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34話





「今日こそ馬車を買いに行く!」


朝、朝食を食べ終えてからそう宣言し、店のことなどをみんなに任せてロシャスと2人で家を出る。商人ギルドへ向かいサリーさんにオススメの馬車屋さんを聞くことにした。


「おはようございますサリーさん。」


「あ、タローさん。おはようございます。見てくださいこの髪!シャンプーのおかげで素晴らしい髪質です!」


ちょっと興奮気味のようだが、シャンプー関連は好評みたいだ。


「気に入って頂けてよかったです。」


「香りも良いですし、とても素晴らしいです!本当にありがとうございます。」


なぜか頭を下げられた。

こちらも商売としてやってるのでありがたい。


「こちらこそありがたいですよ。ところで聞きたいことがあるのですが。」


「あ、すいません。久々にタローさんに会えたのでこのお礼を伝えなければと少し興奮していました。」


「かまいませんよ。」


ニッコリ笑い、返事をする。


「それで、聞きたいことなんですが、馬車を購入しようと思ってるので、どこかオススメのお店はないかと。」


「そんなことでしたら、ここで発注できますよ!馬は自分で選んでいただいた方がよろしいかと思いますので、後で馬を販売してるお店を教えますね。それで馬車はどのようなものがよろしいですか?」


「あ、そうなんですね。」


なんと、ここで発注できるようだ。さすがは商人ギルド、注文発注を手広くやっているようだ。


「馬車はシンプルな幌馬車がいいですね。大きさも大きくなくていいので小回りのきく大きさでお願いします。」


「わかりました。完成まで1週間はかかるかと思います。料金は完成してからの後払いで、タローさんのご注文くらいの物でしたら大銀貨3〜4枚程度だと思います。馬車は完成次第ご自宅へお運びいたします。」


「わかりました、ありがとうございます。」


それから、馬の販売している店を聞き、商人ギルドを出てそこへ向かう。


「ここだよな?」


「そのようですね。馬もたくさんいるようです。」


店を見つけ中へ入る。


「いらっしゃい。」


「こんにちは。馬を一頭買いたいんですが。」


「そうか。ならさっそく馬を見に行くかい?」


「お願いします。」


馬は厩舎と店の裏側に広がる草原のような場所にいる。

厩舎にいる馬を順に見て行くが、これといってピンとくる馬はいない。温厚そうな馬やかなり元気な馬などいろんな種類がいた。


「あとは今の時間ここに放してる馬だな。」


「じゃぁ、ちょっと見て回ります。」


「ちょっかい出すと暴れるやつもたまにいるから刺激せずに見てやってくれよ?」


危ないなー。そんな馬を売っていいのか?

案内してくれた人は厩舎横にあるベンチで座って待つようだ。売る気があるなら一緒に見て回っても良さそうであるが。


「ロシャス、あいつ見て。」


広がる草原を歩きながら馬を見ていくと、異様な雰囲気を放つ馬を見つけた。


「あの真っ黒な艶の馬ですか?ん?あれは…。」


「オレの目が確かなら鑑定でペガサスと出るんだが…。」


「私にもペガサスという風に見えますね。」


やっぱりか。なんでこんなところにペガサスがいるんだよ。おかしいだろ。


「なぁ、ペガサスってどこにでもいるのか?」


「いえ、遥か昔に数度目撃されただけと言う噂です。それも真偽はあきらかではありません。」


「ペガサスという存在すら眉唾物なのか。」


「しかし、その時に見かけられたペガサスは純白の体に美しい羽を持っていたというのですが…。」


オレの想像通りのペガサスの姿だ。こっちではペガサスは真っ黒なのかと思ったがどうやら違うようだ。

しかし、そうだとするあの真っ黒なペガサスはなんだ?


