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21話

 







「昼頃に30階層超えれるとは思わなかったなあ。」


 お昼ご飯を食べながら午前中を振り返る。今日一日で30階層まで来れたらいいなあと思ってたくらいだったが、ものすごいペースで来てしまった。

 3人のレベルアップは予想以上に順調だし、とてつもないスピードで移動している。みんな疲れないのだろうか。


「みんな疲れとかはないの?」


「体が動くのが楽しくて疲れは全く感じませんでした」


 リーシャが答える。そんなもんなのかなあ。シロもクロも元気だし、ロシャスは表情を変えてすらない。本当に平気なようだ。


 まさかここまではやく攻略が進むとは……いいことではあるが、こんなにはやく強くなっていくとは思わなかった。スキルのおかげもあるだろうし、もしかしたらじいちゃんの加護が周りにまで影響してるのか。その辺はよくわからないが。


「じゃあ、お昼ご飯を食べたら引き続き探索を進めようか」


 今日の昼ご飯は薄いパンで野菜やチーズなどを包んだものとスープだ。

 薄いパンはトルティーヤみたいな感じでおいしい。スープもなにかで出汁をとっているのか、ものすごくうまい。


 そういえば、ふと思ったが、冒険者としての依頼を全くこなしていないが問題ないのだろうか。その辺は地上に戻った時に冒険者ギルドの人に聞いておくことにしよう。


「よし、行こうか」


 午後の探索も順調に進んだ。魔物もレベルが上がっただけでそれほど種類は変わらなかったが、40階層に近づくとゴーレムとリザードマンが少しだけ出現した。

 ダンジョンの構造的には下へ行くほど1階層の広さが広くなっているようで、階段へたどり着くのにも時間がかかるようになり、魔物との戦闘回数も増えて行く。普通からすれば尋常ではないスピードで進んででいるだろうが、さすがに50階層まで行くには時間がかかり過ぎそうだ。焦る必要もないので少し早いが今日は41階層のセーフエリアから帰還することにした。


「今日はここまでにして帰ろう」


「まだ少し早いですがいいのですか?」


 リーシャの言う通り、まだ夕方に差し掛かったところだろう。


「うん、50階層まで行くには時間かかりそうだし、焦る必要ないからね」


 みながセーフエリアの魔法陣に入るのを確認して、ダンジョンの外へと帰還する。

 40階層のボスはスネークパンサーと言う魔物。体がでかい豹で、尻尾が蛇の魔物だった。すばしっこい豹自体の動きと変幻自在に動く尻尾の蛇が厄介な魔物だ。それに加えて蛇に噛まれると毒を貰うおまけ付き。凶悪なはずなのだが、戦いが始まってすぐに豹よりも素早い動きのうちの猫2匹が蛇を切り離してラスタがその蛇を焼き殺し、豹は切られた痛みと何をされたかわからなかった驚きに怯んでいたところをうちの犬が斬り伏せるというあっという間の惨劇だった。

