34.
一部残酷な表現と取られる個所があるかもしれません。
また、頑張ってちょっとエロイシーンも書いてみました。(R-15以上だと思ったら教えてください。)
また、子供についての私の勝手な意見が盛り込まれています。
不快に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
それでも良い方はお進みください。
「そんなの嫌あああああああああああああああああああああっ!!」
・・・はあはあと、自分の荒い息だけが聞こえます。
心臓はドキドキしているし、体中に嫌な汗をかいているのか、ベタベタして気持ちが悪い。
辺りは真っ暗で、まだ朝には早い時間だということがわかります。
上半身を起こし、両手を呆然と見ます。
「私・・・?」
死んだのではなかったの・・・?
そのまま、ポツリと呟きが漏れました。
王宮前の広場で、私は処刑されたのではなかったのでしょうか?
したこともない悪事を私自身のせいにされ、家族の嘆願も聞いてもらえず、陛下が判決を下した瞬間を覚えています。
ルーとヒロインが並んで見ていたことも、あんなにリアルな絶望も夢だったのでしょうか・・・?
気が付くと、両手にぽたぽたと涙が落ちていました。
恐怖と安堵と、わけのわからない感情が、声に出せない思いが涙腺を壊してしまったのかもしれません。
「・・・誰が君を殺したの・・・?」
ポツリと呟いた私の疑問に答えが返ってきました。涙で濡れた両手が温かく包み込まれ、包み込んだ誰かがベッドに座ったのがわかりました。
真っ暗な中、薄明りで見える真っ黒な髪と翡翠の瞳。精悍になった青年は、先ほど私が死ぬ間際まで見つめていた王太子・・・。
「・・・ルー?・・・どうしたの?」
なぜここにルーがいるのでしょうか?まだぼんやりしたままの私が呆然と呟くと
「ねえ、リーザ。誰が君を泣かせたの?」
真剣な瞳とぶつかります。目が逸らせません。
「・・・誰・・・?」
誰が・・・?誰でもない気がします。あれは私が進むかもしれない道。
ゲームが始まった恐怖からか、無意識に画面で見ていた景色を自身に置き換えてしまったのかもしれません。
まだ涙を流す私を、ルーは何も言わず抱きしめてくれました。幼いころから長い間一緒にいたせいか、ルーの匂いに包まれると安心するようになってしまいました。
これではいけないと思いながらも、背中に回された手の温かさに安堵します。
むずがるように、ルーの胸に頬を摺り寄せると、耳に聞こえる心臓の音が心地良い・・・。
「って・・・わあ!!」
慌てて、ルーの腕から逃げようともがきますが、背中に回された手が離れてくれません!というか、更に強い力が込められ、息が・・・!!
「ちょ、ちょっと!!ルー!?どうしたのですか?いきなり何!?」
覚醒した私が慌てているのに、ルーは動じることもなく。
「さっきまでの君は可愛かったのに・・・。ああ、違うな。いつも可愛いけれど、俺の腕の中で安心している君は特に可愛いってことだよ?・・・ねえ、リーザ。怖い夢でも見たの?」
俺は見たよ・・・。
急に声を小さくして耳元で呟かれる声。
「リーザが俺から離れるって言うんだ」
「!?」
婚約破棄のことを思い出して、体がビクリと震えます。
「本当の気持ちを聞きたくて、君が起きるのを待っていたんだよ。」
本当は、起きるのを待つつもりだったのだけど、魘されている君があまりにも辛そうで。起こしてごめんね・・・。
そう続けられた台詞に、慌てて首を振る。起こしてもらえて、私としては助かったと思っているのです。正直、あれ以上夢を見ていたくはありませんでした。
地面の上に転がる体と体から離れた頭・・・。首を切られても意識が無くならない私。呆然と見える景色を見ていた。生理的か感情的かわからない涙は流れ続け、両親とお兄様の泣き崩れる顔を横目で見ながら、王宮騎士に片付けられる私だったモノ。
ルーの冷たい瞳と、ヒロインの嬉しそうな笑みに吐き気がした。
とさり、とベッドに横たえられたところで、意識が戻って来ました。どうやら、先ほどの悪夢に思いを馳せていたようです。
真上から私を見下ろしているのは翡翠の瞳。気付いたら、私の両手首はルーの両手に捕らわれ、ピクリとも動かせそうにもありません。ならば、足!と思うのですが、足にはルーの体重がかけられており、こちらも動く気配がありません。
「ねえ、リーザ。俺との婚約を破棄するなんて、どういうつもり?
誰かと一緒になりたいの?俺以外の誰の手を取るつもり?
悪いけど、俺は君との婚約を破棄したりしない。例え君の心が俺になくても、君を繋ぎとめる方法なんていくらでもあるんだよ?
