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断罪

今回は三人称です

キルシュバウム公爵家当主、バートン・キルシュバウムは己の置かれた立場を理解できなかった。


(何故だ何故だ何故だ⁉︎どうしてこんなことになった⁉︎私は名門キルシュバウム公爵家の当主だぞ、こんなことがあってたまるか‼︎)


王城の大広間では現在、横領や国王暗殺未遂などの国家反逆罪で捕まったキルシュバウム公爵家当主の取り調べが行われていた。


「…以上がキルシュバウム公爵家当主、バートン・キルシュバウムの罪状であります」


宰相がキルシュバウム公爵の罪状を読み上げる。張本人のバートンは顔面蒼白で醜く肥えた身体を震わせている。


「であるか。してキルシュバウム公爵よ、何か申し開きはあるか?」


厳格な態度で臨む国王は冷たい眼差しで震えているバートンを見る。


「わ、私は無罪です。誰かが私を陥れようとする罠に違いありません!」


「ほう、では貴殿は宰相が挙げた証拠が虚偽と申すか」


「そ、その通りです」


国王はカサンドラが出した証拠によって既にバートンが隣国に唆され自身の暗殺を企てたことと奴隷売買組織と密接に関与していることを知っているため、バートンのふてぶてしさに苛立ちを感じ始めた。


そうとは知らないバートンはペラペラと嘘八百をあげて自分は嵌められたのだと国王に訴える。


国王のこめかみに青筋が浮かび上がっているのは気のせいではないはずだ。


(私は名門の人間で選ばれた者だ。そんな私を国王は疑っている風を装っているが、本当は名門の人間がこんなことをするはずないと信じているに違いない。そういえばたしか宰相は新興の伯爵家出身だった。伯爵ごときが私に刃向かうなど生意気な。それに私には隣国の第一王子がついている。今に見ておれ、私を蔑ろにした報いは国王共々はらさせてもらうぞ)


一方国王の様子に気づかないバートンは見当違いな思考をを巡らしていた。


「それに我が公爵家は由緒正しき名門です。その当主である私がそんなことするはずがありません。陛下は宰相に騙されているのです。そもそも伯爵家ごときが宰相を務めているのが既におかしいのです」


(((((こいつ、救いようがない馬鹿だ‼︎)))))


大広間にいた全員(主に重役)の心の叫びが一致した瞬間だった。


公爵家だからそんなことはしない?そんなことねーよ、要は個人の問題だよ!横領や国家反逆罪に爵位なんざ関係ねーだろ!


陛下が宰相に騙されている?そもそも陛下と宰相は幼馴染でてめえみたいな欲深な豚よりもずっと有能で忠誠心も高いんだよ。陛下の幼馴染を陥れようとか陛下を馬鹿にしてるのか⁉︎陛下がキレかけてるだろうが‼︎


たかが伯爵家ごとき?たしかに伯爵家出身だけど今の宰相は侯爵よ?いつの話をしているんだよ!大体陛下は有能だったら爵位なんて気にしないで積極的に起用するし、寧ろ爵位だけの無能は嫌っているから!てめえのことだよ公爵!言外に陛下の政策を馬鹿にしてることも分からないのか⁉︎


全員の心のツッコミが連続するほどバートンの失言はかなりヤバかった。


そもそもバートン・キルシュバウムは貴族の中でもずば抜けた暗愚として非常に評判が悪かった。血統は名門の公爵家だがかなりの無能で、王国にある公爵家の中で唯一重要な役職についていないこともそれを証明している。性格も傲慢な上に格下の爵位の者を見下すなど最悪で女癖も悪く、庶民の娘を誘拐して慰み者にするなど貴族の中でも良く思わない者も多い。あまりの女癖の悪さに王命によって贅沢好きな国王の従姉妹にあたるカサンドラの母と結婚することになったり、権力に物をいわせて気に入らない相手を潰したなど悪名を轟かせるエピソードが絶えないことでも有名だった。


「ほう、宰相が我を騙しているという根拠はなんだ?きっと我を満足できる証拠でもあるんだろうな(まさか証拠もなしに我が幼馴染を貶すなんてことはないだろうな、覚悟できてんのか糞豚‼︎)」


(やべえよ、陛下が完全にプッチンだよ。マジであのハゲデブは余計なことしかしねえな‼︎)


(オイィィィィィ、なんか陛下がブリザード出してんだけど⁉︎俺無関係なのにメチャクチャ背筋が寒いんですけど⁉︎てかあのデブ、ブリザードに気づいてねええええ‼︎)


(オワタ\(^o^)/)


(ガクガクブルブル)


(ふっ、……死んだな)


(ちょっとォォォ、軍務大臣が立ったまま気絶しちゃったよ!目ぇ開きっぱなしで気絶だよ!この中で一番厳つい人が一番最初に気絶すんじゃねえええ‼︎)


バタンキュー


(((ト、トルーマン子爵が倒れたああああ‼︎)))


(ルーキーが……無茶しやがって)


国王の副音声が聞こえたバートン以外の全員が諸悪の根源であるバートンを心の中で非難した(大半はパニックに陥っていたが)。中には国王のブリザードをモロに受けてダメージを負った者もいた。


