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トラブルですか?ーいいえテンプレです 後編

後編です。残酷な描写があります。

馬車を飛び出すと戦場は予想よりも悪化していた。馬車を守っていた部下の半数が死亡し、残りの半数も無傷の者など皆無で皆どこかしら負傷している。敵はそれなりに倒されていたがまだまだ無事な者も多い。


「レーニャ、ここを頼むわ。私はお爺様のところへ行くつもりよ。この状況だとお爺様も危険かもしれない」


「任せてください。お嬢様は早くアレクシード様のところへ」


レーニャのことも心配だが、ここはレーニャを信じることにした。



◇◆◇



カサンドラがアレクシードのもとへと行くのを確認したレーニャは、自身を囲む盗賊達を睨む。


「我が身を捨ててお嬢ちゃんを逃がすなんて泣かせるねえ。アンタは上玉だから楽しめそうだ」


盗賊達は突然出てきた女に困惑したが、上玉だとわかったことで下卑た笑みを浮かべていた。


「その目、不快ね。潰れなさい」


「へ……グギャアァァァァァ‼︎」


レーニャが呟いた直後、ひとりの盗賊の視界が黒に染まる。同時に伝わる激痛が、自身の目が潰れたことを教えた。


盗賊の目の前には先程まで馬車の近くにいたレーニャ。レーニャは活歩で盗賊との距離を縮めてその勢いそのままで目潰しをしただけなのだが、盗賊達は何が起きたのか理解できなかった。


「ちっ、感触が不快。返り血が不快。呻き声が不快。そしてお嬢様の邪魔をするあなた達の存在が一番不快。さあ、お嬢様と私のためにさっさと死んでちょうだい」


「アアァァァ……グエッッ!」


ブツブツ呟くレーニャはまわりから不気味に映り、目が潰れた盗賊の咽喉元を手刀で貫く。盗賊は不快な呻き声をあげて息絶えた。


「これが人を殺す感覚……。あまり罪悪感はありませんね。彼らがお嬢様に仇なしたからでしょうか?」


「う、うわあぁぁぁぁ⁉︎」


仲間を呆気なく殺された盗賊達は、淡々に殺すレーニャに恐怖を抱く。そして恐慌状態に陥った盗賊のひとりがレーニャに斬りかかった。


盗賊の刃がレーニャを襲うが、恐怖で大ぶりになった一撃をレーニャは簡単に避ける。そしてレーニャは盗賊とすれ違いざまに盗賊の腹部に強烈な正拳突きを浴びせた。レーニャの拳は盗賊の腹部を貫き、正拳の威力で胴体は爆散したような惨状になる。


「二人目。後何人ですかね?」


淡々と惨殺するレーニャに盗賊達の戦意は完全に消失した。武器を放り投げ投降する。あまりの惨状に部下達も声を出すことができなかった。


「もう終わりですか。意外と呆気なかったですね。お嬢様の方はどうでしょうか?」


無双したメイドは平然としており、ただ主を心配していた。



◇◆◇



私がお爺様のところに辿り着くと二人は未だに斬り合っていた。切り傷など小さな怪我はみえるが、二人共大きな怪我はないようだ。だが二人の様子に明暗がわかれている。ゼルツは息を切らしているが、まだまだ体力が残っているようだ。しかしお爺様は肩で息をしていて、フラフラしている。やはり実力が拮抗していても体力の問題があったようだ。このままではお爺様は負けるだろう。


