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36.シーガル・ストークスの警戒

最近気になる令嬢がいる。


その令嬢は、ピンクの髪に赤い瞳。一般的には可愛いと言われるであろう顔立ちをしている。

学園での噂によると、リーゼロッテ様は「綺麗」で、この令嬢は「可愛い」に分類されるらしい。まあ、リーゼロッテ様は、我が主であるルーファス王太子殿下と一緒にいるときは「可愛らしい」ところも持っていらっしゃるが、それは万人が知らなくても良いことだと思う。とにかく、私はお二人がとてもお似合いだと思っている。

まあ、出会いが出会いだったからか、私にはご令嬢の中で一番素晴らしいといえば、リーゼロッテ様以外はいないのだが。


そして、気になる令嬢といっても、好意ではなく、ただの感想である。

確か、彼女は平民として暮らしていたが、エンダソンヌ子爵の庶子であったため、最近彼に引き取られたという話だった。

エンダソンヌ子爵家は、殿下とリーゼロッテ様の婚約に反対した勢力に属しているから、なるべくリーゼロッテ様には近付かせないように、と殿下から言われていた。

しかし、学園の入学式の日、早速その令嬢はリーゼロッテ様と接触を持っていた。

私は、殿下が学園の馬車止めに馬車を停めて降りる前に、周りを警戒しており、その現場をたまたま目撃していた。


「きゃっ」


と声が聞こえて、そちらを見ると、続いて「べしょっ」という音と共に顔面から地面へダイブ。あれは痛い。

令嬢の前に居たリーゼロッテ様が、気付いて声を掛けておられるのが見えて、血の気が引いた。やばい!

馬車から降りてきた殿下をさっさとリーゼロッテ様の方へ押しやる。


「どうしたの?アルフバルド侯爵令嬢?」


普通を装っていますけど、口元が引きつっていますよ、殿下。


「あ、ルーファス様。何でもありませんわ。」


リーゼロッテ様がそう答えているのが聞こえました。何でもない訳ないですよね?

カバンの中身を巻き散らかして地面に座り込んでいる令嬢の前でそう言い張る貴女は、この令嬢とは初対面のはず。そんな見ず知らずの令嬢にまで、何と優しい対応をされるのか!


「はっ!あの・・・、アルフバルド様のおっしゃる通り、なんでもありません!王太子殿下!」

「そうですか。ええと・・・?」

「はっ!あの、・・・エンダソンヌ子爵の娘、アイリッシュと申します。」

「そうですか。はじめまして、エンダソンヌ子爵令嬢。」


そのまま、何もなかったかのように話は進んで行くが、なぜ彼女はリーゼロッテ様を知っているのだろうか?

貴族ならわかる。幼い頃からリーゼロッテ様は殿下の婚約者だと周知されているから。しかし、彼女はつい最近まで平民であったはず。

リーゼロッテ様の姿など見る機会などない。お茶会に参加していただろうか?

パーティーでも名前は見かけなかった。ということは、エンダソンヌ子爵がリーゼロッテ様の絵姿でも見せたか・・・?


・・・いや、ないな。陛下や殿下、アルフバルド侯爵家からリーゼロッテ様の絵姿を描くことは禁止されている。それなのに描く画家はいないはず。

特徴だけでも教わって来たとか・・・?まあ、金の髪に碧色の瞳と言われればそうかなーと思う程度だろうが、あの一瞬でそこまでの判断は難しいと思う。

それともどこかで出会っているのか・・・?


悩みながらも3人を注視していると、殿下が令嬢の手を取ったのが見えた。

殿下とリーゼロッテ様が並んで立ち、令嬢はその正面に居る。私の方からは殿下とリーゼロッテ様の顔が見えるが、令嬢は後姿のみだ。

殿下は素早く令嬢の上から下までをチェックしている。リーゼロッテ様に危害を加えそうなものが無いか調べているのだろう。

私にはわかるが、おそらく令嬢は自分を見ていると思っているだろう。


と、そこでリーゼロッテ様の顔色が悪いことに気が付いた。

ハンカチを令嬢に渡して、リーゼロッテ様の後ろに控えていたマリーとその場を離れて行く。良かった。

私と殿下はリーゼロッテ様が離れたことを確認して、令嬢から離れる。もちろん、殿下は入学式の行われる講堂に入るまで、令嬢がリーゼロッテ様に近寄らないように気にしていた。


そして、そのままクラスでの自己紹介を終えて、今日の授業はこれまでとなった。

担任はもちろん、ユーディスト・アルフバルド様。リーゼロッテ様の兄上だ。

これは、先日殿下から聞いたのだが、リーゼロッテ様と殿下が同じクラスになることに耐えられなかったアルフバルド侯爵と、ユーディスト様がユーディスト様を担任に!と直談判に来られたそうだ。

ユーディスト様は、頭も良く、魔法の才能もあり、教員免許まで取得されているという用意周到、準備万端な状態であり、陛下も勢いに押されて了承したとのことだった。良く学園側も了承したな、と学園運営が少し気になる処だ。


そして、殿下と城に戻って来て、陛下に聞かされた婚約破棄の話に驚いた。まさか、リーゼロッテ様が殿下との婚約を破棄されるなど、考えられなかったからだ。

殿下はそのままアルフバルド侯爵家へ向かうということで、私も一緒に付いて行った。まあ、私は応接室で待ちぼうけであるが。

その夜、リーゼロッテ様と話を終えてアルフバルド侯爵家の客室で一晩過ごした私と殿下は、殿下が知ったリーゼロッテ様の夢の内容を聞き、更にエンダソンヌ子爵令嬢に目を光らせておくことで一致した。

次の日の朝早くに城へ戻り、しばらく仮眠を取った後、学園へ出発したのだが、その日以降エンダソンヌ子爵令嬢と良く目が合う気がするのだ。


殿下とリーゼロッテ様は、何事もなかったかのように一緒に過ごされておいでだが、その2人を見ながら私の方を見てくる令嬢。リーゼロッテ様がおらず、殿下一人になると殿下を良く見ており、挙句の果てには、殿下に向かって「少しお時間を取っていただきたい」などと言い出す始末。

リーゼロッテ様が戻っていらっしゃると、さっと離れて行くが2人をじっと見ている令嬢の姿が気になって仕方がないのだ。


一体何を企んでいるのか?

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