国王のブリザードに気がつかないバートンは自信満々にこう言った。


「卑しい身分出身の者など信用できません。どうせその証拠も捏造したに決まっています。大方私を妬んでの犯行でしょう」


ブチッ、ブチブチブチ。


「口を閉ざせよ下郎。これ以上我の親友を馬鹿にするつもりなら貴様を捻じ切るぞ」


(((((イヤァァァァァァマジギレだああああ‼︎)))))


大広間は完全にパニック状態に陥った。しかしそこは流石の貴族。声に出したり、表情に表したりはしなかった。何人かは涙目になっていたが。


そして漸くバートンは国王の怒りに触れたことを理解したのか、顔色が白から土色に変化し、へなへなと座り込んでしまった。


そんなバートンの様子を気にしない国王は特大の爆弾を落とす


「貴様は証拠は捏造だと言ったな。だが残念だったな。我々のもつ証拠は皆貴様の邸宅から出てきたものだぞ。それを出してきたのは貴様の娘だ」


「は?」


国王と宰相以外のバートンを含むメンバーの時が止まる。


「聞いていなかったのか。貴様の悪事の証拠はすべてカサンドラ・キルシュバウム嬢が集めて、私に出したものだ」


「ば、馬鹿な…カサンドラはまだ十歳になったばかりですぞ。そんなこと、あり得るはずが「いいえお父様、陛下の仰ったことは事実です」っ⁉︎」


突然バートンの言葉を遮った幼い少女の声。まわりを見回しても少女の姿は見えない。


「はあ、皆が姿を見つけられていないようだ。皆に分かるように姿を現せ」


国王の声に従って、少女の姿が現る。ー国王の目の前に。


「「「「「はあああああああああ⁉︎」」」」」


これには貴族達も叫ばずにはいられなかった。無理もない。今まで誰もいなかったはずの国王の目の前に突然少女が現れたのだから。


「皆々様、お初にお目にかかります。重罪人バートン・キルシュバウムが息女カサンドラでございます」


仮にも父親を散々な紹介をしたカサンドラのインパクトが強く、未だに貴族達は声を出すことができない。


「皆の衆、今までの証拠はそこのカサンドラ嬢が出したものだ。中には隣国の押韻があった書類があり、信憑性は高いぞ」


茫然とする貴族達を放置することにした国王は淡々と述べる。


「キルシュバウム公爵よ。どこが宰相の捏造かね?カサンドラ嬢は自宅にあったものを単純に集めたと言っていたぞ」


 バートンは何も言えない。彼には心当たりがあったからだ。彼が捕まる前に重要な書類が紛失したからだ。あの時は単に失くしたと考え使用人に探させていたが、それがカサンドラが収集していたとするとすべて辻褄が合う。


 「き、貴様あああ、私に育ててもらった恩を仇で返すのか⁉︎」


 「恩とか仇とか知りませんね。私は単に国に仇なす者を告発しただけですが。国を守るのは貴族の努めでもありますがなにか?」


 バートンは激昂するが、カサンドラは気にした様子はない。


 「黙れ黙れ黙れ‼︎私は選ばれた者だぞ‼︎今頃隣国の援軍が来てるはずだ、そしたらこの国をおしまいだぞ!」


 ついに公爵は自棄を起こして罪を自白した。だが隣国が攻めこむということに貴族達は動揺する。


 だが国王はまったく動揺していなかった。


 「それはあり得ないな。丁度今日隣国の第一王子が処刑されたそうだ。隣国の国王と私の暗殺未遂でな。まだ私と宰相とカサンドラ嬢しか知らないことだが」


 「なんだと、第一王子が、処刑?」


 「貴様の証拠のお陰だ。隣国に問い合わせたら向こうも驚いたそうだ。何しろ自分の第一王子が友好国の国王を暗殺しようとしたのだからな。当然第一王子は処刑。それに関与した者も遠くない内に処分されるだそうだ。そして我が国は正式に謝罪を受けた。これで隣国の脅威はないだろう」


 バートンはもう話す気力もないようでずっと俯いている。


 「さてバートン・キルシュバウム元公爵に判決を言い渡す。貴様は公開処刑だ。分かったな。それと貴様とつるんでいた貴族も軒並み重い処分を受けるだろうよ。おい、この罪人を地下牢に連れてけ。楽に殺させないようにな」


 そう言って国王は満足したのか大広間に去っていった。それに宰相とカサンドラが続く。


 残ったのは罪人に蔑んだ目を向ける貴族達ともはや生きる屍と化しているバートンのみだった。

この大広間に集まった貴族は国王の信任が厚く、善良な者が多いです。中々ユニークな人達ですね。

カサンドラがどうやって突然現れたかは、


カサンドラ「気配を限りなく自然と一体化させて、周囲から認識させなかっただけですよ。『ゴブリンでもできる気配の消し方』では基本と書かれてたのでみんなできるのでは?」


重役一同『普通はそんなことできねえよ‼︎』


レーニャ「流石はお嬢様!私も精進します」

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