49.ルーファスサイド
本日2回目の更新です。
柔らかい。温かい。そして、リーザの香りがする。
知らない男が消えた場所を見ているリーザの気を引きたくて、リーザの細い首に送られてきたネックレスを付けていると、急にリーザの体が傾いだ。
慌てて支えると、目を閉じて寝息を立てているリーザの姿。
これは、もしや意識されていないということだろうか?
あんなにあからさまにアプローチしているのに!?
いや、でも先ほど抱きしめたらシャワーを浴びてないと真剣に怒られたし、そこまで卑下するほどではないのかも・・・?いや、でも、ただ単にそれが気になっただけかもしれないし・・・。
俺はリーザを抱えながらどうしたものかと悩む。
しかし、腕の中に居るのは愛しい存在で。いつの間にか俺の腕の中にすっぽり収まるようになったその柔らかく細い肢体に、意識を向けるなというのが無理で。
安心しているリーザの首元に顔を近づけて、口づけできない代わりに精一杯息を吸い込む。カルツォとかいう男のせいで、いつもの香りとはちょっと違うけれど、でも奥にはリーザの匂いがする気がする。
良かった。腕の中に居る。その安心感に涙が出そうになった。
ここで、一晩中リーザを抱いて居たいけれど、それは出来ない。近くに控えているシーガルに、アルフバルド侯爵と、チェブリアンヌ公爵令嬢にリーザが見つかったことを報告するよう伝え、俺は自分が乗って来た馬に、眠ったままのリーザを抱えて向かった。
今のうちにリーザが何かにかかっていないか、王宮魔導士に調べてもらわなければ。
宿屋の主人には迷惑料を渡してあるし、辻馬車の予約も取り消しておいた。
消えた男のことは後でリーザに確認するとして、一刻も早く王宮へ向かおう。
眠ったリーザを鞍の前に乗せて、落ちないようにしっかり腰に腕を回す。
リーザの顔が俺の肩にあって、下を向いたらキスできるくらい近くにリーザの口があるけれど!キスしたいのは山々だけれど!リーザのプルプルの唇が俺を誘うけれど!!
それに目を瞑って、王宮へ急ぐ。
行よりだいぶ早く王宮へ着いた俺は、すぐに王宮魔導士を呼んでリーザの体を調べてもらった。
結果は陰性。特に毒や精神操作などもかかっていないとのこと。
そして、王宮でのリーザ用のメイドを呼んで、体を洗ってもらう。リーザは湯あみしていないことを気にしていたし、俺もリーザに知らない匂いが付いているのは嫌だからな!
その間に父と母にリーザが見つかったことを報告し、俺も湯あみをする。リーザに臭いって言われたら死ぬしかないし。
湯あみが終わってナイトドレスに着替え終わったリーザをメイドから渡してもらって、俺の部屋へ。
本当は、アルフバルド侯爵邸に帰すのが筋なのだろうけれど、今日はダメだ。俺がリーザが居る事実に納得出来ないと渡せない。一緒にアルフバルド侯爵邸に行ってしまうに違いない。
俺の部屋のベッドにリーザを寝かせて、その横に俺も横たわる。一度くらい・・・いいよな?そう自分に言い訳をして、リーザの唇に唇を寄せる。
ちゅ、と可愛らしいリップ音だけ残して、俺はリーザの額から唇を離す。唇はやっぱりリーザが起きてから・・・じゃないと、な。
「おやすみ、リーザ。良い夢を」
そして、いそいそとリーザの体を抱える。甘い、温かい匂い。リーザがここに居る、その事実にここ3日、眠れなかった意識が眠りに落ちて行こうとしているのがわかる。
夢の中でもリーザに会えたら良いのに・・・そう思いながら意識を飛ばした。