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38.

とりあえず、現状把握をしましょう!


1.私はあのクソガキ(失礼)に薬を飲まされてここに居るらしい。

2.ここは、地下らしい。

3.周りには誰の気配もない。


「よし!」


一言気合を入れて、体を起こす。腕が痺れて上手くいかなかったけれど、何回かチャレンジしたら出来た!人間、諦めないことが大事よね!


部屋は、薄暗い。明かり取り用なのだろう、部屋の上部に窓があるようだけれど、人が抜け出すには少し小さい。

地下なのに、なぜ窓が開いているのか気になったので、後で調べてみようと考えて意識を戻す。


・・・うん、狭い。

どこかの物置なのだろうか?掃除もしていないようで、埃が光に照らされて幻想的だ。


いやいやいや。違う!ぼんやり埃を見ている場合じゃないわ!

キョロキョロ周りを確認して、ロープを切ることが出来るものを探す。


「・・・って、何もないわねー」


見渡す限り、何もない部屋が広がる。あるのは、私と埃だけである。

ない物を探しても仕方がないので、ロープで縛られている腕を確認する。

どうしよう、首が攣りそうです。

頑張って首を出来るだけ後ろに向けて確認した結果、手のひらを合わせる形で手首を縛られているようです。うん、それは何となくわかっていたけれど、見たかったのはそこじゃない。

手首の外側をぐるぐる巻きにされているのか、八の字に縛られているのかが見たかったのです。

どうやら、ぐるぐる巻きパターンのようで、私は一安心した。

だって、八の字って切るの大変だし。

私は片手の指を手首の方へ向けて曲げ、爪の先に炎を発生させる。ロープに着火するのを確認して、しばらく待つと、じわじわと熱くなってきた。


「・・・やっぱり熱いわ」


いくら、手首付近を水で覆っていても、少量の水では熱さは防げない。

後で治すことにして、今は我慢することにする。

ジリジリと少しずつロープが燃える音がする。窓があるおかげで煙は充満しないけれど、窓の外から煙が見つからないかが心配ね。


フッと、手首の拘束が解けた感じがして視線を向けると、ロープが1箇所黒く焼け焦げているのが見て取れた。


「やった!」


一応、黒く焼け焦げた場所に水をかけて、それ以上燃えないようにしておく。放っておいて他に燃え移るとかありえないし。

手首を確認すると、ロープで擦れた赤い痕と、火に近かった場所のやけどの痕が残っていた。

肌の色のせいか、異常に痛々しく見えるその場所に、片方ずつ別の掌を当てる。

水の属性で炎症を抑えて、光の属性で傷跡を消す。


両手が自由になったところで、上部の窓を確認することにする。

普通に立ち上がったところで、足を踏み出すことに躊躇した。

もし、普通に歩いた場合、誰かが来たとき床の上に足跡が発見されるとまずい。

私はふっと息を吐いて、足元に風属性を集める。埃を巻き上げないように、30cmくらい浮く。

ちょっと、慣れるまでは感覚がおかしいのだけれど、フワフワした床を歩いている感じだ。私は小さいころから使っているから慣れているので、あっという間に窓に近付く。

そーっと窓から外を覗く。

一応誰も居ないことは確認済みなのだけれど、雰囲気だ、雰囲気!


結果、


そこは窓ではなかったようで、上に向かって筒のようなものがつながっていた。明かり取りではなくて、通気口だったらしい。

しばらくがっかりした後、気を取り直して、浮いているついでに壁を調べることにする。

ドアはあるのだけれど、内側から開けられないようにドアノブの類が見当たらない。外からしか開閉できないようなので、ドアを諦めて壁にしたのだ。

人間諦めが肝心ですね!

え?さっきと言っていることが違うって?人間臨機応変ですよ!


調べた結果、四角い部屋の3辺は先に地面しかないようだったけれど、1辺だけは隣に部屋があることがわかった。

周りに誰も居ないことはわかっているので、石壁の隙間を風属性で切って行く。

私が通れるくらいの大きさに切って、岩壁をスライドさせると、隣の部屋に出た。壁を戻そうとして、私は息を呑む。


「しまった・・・」


そこには、大きなタペストリーが掛けられていて、タペストリーの下部分が岩壁と一緒に切られたらしく、無残に釣り下がっていたのだ。

古い物らしく、元は赤色だったのが茶色に劣化している。

良く見ると、それは日本語だった。


火、木、水、土、雷がそれぞれ☆の頂点部分に書かれていて、光が上部、闇が下部に書かれている。更に、星形の頂点を円が囲い、丸の中に星がある図形となっている。

火と水の間には風、火と木の間には周、火と土の間には金、火と雷の間には希・・・とそれぞれに漢字が当てはめてある。そして、中央には無。

私は周りを見渡して書くものを探した。これは、私が長々と探してきたものの答えをくれるものではないのだろうか?

運良く白い布と、羽ペンを発見した私は、ガリガリとその模様を書き写す。

5分程度ですべてを書き写したせいで、字は汚いが、読めれば良いのだ!と納得し、布を丸めて服に突っ込む。その時、ネックレスが無いことに気が付いた。


「!!」


ルーからもらった指輪をチェーンに通しただけのものだが、あれは初めてルーにもらったものなのに!!

あれは誰にも取られないように、落としたら音が鳴るように細工してあって、留め金も手順通りにしないと取れないように複雑なものにしてあったはずなのに!!

隣の部屋からは音がしない。だとしたら、連れて来られる間になくなったのだろうか?ああ、もしそうなら、近所迷惑すみません!

心の中で顔も知らない誰かに謝っている私は、多分今初めてパニックになっているのだろう。焦れば焦るほど、意識がまとまらない。

無意識に髪に手をやった瞬間、血の気が引いた。


・・・

・・・・

・・・・・髪に髪留めが付いている。

恐る恐る取ってみると、やはり私の物ではない。

ということは、誰かが私の髪に付けたということで、誰かというのは、私をさらってライラ様の髪を切った人間で、そうすると、ただのおしゃれでこんなものを付ける人間ではないはずで、居場所を知らせるものか、魔力を確認するものか、もしくは映像を残すものか・・・?

私はそれを氷漬けにし、ポケットに残っていたハンカチで包んだ。もちろん、ハンカチにはすべてをシャットアウトするバリアー魔法がかかっている。

先ほどのタペストリーを見ただけなので、効力はわからないけれども。


タペストリーに近寄って、しばらく息を整える。髪留めのおかげで、少し冷静な部分が帰ってきたようだ。


「このタペストリーどうしよう・・・」


切れてしまったところを直すべきか悩んでいると、裏に何か書いてあることに気が付いた。


そこには、


「なーんてな、!嘘だ!」


と書いてあった。

ぅおい!嘘なのか!?私さっき書き写したのだけれど!?答えかと思って喜んだのだけれど!?っていうか、そうするとさっきのバリアー的なものも嘘なのか!?

心の中で罵詈雑言を叫んでいた私の耳に、人の足音が聞こえてきた。

それも、一人じゃない。足音からして大人だろう。


やばい、やばい、やばい。どうする!?

とりあえず、証拠隠滅。タペストリーは丸めておいて、私だけ開けた穴から元の部屋へ戻る。

壁を閉じて縛られていた場所まで戻り、縛られているように装う。

髪留めは・・・いいや。ハンカチから出して、氷を溶かして足元へ投げ捨てる。

髪につける気なんてありませんよ!


上半身を起こし、扉を見る。誰が来ようが受けて立ってやりますわ!

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