 うちの3匹の方がよっぽど凶悪である。リーシャもシロもクロも息一つあげることのない完勝であった。もはや冒険者ランクで言うところのAランク以上は確実だろう。


「みんな先に家に帰ってて。俺ギルド寄ってから帰るわ」


「かしこまりました」


 こういう対応がかなり執事っぽいロシャスである。


「あ、先にお風呂入ってていいからね!」


 別れ際にそれだけ言い、ギルドへ向かう。

 ダンジョン近くの王都のギルドの支部はダンジョン帰りの冒険者でかなりの賑わいだ。


「依頼ボードはっと」


 お、常時依頼にブラウンアントの外殻とリトルマウスの牙がある。少し出しとくか。常時依頼ではないオーク肉の依頼もあるがこれはどうしようか。


「次の方どうぞー」


 あ、考えているうちに受付の順番がきたようだ。


「本日はどのようなご用件ですか?」


「ブラウンアントの外殻とリトルマウスの牙の依頼の達成報告をお願いします」


「はい、それでは冒険者カードと、ここにそれぞれの部位を出してください」


 適当に外殻と牙を出しておく。オーク肉はリーシャたちがまた料理で使うかもしれないので出すのはやめておいた。腐ることはないしな。


「たくさん持ってきてくれたのですね。合計すると依頼3回ずつ達成した量があります」


「あ、そんなにありましたか」


「今までの依頼の評価も今回の依頼の評価もいいですし、回数も規定に達しているので、ランクアップになりますが今から更新してもよろしいですか?」


「これ、パーティーでの成果なんですが、その場合はどうなりますか?」


「あ、パーティーでしたか。全員がFランクでしたら、この質であと2回達成していただきますと、全員ランクアップできますね」


「じゃあその時に全員でランクアップすることにします。ちなみに冒険者って依頼を受け続けないとカード剥奪とかありますか?」


「1年に合計5回以上の依頼達成がされない場合は失効となります」


「それはパーティー単位で一つの依頼達成したら、みんな一回ずつ達成したことになりますか?」


「はい、それはそのようになります」


「わかりました、ありがとうございます」


 報酬を受け取りギルドを出る。

 ランクアップかぁ〜。俺Fランクって響きがなんとなく好きだったんだけどなあ。どうするか。まあ、今回の依頼達成でみんな1年は更新できるから深く考えなくてもいいか。

 しかし、Aランク以上となると下級貴族と同等の地位と待遇が受けられるという話を聞いたからそれは少し魅力ではある。


「おい、お前! やっと見つけたぞ!」


 ん? あれは朝の巨人。

 じゃなくて、巨体の男。


「あぁ、今朝はどうも。腕の調子はどうですか?」


「どうですかじゃねえ! お前と別れてからしばらくしたら両手とも動かなくなっちまったじゃねーか! どーなってんだ! あの獣人は病気でも持ってたんじゃねえか? 治療費よこせ!」


 この後に及んでそんなこといっているのかこいつは。


「お金は今朝渡したので十分足りると思いますが? そもそもうちのクロに触れたのは右腕だけですよね? 言いがかりもほどほどにしてください」


「ふざけんじゃねぇ! あの金はもう使っちまってねぇんだよ! さっさと金出せ!」


 大銀貨一枚をそんなに一瞬で使えるもんか? そのお金があれば毒消しを買えるのに。まぁ、市販の毒消しでは大銀貨1枚分くらいの量の毒消しを買い込んで飲み続けなければ治らないかもしれないが。

 それにしてもいい具合に肩から先が動かないようだ。局所的に毒を回し、死ぬことはなく、治りはするが市販の毒消しでは簡単に治らないほどの微妙な加減。結果は上々なようだ。


