベルだ。

それなのにあの威勢。ある意味すごい。


そんな僕の様子が、防御で手一杯に見えたのか、例の3人組のリーダーが自分を奮い立たせるかのように声を上げながらこちら走ってきた。


「うおーーーー!!」


正直、邪魔だと思ってしまった。


しかし、僕はタロー様がいたからこんなステータスを手に入れて戦うことができるが、この人たちは自分の力で戦う力を手に入れ、ここまで這い上がってきたのだ。

今も恐怖に打ち勝ち立ち向かっている。


尊敬すべきだよね。


自分が持つ力に自惚れるのはこういうことだろう。いけないいけない。


なるべく盗賊2人の攻撃がリーダー君に当たらないように防ぎながらリーダー君が攻撃する隙を作って行く。


残りの2人もトーマさんの方へ向かったようだ。


「頭!!」


どうやら、ギルド長が盗賊の頭を捕縛することができたみたい。

それを見て声を上げた盗賊の1人に隙ができたのを見逃さず、リーダー君が袈裟懸けに振り抜いた剣をまともに受けたその盗賊は命を落とした。

相方がやられた盗賊はさすがに勝てないと思ったのか、逃げようとしたので、退路を塞ぎ捕縛する。


トーマさんの方も無事に盗賊2人を捕縛できたようだ。


「…うっ。」


リーダー君が少し気分の悪そうな顔をしている。


「大丈夫ですか?」


「…う、うるせぇ。ちょっと疲れただけだ。」


大丈夫だろうか。


「おつかれさん。盗賊も連れて少し休憩したら出発しよう。遺体は焼いておいてくれ。」


ギルド長に言われた通り、遺体を供養するために街道から外れたところで少し穴を掘り焼いてから埋めておいた。


「トーマさんお疲れ様でした。」


「お疲れ様。町までまだ少しあるようだし、引き続き気を引き締めていこう。」


盗賊も連れて行かねばならなかったので、少し速度は落ちたが、無事にその日のうちに隣町に着いた。

明日一日は自由にしていいということなので、少し訓練したら町をぶらぶらしよう。


「スミスの2人。ちょっといいか?」


次の日、トーマさんと町をぶらぶらして宿に帰ったところでギルド長に声をかけられた。


「どうしたんですか?」


「昨日の盗賊の件だが報酬は護衛依頼のプラスして5人に等分される。」


「はい、ありがとうございます。」


「しかし、盗賊5人分だけだ。他の12人については頭からの証言以外にいたという証拠がない。それに昨日ここに着いてすぐここのギルド職員が調査に出た。しかし、12人が隠れていただろう痕跡は見つかったが、死体もなにも見つからなかった。本当にいたのか?」


「いましたよ。ですが、それを証明する必要性を感じませんし、報酬もいりませんので。しかし、多数の盗賊を相手にしたことは内密にお願いします。」


実際に証拠を出せと言われれば死体を持って帰ってきているので証明することは可能だけど、それを出した方がややこしくなるという判断かなあ。

個人的には早く死体もマジックバックからだして供養してしまいたいけど。


「…そうか。しかしなぁ、それが本当だとして、その実力があるのにそのままにしとくわけにはいかない。」


「12人の盗賊を倒した事実が不確かなのですからどうしようもできないでしょ?」


「…まあな。だが、実際に俺が見た盗賊を相手にした時の戦いぶりから実力はかなりのものだと思うのだが?」


「それはご想像にお任せします。とにかく、タロー様に迷惑にならぬようお願いします。タロー様に迷惑をかけるようになった場合はそれなりの報いを受けてもらうことになると覚悟していてください。」


ト、トーマさんがこわい。

ギルド長脅しちゃって大丈夫なのかなぁ〜。

それこそタロー様がこんなこと知ったら怒っちゃいそうだよ。


「トーマさん、それくらいにした方がいいですよ。そこまでしなくてもタロー様なら大丈夫だと思いますし。」


「……そうだな。」


トーマさんが威圧したからさすがのギルド長も少し冷や汗かいてる。


「そうか、おまえらはあいつの奴隷だったな。」


「えぇ、そうです。なにか不都合が?」


トーマさんは何か気に入らないのか、ギルド長にくってかかる。


「いや、ない。奴隷だけで仕事をさせるやつもいることはいる。冒険者としてやってけるような実力のある奴隷を連れてる金持ちなんかめったにいねぇがな。そんな実力のあるやつを冒険者として働かせても奴隷になる程度の実力じゃ大した稼ぎにももらえねえし、護衛として買うのが一般的だろう。」


