2話
「まず、太郎が向こうの世界に行く時、年齢種族容姿はほぼこのままになるが大丈夫かの?」
「うん、大丈夫」
「次に、これから行く世界の名前はクラーネオと言って、そこで生きる者にはレベル、ステータス、スキルなどが存在する」
「へぇ、そんなものがあるのか」
これから行く世界を想像して、興奮し、期待する。
「向こうの世界での成人は15歳じゃから、太郎はちょうど成人の歳じゃの。人や種族によってかなりバラつきはあるが、クラーネオに住む平均的な人族の成人男性のステータスはこんなもんかの」
名前:
性別:男
年齢:
種族:人族
職業:
レベル:20
HP:1500
MP:400
STR:500
VIT:450
DEX:500
AGI:500
INT:600
スキル
加護
「兵士や騎士などはもう少し高いし、勇者と呼ばれる者はなかなかに強いぞ。だいたいこれくらいじゃ」
名前:
性別:
年齢:
種族:人族
職業:勇者
レベル:65
HP:6000
MP:4500
STR:2500
VIT:2500
DEX:2500
AGI:2500
INT:2500
スキル
加護
「HPは体力、MPは魔力、STRは力の強さとかで、VITは生命力、DEXが器用さなど、AGIが敏捷さ、INTが賢さってところかの。スキルは剣術や魔法、鍛治などの様々な種類があってLv.1〜10まである。レベル3くらいでまあまあくらいじゃの。レベル7以上はかなり熟練じゃ。加護は儂ら神や、精霊などからもらえるもので、成長率やステータスに補正がかかるの」
「なるほど。勇者がいるってことは魔王とかっているの?」
「うむ、魔王はおる。魔物の上位個体で強力、そして他の魔物を統べる能力を持つ魔物じゃ。魔族という種族もあるが、魔族の王が魔王と言うわけではないのぉ」
魔族との戦争みたいなことが起きてるのかと思ったが、そういうわけではなさそうだ。
「ところで俺のステータスはどんな感じになるの?」
「太郎のステータスは地球からクラーネオに転移する際に決められるから、その時儂が少しいじっておくよ。またすぐに死んでしまっては困るからのぉ」
そうか、ここで決めるわけではないんだな。まあ平均くらいあればありがたい。
「わかった、よろしくお願いします」
「うむ。それで、太郎はなにかやりたいこととかあるかのぉ? 職業やスキルも転移が始まるときにいじれるが……」
「うーん……せっかく見知らぬ世界に行くなら、いろんなところを見て周りたいからなあ……」
旅人? 職業ではないか。
うーん……やっぱり異世界と言えば冒険者かな? 冒険者という職業があれば冒険者ってのもありだけど。
「じいちゃん、冒険者ってあるの?」
「うむ、あるぞ」
あるのか……じゃあ、やっぱり冒険者か……いや、いいこと思いついた。
「俺、旅しながら行商人やるよ。それの方が面白そうだ」
「なるほどのぉ。では、見習い商人にしとこうかの」
「それでお願いします。スキルとかはよくわからないからじいちゃんに任せるよ。必要なもの何個かつけておいてくれるとありがたいかな」
「あいわかった! じいちゃんに任せておきなさい」
クラーネオのことを知れば知るほどわくわくしてくる。
「じいちゃん、まだなんか決めることある?」
「そうだのぉ……まだ色々あることはあるが、まあ向こういって色々経験しながら知っていくことも必要か……こんなもんにしとくかのぉ」
「じゃあ、さっそく転移を……」
「そんなに焦らなくともちゃんと行かせてやるさ……もう少しじいちゃんとお話して欲しいなあと思ったり……」
じいちゃんは寂しそうな、そしてちょっと拗ねたような顔をしてそんなことを言った。
「ご、ごめん、じいちゃん。ちょっと興奮しすぎた」
「ふぉっふぉっふぉっ。冗談じゃよ。太郎の笑顔が見れてじいちゃんは幸せじゃ」
そう言って笑ってるじいちゃんは本当に幸せそうだった。
「向こうに行ったらもおじいちゃんと会えないの?」
「そおじゃのぉ……ここは一応魂が来るところじゃからの。儂もあれ以来、サボって地上に降りんようにキツく言われとるし」
あれ以来……つまり地球でサボってたときのことか。あれ? でもその言い方だとクラーネオにも来れるのか?
「ん? じいちゃんは地球の神様ってわけじゃないの?」
「そうでもあるし、そうでないとも言えるの。じいちゃん達は1柱の神で1つの世界を見るというわけではなく、儂の上司の神が司る世界が多数あって、それをみんなで交代しながら観察しとるのじゃ」
なるほど、そういうことなのか。
「そうなんだ。でもじいちゃん、あんまりサボりすぎないで、ちゃんと仕事しなよ?」
「……善処いたす」
あれ? でもみんなで管理してる世界に勝手に転移とかさせて大丈夫なのか?
「じいちゃん、他の神様とかに何も言わずに転移とかしちゃっても大丈夫?」
「バレなきゃ大丈夫じゃ」
えぇ!? やっぱりそういう感じなのか。満面の笑みで言ってるけど、結構好き勝手やっちゃってるよなあ、じいちゃん。
「さて、そろそろ行くか、太郎。魂のまま長い時間止まるのもあまり良くないしの」
「うん。ありがとう、じいちゃん!」
「まぁ、向こうでも楽しく達者で暮らしておくれ。ステータスとスキルは任せておきなさい。じいちゃんの加護もつけとくぞ」
「じいちゃんの加護? そう言えば、じいちゃんってなんの神様なの?」
「ふぉっふぉっふぉっ。それは向こうに行ってからのお楽しみじゃ。ステータスオープンと念じれば自分のステータスを確認できるから、向こうについたら確認しておくことじゃ」
気になる! けど、すぐにわかるからいいか。
「んー、わかった、ありがとう!」
「では、そろそろ送るぞ。近くの街から歩いて2時間程の街道から少し外れた森の中に転移するからの。しばらくはじいちゃんの結界で守られるが気をつけるんじゃ。また会えるかどうかもわからぬが達者での、太郎」
「はい! じいちゃんもお元気で」
そこで徐々に意識が薄れていった。
2018.09.23 編集