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31.

待ってくれている方が居たら良いな!お待たせいたしました!

いきなり吹っ飛びました。ゲームスタートです。

拙いですが、これからもお付き合いいただければ幸いです!

「ご入学おめでとうございます。」


学園の正門から、教職員の声がする・・・。とうとう、この日が来てしまった・・・。

私は、サクラの花が舞い散る中、ゲームの舞台となるアッシュフォン学園の正門前に立っていた。

ああ、スチルと同じ景色ね・・・。ゲームのスタート時、ヒロインが学園を見る場面と同じ景色が目の前に広がっている。


「お嬢様・・・?」


正門前で足を止めた私に、マリーが声をかけてくる。


「いいえ、何でもないわ。行きましょう。」


マリーに微笑んで、私は足を進める。本当は進みたくない。ここを越えてしまえば否応なくゲームに巻き込まれるかもしれないから・・・。


「ご入学おめでとうございます。」


教職員の声に、


「ありがとうございます。」


そう返して―。


後3歩。


後2歩。


後1歩。


ゼロ!


目を瞑って正門をくぐる!


そして、1歩。2歩。3歩・・・。


「マリー」

「はい、お嬢様」

「私・・・」

「?」

「私、何か変わった・・・?」


突然変なことを言う私に、マリーは


「ええ。学園の生徒になられたかと。」


そう返す。


「それだけ・・・?」

「それだけ、とは?」

「ほら、性格が悪くなったとか、顔が悪役っぽいとか・・・」

「いいえ?いつもと同じだと思いますが?」

「・・・そう。」


自分でも、何も変わっていない気がする。考え方が急に悪役になるわけでもなく、ヒロインを憎むこともなく。相も変わらず、ルーとヒロインのスチルを間近でみられるかもしれないことに期待をしている。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今のところは。


「きゃっ」


可愛らしい声がして、次いで「べしょっ」と音がする。

振り向くと、そこには正面から地面と仲良くなっている女子が。


私が着ている制服と同じものを着て、真新しいカバンからはノートなどの筆記具が散らばっている。


もしや、これは・・・。


ヒ ロ イ ン の 登 場 シ ー ン ! !


その事実に気付き、血の気が引く。私、まだ、まだ心の準備が出来ていないわ!

ゲームでは、ヒロインは盛大にずっこける。そこにタイミング良く、王太子が登場し「大丈夫?」の声と共に、ヒロインに手を差し出す。

ヒロインは、王太子の手を取り、王太子と顔を会わせ・・・そして・・・。

そんなゲーム内容が頭の中で展開される。このシーン、悪役令嬢の私は存在していたかしら?2人にスポットが当たっていて、画面には映っていなかった。


・・・いいや!居る!前か後ろかわからないけれど、自分の婚約者がヒロインを助け起こすのが気に食わなくて、王太子にべたべたと引っ付いていたはずだ!

そして、ヒロインに向かって「あーら、私の婚約者は何て優しいのかしら?」とか言っていた気がする!!


・・・でも、ルーが来ないんだけれど・・・?皆素通りしているけれど、ヒロイン地面と仲良しのままですよ?


「・・・あの・・・。大丈夫・・・?」


しまったああああああああああああああっ!!ついつい、声を掛けてしまった!

ルー!!ルーは何処に居るの!?何で来ないの!?


「う、痛たたたたたた。ありがとうございます、大丈夫で・・・」


そこで私に気付いたヒロインが停止。あれ?何かした・・・?


「あ、アルフバルド様っ!!すみません!すみませんっ!」

「?なぜ、私の名前を?」


ゲームしてたから、私は知っているけれど、会ったことはない・・・わ。うん。


「どうしたの?アルフバルド侯爵令嬢?」


今更来るとか、タイミング間違っていますよ!ルー!!心の中でそう言いますが、もしかして、ルーが来るまで地面とお友達のままの予定でしたか!?


「あ、ルーファス様。何でもありませんわ。」


一応、何も知らないふりをして、令嬢っぽく言っておきましょう。ええ、これは、まさか、コケたなんてレディは知られたくないでしょうし!という心遣いですよ!それ以外の意図はありません!


「はっ!あの・・・、アルフバルド様のおっしゃる通り、なんでもありません!王太子殿下!」

「そうですか。ええと・・・?」

「はっ!あの、・・・エンダソンヌ子爵の娘、アイリッシュと申します。」

「そうですか。はじめまして、エンダソンヌ子爵令嬢。」


そして、ルーはアイリッシュに手を差し出す。そう、2人は初対面です。5歳の時に顔を会わせていないのは、彼女が王宮へ来ていないから。

彼女はエンダソンヌ子爵が外で作った子供であり、小さいころは母親と一緒に平民として暮らしていて、最近子爵家へ庶子として引き取られたのである。貴族の義務である5歳のときの面会時には、平民として暮らしていたから、王宮には来ていないのです。そして、引き取られた理由は簡単。そう、この世界では珍しい「光」属性の魔力を持っていたから。



魔力属性の割合は、一般的に4属性「火・木・土・水」が全体の90%を占めていて、残りは「雷・光」が9%、「闇」が1%程度。更に、属性も一つが多く、二つあれば良い方だ・・・というのが、イエソン先生のお話だった。

今年の入学者の中でも光属性を持つ人はルーファスとヒロインであるアイリッシュ。闇属性を持つのはリカルドのみとなっている。


・・・私?私は全属性に適性を持っているけれど、公には水を含む3属性を持っていることになっているの。

まだ、全属性に適性を持つなんて表だって報告はしていないし、今後もする予定はないわ。ただでさえ殺されるかもしれないという恐怖があるのに、これ以上の厄介事はお断り。

もちろん、ルーにも何も言っていないから、彼も私が3属性しか持っていないと思っているはずよ。



アイリッシュは、顔を真っ赤に染めてルーを見ている。手は握ったまま・・・。

ルーもアイリッシュを見ている。ああ、これはゲームと同じ展開ですね。


どうしよう。一つも萌えないわ。


この2人がこれから急接近して、私がお払い箱になるのはもう時間の問題ということよね?だったら、お父様に連絡して、契約書を出してもらわないと!!


「これ、使ってください。」


世界を作っている2人の片方、アイリッシュにハンカチを渡す。気付いてないみたいだけれど、膝をすりむいていますよ。

ルーに取られた手と反対の手にハンカチを握らせ、私はマリーと一緒にその場を離れた。


「マリー。」

「はい、お嬢様。」

「誰かにお父様へ遣いをやって頂戴。契約書を陛下にお渡ししてもらえるように・・・って」

「!!」

「ね?」


念押しをして、私は入学式が始まる講堂へ向かう。そう、ゲームはこれから。

もう始まってしまったのだし、覚悟を決めましょう!

心が痛い気がするのは、きっと今まで楽しかったから。好きになってはいけないとわかっていたのに、好きになってしまったから。

私は誰にも聞こえないように、心の中でルーに伝えた。












さようなら、と。

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