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魔法剣士に転職するのは魔法が使える人だけでしょ!  作者: 夢月華
第一章「無名の剣士」
1/11

剣聖に転生すると思ってました。

「えっと…。剣聖?ナニソレ?」

私はあるおっさんと話をしていた。


「だからよ…。俺の代わりにちょいと剣聖になってくれよ。」


その話から少し遡る。


「私、死んだんだ…。」

電車の脱線事故だった。

別に死んだ事を後悔などしていない。

恨むとしたら私は自分自身を恨む。

だけど、不思議とそんな感情は湧かなかった。

「おい、お前さん。転生してみないか?」

中年ぐらいの男は唐突に言って来た。

転生とやらを。


「剣と魔法の世界で剣聖になって世界を立て直してくれ!!頼む。」

おっさんの必死さが伝わって来る。

けど、簡単に引き受けれるような内容ではない。


「えっと…。剣聖?ナニソレ?」

私はあるおっさんと話をしていた。


「美味しいの?」

決して世界は優しく出来ていない。

そんな中で剣聖になる事がどれだけ難しい事なのか私には分からない。

だけど、この中年の男はその道を諦めたのだ。


「いやいや、食いモンじゃねぇからな?」


「まぁ…そのちょっと問題があってな…。」

歯切りが悪い。


「だからよ…。俺の代わりにちょいと剣聖になってくれよ。」

おっさんは諦めずに頼む姿は少し可哀想だった。

だから、私はその頼みを受けてしまったのだ。


「…分かりました。」

私は剣聖について聞く事にした。


「剣聖は剣を極めたものに与えられる称号だ。」

「ほえー。」

「適当な感想だな。」

私は実際それしか言う事が無かった。

「魔法も使えたら良いな…。そうだ!」

「ん?どうした?」

「魔法剣士!魔法剣士になって剣聖になるよ。」

魔法と剣の世界なら両方を極めるの目指すのもありだと思う。

「じゃあ、世界を頼むぞ。」

おっさんは嬉しそうに私に手振って…。

って、ろくな説明もせずに丸投げされてるじゃん!!

その瞬間、私の視界は真っ白になった。


「本当に宜しいんですか?

「何がだ?」

「あの少女に剣聖を目指すよう勧めた事です。別にあの少女じゃなくとも他の凄腕の男性がいたじゃないですか。」

ギミックと呼ばれる丁寧な口調の男は言う。

「その事か。だったら大丈夫だ。……多分。」

「今、多分って言いましたよね?言いましたよね?」

「あの少女に世界の命運を託すのは少し重過ぎたか?」

そんな話も知らず私は途方に暮れていた。


「宿屋が一軒もない…。」

普通一つや二つあるもんじゃないの?

