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魔法剣士に転職するのは魔法が使える人だけでしょ!  作者: 夢月華
第一章「無名の剣士」
6/11

自問自答の末に最強の龍種現る。本当に最強なの?

気が付いたら目の前は真っ暗だった。

夢から覚めたのか分からない。

そもそも転生の話すら夢だったに違いない。

そうだったとしても悪い気は不思議としない。

何故なら私はユーナという少女の夢だった旅の手伝いが出来たからだ。

素直に良い夢だったと言える。

「それで良いの?」

声が聞こえる。

私自身の声だ。

「私がやりたい事は無かったのか?」

それとも、もう満足しているか。

どっちもきっと少しだけ違う。

「お前の旅はその程度のものだったのか?」

「私はユーナともっと旅をしたい。そういつも思ってるっ!!だって友達だからっ!!」

声は聞こえなくなった。

でも視界が真っ暗のままだ。

何も見えないし聞こえない。

この結末だけは私は望んでいない。

「私は……」

気が付くと見知らぬ森だった。

ユーナには森をいくつか通ると聞いていたが、こんな黒い森とは思って無かった。

「魔力が充満してる…。」

身体が重いのだ。

魔力というのは身体に取り込み過ぎると害がある。

体内魔力が暴走し始めて脳にも負担がかかる。

つまり有毒なのだ。

「早くここから出ないと…。」

場合によっては死ぬ。

けど、場所が分からない。

「とにかく急がなくちゃ…?」

私は横を見ると生首が落ちいていた。

「あっ…詰んだ。」

よく見るとミノタウロスの首だった。

「ミノタウロスか…。良かった良かったって良くないよっ!?」

ミノタウロスでも半分は人間なのだ。

「人殺しに含まれるのかな?いや、分類的には魔物の仲間だし大丈夫か。」

でも流石にまずい。

森の中では血の匂いに敏感な魔物が沢山いると言われている。

改めて場所を移動し始めた。

「魔物の姿は見えない。」

でも油断しない。

ここに来る前に自分自身と戦って油断していた。

まさか飛ばされるとは思わなかった。

「あれは攻撃技だったのか、」

それとも転移魔法なのか。

「この森がどこにあるのか調べてみるか。」

私はある事に気付いた。

さっきから小さな光が見えている。

恐らく村か集落だろう。

でも距離はかなり遠そうだった。

「あっちで聞けるかな?」

私は走り出した。

けど、風景は変わらなかった。

「いや、森だから風景は変わらないのは当たり前だけど…。これは幻覚の一種かな?」

私は目を擦る。

しかし風景は変わらない。

「幻覚なら魔力操作で…。」

魔力操作が既に作動しているようだった。

「戦ってる最中だったから付けっぱなしだったっけ?」

魔力操作で魔力を目に集中させる。

すると違和感があった。

まるで目が四つあるような感覚だ。

「あれ…。おかしいな。」

普段の視力強化は望遠鏡を覗く感じで使えるはずなのだ。

「そう身構えるな、少女よ。いやシリア。」

「自分の口が勝手に動いたっ!?」

多分周りから見たら厨二病のように痛い女の子に見えるはず。

「とりあえず私の口で喋るの止めて欲しいんだけどっ!?」

主に世間体を保つためにも。

「え…。」

私の魔力が吸い取らて行く感じがする。

魔力を消費すると疲労が襲って来るのだ。

それで魔力消費を判断出来る。

「なにゆえに私の魔力を盗んでるんだよっ!?」

私がそう言ってる隙に私の魔力が地面に落ちた。

「心配するな、シリアの魔力じゃない。」

魔力は粘土みたいな塊から人形の形へと変わっていく。

「私の魔力だ。」

そう"私と同じ姿"へと変わったのだ。

「さっきの魔物っ!!私の身体に何をしたの!?」

私は剣を構える。

「敵対するつもりはない。それにこの擬似体を倒しても意味がないから止めておけ。」

止める事が出来るはずも無かった。

「魔力剣。」

私は剣先をより鋭くするために魔力をさらに集中していく。

「戦う前に一つだけ聞かせてもらうよ。」

「一つにしろ二つにしろ質問されれば、何でも答える。それで良いだろう?」

むしろ好都合だ。

あの魔物が嘘を吐いたとしても後で確かめれば良い。

「……私の身体に何をしたの?」

「そう言われても、シリアとやらの身体には何もしてないがな。」

意味が分からない。

答えになって無かった。

「ふざけないで!」

こっちは真剣に話しているのだ。

私は剣をさらに強く集中させる。

何故か魔力の感覚が違う。

「……ただシリアの精神体に私も入らせて貰っただけだよ。」

精神体?

