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37.

少し短めです。

目が覚めたら知らない場所に居た。体はロープで縛られているし、所々強ばっているようだ。

どうやら、この部屋に私を放り込んだ奴は、私が後ろ手に縛られていることに頓着せず、床に置いて行ったらしい。

周りを窺ってみるけれど、近くには誰も居ないようだ。すぐにどうこうされるわけではないらしいと判断し、少し安心した。

ひとまずの脅威は無くなったようだが、いつ何が起こるかわからないという恐怖は無くならない。しかしここで、パニックになると、状況がより悪くなるかもしれないので、声を出して状況を整理することにする。

いつもより意識してゆっくりと話す自分の声を聞く。


「今日は、朝起きて、顔を洗って、歯を磨いて、着替えて、ご飯を食べて・・・」

朝からの行動を逐一なぞる。


「今日はライラ様と会う約束を・・・」


そこまで言って、思い出した。

今日、私はライラ様と会う予定だった。学園入学から1箇月。そろそろ学園にも慣れて来て、ライラ様からも学園の話が聞きたいと言われていた。そして、ライラ様からも話がある、と。

そして、どうしても我が邸に来たいというライラ様からの要望に応え、庭にテーブルと椅子を用意して、景観を確認していた時だった。


「リーゼロッテ・アルフバルド侯爵令嬢」


ボーイソプラノで呼ばれた方向を見ると、幼い男の子が立っていた。見たことのない子で、姿は幼いのに禍々しい気配を感じ、一歩後ずさった。

そう、ここは我が邸の敷地内。近所の子供が簡単に入ってこられる場所ではないし、先ほどまで誰も居なかった場所に突然姿を現すなんて、よほどの魔法に詳しいか、たくさん魔力を持っているかのどちらかである。

後者であれば、魔法を使った人間が別に居ることになるし、前者であれば存在自体が脅威となる。

私はどうするか逡巡したが、少年は私の方へずんずんと近付いてくる。


そして、「これ」と手渡されたのは手紙。

少年から目を離さないように気を付けながら、手紙を開く。そこには、「ライラ・チェブリアンヌ公爵令嬢の命が惜しければ、この少年の言うことに従え」と書いてあった。

それだけなら、私は従わなかっただろう。少年を拘束し、ライラ様の安否確認を急がせて、ルーにも連絡していたはずだ。

しかし、手紙と一緒に封筒に入っていた銀髪。鋭利な刃物で一房切られたその銀髪は、ライラ様のものとしか思えなかった。

愕然と銀髪を見つめる私にしびれを切らしたのか、少年が更に距離を詰めてくる。


「どうする?」


楽しそうに聞いてくるその声に、怒りが込み上げてくる。


「・・・ライラ様は、無事なのよね・・・?」

「自分の目で見て確認すれば良いじゃない」

「・・・っ!」

「さあ、わかったらこれを飲んでね」


そう言って手渡されたのは、赤い丸薬。


「これは何?」

「毒じゃないから安心して良いよ。早くしないと銀髪のお姉さんがどうなっても知らないよ?」


その言葉に、私は覚悟を決めて丸薬を見た。一気に飲み込む。


「・・・うっ」


喉を通り過ぎた途端、息が苦しくなって視界が狭まり、体が傾いだのがわかったけれど、踏み留まる力もないまま地面が近づいてくる。地面に顔をぶつける前に、ふわりと抱きしめられた気がしたけれど、私の意識は真っ暗な闇に呑まれてしまったのだった。


「あの、クソガキっ」


辺りを見回すけれど、ライラ様は見当たらない。意識を集中して部屋の外の気配を探す。

どうやら私は地下に居るようだ。

・・・地下には居ない。1階・・・2階・・・?

誰も居ない・・・?

私をこのまま殺すつもりなのかもしれない。人間は水がないと死ぬっていうし、1週間くらい放置すれば、私の死体の出来上がりよね、普通なら。しかし、私は魔法が使える。水なんて空気中の水分を凝集すれば容易いわ。

それに、侯爵令嬢だもの。殺すより、何かの交渉カードに使う方が都合が良いわよね?

お父様のお仕事関係か、ルーとの婚約関係か・・・。後者な気がするわ・・・。

そう思って、ため息を吐いた。

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