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15話

 






 次の日、朝食をとって宿を出たところで4 人と別れた。


 俺は冒険者ギルドへ入る。朝早いこともあり、前に来た時よりも賑やかだ。受付には少し列ができていたのでその後ろへ並ぶ。聞きたいことがあるだけなので、依頼を受けるために並んでいる人たちには若干申し訳ないが、仕方ないだろう。


「おはようございます。今日はどのようなご用件ですか?」


「この辺の魔物のこととか色々聞きたいんですけど、大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫ですよ。この辺の魔物の出現などに関する情報でよろしいですか?」


「はい、お願いします」


 受付嬢にはなかなか細かく説明してもらえた。どうやら、王都の近くには森もあり、草原もあり、ダンジョンもあるようだ。

 ダンジョンは王都の冒険者ギルドが管理している。近いうちに行こうと思っているダンジョン都市にあるダンジョンとは違い、街中にあるわけではなく、王都から出て30分ほど歩いたところに入り口があるようだ。階層は50階層、踏破もされており、成長は止まっている。ついでに聞いたところによると、ダンジョン都市にあるダンジョンは未だに踏破されておらず、最高到達階層は78階層、未だに成長を続けているという噂らしい。この王都にあるダンジョンでも、踏破となるとAランクパーティーや、Sランクを含むパーティーではないと無事では済まないというレベルのようだ。それって結構難易度高いよねぇ。そもそもダンジョンって成長するのか。


「あの、もし未発見のダンジョンとか発見した場合ってどうなるんですか?」


「発見した場合には、ギルドやそのダンジョンの存在する地域の領主、国へと報告し、判断を仰ぐのが普通です」


「判断って言うのは?」


「ダンジョンは管理され適度に冒険者などが出入りして、中の魔物が減らされていれば大丈夫なのですが、未発見のまま成長を続けて中で魔物が増えすぎると魔物が外に溢れ出ることがあって危険なのです」


「なるほど。でも未発見のまま大きくなることはないのですか?」


「ありますが、30層以上に成長するダンジョンは珍しく、それよりも小さい段階で成長が止まることがほとんどです。その程度であれば魔物が溢れ出ても、気付いた段階でギルドで強制依頼、国からも兵士が派遣され一気に攻めてダンジョンを踏破し、ダンジョンコアを破壊しますので、しばらくすればダンジョンが崩壊します」


「つまり、王都のダンジョンもダンジョンコアがな…い? あれ? でも崩壊してない?」


「王都のダンジョンは王都の兵士と冒険者と両方が攻略に向かっていました。それは、王都にも近いこともあり、ダンジョンは冒険者にとっても国にとっても、商人にとっても利益を生むので、利用できたら利用するためです。なので、踏破の際はダンジョンコアを破壊しないことが決められていました。その後も何度か踏破され、50層で成長が止まっていることが確認され、階層的にも都合がいいこともあり、そのまま利用して今に至っています」


「ふーん。たしかにダンジョンはリスクもあるけど、魔石とか素材とか考えると利益もあるわけですね。」


「そう言うことです。それでさっきの判断を仰ぐの話に戻りますと、ダンジョンを破壊するか利用するかという判断をするわけです。それでも大きな街からは離れた場所に発見されることが多く、階層も浅いものが多いのでなかなか利用するということにはなりにくいですね」


