ミッション①アジフライ
大人になると給食が懐かしくなることありませんか?
メニュー表を見て一喜一憂していたあの頃を一緒に共感できたら幸いです。
好きなメニュー、嫌いなメニュー、あの小さな牛乳パック。
地域によって共感出来ないこともあるかもしれませんが、どうかそこは多目に見てください。
ここはとある小学校の6-2教室
ここでは昼の12時になると
子供たちによる給食クエストが始まるのである。
ミッションコンプリートを目指し毎日奮闘するのだ。
メニューその①
・アジフライ
・動物チーズ
・牛乳
・麦ご飯
・春雨サラダ
[今日のミッション]
アジフライのサクサクを守れ
給食のアジフライは最初こそサクッと香ばしく、アジのフワッとした白身が衣と絶妙なコンビネーションで食欲を更に加速させ、口に入れて少し噛みほぐしたあとに麦ご飯を一口頬張る。
それがベスト,,,,,なのだが,,,,,。
「おい!早くよそえよ!アジフライが冷めるだろ!!」
「冷めたアジフライなんて道端に落ちてるガム踏んづけてしまった後くらい後味悪いんだぜ!!」
「ちょっと!男子うるさい。そんな論争してる間にアジフライの温度は徐々に下がってしまうのよ!」
そう、冷めてしまったアジフライは油とアジフライが入っていた容器の中に溜まった水分のせいでふやけてしまうのだ。
迅速な取り分け、そして、『いただきます』の号令までの時間を最小限に抑えなければならない。
ふやけたアジフライは口の中で衣と白身がバラバラになってしまい
無駄に牛乳を飲まなければならないという危険な状態になるため、これだけはなんとしても避けなければいけないのだ。
今週の給食当番は、田所、岡島、佐々木、飯沼、そして、新藤。
「新藤!頼むぜ。」
「任せろ,,,,,決して皆にふやけたアジフライなど食わせはしない!!」
給食には整列するものと給食当番の連繋がとても重要なのだ。
配る絶妙なタイミング、受け取った側の無駄なき進み方。
そして、この新藤による配分が皆に希望を与えた。
彼には神眼、そして神の手がある。
アジフライのふやけ具合を粘密にチェックし、皆に均等にサクサクのアジフライを配る。
そして、配る際に整列組に気を使わせない。(トレーや皿を差し出さず、ただ流れる川の如くの配り方をする)
もたつかず、迅速に(「あ、どれがいい?」など無駄な会話をしない)しかし丁寧にフライ物を配る(焦るとフライにトングが食い込み、衣と中身を傷つけてしまう)
そう、彼こそフライ物の最終兵器なのである。
あと、5人,,,,,サクサクなアジフライからふやけるまであと2分,,,,,。
ところが、ここで思わぬ罠が発動してしまう。
ガララッ
教室の前扉が開く。そこにいたのは担任の木原だった。
「おーい、先生も今日は教室で食べるぞぉ!」(基本的に先生は職員室で食べるのだが、ごくまれに教室で食べようとする)
ザワザワ,,,,,
「う、嘘だろ!」
「く,,,,,油断したぜ。」
「いやよ,,,,,ふやけたアジフライなんて,,,,,」
ここで木原について少し説明しておこう。
木原は神聖な給食配りのときに、無駄話をして時間を大幅にずらす達人なのだ。
「いやあ、楽しみだなぁ。先生はな、アジフライには特別な思い出があって,,,,。」
(あぁ、もうダメだ。あと,,,,,1分,,,,,59、58,,,,,)
「先生。」
!?
「先生の給食は机に用意しました。あとは挨拶だけなので。」
「新藤!いつのまに!」
なんて、時間を無駄にしない男だ新藤、さすが6-2の最終兵器!!!!
