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これからのこと

なかなか話が進まない……。文才さえあれば……。

父が見事にざまぁされた夜、私は陛下に執務室に呼び出された。レーニャは私のお付きとして帯同を許可されている。


「カサンドラ・キルシュバウムでございます。ただいま参上致しました」


執務室には陛下と宰相の他に何故か筋肉隆々のおじいさんがいた。どちら様?


「よく来てくれたカサンドラ嬢。なに、そんな緊張しなくても良い。今回はカサンドラ嬢の今後について話し合おうと思ってな。それと紹介しておく、彼はアレクシード・キルシュバウム。先代のキルシュバウム公爵でカサンドラ嬢の父方の祖父にあたる」


この人が私の祖父ですと⁉︎父とまったく似てないんですが。本当に血の繋がりあるのか?


「陛下、何故ここにお爺様がいらっしゃるのでしょうか?」


「カサンドラ嬢よ、キルシュバウム公爵が引き起こしたこの件の影響はどのくらいに及ぶと思う?」


「非常に申しにくいことですが……恐らく、貴族内の勢力図が一新されるほどの影響がでるかと」


我が父、いや元父の国王暗殺計画にどうやら他にも有力貴族も名を連ねていたそうで、本人やその親族の処分をすべて行うと一気に貴族内の勢力図が一変する。キルシュバウム家の親族の多くは国王暗殺計画に関与していなかったが、横領などの不正には関与していたため処分を受けるはずだ。つまり祖父が陛下とともにここにいるということはそのふたつにも関与していないといえる。処罰はないのかもしれない。そして陛下は今後のこととおっしゃっていた。


「つまり祖父は私の後見人の候補、または監視ということでしょうか?」


私が自分なりの答えをだすと、陛下は苦い顔になる。あれ?まさか外した?


「カサンドラ嬢はとても聡いな。こちらが悲しくなるほど物分かりが良すぎる」


ごめんなさい、それは前世の記憶を引き継いでいるというチートを使っているからです。精神だけ成熟してしまっただけなので。


「普通は親に甘えたい年頃だというのにカサンドラ嬢は達観し過ぎているな。やはり君には甘えられる保護者が必要だ」


「それでお爺様が後見人と。たしかに罪人の娘である私を引き取ってくれる物好きな貴族はいないでしょう。ですがキルシュバウム家は取り潰しになりますのでお爺様は私を引き取る余裕はないのではないでしょうか?」


「カサンドラ嬢の言う通りキルシュバウム家の取り潰しは決定だ。しかしアレクシードは婿で実家はハミルトン伯爵家だ。既に隠居しているがアレクシード自身もハミルトン伯爵領内に屋敷をもっているから養うことくらい問題ない。それにアレクシードは先代騎士団長だ。人望も性格もこの私が保障する」


ハミルトン伯爵家は決して大きくはないが、キルシュバウム家と違い領民第一とした善良な貴族だ。たしかに陛下に信用されているだろう。


「しかし自分の領地に罪人の娘を迎えるとなればハミルトン伯爵家に迷惑がかかります。ご一考を」


私がそう言うと、陛下は苦笑する。何かおかしなことでも言っただろうか?


「どうやらカサンドラ嬢は誤解をしているようだ。君は罪人の娘でもあるが、一方で貴族の中では君自身は身を呈して国を守った勇気ある者として賞賛されている。寧ろ悪く言うとその貴族が騒動に関与したかと疑われるくらいだ」


はあぁぁぁぁ⁉︎私の好感度高すぎでしょ!はっ、これはまさか、立派な令嬢としてどっかの貴族子息と婚約するフラグ⁉︎そんなの勘弁してよ⁉︎私は冒険者になるんだ〜!


「だからそんなことを気にする必要はない。それに後見人役はアレクシード自身が望んだことだ。もしアレクシードが志願してくれなかったら後見人役を名乗りでてくる貴族が殺到してただろうな」


まじすか……って何気に陛下お爺様のこと推してない?


「そうでしたか。ではお爺様、今後はしばらくの間お世話になります」


「しばらくの間だと?」


あっ、何気にお爺様が喋ったのが初めてじゃない?中々渋くて良い声。


「陛下にもうしあげましたが、私は貴族より冒険者になりたいのです。ですのでしばらくの間は一般知識を学んで、その後は冒険者として生きていきますと思っています」


「駄目だ。カサンドラのようにか弱な婦女子には冒険者なんて不可能だ。悪いことは言わないからやめときなさい。カサンドラは私に守られていれば良い」


お爺様が私の決意に反対するのは目に見えていたからそこは仕方ない。だけどお爺様は言ってはいけないことを言ってしまった。


守られていれば良い、と。


ふざけるな!私は守られていなければ生きていけないようなことは死んでも御免だ。無価値な自分ほど嫌いなものはない。


だから力づくでも認めさせてやる!


「あら、お爺様とあろう人が私の実力を測ることすらできないですのね。それでも本当に元騎士団長ですか?それとも……もう耄碌したのですか?」


この挑発は効いたのだろう。お爺様は私だけに殺気をむける。並の兵士でも動けなくなるほどの殺気。普段殺気をむけられない貴族、それも子供なら失禁してしまうかもしれない。普通なら。


「おや、たかが子供の戯言に殺気をむけるなんてなんて大人気ない人。それとも力づくで抑えつけようとでもなさいましたか?」


でも私にはこの程度の殺気は通用しない。祖父は驚いているがそんなの気にしない。それにやられっぱなしは気に食わない。私は祖父にさっきの二倍程度の殺気をむけた。恐らく一般兵士が腰を抜かすぐらいに。


「なんとっ……⁉︎ここまでとは……」


祖父もまさか十歳の少女、しかも自分の孫が殺気を振り撒くとは思わなかったのか、陛下が不審がるほどに動揺していた。


「アレクシードよ、一体どうした?」


陛下には殺気がむかなかったので、何が起きたのか理解できていなかった。


「失礼いたしました陛下。どうやら我が孫は戦士としてとんでもない素質があるようです」


流石に実力を理解できたのか、私の評価は上がったようだ。これで分からなかったら私は祖父に失望していただろう。


祖父、いやお爺様が私と向かい合う。


「二年だ」


「えっ?」


「二年は屋敷に居てもらう。その後は冒険者でもなんでもなれば良い。だが二年は勉学などをしてもらう」


なるほど、そこが妥協点か。我儘言ってるのは分かっているからここは私が折れなくてはならない。


「分かりました。我儘を聞いてもらってありがとうございますお爺様」


ほんと、話が通じる御仁でよかったよ。下手な相手だと監禁または軟禁されかねなかったしね。


「それと、お前が屋敷にいる間は私が特別に鍛錬してやろう」


そう言うと、お爺様はそっぽむいて陛下に準備があるからと言って執務室から退室していった。


「おやおや先代の騎士団長もあんな表情するんですねえ」


「そうだな、私の前ではほとんど無表情だったしな」


今まで空気だった宰相がそう言うと、陛下も同意して笑う。やばい、宰相の存在をすっかり忘れてた!


「私はそんなに存在感ないのでしょうか?」


宰相がこっちを見て黒い笑みを浮かべている。もしかして心読まれている⁉︎


「いえいえ、そんなことないですよ」(ニッコリ)


完璧に読んでんじゃないですかー‼︎後、忘れていてごめんなさい。

カサンドラは地の文では基本的に素です。気が抜けるとたまに会話の中でも素がでます。


カサンドラ「勉強は得意だけど、マナーは最低限のことはなんとかってところね。でもそれ以上は……」


レーニャ「お嬢様、もう少し頑張りましょう……」


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