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悪役令嬢と小さな騎士

後半部分を大幅に改稿しました。前回とストーリーが大きく異なっています。

私はハミルトン邸の庭で木剣を構える一人の少年と向かい合っていた。


「お前みたいな性悪な女に大叔父様に相応しくない‼︎この俺が成敗してやる‼︎さあ勝負だ。武器を構えろ‼︎」


ほんと、何でこうなった……





事の発端は一時間前に遡る。


ティアナとほのぼのとした時間を過ごした私はお爺様に連れられ、ハミルトン邸の裏庭に来ていた。


裏庭には必死に木剣を振るう一人の少年がいた。


彼はお爺様に気がついたようで剣を振るうのをやめて、お爺様に笑顔で近づいてきた。彼からフリフリと揺らす尻尾が見えたのは幻覚だろうか。


「大叔父様久しぶりです。もしかしてついに俺に稽古をつけてくださるのですか?」


「そうではない、お前に紹介する者がいてな。カサンドラよ、彼がハミルトン家子息のレイナードだ」


そう言われてキラキラした様子だったレイナードは漸く私の存在に気づいたらしい。私に目を向けると急に睨んできた。


「初めまして、カサンドラ・キルシュバウムでございます」


とりあえず睨んだことをスルーして無難に挨拶したが、彼は挨拶もぜず私を睨んだままだ。何か彼の機嫌を損ねただろうか?


「これレイナード、挨拶すら出来んとは何事だ。そんな基本的なことすら出来ないなら私の指導どころか騎士になるのも諦めろ」


「ふんっ‼︎……レイナード・ハミルトン、だ」


そう言うと、そっぽ向いて私とは視線すら合わせなかった。


うーん、お爺様の言う事は正論だけどちょっと言い方が強い気がする。レイナードが不貞腐れてしまった。


「やれやれ、そんなことではいつまでもお前に指導は出来ないな。騎士は実力だけでなく礼儀作法も必要だといつも言っているだろう。そんな調子ならレイナードよりカサンドラの方が余程騎士らしいな」


だが彼はお爺様の忠告が自分を馬鹿にしてると感じたらしい。


「それは、この俺がたかが女風情に劣ると言いたいのですか?」


「そう言うことではない。その傲慢さが問題なのだ。本来騎士は弱き者を助けなくてはならないにも関わらず、お前は弱き者を見下している。そんなことも理解出来ない者に私は指導するつもりはない。それにお前はそんな大口を叩けるほど実力があるのか?私の指導すら受けていないのに?」


お爺様が怒ってらっしゃる……そしてそれに気づかないレイナードぉ。


「ええそうです。少なくても同年代には負ける気がしませんね」


あーあ、これは自信過剰というより傲慢だね。完全にまわりを見下しているね。でも元父みたいな血統自慢じゃないからまだマシ。あれは直しようがないけど、レイナードはコテンパンにやられれば救いはあるし。救われるかは本人次第だけど。


傲慢の原因は近くに比較対象がいなかったからかな?それともまわりが弱かっただけ?いくら実力があっても傲慢になれば成長がなくなるのに。最初は真面目に素振りしてたから期待はしたんだけどな。伯爵夫妻やティアナはいい人なのに何で彼だけこんなに傲慢なんだろう?


「ほう、随分大きくでたな。ならカサンドラと勝負したらどうだ。カサンドラは私が直々に指導したいと思わせるほどの才能の持ち主だ。いや対人戦なら間違いなく私より格上だ。」


はあぁぁぁぁ⁉︎お爺様何勝手に私を引き合いにだしてんの‼︎そんな挑発したら、


「はあ⁉︎こんな性格悪そうな女が⁉︎信じられませんね」


ほら彼が見事に挑発に乗っちゃったし。って誰が性格悪いだ!確かにつり目だから怖そうに見えるけど。


「ふん、だったらその高く伸びた鼻を叩き落としてやろう。カサンドラ、やってやれ」


マジで?こんなか弱い女の子に何を言ってるの?


「本当にやるんですか?」


「当たり前だ。あいつには少々痛い目に遭って貰わないとな」


お爺様が黒いよ。脳筋な祖父なんていなかったんや!いくら私がチートでも幼女に戦わせるなんて鬼、鬼畜!


「あまり気乗りしないなあ……」


愚痴りながらもレイナードと向かい合う。


「ふん、貴様みたいな女が大叔父様の指導を受けられるはずがない。どうせ大叔父様を誑かしたんだろう」


うん、なんかドヤ顔で自信満々に言ってるけどまったく的外れだからね?





そんな訳で冒頭に戻る。


「大体女に大叔父様の指導が入ること自体おかしいんだよ‼︎女は大人しく政略結婚の駒になっていれば良いんだ‼︎」


あ、まだ演説(笑)が続いてた。


言動を振り返るとどうやら彼は古い男尊女卑主義者のようだ。だが彼の主張はことごとく的外れだ。


確かに昔はそうかもしれなかったけど、今の陛下の治世では男女問わず優秀な者が活躍する時代になっている。王城では女騎士や女性の役人も少なからずいたし、数は少ないが女貴族も存在する。平民の中でもこの考え方は浸透しており、男尊女卑を唱えるのは古臭い頑固者くらいだ。


「あなたの主張はまったくの的外れです。今の王国では男女ともに働ける社会になっています。それは貴族、平民問わずにです。陛下が即位してもう二十年も前から女性も活躍する時代に変わっているのですよ。正直そんな考え方は時代遅れなんです」


一体誰がこんなこと吹き込んだか。将来困るのはこの子なのに。騎士志望が守るべき相手を侮辱をするなんて笑えない。お爺様が呆れるのも分かる気がする。


とりあえず穏便に済ませようとレイナードのものよりやや小型の木剣を構えようとしたが。


「うるさい!汚い亜人種をメイドにしてる女風情が偉そうにしやがって‼︎」


……は?今、なんて言った?