「お~サンキュウ~!んじゃ、当番はあいさ,,,,」
「いただきます!!!!」
『いただきます!!!!』
ミッションコンプリート
「あー、これだよなアジフライは。」
「あぁ、一時はどうなるかと思ったぜ。」
「しかし、このサクサクは本物だ。」
「新藤,,,,,いや、神童、ありが,,,,,」
しかし、新藤は頭を抱えていた。
「どうした?新藤。」
「誰か、この春雨サラダを食した者はいるか?」
皆はアジフライに夢中になって春雨サラダに手をつけているものはいなかった。
「おれは、副食、メイン、副食の順でいつも食しているのだが。」
新藤は、静かに箸を置いた。
「この春雨サラダは,,,,,からし和えだ。」
!?
「なんだと!アジフライに合う中華風ではなく、からし和えだと言うのか!」
「あぁ、俺も不覚だった。アジフライの香ばしい香りで、からし和えの鼻をつくほのかな香りに気づけなかった。」
春雨サラダからし和え。
何故かからしを絡めた春雨で、嫌いな給食メニューにランクインされているもののひとつなのだ。
本来ならば先に食べてしまってから牛乳で味を緩和させ、メインとご飯でその味を忘れるのが通例なのだが、皆それに気づくのが遅すぎた。
すでにアジフライとご飯を8割食べ終わった者もいる。
「くそっ,,,,,リサーチ不足だった。」
「いや、お前の責任ではない。給食だよりが大雑把に春雨サラダと書いてあるのがそもそもの原因だ。」
「くそっ,,,,,打つ手はなしか。」
その時、クラス1の秀才、高梨が静かに眼鏡を押し上げながら言った。
「,,,,,動物チーズ。」
ザワワッ
「お、おい、なんだって?」
「動物チーズ、そう言ったのか?」
高梨は呼吸を整えて言った。
「チーズは牛乳同様乳製品だ。つまり、からし和えのほのかな辛さなら中和させることが出来るんじゃないか?」
「し、しかし、動物チーズ独特の後味はアジフライと相性が悪いのでは!」
フンッと高梨は笑うと、続けてこう言った。
「ささみチーズカツを覚えてるだろ?」
小さな棒状のささみカツの中にチーズが入ったそれは皆に『チーズイン』という新たなジャンルへと導いてくれた物の1つだった。
温かいカツをサクッと噛むと中のチーズが優しく、ほんのり形状を残しながらトロッっと出てくるのだ。
勿論、相性は抜群だ。
「だが、あれはあくまでささみチーズカツに限ったことなのでは,,,,,。」
「いや、アジフライもささみチーズカツも同じフライ系だ。望みはある。つまり、春雨サラダからし和えを食べたあと、牛乳ではなく動物チーズで同じ効果をもたらしつつ素早くアジフライを食べるんだ。熱してはいないし、アジフライもすでにほんのり温かい程度,,,,,しかし、相性が抜群なこの2つがタッグすればまだ勝機はあるんだ。」
そう言った高梨は自信に満ち溢れていて、皆はその自信に感化され、一斉に春雨サラダからし和えを食べ、飲み込んだあとに牛乳に手を出しそうになる自分を制し、動物チーズを一口、また一口と食べ、もはやからし和えの面影など無いくらいに中和された口内へアジフライを誘った,,,,,。
サクッ,,,,,
「高梨,,,,,。」
「なんだ、遠藤,,,,,。」
遠藤はゆっくりと牛乳を飲む。
ゴクッ,,,,,
フゥ,,,,,
「やっぱチーズはインだな。」
「あぁ、給食室宛に投書しよう。」
ミッション①アジフライのサクサクを守れ
コンプリート率100%
満足度56%
失望感80%
総合点65点
今日の反省
『副食の確認を怠るべからず』
「ごちそうさまでした」
『ごちそうさまでした!』
好きなメニューは七夕ゼリーやカレー、揚げパンにソフト麺。
休みの子がいると男子に混じってデザートの取り合いしてましたね。
新藤みたいな子がいればあのサクサクは守られたのかなと思いましたね。(笑)
あ、ちなみに私は好きな子に多めにつけちゃって、あとの人の分が無くなるってことしょっちゅうでした苦笑
読んでくださってありがとうございます!
お腹空いて給食食べたくなってくれれば嬉しいことこの上ないです(笑)