「つまり、タロー様がおかしいと?」


「トーマさん、そんなこと言ってないから。気にしすぎだよ。」


「タロー様に害をなすならば、止めなければならないだろ?」


どうやらトーマさんはギルド長がタロー様に害をなす恐れがあると判断し敵対するような態度だ。


「ギルド長もそんなことしないって。ね、ギルド長?」


「あ…あぁ、もちろんだ。」


「そうか、ならばよいのだが。」


「トーマさんは気にしすぎなんだよー。」


「タロー様に何かあってからでは手遅れではないか。ご迷惑をかけるわけにもいかない。」


「タロー様なら大抵のことなら障害にもならないから大丈夫だって。笑って生きろって言ってたじゃん。そんなに険しい顔してたらタロー様も喜ばないよ。」


「……そうだな。」


「そうそう、楽しく笑顔で生きろって言われてるんだから、それが一番タロー様の為になるよ!」


「フリックの言う通りだな。昔のことがあるから少し周りを疑いすぎているのかもしれない。ギルド長もすいませんでした。他に用がなければこれで失礼します。」


昔のことってなんだろう。奴隷商で売られる原因になったことかな。あの頃のトーマさんは体も酷い状態だったし。


「…あぁ、もう話は終わりだ。時間取らせて悪かったな。」


ギルド長の用も済んだようなので、部屋へと戻り、寝ることにした。


その夜、サガンはクランスミスの2人と話したことを思い返してなかなか眠りにつけずにいた。


「クランスミス…。いったいなんなんだ。」


サガンは王都冒険者ギルドのギルド長として仕事をするようになってから、数多くの冒険者を見てきたが、威圧されただけで自分が怯むような相手はこの世界にも数えるほどしかいないと思っている。

冒険者時代はそれなりに活躍し、Sランクの称号ももっている。今でも依頼が滞るとSランク冒険者として依頼をこなす現役冒険者としての一面も持ち合わせているサガンにとってCランクの試験を受けている冒険者に威圧されただけで怯んだことが信じられなかった。