例えばこうやって・・・」
言いながら、ルーは私に触れるだけのキスをしてきます。何度も何度もついばむように触れて、私の口が開いたところで狙ったように深くなる口づけ。
舌を絡められ、口の中を蹂躙され、吐息毎奪うようなキスに、私の意識は朦朧としてきてしまう。慣れてなくて、上手く鼻で息ができない私は酸欠になって、唇が離れた隙に少しでも空気を取り込もうとするのだけれど、その度に口づけは深くなっていく・・・。
やっと唇が離れた時には、体から力が抜け、指一本動かせない状態で、忙しなく息をする音だけが響く。
「相変わらず、深いキスには慣れていないんだね。そんなところも可愛いよ、リーザ」
そう言って、ルーは、私の唇から飲み込めずに溢れ出た唾液を舐め取る。それだけで、私の体はゾクリと震えてしまう。同い年なのに!何この手慣れた感じ!
違うことを考えて、体の奥の方で燻っている熱を逃がそうとするけれど、あざ笑うかのように首筋に落ちてきた唇がそれを許してくれない。
ちゅ、ちゅ・・・と音を立てて、首筋を吸われる。
「リーザは色が白いから、綺麗に跡が付く」
その言葉に、キスマークを付けているのだと思い至る。
「つけちゃ・・・だ、ぇ」
舌がしびれて上手く言葉が発せない。でも、そんなところに跡を付けられると首元が開いた制服を着ることが出来ないんですよ!
「じゃあ、こっち」
そう言って、ルーは首筋から鎖骨の方へキスを落としていく。別に他のところなら良いと言ったわけでは!!と焦るが、チリ・・・とした痛みに意識が持っていかれる。噛まれたのかもしれない。焦っても、未だに体は自由に動かない。
布団が捲られていたため、ナイトドレスにルーの手が触れる。両手首はいつの間にか一つに纏められ、空いた片手が足元に向かっていたようだ。
段々とあらわになっていく素足に、私は恐怖した。
まさか、このまま最後まで・・・?先ほどの繋ぎとめるという言葉を思い出す。
ルーの手がふくらはぎから太ももへゆるゆると進む。内腿に手がかかったとき、私は寝汗をかいていることを思い出した。
幾らなんても酷すぎる!私だって一応お年頃なのだから、やるにしたって、せめてお風呂上りの綺麗な体でしたい!もはや、何を気にしているのかもわからない。パニックになった私は、そんなことを思ったようだ。
「ルー・・・あの・・・」
でも、ここで「シャワーを浴びたい」なんて言えば、最後までして良いよという了承になってしまうかもしれない。どこのAVだ!?そう思えば、シャワーを浴びたいとも言えなくなってしまう。
口をパクパクと開けたり閉じたりして焦っている私に気付いたルーが、壮絶な色気を垂れ流してきた。そう、それこそブワッという効果音が付くほどに!!
「ねえ、リーザ。このまま、俺と最後までしようか?既成事実があれば君は俺以外と結婚できなくなるだろうし、上手く子供が出来れば確実だ。」
5歳の時から更にパワーアップした流し目が私を射抜く。
このまま流されれば、私はヒロインを気にしなくて済むかもしれない。そんな悪魔のささやきが聞こえたような気がした・・・。
しかし。
「まだ、子供はいらないわ。だって私、結婚してすぐ子育て・・・って無理だと思うもの」
今の自分が親になれるとは思えない。例え育てるのが私ではないかもしれないとしても、母親としてしっかり自分の足で立てる大人にならないと、子供は作ってはいけないと思う。こんなバカな理由で子供が出来たりしたら、それこそ子供が可哀相だ!!
そういう意味を込めて目の前の私を見下ろす男に言う。これだけは譲れない!
ふわりと、今までの恐ろしいくらいの色気をあっさり消して、嬉しそうに笑ったルーは、「そうだね」とそれはそれは幸せそうに呟いた。
両手首の拘束を外し、捲り上げていたナイトドレスも元に戻して、脇の下に手を入れて私の上半身を起こしてくれる。そして、再びぎゅうっと抱きしめてくれた。
「やっぱり俺にはリーザしかいないんだ。だから、婚約破棄しないで、俺の傍に居て欲しい。」
ああ、私はルーの傍に居ても良いんだ・・・。今のルーはヒロインよりも私を選んでくれている。だったら、私もルーに手を伸ばしても良いのかもしれない。
まだ、いつかルーがヒロインを選ぶかもしれないという思いは無くならないけれど、それでも私はルーの隣に居れるように頑張ろう。そう思えた。
「・・・私もルーの傍に居たい」
小さく本音を漏らす。
だって、私はゲームの王太子ではなく、目の前のこの幼馴染の傍に居たいと思ったから・・・。
33.は全て夢オチでした。ドーン!
あんまり夢オチって好きじゃないのですが、話の展開上入れさせていただきました。