7.受けて立ちましょう
修正しました。ご指摘ありがとうございました。
頭が真っ白になった。
お父様が何を言ったのかわからなかった。
「リーザ、ルーファス王太子様と婚約してみない?」
婚約…してみない…?
どういうことだろう?
ゲームの中では、「リーザ」が「王太子」に「婚約を迫った」はずだ。
私はまだ何も言っていない。…いや、言わなきゃいけないっていうのはわかっているんだけどね。
でも、まだ2回しか会っていない王太子様に婚約を迫るなんて、ゲームのように一目惚れでもしていないと無理だ。
「私」は「ルー」に「殺されるかもしれない」と知っている。
そんな私からルーに婚約を迫るなんて、ハードルが高すぎると数日前に思ったばかりではないか!!
後数回会って、機会を見て進めるつもりだったのに、お父様のこの発言でパーですよ!!パー!!
ここで、嫌だというのは簡単だ。だって、あの子怖いんだもん。
でも、これを逃すと婚約者になる確率はガクッと下がる気がして、嫌とも言えない。
「聞き間違えたのかしら?…お父様、もう一度言ってくださる?」
ここは聞こえなかったフリして、少し時間を置こう!!冷静に今後の対応を考えねば!!
…と思った私の意思に気づかなかったお父様は、先ほどの言葉を繰り返した。
「うん、だからね、リーザ。ルーファス王太子様と婚約してみない?って聞いたんだよ」
マジか!しかも、さっきよりゆっくりはっきり言うってことは、逃げられないということですか?
「な、なぜ私とルーが婚約なのですか?私の他にもっと素敵なお嬢様たちがいらっしゃるでしょう?」
主人公とか、主人公とか!主人公とかっ!!
口に出して言いたいけれど、そんな危険冒せない!
「うん。昨日、リーザが魔法の全属性を持っているってわかっただろう?お父様は、国王様にそのご報告に行ってきたんだよ。」
「ええ、知っていますわ。」
「そこでね、あいつ…いや、国王様がね、そんな素晴らしい才能を持ったリーザを放っておくと、どこかの誰かに婚約されちゃうかもしれないって言い出してね。
だったら、王太子様と婚約だけでもしておこう…って。
それに、国王様が、王太子様に確認してくれたらしいんだけれど、リーザのことは友達だっておっしゃってくれたらしくてね。
だったら、仲が悪くなることもないだろうし、リーザさえ良ければ仮の婚約をしておこうって話になったんだよ。」
「………仮……?」
「あ、それにね、国王様から契約書をもらってきたよ!」
「契約書…ですか?」
「そう!もし、将来リーザに他に好きな人が出来たら…って想像もしたくないのだけれど、もしそうなったときには、きれいさっぱり婚約を破棄できるっていう、契約書!」
「婚約を破棄できる契約書…」
「そう!だって、リーザはまだ5歳だよ!そんな幼いリーザに婚約者なんて、早すぎると思うんだよ。しかも、あいつの息子だなんて…。
リーザには好きな人と幸せになって欲しいからね。あいつは渋っていたけれど、もぎ取ってきたよ!」
お父様、良い笑顔すぎです。
ゲームでは、そんな契約書なかったはずだ。
あったなら、ゲームのリーザは、王太子サイドから破棄を要求されていただろう。
そして、この婚約が国王サイドから言われたというのもゲームと違う点だ。
そして、私は男女の友情なんて信じていない。
前世では、友人があると言い張っていたけれど、そんなものは相手を異性と思っていないということに他ならない。
相手から女もしくは男と思われていないから、友情だと思えるのだと思っている。
または、相手を異性として好きな場合だ。
怖くて告白できないけれど、このポジションも捨てがたいというヤツだ。
だから、王太子の友達発言は恐ろしいのだけれど、でも、契約書があるということは、主人公が出てきたら破棄できるということだよね?
だったら、話も進むし良いのではないだろうか…?
「わかりましたわ。お父様。私、ルーと婚約します。
ですから、契約書、無くさないようにきっちり管理しておいてくださいね!」
どうせ、すぐに使うことになるのだから。
そう思い、私はお父様に向かって良い笑顔を作って見せた。