「しかも2人とも奴隷だもんなぁ。信じられるかっての。」


自分を怯ませた相手がランクアップ試験を受けている冒険者というだけで信じられないというのに、2人とも奴隷だというおまけ付きだ。

よっぽど扱いがいいのか、人族も獣人も差別なくいい服にいい武器を持っていた。

それに加えて、あの自分の主人を慕っている様子。信頼してるというべきだろうか。何もかも信じられない。


「クランスミス…いや、あのタローってやつは一体何者なんだ…。」


決闘の時に見せたタロー自身の実力。執事のじいさんの雰囲気。奴隷の戦闘能力の高さ。どれをとってもクランスミスの謎が深まるばかりだ。

無闇に手を出してはいけない、そんな気がする。


「貴族相手にも躊躇いない感じだったしなあ。」


サガンは無茶な勧誘や依頼をしないようにしようと心に誓った。


▽▽▽▽▽


翌日、予定通り王都へ向け出発する。


「トーマさん、帰りは僕たちが前なんですか?」


「あぁ、ギルド長に頼まれた。索敵範囲の広いやつが前にいた方がいいだろうしな。」


あぁ、そういう理由か。

でも、後ろでリーダー君がすごい不機嫌なんだよなぁ〜。


「おい!なんでお前らが前なんだ!実力があるやつが前方の警戒をするべきだろう!この俺のように!」


昼食をとる為に休憩をしていると、ついにリーダー君がいちゃもんをつけてきた。


「その通りです。だから僕達が前方を警戒する担当になったのです。ギルド長の命令で。」


「なに?お前らの方が実力が上だと?ギルド長が経験を積ませる為に少し前方の担当にしたってことがわかってないのか?盗賊を倒すこともできないくせに。」


おっと、これは色々まずい。

盗賊を1人殺したことで、自分の力を過信し始めたのだろうか。

ギルド長の指示も自分の都合のいいように脳内変換されている。


「なにを揉めている。」


「あ、ギルド長!さっさと、俺みたいに実力があるやつをちゃんとしたポジションに配置してくださいよ。前方警戒は俺がやるべきでしょう?」


「なにを言ってるんだお前は。護衛の配置に重要性の差なんてものはほとんどないぞ。あるとすれば適材適所ってだけだ。」


さすがにもう盗賊もでないだろうし、好きにしろと言って、ギルド長はその場を去っていった。


「午後からは俺が前を歩く。でしゃばった真似すんじゃねーぞ?まぁ、お前らも強くなりたいなら、クラン・フラムロアに所属させてもらえるように頑張るんだな。ここで会ったのも何かの縁だ、入りたかったら口きいてやってもいいぜ。」


「いえ、遠慮します。」


即答断ったら、嘲笑うかのような顔をして去っていった。


いったいなんなのだろうか。

彼の言動が謎である。


「トーマさん、フラムロアってクラン知ってますか?そんなに有名なんですか?」


「名前は聞いたことあるようなないような…あまり周りのことを気にしてなかったからなぁ。」


トーマさんもよく知らないようだ。

あれだけ自分の所属するクランに自信があるのだからきっと、名の知れたクランなのだろう。

所詮、所属してるだけで、自分が強くなったわけではないというのに。


それ以降は3人組と揉めたりすることも特になく、無事王都に着いた。


「5人はそのまま出発前に集まった部屋へと来てくれ。」


ギルド長に言われるまま、部屋へと行き、待機する。


しばらくすると、ギルド職員が部屋へと来て僕達2人を呼んだ。


「クランスミスの2人は来てください。」


職員について行くと、ギルド長の部屋へと通された。


「待たせたな、座ってくれ。」


ギルド長の座ってる椅子の正面の椅子に2人で座る。


「結果から話すと、お前ら2人はCランクにランクアップだ。カードを出してくれ。」


「お、やったねトーマさん!」


喜びつつ、冒険者カードを出すと、職員が受け取り、部屋を出ていった。


「カードの更新をしてもらう間に、Cランクになることで増える指名依頼について話す。」


「これってギルド長が話すことなんですか?」


「いや、本来は受付か職員で済む話だが、お前らはちょっと特別だな。」


「特別…。」


どっちの意味だろう。


「指名依頼はわかるよな?」


「はい。だいたいのことは説明してもらってます。」


「指名依頼の多くは貴族や大商人からの依頼だ。お前たちに目をつけた貴族や商人から指名され、その依頼を受けなければならない。」


「多分、断ることになりますよ。」


「…本気か?」


「えぇ。基本的にスミスカンパニー専属クランとして活動する予定ですから。依頼はスミスカンパニー経由で受けます。受ける仕事も貴族商人平民関係なく、タロー様が認めた方、タロー様が力になると決めた方からのみとなる予定です。」


「…そんなことがまかり通ると?」


「まかり通します。」


「そんなやり方でやっていたら断られたりした貴族が黙ってないぞ。それに王都は俺がギルド長だからいいかもしれないが、他の都市でも活動するとなると、そこの冒険者ギルドがとやかく言うかもしれない。」


「想定内です。」


「想定内って、おまえらなぁ…。」


頭を掻き毟るようにしながら困った表情のギルド長。


「あとはタロー様が決定したことに従うのみです。」


「…はぁ。まぁクランの運営はクランに任せているからなんとも言えないが、大事にならないように頼むわ。クランを認めたギルドの問題にもなる。あとは受けた依頼や諸々の報告は冒険者ギルドにちゃんとするように言っておいてくれ。」


「わかりました。」


「話はそれだけだ。カードも出来てるはずだし、下の受付で貰ってくれ。」


終始トーマさんとギルド長の会話に参加できなかった…というより、口出すところがなかった。


まぁ、無事ランクアップできたことだし、早く帰ってタロー様に報告しなきゃ!

そういえば、あの3人組もランクアップできただろうか。合格できたかわからないが、あまり関わりたくはないのでカードを受け取ってさっさと帰ることしよう。


受付でカードを受け取り、無事3人組に会うことなくギルドを出ることができた。









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