「見た感じ毒が回っているようですし、クロに触れたのは右腕だけ。私たちが関係している証拠がありません。それに朝渡したお金で毒消しを買えば治ったのではないですか?」


「うるせぇ! つべこべ言ってねぇで金出せばいいんだよ!」


「無関係のことに払うお金などありません。それではさようなら」


 そもそも治療費もしっかり渡しているのだからここから先は無関係だ。

 せいぜい使えない両手で頑張って金を稼ぐか奴隷として身売りしてその金で治すか。頑張って欲しいところである。それで少しは改心してくれれば幸いだ。


 叫び散らす男を尻目に家路についた。


 家に着くといい香りが漂ってくる。疲れているのに食事を作ってくれたようだ。ありがたい。


「ただいま!」


「おかえりなさいませ、ご主人様。食事できたところですので食べましょう」


「疲れてるのに、ありがとうリーシャ」


「いえいえ、好きでやってることですので」


 うーん! いい女だ。食堂へ入るとロシャスとシロとクロが配膳をしているところだった。


「みんなもありがとう」


 みんなにっこり笑う。


「よし、食べよう。いただきます!」


 今日の夕食もとても美味しく大満足である。食後はいつも通りお茶を飲み、風呂へ入る。みんなが譲ってくれるので一番風呂だ。


「ラスタ、みんなとは仲良くやれてる?」


「【うん、みんな優しいね!】」


 あはは、念話で言葉がわかるのは俺だけだが、ちゃんと仲良くやれているようだ。

 よく考えれば戦闘中とラスタと3人のコンビネーションは目を見張るものがある。言葉はかわせずとも通じるものがあるのかもしれない。

 あいかわらず、ふよふよと湯舟に漂うラスタには癒される。


「明日はまた掃除だな〜。頑張ろう。」


 あ、そろそろ商店の建物だけでも依頼しておこうかな。掃除ついでに作ってもらった方がいい気もする。風呂から出たらロシャスに相談しよう。


「ロシャス!」


「はい、なにかありましたか?」


「いや、とくになにもないんだが、商店のことで少し相談」


「どんなことでしょうか?」


「今、屋敷の掃除してるから今のうちに建物だけでも建ててもらった方が効率いいかなって」


「なるほど、確かに建物建ててから少し掃除する必要もありますし、何か必要なものがあれば一緒に買物も済ませることができますね」


「塀の一部をぶち抜いて建物と塀を一体にする作りにしようと思うから建物自体は屋敷の中にできるわけだし、その時庭も散らかるだろ? 庭の手入れもまだだから、建物出来てから庭の手入れもした方が一気にやれると思う」


「それもそうですな」


「建物自体はシンプルな作りにする予定だからあとで変更とかもないだろうし。どう思う?」


「いいんではないでしょうか?」


「よし、じゃあ明日依頼してくるわ」


「わかりました」


 ロシャスの賛同も得られたことだし、明日商人ギルドで紹介してもらおう。



 ▽▽▽▽▽



 翌日、またしても掃除を皆に任せ、商人ギルドへ向かう。


「いらっしゃいませタロー様。本日はどのようなご用件ですか?」


 お、この美人受付嬢、俺の名前覚えててくれたようだ。登録と家探しにきたときに対応してくれただけなのにすごい!


「今日は屋敷に店舗を増築したくて、建設とかを請け負ってくれる人を探しにきたんですが」


「タロー様は本当にあのお屋敷にお住みになっているのですね」


「えぇ。なにかまずかったですか?」


「いえ、誰も対処できなかった物件でしたので、購入されたと聞いて驚いていたのです」


 そうか、だから名前覚えててくれたのかもしれない。


「今じゃ掃除も進んで、だんだん住み心地もよくなってきていますよ」


「そうですか。何もないのならよかったです。しかし、今まで誰も近づかなかったところへ住んでる噂が広まれば多少は注目を浴びてしまうかもしれませんし、なにかいちゃもんをつけてくる人もいるかもしれませんので気をつけてください」


 おっと。そういうところで注目を集める可能性はたしかにあるなあ。注意勧告してくれる受付嬢は優しい。


「はい、気をつけておきます。ありがとうございます」


「それで、店舗の建設という事ですが、商人ギルドを仲介として建設専門の商店への受注しておきす。お互いの顔合わせをしていただいて、詳細を決めていただくことになりますので、よろしくお願いします」


「はい、わかりました」


「それでは2日後には顔合わせをしていただけるように手配しますので、2日後にギルドへいらしてください」


 依頼も出来たことだし、さっさと家に帰って掃除手伝おう。


 屋敷の管理するのにももう少し人が欲しいし、店番する人も欲しい。あとは服作ってもらいたいし、いい素材でマジックバッグにするためのバッグとかも作りたい。裁縫の知識がある人も必要だ。だんだんと必要な人数もわかってきたから今度奴隷商のところにも行かなきゃだな。

 みんな冒険者登録するとしたら今度はクランの設立も必要だ。

 まぁ、店もクランも拠点はおなじことにすれば楽だし、商店の専属クランってことで他の依頼を受けるのを極力避ければクランの運営は楽になるだろう。クラン専門の奴隷を買って一流冒険者としておけば敵対勢力の抑制にもなりそうだ。なるべく敵対する人はいない方がいいが。商店をやる以上は商売敵的なのは出てきそうだしな。

 今の屋敷は相当数の人が増えても住める。風呂も銭湯並みに広いし、食堂もリビングも広い。部屋数も多い。しかし、あまりにも増えたら他の拠点も考える必要があるかもしれない。てか、よく考えたらあんなでかい屋敷に住んでた貴族って一体どんな貴族だったのだろうか。関係がある貴族に目をつけられないといいが……。


 そんなこんなで、色々考えを巡らせていたらいつの間にか家の前に着いていた。


「ま、今色々考えてもしかたない。とにかく掃除頑張ろ。」


 そう思ってとりあえず掃除を頑張ることにした。










2018.9.30 編集


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