「お爺様ご無事ですか⁉︎」


「カサンドラ⁉︎何故ここにいる!さっさと馬車に戻れ‼︎」


「もうそんな状況じゃありません!このままでは負けると思ったから出てきたのです」


「おいおい、爺さんよ。そこの嬢ちゃんは誰だ?もしかして爺さんの女かい?」


下卑た笑みを浮かべるゼルツに私は向かう。


「私はアレクシード・キルシュバウムが孫、カサンドラ・キルシュバウム。今からお爺様に代わってあなたの相手をしてあげるわ」


「馬鹿をいうなカサンドラ‼︎さっさと逃げろ!」


「ハーハッハッハ‼︎こいつは中々度胸のある嬢ちゃんだ。嬢ちゃんのことは気に入った、ちと幼ねえが俺の女になんねえか?待遇は保証してやるよ」


まさか女になれと言われるとは思わなかった。でも盗賊風情に言われてもまったく嬉しくない。


「残念だけどエスコートもできない山猿の番なんてごめんだわ。さっさと諦めなさい」


「こいつぁ随分と強気なことで。そんなこと言ってると俺に襲われても文句言えねえぞ」


私の挑発にゼルツもさすがに苛ついたようだ。少々声が低くなった。けれど私は挑発を止めない。


「できるならやってみなさい。発情した山猿を相手にしてるほど私は暇じゃないの。時間が惜しいわ」


「舐めたこと言ってんじゃねえぞ糞餓鬼ィィィ‼︎」


完全にゼルツは激昂し、私に向かって大剣を振り下ろす。ゼルツのパワーと大剣の重量が相まって、大剣のスピードはかなり速い。並の兵士なら何も抵抗できずに一刀両断されるだろう。


大剣が叩きつけられて、大量の砂塵が舞う。よく見ると叩きつけられた地面が若干沈んでいる。まともに喰らえば身体は潰れるだろう。当たれば、だが。


「シンプルな攻撃でこの威力。盗賊なんかやっていなければ冒険者で生きていけるのに勿体無いわ」


私は大剣の真横に無傷で立っていた。


「手先が狂ったか、運が良い餓鬼が」


「運が良いだけか試してみたらどうかしら?」


「ほざけ‼︎」


今度は横殴りで大剣を振るう。


「つまらないわ。芸がないわね」


「っ⁉︎なんだと⁉︎」


私は水平にした大剣の先に乗って、溜息をつく。


「所詮パワー馬鹿か。スタミナの差がないとお爺様に勝てないことを考えると少々あなたの実力を買い被ってたみたい」


「んだと糞アマァァァァァ‼︎」


ゼルツは乱暴に大剣を振り回す。既に私は大剣から降りているのにかかわらず。


「相手のことも目に入らないなんてとんだ野獣ね。あなたはとことん私からの評価を落としてくれるわ」


「ァァァァァ……ッ!そんなとこに逃げやがって。今度こそ死ねええええ‼︎」


火事場の馬鹿力なのか、今までよりも断然速い斬撃。迫る刃を踊るように華麗に避け、ゼルツの目の前に現れる。ゼルツからしたら突然私が現れたように見えるだろう。実際、ゼルツは驚愕したような顔をしていた。


大剣を振り下ろして無防備なゼルツの胴に鉄山靠を喰らわせる。


私の身体能力と接近したときに用いた震脚が合わさった鉄山靠は私の予想を大きく超える威力となった。


つまりは。


鉄山靠を喰らわせたらゼルツが破裂した。


その結果、私はゼルツだった肉片や血をモロに浴びてしまった。


「あーあ、しくったなあ」







放心状態のお爺様を連れて馬車に戻ると、盗賊達は部下やレーニャによって既に捕まっていた。レーニャに向かって手を振ったらレーニャ達が血塗れの私を見て絶叫した。そりゃあ、血塗れの女の子が笑顔で向かってきたらホラーだわ。レーニャは私の心配をしていたが、部下や盗賊達はドン引きしていた。


私がゼルツを殺したことを伝えると盗賊達はあり得ないと言ったので証拠にゼルツの大剣を取り出したらあっさりとゼルツが殺されたことを理解した。レーニャはキラキラと私のことを褒め称えて、部下達はドン引きしていた。部下達、ドン引きしっぱなしだな‼︎


盗賊は連れていって、街の憲兵に渡すらしい。そんなこんなあって私達は近くにあるハミルトン領最大の都市、マールブルに向かう。



その前に血塗れなので、水浴びでもさせてくれないかしら?


思ったより殺伐な展開になってしまった……。よくある盗賊退治にする予定だったのに。


カサンドラ「たしかに道中に盗賊が出るのはテンプレだけど、あれが初戦闘の相手って厳しくない?私だったから良かったけど普通の貴族令嬢だったらバッドエンド一直線よ」


レーニャ「テンプレチート転生者でも荷が重いでしょう。いきなり主人公死亡でもおかしくないですよ」


カサンドラ「でもテンプレ通りに三下だったらお爺様に瞬殺されそうね」


その通りです。

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