 そうかそうか、未確認のダンジョンが発見されても街が近くになければ、輸送とかそういうこと考えると利益が少なくなるし、移動や疲れた冒険者が帰るにも危険も増える。

 ダンジョンの近くに街を作るにしても、それ以上の利益からダンジョンから得られるのでなければ難しいということか。

 問題が発生する前に破壊することが多いというのはこのためか。

 成長続けるダンジョンは魔物が溢れることもないし、存在自体が少ないと。

 でも80層とかで成長止まって溢れたりしたらかなり大規模になっちゃいそうだなぁ。その前に発見されて対処されてしまうかもしれないが。

 まぁ、規模が大きければその中で弱肉強食ではないが、そういった自然の摂理が働いたり、広いから溢れるほどにはならないとか、氾濫しない理由も色々考えられるが。

 どっちにしてもトラブルが発生する前に管理下におくことを目的として未発見ダンジョンは報告することになっているのだろう。


「ダンジョンの発見報告は義務ですか?」


「いいえ、義務ではありませんが、ダンジョンの氾濫はかなり危険ですので、徹底されています」


「そうですか、わかりました。今日はありがとうございました」


 聞けることは聞けたのでギルドを出る。

 オレもだいぶ美人受付嬢に耐性ができてきたのではないだろうか。

 リーシャは受付嬢以上に美人なのでそのおかげかもしれない(完全に主観です)。

 とりあえず、ダンジョンもあるのはラッキーだ。3人を鍛えるのにはもってこいだろう。

 草原も魔物はいるが数も少なく温厚なものが多そうなので、やはり最初は森がいいかもしれない。奥に行けば強い魔物も出てくるし、浅いところではそれなりの魔物が出現する。それであれば、訓練という点において都合もいいし、ダンジョンよりは視界の確保もしやすいだろう。それに少し奥に入ったところにある、スライムだらけの泉というのはちょっと面白そうだ。気になる。


 そのあたりまで行ける冒険者は中堅の熟練冒険者レベル。そういう人たちには旨味がないスライムは基本的に放置されているらしいが。


 今日はそこを見に行ってこようかな。


「ということで、来てみましたスライムの泉!」


 一人実況です。名前もべつにスライムの泉ではないだろう。


「見てください、この色とりどりのスライムたちを! しかも溢れんばかりのスライム量! まさにスライムの宝石箱や〜」


 ちゃうて。


 それにしても本当にすごいスライムだらけ。しかもスライムってこんなに色んな色がいるんだなあ。

 鑑定してみるとどうやら、スキルごとに色が違うようだ。

 赤色は火魔法、青色は水魔法、緑色は風魔法、茶色は土魔法、黄色は雷魔法、白色は治癒魔法。

 まさかの光、闇以外の魔法が揃っている。魔法スキルの宝石箱だ。あっ。


「……とりあえず、スキルもらっちゃおう」


 何匹かからスキルを奪ってオーブへと保管しておいた。スキルは相手からはレベル1からレベル10まで何レベルでも自由に奪うことはできるが、オーブへ写すと全てレベル1へとなる。奪ったレベルのまま保管できたら楽なんだがなぁ。

 オレへそのままスキルを身につける分にはレベルそのままの熟練度が反映されるようになっているのがせめてもの救いだろう。


「ん?なんか今違うスキルまで取れた気がする。」


 確認するとへんなスキルがあった。


【獲得経験値増加】

 獲得経験値が通常よりも増加する。レベルによって増加量が増えていく。Lv5を超えるとステータス上昇にも大幅な補正あり。


 なんてこった。こんなスキルまであるのか。

 普通はスキル奪うことなんてできないし、人にこのスキルがあるとも思えない。成長もほとんどしないスライムだからこそ他に被害もなくほとんど知られずにいるのだろう。倒したところでもらえる経験値が少し多いスライムってくらいの認識なのではないだろうか。

 こんな便利なスキルあるに越したことはない。と、言うことでとりあえず3人分確保しよう。できたら4人分。


 鑑定しまくっていると、どうやらこのスキルのスライム透明なようだ。輪郭が若干ぼやけているくらいでぱっと見ただけで発見するのは困難である。


「ふぅ。なんとか集まった。こんだけスライムいると見つけるのも大変だわ〜」


 ここに来る前にダンジョンで使えるかもしれないと思ってオーブを多めに買っておいてよかった。とりあえずはこのくらいスキルあればいいだろう。


「いい発見ができて気分がいい。さて、ダンジョンも下見しよう」


 オレはじいちゃんの加護があるから獲得経験値増加のスキルは身につけないでおこう。


 人のいないところではダッシュで走り、人の目があるところは何事もなかったように歩く。移動時間はかなり短縮できるがめんどくさい。


「なんとか着いた。もう夕方だし何層か見たら帰るか」


 入り口へ向かう途中には屋台や、ダンジョンの中で使うだろう道具を売っている店が並んでいる。1番入り口に近いところに小屋があり、そこが王都の冒険者ギルドの出張所になっているようだ。

