偽り
シリウスは無言で指を指す。
その先に小さな村が見えた。
「仕方がないなぁ…。」
村人達から有益な話を聞けるだろうか?
やはり考えても仕方が無い。
「行こっか、シリウス。」
シリウスは黙ってゆっくりと進む。
「あの村、何か様子がおかしいぞ。」
「シリウス、まだ着いてないでしょ?なんで分かるの?」
シリウスは私から目を逸らした。
「うーん?」
私は考えて見ると簡単に答えは出た。
「シリウス、幻影の森に来たの初めてじゃないよね?」
「…そうだ。」
「転移魔法でまた帰る事も出来るんじゃない?」
シリウスは溜め息を吐くと私を真剣な表情で見て来た。
「…無理だ。緊急だったから説明もなく飛ばして悪かった。」
転移で帰れないか…。
「緊急?」
「魔力操作が無ければ、私は魔神の配下のままだった。」
「どういう事?」
あまり頭に入って来ない。
理解がまだ出来てない。
「魔物というのは上級と下級に基本的に分かれている。」
「上級クラスの魔物は魔神の洗脳を常に受けている。それは敵対する者を殺す洗脳だ。」
洗脳を解くために魔力操作が必要だったとか?
「でも駄目だった。知能を取り戻しても私は自由にはなれなかった。」
「でも、シリアの知識さえ複製する私の能力である事を思い付いた。」
「"異世界転移"だよ。」
異世界?
転移?
どういう事なんだよ?
「それって…。」
私は額から汗を垂らす。
「私を異世界に"転生"させたのは……」
「シリウスだったりする?」
「それは秘密。でも今また別の異世界にいるのも事実だ。」
シリウスは私に言う。
「魔神を倒してくれ。」
「それはやるって言ってるでしょ!?」
「また異世界に飛ばしたの!?それだけが重要な事だよ!」
私が感じた違和感は消えた気がした。
「そうだ。君をユーナがいない異世界に飛ばした。」
やる事は二つに絞られた。
一つ目は異世界に帰るための別の方法。
二つ目は魔神を殺す事だ。
「魔神とやらはどこにいるの?」
「あの塔にいるはずだ。」
シリウスが指を向けた方向には何も無かった。
「何も無いけど…。」
「ない事はない、見えないだけだ。雲で隠れてるからな。」
雲?
「もしかして空にでも住んでるとでも言うの?」
「正確には雲よりも高い塔の最上階にいるんだ。」
「えぇ…あの塔を登るの?」
「普通に登ったら何年かかるか分からないがな。」
それぐらい高い建造物だ。
塔というよりは城のようにも見える。
「ユーナは…。」
そう魔神を倒すという事は何年もかけて戦うという事だ。
そして不老不死というチート能力が付いてるらしい。
そんなものをどうやって殺せと言うのだろうか。
「仮に倒せたとしても、帰る時にはどうするの?」
「…………帰れると思ってるのが間違いだ。」
「何を……言ってるの?」
私は意味が分からない。
だって私の世界はユーナと冒険して世界を救うそんなRPGのような世界だったはずだ。
「魔神を倒せば、膨大な魔力の爆発に巻き込まれて世界は滅ぶ事になるだろう。」
「魔神となれば、魔力の量なんて無限に等しい。別の世界を作ってしまう程だ。」
シリウスは真剣な表情を浮かべる。
「つまり、魔神と一緒に死んでくれと言いたいの?」
冗談で済む話じゃなかった。
「…悪かったと思ってる。今から私を殺しても良い。むしろ殺せ。」
無意味だった。
だって魔神を殺せば同じ事だから。
「どうして、黙って無かったの?」
シリウスの心の底にしまってしまえば済む話のはずだ。
「お前の未来が見たくなったんだ…。」
とんだ迷惑な奴だ。
「だったら助かる方法ぐらいあるでしょ…?」
「悪いが、そんな可能性はない。」
「シリウス、魔神の所まで転移出来る?」
「可能とは言い難い。それに出来ても一回きりだ。」
雲で見えないけど、結界が張られているのだ。
「そういう事だ。慎重に行いたい。」
転移で飛んでも塔までという事らしい。
転移してから気付いた事がある。
それは塔の周りに結界が何重にもかかっている。
それだけだった。
「あの結界の種類には感知タイプのものはない。」
「転移魔法を来るのに使ったから三時間は使えないと思ってた方が良い。」
「入るぞ。」
「殺風景な塔だね。」
見た感じだと階段が上までずっと続いているだけの空っぽの塔だ。
「モンスターだ。」
私は目を何度も擦っても見えなかった。
「いないよ。」
赤い文字が地面に浮かんだ。
「伏せろ!」
階段が吹き飛んだ。
それもマンション五階分ぐらい壊れてしまっていた。
「これ登れるの?」
私はそう聞くと、
「無理だな。転移で飛ぶしか無さそうだ。」
そう答えたシリウス。
「シリウス、少し話があるんだけど…。」
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スランプが続いたり、携帯が壊れたりしましたが、
何とか描いたのが、たった約二千文字。
もう少し頑張って描いてやるぜ!!頑張って続けよう…。
退職が中々出来ないですが、皆さんは頑張って下さい!