「とりあえず近付いて見てみようか。」


2人でペガサスに近づく。

近づいてきたことに気づいたペガサスはこちらをじっと見つめペガサスの方もこちらに近づいてくる。

そして、お互いがすぐ目の前まで来たところで止まると、なんとペガサスが頭を下げた。


「お?なんかすごい賢い!」


「ペガサスですからね…たぶん。」


そんな会話をしてるとペガサスの体が一瞬淡く光る。


「ん?今のってテイム?」


「どうやらそのようです。しかもタロー様だけでなく、私にもテイムされてるようです。」


2人同時に!?そんなこともあるのか。


「【お初にお目にかかります。私は馬よりも早く、力強く働くことができます。戦闘だってこなせます。どうか私をお側に置いていただけないでしょうか。】」


「あ、これ念話だな?ってことはペガサスか。」


いきなりのペガサスからのセールストークだ。


「【はい、私です。】」


「うん、俺としては嬉しい限りだけど、ロシャスはどう?」


「いいと思います。ところでなぜ自らテイムされたのですか?」


「【あなた方から偉大なる力を感じました。私は本能でお側にお仕えしたいと、体が勝手に動くような感覚です。】」


ふむ。そんな偉大な力ないのだが。


「それで、君ってペガサスなんだよね?体は白くないの?」


「【私は本来の姿を隠し、普通の馬と変わらぬ姿をすることができます。正真正銘のペガサスです。本来の姿を晒せば要らぬ騒ぎを起こすだけですから。】」


なるほど、そういう事ね。


「じゃあなんでわざわざその姿でこんなところに?」


「【気分です。】」


なんだとー?

さすがのロシャスもポカンとした表情だ。


「気分?」


「【はい、私のような高位の魔物になると、その命は永きに渡る時を経ることができます。ですから、たまに人里に下りてはこのように人との触れ合いを楽しむのが私の気分転換の一つだったのです。】」


「なるほど。そんな理由ね。」


「【まさか、こんなところであなた様のような方々に出会うことがあるなどとは微塵も思ってはおりませんでしたが。】」


俺もこんなところでペガサスをテイムすることになるとは思わなかったが。


「まぁとりあえず君を買うことにするよ。店主に話してくるからついてきて。」


「【はっ!】」


なんか武士みたいなやつだな。


「おいおい、お客さん。こいつを手懐けたのかい?」


「え?こいつを購入しようと思ったんですが、ダメでしたかね?」


「いや、それは構わん。なんせこいつは今まで誰にも懐いたことがないんだ。この俺にだって最低限しか触れさせもしない。」


「そんなにですか?」


「あぁ、そんなにだ。賢いし、暴れることもないからこっちとしても大した苦労をしてたわけではないんだがな。ここまで懐いてるのは正直驚きだよ。」


「暴れないならいいですね。」


「あ、いや、無理矢理連れてこうとしたバカが来たときは暴れてたな。」


暴れてんじゃねえかよ!