精神体に入って勝手に口を動かせたり、

魔力をすき放題に出来るらしい。

「つまり?」

「憑依だよ。」

憑依。

つまり私の身体を乗っ取るつもりなのだ。

「そんな事はさせない!それに乗っ取って何をするつもりなんだよっ!?」

私は魔力操作を身体の中心に集中させる。

目の前にいる魔力を切り飛ばしても意味がないのが分かったからだ。

「神か魔族でも滅ぼして欲しい。」

滅亡を望んでいた。

「なんで?そんな事を…。」

私は魔力を集中させて徐々に広げていく。

そう身体全体に響くように。

「ほう、考えたな。けど、そのやり方では精神体には魔力は届かん。」

無駄だった。

「シリアの記憶を覗かして貰った。シリアの目的が剣聖になって魔神を殺す事だとは思わなかったがな。」

記憶。

身体を共有出来るという事は可能なのだろう。

「目的は一致してる。それに魔力を貸してやると言っているのだ。問題はないだろう?」

そんな事言って無かったよね?

それよりも聞き逃しが出来ない事を言った。

「魔力を貸してくれるって?それって魔法が使えるって事?」

「いや、属性が他とは違うからな…。魔法は使えない。」

それじゃ今までと変わらないじゃん。

「まぁ、そういう訳だ。……仕方が無い。」

何か違和感を感じる。

「そう言えば風景が変わらないんだけど、どうしたら良いの?」

とにかく私は森から出なきゃいけない。

「幻覚か。そうか、ここは幻影の森なのか。」

「幻影の森?そういう森なの?」

「この森に住む魔物が侵入者に対して行うのが幻覚魔法だ。」

そう、私達は侵入者なのだ。

「その事から幻影の森と呼ばれるようになった。その主の魔物の許可が降りれば住む場所を与えてくれるらしいぞ。」

確かにこの森は広いから住む場所。

つまり拠点を置く必要があるのだ。

「決まりのようだな。拠点を置くついでに主を倒しに行くか。」

「何も言ってないのに、私の事が分かるの…!?」

そう言えば、大事な事を聞いてない気がする。

とても大事な事を…。

「そうだ。その魔物の名前って何なの?」

私の偽物は言う。

「その魔物の名は、シリアも知っている名前だと思うぞ。」

続けて彼女は言う。

「その名は───────────────」




「───────ユグドラシル。」

最強の龍種の一角だった。



──────────────────────


「倒せる訳ないでしょ!」

私は言った。

それがこの世界の約束だった。

「クック…だろうな、一番神に近い龍種を殺そうなんて誰も考えないだろう。」

神の使いとまで言われるのが龍種だ。

中には神と同等やら超えてるらしい龍種も存在する。

そんな存在を殺そうだなんて罰当たり過ぎる。

「けど、我々の目的は魔神討伐だ。龍種との戦闘は必ず役に立つはずだ。」

そう偽物の私が言う。

「ねぇ偽物。」

「偽物って呼ぶのも面倒いだろう?」

図星だった。

「シリアと運命共同体だから…。」

そんな言葉使わないで!!

「シリウスとでも呼んでくれ。」

「それシリアと全く関係ないよね?」

私達は森を見渡すが最初の景色と変わっていなかった。

「さて、ユグドラシルに会う方法なんだが、」

それだよね。

一応、会って話を聞くのが一番良い。

「うん。」

私は返事をする。

「森を燃やすのはどうだ?」

えっ!?

空気が一瞬凍った気がした。

「聞き間違いじゃないよね?」

私は自分の耳を先に疑った。

しかし、

「森を燃やして奴を呼ぶのだ。」

聞き間違いじゃなかった。

むしろ考えが間違っていると思う。

「それともあの死骸と一緒の運命を辿るか?」

シリウスは言った。

「それは私を殺すってこと!?」

「違う、このままだと餓死する可能性の話だ。」

さっきと違い真剣な表情で言う。

ただ私の顔だけど…。

「聞いてないよ、それ。」

「潔く森から出して貰えば解決する話だよね?」

それが一番ベストな解決策だ。

そのはずだ。

「お前、忘れてないか?餓死って言ったのはお前の気持ちを和らげる為の物だ。」

何を言ってるか分からない奴だった。

「餓死よりも先に来るものがあるだろ?忘れたのか?」

餓死より先に来るもの?

