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愚者と弱者のミックスアップー2ー

三本目のタバコを取り出そうとして、ふと指の股の部分に絵の具が着いているのが目に入った。

恐らく、というか間違いなく昼間、あの謎めいた創作活動に加わった時のものだろう。

ジャケットを脱いで、ワイシャツを捲り、力の限りに西条が飛び散らかした絵の具達を殴りつけ

拳だけで混ぜ合わせる。自分でもなぜわざわざそんなことをしたのかは分からないが

彼の放つ真っ直ぐすぎるその熱量にあてられてしまったのかもしれない。


(よく洗ったつもりだったのだがな)


かすかに、擦れたように残るくすんだ青色の絵の具を何の気もなしに見つめているとどことなく

彼の瞳の色と似ているような気がして、自分はどこまで気にかけているんだと苦笑した。



欲しい物は必ず勝ち取り、何者にも譲らず生きる。

誰にそう教わった訳でもなく、ただそういう風に出来ていたと言って良い。


東雲一馬とはそういうものだった。


そしてその生き方によって培われた自身の価値観を拘りぬくこと

それが成熟した彼の人格の核となる部分であった。


例えば竜之介を助けるようなことをしたのもその一環だ。

彼の境遇に同情したということも少なからずあったが、

それよりもその年端もいかぬ子供を支配するというへの嫌悪感があり、

それを看過するということ、つまり、力関係から言っても仕方がないと

自らの価値観に折り合いをつけさせられることへの怒りが大きかった。


だから彼に対しての愛情は極めて一般的なものに収束する。

将来を考え、悩みを聞き入れ、成長を見守ることは出来る。


だけど、もしも彼が事故に遭い、自分の命を捧げれば助かるというような

状況に至ったするならきっとそこまでは出来ないだろうと冷めた視点を持っている。


そしてそれは妻である白木華に対しても変わらない。

女性として、パートナーとしての信頼はあるが、

全てを尽くすほどの献身を求められたならば距離を置くだろう。


愛おしいとは思うが、それは世間的なステイタスの為であったり

まだそれほど目減りしていない取締役の娘というポジションの価値もあって

結婚したという誰にも話すことのない事実は厳然として存在した。


肥大化した価値観は彼が心から人を愛することを

無意識下で制限するようになっていた。


生まれついての傲慢が生んだ絶対的排他性。

それこそが幾度も繰り返した自己分析の果てに見出した己の本質だ。


そこまで考えたところでアルコールによる躁状態が反転しようとしているのを経験則から感じ取る。

それでも、ここからの思考が暗い物になることを予見しながらも、彼は更に酒を呷った。











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