散々探した末に村人に聞くと村にはないと言われたのだ。


「野宿は嫌だ…。」

前の世界ではルームシェアという言葉がある。

ひょっとしたらと思ったが、

流石に異世界だけあって村人は簡単には泊まらせてくれそうに無かった。


「そう言えば、お金ないや。」

そもそも持っていたとしても前の世界の通貨である。

もちろんお金を持って無かった。


「仕事か…。」

最初の問題につまづいた。


「あの…ここで仕事をしたいんですけど、」

私はとある本屋の少女に話かけてみた。

「はい?仕事の求人ですか?」

少女はすぐに電話をしてくれた。

恐らく店長的な立場の人だろう。

「お姉さん、魔法はどれぐらい使えるんですか?」

待ち時間を退屈にしないために私に質問をしてくれる。

私の中の好感度がぐいぐい上がっていた。

「全然使えないよ。」

私は正直に答える。

「全然ですか、使えない原因は色々あるようですよ?」

少女は何やら棚の中に置いてあった水晶を取り出してきた。

「これは…?」

「魔水晶です。魔力の大きさや魔力の有無が分かるんですよ!!」

少女は嬉しそうに話す。

「もしかして見てくれるの?」

「そう言うことです。」

魔力の有無が分かれば魔法が使えるか分かる。

仕事の幅や私の目指す魔法剣士に近付くかもしれない。

「お願いします!」

少女は水晶を真剣に見つめる。

見つめるというか睨んでいるようにも見えるが気にするところではない。

「むむ…。」

「分かった?」

「おぉ…これは凄いです。しゅごいですっ!!」

期待出来そうだった。

転生前に剣聖を目指すように頼まれた事も含めると大いに有り得る。

「見事に─────────────駄目ですね。強く生きて下さいね?」

「え、ええええええっ!?」

「そういうノリ!?そういうノリだったのっ!?」

少女は可哀想な人見るような表情をしている。

つまり本当に魔力がないようだった。

「えっと…魔力が全くないの?」

「お姉さん、魔力はミニゴブリン程度にはありますよ?」

全くフォローなって無かった。

ミニゴブリンとはゴブリンの下位の種族で魔力は普通の魔法一回分使えるかどうかぐらいらしい。

「───────泣いて良いかな?」

本当に涙が出て来たのは内緒の話である。

「魔力操作だけでも練習してみます?」

もう無心で何もする気が無くなっていた。

「仕事……もう大丈夫です。」

「いやいや、仕事しに来たんでしょ?お姉さんお金に困ってるんでしょ?」

「……これからの人生に困ってるよ。」

「しっかりしてよっ!!!」

少女の励ましもあり、私の心はちょっとだけ立て直した。

「じゃあ、仕事について説明するからね。」

そう店長気質のおばさんが言う。

とりあえず店長と呼ぶ事にした。

「あっはい!」

「って、事なんだけど…大丈夫?」

「はい!」

やっていける気がする。

「あと泊まる場所が無いって言ってたよね?」

「お店の二階に空き部屋があるから、そこ使って良いよ。」

店長は二階を指で指す。

「ありがとうございます!!」

「じゃあ、お仕事に取り掛かってね。」

仕事と言っても、接客と本の整理整頓だけだ。レジはもう少し出来るようになってからと言われてしまったが、

仕方がない。

「そんなに幼く見えるのかな?」

転生した姿をあまり気にしなかったが、

12歳ぐらいの見た目だ。

ただ言えるのは名前がないと言う事だ。

「お姉さんごめんね。名前教えてくれませんか?名前聞き忘れちゃって…。」

「お姉さんって呼ばなくて良いよ!」

転生した時にいきなりシリアス展開だったから…。

「えっと…シリアで良いよ。」

「シリアお姉さん。えへへ…。」

照れくさそうに笑う少女。

「私はユーナです!よろしくです。シリアお姉さん!」

「私の方からもよろしくね?」

友達になれそうな気がした。

いや、姉妹かな?

本屋の美人姉妹の看板娘とか良さげ!

「さー行くわよ!ユーナ!」

「シリアお姉さん、キャラ変わってるよ…。」

私の剣聖アルバイト生活が始まったのだった。


魔法の取得は本で勉強すれば良いし、

剣は間を見つけて練習する。

「いらっしゃいませ!」

「あれ新人さん?」

常連客のような女の子が話しかけてきた。

私がテンパっていると、

「そーなんですよ。シリアお姉さんって言うですよ?」

ユーナは私をフォローしてくれた。

「へぇ、可愛い店員さんだね。」

「い、いららららっしゃいませっ!!」

今さら挨拶を言ってしまった。

「元気で良いね!」

こんなに接客やるなんて聞いてない!!「シリアお姉さん…。」

酷いぐらいコミュ力と魔力がない。

だから仕方が無いと言いたい。

けど、これは仕事だ。

嫌でもやるしかない。

「おりゃあ!!」

気合いを入れる私。

「気合い入れてる所悪いけど、もう閉店時間だよ。」

既に天下の太陽さんは白旗上げて、とっくに逃げていた。

「今日はこのぐらいにしといてやる…。」

「お姉さん、ご飯どうしますか?」

完全にスルーするユーナ。

「ご、ご飯?考えて無かった…。」

「ご馳走しますよ?」

本当に?

本当に良いの?

ユーナさんマジ天使。

「ご馳になります…。」

「実はお兄ちゃんがハンターやってて、いつも大量に狩って来るんです。」

「結構、余った奴は捨てちゃうんですよ。」

日持ちが出来ない物を狩って来るという事か。

ハンターになって自給自足するのも良いな。

「いやぁー妹の友達が遊びに来るなんて、初めてなんじゃないのか!?」

「お兄ちゃん、まるで私に友達がいないみたいな事言わないでよ!」

私の肉眼でも奴のシスコン数値が分かる。

シスコン度が7000を超えていた。

私の感覚では2000を超えると妹にしか興味が湧かなくなる重度のシスコン認定がされる。

「お兄さんってハンターやって何年目なんですか?」

「お、おおお兄さんだと…!?」

ユーナのお兄さんが何やら動揺している。

「あっ…呼び方。迷惑でしたか?」

きっと怒ってるに違いない。

血の繋がりがない赤の他人がお兄さん呼ばわりは流石に無かったか。

「いやいや、むしろ光栄だよ!」

「ほ、本当ですか?」

「本当だよ、むしろお兄様って呼ばれて罵られたい!」

ヘンタイだった。

私の心が悲鳴をあげていた。

「お兄ちゃん、シリアお姉さんに迷惑でしょ!」

「ユーナと本当の姉妹にならないか?」

ほへ?

姉妹?

「お兄ちゃん、何言ってるんだよ!!シリアお姉さんに謝れ!クソ兄貴!」

そう言われ、壮大に蹴っ飛ばされたお兄さん。

ご愁傷様でした…。

ただ可哀想な目で見てあげる事しか出来なかった。

「名を名乗るのを忘れていたね。」

「ユウキだ。妹とは今後ともよろしく頼むよ。」

私は軽く会釈する。

「ユウキさん。ハンターやって何年目ですか?」

掻き消された質問を掘り返す私。

「ゆ、ユウキさん!?あっあ…五年目だよ。」

何だか分からないがユウキさんの様子がおかしかった。

「それじゃあ、ご飯でも食べようか。」

魔物の料理らしい。

簡単に焼いただけのものだが、

味がしっかりとしていて美味しかった。

「本当に豚肉…じゃなくてゴブリンの肉って美味しいですね。」

間違えて前世の食べ物を言いかけた。

「この辺じゃ珍しくもないよ。ハンター何年もやってると簡単に倒せるし、」

簡単に豚肉が手に入ると?

「ハンターになるにはどうすれば良いですか?」

「簡単だよ。ギルドセンターに申請するだけさ。」

要は簡単なアンケートに答えるようなものらしい。

「ちょっとお姉さん?本屋のお仕事はどうするつもりなんですか!?」

ユーナはどうやら本屋の仕事を辞めてハンターになる事を心配してるようだ。

「両立だよ!両立!」

そう私は本屋とハンターの両方をやろうと思ったのだ。

お金がある程度貯まれば本屋を辞めて、

ハンター生活をやろうかな。

「両立…要は両方やるという事ですか?」

やっと理解してくれた様子だった。

「お姉さん、明日も朝早いので寝ましょう。」

「ハンター申請の件だけど、一度センターの所で報告しとくよ。」

「ありがとうございます!」

私は次の日に備えて早めに寝る事にした。

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