歩き回って疲れるとか?

「魔力の暴走…。」

そう魔力を暴走させるために森に迷わせてるのだ。

「悪趣味な龍種だね。」

「ただ魔力操作が使えるから暴走はしない。」

心臓が止まるかと思った。

「その後から言うの止めて。心臓に悪いから!!」

「そうか、悪い。」

これは悪いと思ってないな。

「まぁ…私が魔力操作をし続けなければの話だが…。」

シリウスは小さく呟いた。

「ん?何か言った?」

「何でもない。では、森を焼くか。」

まだそれを視野に入れてたんだ…。

「じゃあ、木を一本焼くだけにする?」

「ユグドラシルは森と神経などを連動させている。」

「だったらやる事は一つだろ?」

つまりこうやれば…。

私は手の平に炎を集めて、それで木の表面を炙った。

「魔法は使えないじゃなかったっけ?」

その時だった。

魔物が私の横を通り過ぎた。

「ギュグオオオオオオオオェェェェェェェェェ!!」

遠くから叫び声が聞こえる。

「こっちに来るぞ。剣を抜け!」

「ええっ!?」

地面が揺れる振動が近付いて来る。

その振動は一瞬で止んだ。

何故なら私の目の前にその魔物が現れたからだ。

「我が名はユグドラシル。森を護りし者。」

「故に汝を排除する。」

そう最強の龍種が言った。

「魔力剣!!」

魔力量が増えたおかげで剣先も長い。

これならいける。

「下等な人間如きが我の邪魔を…。」

爪を立てて私を捻り千切るつもりのようだ。

「魔力障壁!」

私は魔力の壁を生成した。

本来なら作れないものだ。

「シリア、後ろに飛べ!」

言われた通りに私は後ろに飛んだ。

その瞬間、壁が壊された。

「アレでは強度が足りないぞ?」

先程いた場所を見ると粉々になって消滅していく壁が見えた。

一度でも当たれば同じようになってしまうだろう。

「魔力を装填しろ、シリア。」

あれは集中力がかなり必要な技だった。

「動きながらじゃ集中出来ないよっ!?」

私は一気に剣に魔力を集中させる。

「魔砲弾!!」

私は剣をユグドラシルに投げ付けた。

「それは、砲弾でもなんでもないぞ!?それに剣は投げる物じゃないっ!!」

今言う事じゃないと心の中で言う。

あの剣を簡単に避けれるような身体ではないため、ユグドラシルには確実に当たる。

「そんな物、我には…。ッッ!?」

ユグドラシルの背中に突き刺さった。

それもかなり奥へと刺さっている。

「そう、ただの剣なら効かないよね?」

魔力で剣先を覆った上に剣を魔力強化している。

「それに、この剣は錆びてるから。」

「我が岩壁の鱗を貫く武器など存在せぬ!!何だその剣は…。」

ユグドラシルは私の方を見ると言った。

「ただの呪われた剣だけど?」

「呪われた剣…?呪印の剣か。」

町のおっさんも呪印の剣やら言っていたのを思い出した。

「呪印の剣は触れる物全てに災いや不幸を与える剣だ。」

「もちろん"所有者"にもだ。」

「それを投げ付けるとは罰当たりだとあれほど…。」

シリウスは言ってないよね?

私が睨み付けるとシリウスは黙り込む。

「で、ユグドラシル。私の話を聞かずに襲って来たのはどういう事なの?」

「シリア、今の内に倒そう!」

シリウス。

話し合いで解決出来そうなタイミングを潰さないでくれる?

「よろしい。」

シリウスはうんうんと頷く。

どうやら、心の声を聞けるらしい。

「我は森を護る為に…。」

「私は森に危害を加えたっけ?」

その言葉の後に木を炙った事を思い出した。

私は少し目を逸らす。

「……。我の名は…。」

「誤魔化すの止めてよ!?」

私はその先の言葉を止める。

埒が明かないからだ。

「森に危害が無ければそれで良い。」

ユグドラシルの姿が霧になって消えていく。

完全に姿が消えた時には寂しく剣が地面に落ちていた。

「さて、幻影の森ってどこら辺にあるのかな?シリウス?」

私は笑顔のまま言う。

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