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14話

 







「あちらが、今回見て頂くお屋敷でございます」


 うわー。ほんとに草は生い茂り屋敷は蔦が絡まってすごいことになってる。

 草ぼーぼー。


「中へは入られない方がよろしいかと思いますのでここからの様子だけしかお見せできませんが」


「ロシャスどう思う?」


「魔物ですね」


 やっぱりか。屋敷の中心の方に反応がある。案内の男性には聞こえないようこっそりとロシャスに聞くと想像した通りの答えが返ってきた。


「ちなみにここって買い取りはいくらですか?」


「か、買い取りですか?ここは現在大金貨1枚ですが……」


「やすっ!」


「噂が飛び交って買おうという人もいませんし、管理もできないので、あと1ヶ月買われなかったら焼かれるだけですので……」


「よし、買う。契約書一応持ってきてるんだよね?サインするから出して。お金これ、はい」


 早口で捲し立て、お金を渡す。

 問題解決できなかったら無駄金だけど、解決できてから高値にされても困るしな。

 男性が慌てて出した契約書にサインして、鍵を受け取る。


「これで今からこの屋敷は俺の物ってことでいいんですよね?」


「はい。でも本当によろしいのですか? 返金はできませんが……」


「うん、ありがとうございます。あとはこっちでやりますので、お疲れ様!」


「そ、そうですか? それではこれで失礼します」


 男性に見られても別にいいし、どうせここに住めばバレるがやっぱり直接実力を知られない方がいいだろうと思って帰ってもらった。


「よし。契約したし、案内の人は帰った。これで何の問題もなく屋敷を取り戻せる」


「それにしてももう少し遅かったらこの屋敷の外にも被害が出ていたかもしれませんね」


「え? そんなやばいやつなの? そもそもなんでこんなとこにそんなやばい魔物いるの?」


「原因はわかりませんが、今屋敷にいるのはキラープラントと呼ばれる植物系の魔物です。きっと屋敷の誰かが森からキラープラントの種でも運んできてしまったのでしょう。それがいつのまにか成長して人を襲ったということではないでしょうか」


「冒険者ならその魔物のことわかりそうなもんだけどな」


「キラープラントは狡猾で厄介な魔物ですし、襲われた兵士たちよりも実力のある冒険者を高額で雇うよりは放置してしまった方がいいと判断したんではないですか?兵士もそれほど実力のある者を派遣したわけではなさそうですしね。魔物がいるとは思ってはいないようですし、周りに被害があるわけでもなく、あまり目立つような場所にあるわけでもないですから」


 そういうもんなのかなあ。たしかにこの屋敷の持ち主も消息不明だし、草の成長が異様に早いだけで、呪われた屋敷とかなんとかと言えばそれで通ってしまうのかもしれない。


「とりあえず中に入ってみるか」


 門の鍵を開けて中へと進む。

 貴族が住んでいたというだけあって屋敷まででもなかなかの広さがある。

 門の横の壁ぶち抜いて店舗作るってのはありかもしれない。


 屋敷のドアは蔦に覆われていたがロシャスか切りはらってくれ、中へ入るとそこは薄暗く不気味な雰囲気を醸し出していた。


「うおっ!」


「大丈夫ですか?」


 蔦が襲ってきた。避けれた。ロシャスは見てるだけである。助ける気を微塵も感じさせない。なんてこった。


「……大丈夫。とりあえず2階の奥に反応があるからそこへ行こう」


 その後も何度か蔦に襲われたが火魔法のファイヤで燃やしてやった。やはり火魔法は苦手なようだ。


「ここだな」


 とりあえず勢いよくドアを開けてみると、木の幹みたいに太いやつがそこにいた。


「こいつか」


「こいつですね」


 相手が俺たちを認識した瞬間蔦が襲ってきたがそれを避けると同時にロシャスが本体に向かって突っ込んでいき、本体の幹のような部分を細切れにしたら蔦は動きを止めた。


「えぇー。解決早くない?」


「タロー様、まだです。燃やしてください。魔力多めに込めた炎でお願いします」


「ロシャスもできるやん」


「なんとなくです」


 くそっ! 俺の見せ場はゴミの焼却ですか! くそう! ロシャスできる男すぎるぜ!