「今、何とおっしゃいましたか?」


「はっ、もう一度言ってやろう。汚い亜人種をメイドにしてる女風情が偉そうにするなって言ったんだよ」


あ?


汚い亜人種のメイド?レーニャのことを言っているのか?


私を悪く言うのはまだいい。だがレーニャを悪く言われるのは……堪えられない。私のレーニャを馬鹿にするなんて万死に値する。


「気乗りしませんでしたが状況が変わりました。お爺様の望みどおりあの傲慢な精神をへし折り再起不能にさせてやりますよ」


よくも私を怒らせたな。私は大切な人を馬鹿にされるのが一番嫌いなんだよ。


「いやさすがに再起不能にされるのはちょっと……鼻を折る程度でいいのだが」


私を焚きつけておいてそんな甘いことは言わせないよお爺様。あのアホタレが一体誰を怒らせたのかじっくり分からせてあげるから。


「それはあちらの精神次第ですね。私は加減する気はありませんよ。まあ殺しはしませんよ、殺しは」


だからそれ以外はまったく保証しない。


「おい、さっきから何言ってやがる⁉︎」


レイナードが怒鳴る。というかうるさい。


「いえいえ大したことではありませんよ。あなたの敗北後のことについて話していただけです」


「ふ、巫山戯るなあぁぁぁぁ‼︎絶対お前を泣かせてやる!」


やっぱりこの手の輩は無駄にプライドが高いな。この程度の煽りで見事に冷静さを失った。


「泣かせても構いませんよ。出来るなら、ですが。お爺様、そろそろ」


「そうだな……では始め‼︎」


お爺様の合図で私とレイナードの決闘が始まった。


「死ねえぇぇぇぇぇ‼︎」


物騒な掛け声でレイナードが勢いよく斬りかかった。


「ふん」


だがそれだけ。怒りで血が上ったのか構え方も斬る体勢もなっていない。私か一振りするだけでレイナードの手から木剣が放物線を描くように離れていった。当のレイナードはポカンとしている。


「早く剣を拾いなさい。それとももう終わりかしら。なら期待外れもいいところね、口ほどでもない」


「うるさい!さっきのはたまたま剣が離れただけだ!これで倒した気になるなよ」


剣が離れただけって、実戦じゃそんな言い訳通用しないよ。これでレイナードは一回死んだね。


「御託はいいわ。さっさと構えなさい。先攻は譲ってあげる」


「一回上手くいったからって調子に乗るな!」


再びレイナードが斬りかかってくる。先程とは違い、冷静になれたのか構え方も斬る体勢も良くなっていた。


「けどまだまだ甘いね」


良くなったといっても所詮は子供レベル。身体のスペックも技術も経験も勝る私がやられるわけがない。レイナードの一撃を後ろに逸らすようにいなし、バランスを崩したレイナードに逸らした反動を利用した回し蹴りを食らわせる。


「があああああ‼︎」


モロに回し蹴りを食らったレイナードは勢いよくふき飛ばされた。そこに追い打ちをかけるようにふき飛ぶレイナードを追走。地面に届く前にレイナードの胸元に入り、慣性の力に逆らわないように背負い投げの要領で骨が折れない程度の力で地面に叩きつけた。


「ガハァ……‼︎」


トドメとしてレイナードの腹に足を乗せて身動きを封じ、剣を首元に添える。


「これで、勝負ありね」


「ふざけるな……回し蹴りなんて、卑怯だぞ」


「回し蹴りが卑怯?何を言っているのかしら?これは決闘よ。ルールなんて存在しないわ。決闘じゃなくても実戦もルールなんてないの。あなた騎士志望でしょ。敵にもいちいち卑怯だなんて言うのかしら?」


レイナードは睨んでいるが正論のため、何も言うことができない。そこにお爺様が追い打ちをかけた。


「試合ならともかく実戦にはルールも卑怯もない。本当に騎士になりたいなら型だけではなく様々な場面でも対応できる応用力も必要だ。それにお前はまだまだ弱い。同年代の中でもだ。技術もそうだがお前は特に心が弱い。慢心して周囲を見下せる者が騎士になれるほど世間は甘くはないぞ。お前が変わらない限り、私はお前に剣を教えるつもりはないし騎士をさせるつもりはない」


お爺様にバッサリと切り捨てられたレイナードは、見下していた女の私にコテンパンに叩きのめされたダメージと尊敬するお爺様に見捨てられたショックで放心状態だ。大切な人に見捨てられる辛さは私はよく知っているが、彼の場合は自業自得なため同情はしない。本当にレイナードが変わらない限りお爺様は彼を見捨てるだろう。これから這い上がるかどうかはレイナード自身にかかっている。


こうして私とレイナードの決闘は私の圧倒的勝利で幕を閉じた。

無理矢理設定を盛り込んだ結果、収拾がつかなくなったので大幅に改稿しました。前回よりカサンドラは理性的な判断に、レイナードは性格をマイルドに変更しました。大きくストーリーが変わりましたが、これからもよろしくお願いします。

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