 ダンジョンの入り口にはギルド職員が立っていて、冒険者カードを確認している。


「身分証を」


「はい。ここは冒険者しか入らないのですか?」


 冒険者カードをを見せながら聞いてみる。


「いいえ、一応身分の確認をしているだけです。犯罪者を入れるわけにもいきませんから。ダンジョンに入ってしまえば中で怪我しても、死んでしまっても自己責任です」


 そりゃそうか。犯罪者が入って中で勝手されるのも困るし、もしダンジョンコアなんか破壊されたらたまったもんじゃないだろう。

 あ。国力を落とすためにダンジョンに高レベルのスパイ的なの入ってしまったら困っちゃうよな。Aランクパーティーごとスパイに来るなんてリスキーなことはしないかもしれないが。そういう意味でもある程度は実力の必要なダンジョンでないとダメなんだな。


 カードを受け取りながら納得する。


「と、言うことで本当にそのまま入るのですか? と、こう言う声かけもさせていただいております」


「あはははは、今日はすぐ出てきますので。ご心配ありがとうございます。ところでこのダンジョンって一回入ると元の道を戻って帰ってくるのですか?」


「そんなことも知らずに入るのですか? 本当に大丈夫ですか? ダンジョンからの帰還は各階にあるセーフエリアの中の魔法陣から一気に外の魔方陣まで戻ってこれます。一度行けば10階層ごとならば入り口からもワープできます」


 なんと便利な仕様。


「ありがとうございます。それでは行ってきます」


「死んでも自己責任だからねー。あ、ダンジョンの中で死んだ冒険者のカードとかを見つけ次第ギルドへ出していただきますと褒賞も出ますので、お願いします」


 再三注意をされ、最後に死ぬことから連想したのか、中で無念にも死んでしまった冒険者カードを見つけたら持って帰って来いと言われ送り出された。自己責任だし、しかたないけど、死んだことが確認されると親族とかにも報告できるしな。もし見つかれば持って帰ってこよう。

 それにしても帰りも同じ道とか通らなくていいのはすごく助かる。体力的にも精神的にも。


 洞窟のような入り口に入り、階段を降りるとそこが1階層のようだ。


「思ったよりも暗くないんだなあ」


 索敵の反応は1階層にはないようである。

 先へ進むとすぐ下へ向かう階段が見つかった。

 階段を降り、すぐ横に魔物も人も誰もいない少し広い空間がある。ここがセーフエリアなのかもしれない。つまり、階段を降りてセーフエリアに行ってそこから帰還するのが一般的なのだろう。


「2階層の魔物はゴブリンとかスライムとかコボルトばかりか」


 進みながら出て来る魔物を考えると森の浅い部分にいるのと大差ない。

 この時間は冒険者も引き上げる人が多いだろうから人に合わずにペースを上げてどうせならワープできる10階層くらいは超えたいところだ。


「結構時間かかるな。やっぱりそれなりに広いし、マッピングしながら慎重に進むとなかなか進んでいけないのだろうなあ」


 少し冒険者もいたが、何事もなかったように軽く会釈して通り過ぎる。入る前にもかなり注意されたが、よく考えればたしかにこんな軽装でダンジョンに入るなんて無謀なのだろう。