「はぁ。わかったよ」


 そう言いながらファイヤーボールに魔力多めに込め、かなりの高温にして八つ当たり気味にキラープラントの細切れにぶつけた。

 そしたらかなり高温になってたのか一瞬にして跡形もなく燃え尽きてしまった。


「……タロー様、今のなんですか」


「え?ファイヤーボールだけど」


 あんなファイヤーボールありえませんとかなんとかブツブツつぶやいてる。


「この蔦って全部燃やす?」


「いえ、本体部分がなければただの木です。ここまで成長したキラープラントの蔦や枝はかなり高値で売れると思いますし、杖などに加工すればかなりいい物ができると思いますよ」


 なんですと!? ラッキーじゃないか。かなりの量があるけどね!


「じゃあ、掃除がてら集めるか」


「はい、部屋の確認しながら集めましょう」


 部屋を確認しながらとりあえず拾ったキラープラントの蔦や枝をマジックバッグに詰めていく。


「ん、この太いやつで鞘作れるな」


 それにしても結構広いぞこの屋敷。部屋数もかなりありそうだ。


「おっ、風呂がある! しかも広い!」


 キッチンも広いし風呂もある。最高だ。


「タロー様この屋敷は鍛冶場もあるようです」


 なんですとー!! 凄まじい設備だ。こんなに揃うことがあるのだろうか。なんともご都合主義的な流れだ。


「鍛冶もできるのはありがたい。だいたいの部屋も見終わったかな?」


「そうですね」


「ん、このドアは見た?」


「見てないですね」


 まだ見てない部屋があったようなので、ドアを開ける。


「まさかの地下室かこれ」


「そのようですね」


 地下室もあるのね。物置とかにはとてもいいじゃないか。それとも隠し部屋にしちゃおっかな。ロマンが広がるぜ。


「とりあえず、木の片付けはこんなもんでいいな。行方不明の貴族ってキラープラントの養分としてきっと食われちゃったんだよな?」


「そうだと思います。貴族や騎士、これだけの屋敷ですから他にも使用人達もいたでしょう。たくさんの人が犠牲になってるかもしれませんね。その多くの人を全て食らい尽くしてここまで強力な魔物として育ったのではないかと」


 なるほど。人間でいうと強い魔物倒してレベルアップした的な感じかな?

 人間が強いかどうかはわからないが。


「家具もそのままだから使えるものは使って無理っぽいのは処分しよう」


 風呂はあったけどお湯出るのか?