「ははは」と笑いながら店主は話した。


「ちゃんと相手を考えてはいるってことですかね。」


「あぁ、そういう奴は俺にとっても店にとっても迷惑な奴が多いしな。そんな奴が来なけりゃ問題はないさ。」


「なるほど。」


「なんにしてもこいつが認めるやつなら売らねぇわけにはいかねえってことだ。これからこいつをよろしく頼むよ。」


それから購入手続きをしてペガサスを連れて店を出る。


「そう言えば名前は?」


「【主人様がお付けください。】」


あぁ、そのパターンか。


「どうしよう、ロシャス。なんかいい案ない?」


「うーん、そうですね…ガミラナ…」


「あ、やっぱいい。」


しまった。忘れていたよ、ロシャスの致命的な欠陥。ネーミングセンスの無さを。

なんとか名前候補を最後まで聞かずに止めることができた。

うーん、名前どうしよう。

ステータスを確認したところ、かなりの高レベル高ステータスだった。そして性別はメスである。

どうやら、かなりの希少な魔物ではあるが、地球にいた頃のように伝説上の魔物とかそういう括りではないようだ。さっき聞いた限りだとそれに近い気もするが。


「ラナにしよう。」


「【ラナ…素敵な名前をつけていただきありがとうございます。】」


「ラナって食事は何食べるの?」


「【基本的にはなんでも食べます。好みは牧草や野菜などです。】」


んー、地下の森に連れてくのが1番いいかもしれないな。

3人で話をしながら屋敷へと戻る。


みんなにもラナを紹介して、ラナを地下の森へと連れて行く。


「【…ここは屋敷の地下ではないのですか?】」


「そうだよ。魔法で俺が作った森だけどね。」


「【そんなことが可能なのですか…。】」


「ここなら何を食べても大丈夫だから、好きなように食べたり生活したりしていいよ。旅に出るときは馬車を引いて欲しいんだけど。」


「【ありがとうございます。こんなに良質な魔力に満ちた森や草原は初めてです。これほど素晴らしい場所で暮らせるのです、誠心誠意働かせていただきます。】」


地下の森も気に入ってくれたようでなによりだ。

厩舎に入れるよりよっぽどいいだろう。

地下の森の新たな活用法の発見である。


「【主人様!ここの草はなんと魔力が豊富なんでしょう!素晴らしいです!】」


…馬が小躍りする様子というのを初めてみた。


「魔力か…。やっぱりここの野菜とかの生育がいいのも俺の魔力の影響なのかな?」


「【そうだと思いますよ。他の森や草原ではいくら環境が整っていてもこのようなことにはならないでしょう。】」


やっぱりそういう影響もあったんだな。

一つ疑問が解消したような感じだ。


「ペガサスって何頭いるの?多い?」


「【いえ、数は少ないです。5頭もいないと思います。】」


そんなに少ないのか。


「そもそも人に見つかることがないんだよな?」


「【はい。基本的に人の目に触れないような場所で生活していますし、人の目があったとしても、普通の馬として他の馬に紛れることもできますので、滅多なことがない限り姿を目撃されることはないでしょう。】」


「あ、そうだ。どうせなら本来の姿を一度見てみたいんだけど。」


「【もちろんかまいませんよ!それでは…。】」


「あ、ちょっと待った!みんな呼んでくるから!」


屋敷へとみんなを呼びに戻り、全員で地下の森へと入る。


「よし、それじゃあ頼む!」


「【はい。】」


ラナの体が光り、姿が見えなくなったと思ったら光がおさまる。

光がおさまった、そこには神々しいほどの美しい純白の体と翼をもつペガサスの姿があった。


「おぉー。綺麗だ。」


みんなも口々に感想を述べている。

本当に綺麗だ。若干体が光っているような気もする。

神々しさと美しさを兼ね備えた素晴らしいフォルムである。まさに天馬だ。


「こんな姿でそのへんにいたらかなり目立つな。」


「【えぇ、ですから私は基本的に普通の馬と同じ姿で生活しています。】」


ラナは姿を先ほどの漆黒の馬へと戻した。これはこれですごくカッコいいんだがな。


みんながラナと戯れ終わり屋敷へと戻って行く。ラナが人懐っこい性格でよかった。


「馬車はまだ完成してないから旅に出るのはしばらく先になるけど、これからよろしく頼むね。」


「【はい、お任せください!】」


俺も屋敷へと戻り風呂へと入る。

ラナも近いうちに必要なスキルを与えたりスキルレベルをあげたりしよう。

馬車ができるまで余裕がある。そのうちに済ませばいいだろう。

ちなみに馬車も改造を施したいと思っている。

商人ギルドで馬車に乗せてもらったときに感じたのだが、地面の凸凹をダイレクトに感じて非常にお尻に優しくない。

足回りの改造は必須だと思うのだ。

あとは御者の座る椅子も心地いい物にして、幌の中でもくつろげる空間を作りたい。一応商人として旅する予定なので馬車の半分は荷が積めるようにするつもりだ。他はマジックバックに詰めてるとかそういうことにしておけばいいだろう。

そして肝心なのが王都の屋敷と馬車を繋ぐゲートを付与した扉作りだ。

これがあればいつでも行ったり来たりできる。

大体の構想はこんなもんだが、やり始めたら以外と時間がかかりそうである。

しかし、快適な旅の為に頑張ることにしよう。







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