 ダンジョンに入ってからは買った黒い外套のフードも目深に被っているので顔はあまり見られないかもしれないが、怪しがられていることだろう。

 そんなこんなで、出会った冒険者には怪しまれながらも、今は10階層まで来てでかい門の前にいる。これはやはりフロアボスってやつなのだろうか。ここの階層までは罠もないし、初心者冒険者にはこの広さとマッピングが1番苦労するかもしれない。魔物も対して強くはないがレベルは階層が下がるにつれて上がってくる。途中魔物も少し増え、ゴブリンソルジャー、コボルトソルジャー、あとはピルバグスという、まんまダンゴムシみたいなのと、ブラウンアントという大きめの茶色いアリ、リトルマウスというネズミも出てきた。全然リトルじゃなかったが。子犬ほどはあった。


「さて11階層に降りてセーフエリアから帰ろ」


 11階層はこの門を抜けてボスを攻略すれば行けるという仕組みなのだろう。


「おー、オーク3体がボスか」


 このレベルはどうなのだろうか。初心者には3体いればなかなか大変なのかもしれない。佩刀した刀を抜き、一気に近づき、首を一閃。それを3回繰り返す。


「やはり、基本的なステータスが違いすぎるのかな」


 今のも一応レベル20の個体が3体だったが、なんの問題もならないというか戦いにもならない。


 倒した3体のオークを解体機能付きのマジックバッグへ放り込む。


 これまで戦って来た魔物も使えそうなスキルを奪ってオーブへ保管しマジックバックへ入れている。同じスキルや使わないスキルは熟練ポイントとして貯めてきた。

 今のところ出会っている魔物のスキルで目ぼしいものは多くなかったが。


「倒せばこの扉が開けられるようになって、下へ行けるってことか」


 扉を開けて下へと進む。下も見た感じ変化はあまりない。少し進んで魔物の様子だけ見て帰ろう。


「ん、索敵に反応があるのに姿が見えない……上だよな……って、うおっ!!」


 反応がある方を見てもよく見えなかった物が急に姿を現して突っ込んで来たので慌てて避けた。


「コウモリか?」


 鑑定を使うと、ダークバットと出ている。しかもスキルに隠蔽を持っている。隠蔽が姿を隠すのに使えているってことか? もしかしたら人でもできるのだろうか?


「ん? 出来てるのか? 出来てないのか?」


 イメージして試してみたが自分ではよくわからない。


「ま、いっか。でも隠蔽のスキルは便利だ。いただきましょう」


 ということで、ダークバットを見つけて3つの隠蔽スキルのオーブを作ったところでセーフエリアへ戻り、外へ出ることにした。


「おっ。まじで戻ってこれた。すごい」


 入り口の脇にある小部屋のようなところへと繋がっていたらしい。


「うわー。外真っ暗。早く帰ろ」


 時間も時間なので、帰る冒険者も多いし、人が多いところをダッシュして帰ることができないのでめんどくさい。さっきも思ったが人の目を気にすると早く移動したい時などは気が揉める。しかし、目立ちたくはない。


「そうだ。こういうときは瞬間移動!」


 ということで、早速試すために人気のいないところへと移動する。

 そして、どのような魔法を使いたいか考えるといつも通りどのようなスキルを使い、どうすればいいかわかる。

 これは時空魔法と空間魔法の両方を使うようだ。こんなの使える人存在しないだろう。タイムラグなしで空間をつなぐイメージだろうか。


「ゲート」


 魔法を唱えると目の前に黒い渦のようなものが出現した。

 まずは手を突っ込んでみると、スッ向こう側に抜けた。危険はないようなので、首を突っ込むと、そこにはイメージした、屋敷の庭が広がっていた。


「まじでできた」


 出来たことにいつも通りじいちゃんに感謝して、庭へと進み出る。かなりの魔力を消費したが、この魔法が使えることで移動はかなり便利になるな。


 今日1日で結構動き回ったからちょっと疲れた。早めに休むことにしよう。


 屋敷の掃除は順調だろうか。


 そんなたわいもないことを考えながら家の扉へと手をかけた。










2018.9.30 編集


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