「風呂はどうやって沸かすのかな?」


「さっき見た感じだと魔石をエネルギーとして水を湯に変える魔道具が設置されてますね」


「なるほど、魔石買ってくれば使えるか。あ、来るとき倒した魔物の魔石でも十分か?」


「はい、あれで大丈夫だと思います」


 魔石は自力で確保可能と。あとは生活しながら色々改造していくとしよう。

 シーツとか布団とかは新しいのに変えたい。とりあえずは布団とかシーツだけ買えば暮らすことはできそうだ。


「今日は宿に戻って、明日必要な物買ってここへ移動することにしよう」


「そうですね。それから掃除すればすぐ生活できるようになるでしょう」


「屋敷の掃除とかの人増やした方がいいかな?」


「いえ、今のところやることは掃除だけですので、日数をかければこの人数で足りると思います」


 そっか、忙しくなればまた奴隷を買うか、誰か雇うとしよう。

 さて、宿に戻って夜ご飯食べよ。お腹すいた。


 そして、宿へ戻った後リーシャたちに屋敷を買ったこと、明日からはそこの掃除などをしてその屋敷に暮らすことなどを伝えた。


「あ、屋敷の掃除とか大まかなことは一週間くらいでやってしまって、それが済んだら外に出て魔物を倒して訓練します!」


 3人の顔が青ざめた。今まで魔物を倒したことはないのだろう。

 この際だから3人のステータスもチェックするか。


「3人のステータスを見てもいいかい?」


「え、タロー様は鑑定のスキルを持っているのですか?」


「うん、持ってるね」


「なのに今まで私たちを鑑定していなかったのですか?」


「うん、女の子のプライバシーを守ることも紳士の嗜みです」


 なぜかリーシャが「女のコ……」とぶつぶつと繰り返している。

 そして、ロシャスは紳士の部分でなぜかクスクス笑っている。こいつは本当に俺の奴隷なのだろうか。


「それで、見てもいいかな?」


「「大丈夫!」」


「あ、私も大丈夫です。よろしくお願いします」


 よろしくされた理由は不明だが、3人の許可が出たので鑑定させてもらう。


 名前:リーシャ

 性別:女

 年齢:19

 種族:獣人

 職業:タローの奴隷

 レベル:13

 HP:1000

 MP:300

 STR:400

 VIT:350

 DEX:400

 AGI:600

 INT:450

 スキル

 料理Lv6

 体術Lv1

 加護


 名前:シロ

 性別:女

 年齢:13

 種族:獣人

 職業:タローの奴隷

 レベル:10

 HP:900

 MP:250

 STR:350

 VIT:300

 DEX:370

 AGI:650

 INT:350

 スキル

 料理Lv2

 加護


 名前:クロ

 性別:女

 年齢:13

 種族:獣人

 職業:タローの奴隷

 レベル:10

 HP:900

 MP:250

 STR:370

 VIT:300

 DEX:350

 AGI:650

 INT:350

 スキル

 料理Lv2

 加護


 うーん、一般的な女がどんなもんかわからないけど、じいちゃんが言ってた一般的な男よりは低いからこんなもんなのかな。

 リーシャの料理スキルのレベルはなかなか高いんじゃないだろうか。そもそも料理スキルがあったとは。ロシャスは料理スキルないのにあれだけの料理ができるとはさすがである。それにしてもシロとクロはステータスもほぼ同じなんかい。


「よし、わかった。方針は決まった」


「あ、あのなにか問題とかでもありましたか……?」


 リーシャが怯えたように聞いて来た。


「いや、なにもない。むしろ比較する人もいなくて、あまり参考になりませんでした!」


 キッパリとキメ顔で言い放つ。

 3人は唖然としたあとガックリと首を垂らした。


「ごめんごめん、別にステータスどうこうとか言うわけでもなかったし、一応確認してみたかっただけだから」


 とにかく3人のレベルを上げて自衛できるようにはしてあげよう。そうすればいつか奴隷を解放してもきっと生活していけるだろう。

 そう言えば3人はなぜ奴隷になったのだろうか。


「言いたくなかったら答えなくてもいいんだけど、3人はなぜ奴隷に?」


「……私は村の生活が苦しくなったので、口減らしとお金のために奴隷として売られました。シロとクロは孤児だったのを拾われて奴隷になっています。奴隷商人のところで2人と出会ってそれからは姉のように慕ってくれるので、私にとっても妹のような存在なんです」


 ありがちな話か。娘を1人奴隷に出したところでもって数年が楽になるだけだろうに。根本的にはなにも解決しないと思うが。

 シロとクロは元孤児か。孤児も本人の了承があれば奴隷にできるってやつなのかな。奴隷商人も商品として価値のあるやつにしかそんなことはしないだろうけど。


「しばらく奴隷商人のところで教育などをされながら過ごし、3人一緒にガウン男爵に買われたのですが、半年も働かないうちに病に伏してしまい、それが不治の病とわかるとあの穴蔵へと連れていかれたのです」


 病とわかって長く連れている必要ないってわけか。そしてあの穴蔵に連れていかれたと言うことね。ガウン男爵のところで半年しか働いていないとなるとこの3人の顔とかあまり覚えてないかもしれない。酷い扱いする人のようだし、生きるか死ぬかはべつとして、長く働く前に辞められてよかったと思うべきかもしれないな。そんな環境に長く居たらどんな扱いをされたかわかったもんじゃない。


「なるほど、わかった。話してくれてありがとう。俺は見捨てたりしないし、食事もちゃんと食べれるからこれからもよろしく。あとリーシャは料理スキルがあるから料理期待してるよ」


 3人ともほっとした表情を見せた。

 明日買い物ついでに冒険者ギルドでこの辺で魔物の出る場所聞いて、鍛えるのに良さそうな場所をリサーチしておこう。


「ところで3人とも体調とかはどう?」


「もう全然平気です」


 リーシャの言葉にシロとクロもうんうんと縦に首を振っている。

 3人ともやる気に満ち溢れたような顔をしている。暗い顔をしているよりもよっぽどいいだろう。

 まだ体力的な心配は多少あるが、これから食事をちゃんとすればよくなるはずだ。


「それなら明日から働いてもらうから、よろしくね」


 伝えることを伝え、3人の部屋を出る。ロシャスとともに部屋へ戻り、少しロシャスと明日からの予定を話した。


「明日の買い物と掃除は任せてもいいかな?」


「はい、かまいませんが、どこかお出かけになるのですか?」


「冒険者ギルドに行ってこの辺の魔物の様子とか聞いてこようかと思って。それと下見に少し出ようかと」


「なるほど、3人の訓練のためですな。わかりました、買い物と掃除はお任せください」


「一応あの3人の元の主人である貴族とかもいると思うし、街に出ているときはロシャスが気をつけていてくれ。まあ、少しは案内役にもなるだろう」


 ロシャスが了承してくれたところで、今日は寝ることにした。










2018.9.30 編集

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