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番外編1

本編というか、番外編というか。閑話休題です。

「お逃げください、お嬢様あああああああああああああああっ!!」


バタバタとメイドにあるまじき音を立ててマリーが走ってきました。

以前ならば考えられなかったことですが、ここ最近は良くみられる光景となりました。

私が昔を懐かしんでいると、一向に動こうとしない私にじれたのか


「お嬢様!早く移動してくださいませ!敵はすぐそこまで来ておりますわ!」


と、再度私に逃げるように促してきます。

私は、持っていたティーカップをゆっくりテーブルに戻して、


「マリー。私はここに居るわ。」


そう告げました。

一瞬ぽかんとしたマリーでしたが、


「良いのですか?」


と、聞いてきます。本当に良くできたメイドです。

ありがとうございます、お父様、お母様。マリーを私付きにしてくださって感謝しますわ。


「ええ。もう逃げるのはやめにしたの。」


にっこりと、笑って言うと、マリーも私が我慢しているわけではないと感じたのか、しぶしぶながらも了解してくれました。


「ありがとう、マリー。そして、ひきつけてくれているレイラにも、感謝しないといけないわね。」


しみじみとそう言っていると、トントンとドアをノックする音がしました。


「お嬢様、王太子殿下がおいでです。」


ルドルフの声がします。

ルドルフもおとりに一役買ってくれたのでしょうか?


「どうぞ。」

「お、お嬢様っ!!」


私がまだ部屋に居るとは思わなかったのでしょう。

ルドルフの慌てた声が聞こえます。

ですが、既に返事をした後で誤魔化すことは出来ないと思ったのか、ドアを開けてくれます。心なしか顔が引きつっていますが、見なかったことにしましょう。


「やあ、リーザ。今日は。」

「ええ、ごきげんよう、ルー。」


比較しては何ですが、ルーの笑顔と言ったらありませんね。

いつにもまして神々しいではないですか。直視できません。


「…良いものですね。貴女が部屋で待っていてくれるのは。」

「まあ。どうぞ、お座りになって。今、マリーにお茶の準備をしてもらいますわ。」

「お願いします。それが終わったら2人で話がしたいのですが…。」

「ええ。わかりましたわ。マリー、準備が終わったら下がっていて頂戴ね。」

「よろしいのですか、お嬢様。」

「大丈夫よ。あ、それと、この部屋からは離れていて頂戴。」

「…わかりました。」


マリーとレイラはお茶の準備をして下がってくれました。

とりあえず、離れるようには言ったので隣の部屋に待機とかはしていないと思いたいです。

そして、私とルーは、部屋に2人っきりで残されたのでした。











*************************************


「あら、マリー。王太子殿下が今日もいらっしゃったわー。」


そんなレイラの言葉に、脳まで意味が届く前に体が反応して走り出していました。


「レイラは、引き止めておいて!ルドルフに馬車の用意をするよう伝えてちょうだい。」


それだけ言うのは忘れませんでしたが。

そして、息を吸うと共に、


「お逃げください、お嬢様あああああああああああああああっ!!」


とメイドにあるまじき声で叫んだ私です。

そう、先ほどお嬢様のお部屋まで走ってきた私ですが、いつもなら


『何ですって!!すぐに馬車を用意して!今日は図書館へ行くわ!』


と叫んで、取るものもとりあえず馬車へ走るお嬢様ですのに、


「マリー。私はここに居るわ。」


とおっしゃいました。

私の脳は、一瞬言葉を理解することが出来なかったようです。

確認のためにもう一度聞くと、お嬢様はいつものように朗らかに笑われました。

最近は見ることのできなかった、周りを幸せにする笑顔です。


「ええ。もう逃げるのはやめにしたの。」


その笑顔に、私はお嬢様が大人の階段を一気に上ってしまったような、寂しい気がしました。変ですよね。

そう考えていると、トントンとドアをノックする音がしました。

しまった!!ルドルフとレイラが来てしまいました!


「お嬢様、王太子殿下がおいでです。」


やはり、ルドルフの声がします。

いつもはお嬢様がいらっしゃらない…というか、逃げた後ですので私がドアを開けるのですが、今日はお嬢様がいらっしゃいます。


「どうぞ。」


お嬢様の声がするとは思ってもいなかったのでしょう。

いつも冷静なルドルフが驚きの声をあげています。


「お、お嬢様っ!!」


私は諦めて、お嬢様の斜め後ろにスタンバイします。

瞬間、ドアを開けたルドルフの顔が見えました。お嬢様を確認して、私の方を絶望したような目で見てきます。

ルドルフ、私も同じですよ。後ろに居る男をお嬢様に会わせたくなかった気持ちは…。

私たちの気持ちなんて知らない顔をして、(いや、知ってても気づかないふりをするでしょう、この男は…。)幸せそうにニヤケています。

この男には、背後に気を付けるように言っておきましょうか?

思わず拳を握ろうとして、お茶の準備をする必要に気付きました。

きっとこの王太子は長居するでしょうから…。


「まあ。どうぞ、お座りになって。今、マリーにお茶の準備をしてもらいますわ。」


戻って来た時に、そう言うお嬢様の声が聞こえて、私は自分の不安が的中したことを理解しました。


「お願いします。それが終わったら2人で話がしたいのですが…。」

「ええ。わかりましたわ。マリー、準備が終わったら下がっていて頂戴ね。」


聞き捨てなりませんよ!お嬢様。こんな男とお嬢様のお部屋で2人っきりなんて!!


「よろしいのですか、お嬢様。」


私の不安などどこ吹く風で、


「大丈夫よ。あ、それと、この部屋からは離れていて頂戴。」


とおっしゃる始末。不安で不満で不愉快ですが、お嬢様の言葉に従わないなんて選択肢は私にはありません。

しぶしぶながら返事をしました。

お茶の準備をしてすぐ部屋を出ます。


「行くわよ、レイラ。」

「もちろん!」


お嬢様には決して聞かせない1オクターブ下がった声に、レイラも同意してくれます。私たちは、ガラスのコップを用意していました。

とりあえず、さっさと隣の部屋へ行かなければ!

後ろから、固い顔をしたルドルフもやって来ますが、彼の手にもガラスのコップが握られています。

何に使うかはご存じでしょう?隣の部屋の音を拾うためですよ。


「何か聞こえる?」

「しっ!静かにして!!聞こえないわ。」

「ボソボソとは聞こえるが、内容が…。」

「それにしてもー、お嬢様はどうしてお逃げにならなかったのかしらー?」

「もう逃げないとおっしゃっていたわ。」

「それは、やはりあの王太子と…ということだろうか?」

「他にないですよねー。」

「腹の立つことにね!」



『これを身に着けていて欲しいのですわ。』

『これは、リーザが作ったのですか?』

『ええ、初めて作ったので不格好ですけれど。指輪のお礼ですわ。』

『ありがとうございます!リーザ!!貴女だと思って大事にします!』

『私の指輪とお揃いですわ。』

『嬉しいです、リーザ!!ああ、見せびらかせたいです!』

『恥ずかしいから2人だけの秘密にしてほしいですわ。』


あのクサレ王太子め!!お嬢様からプレゼントですって!!

しかし、聞いていたことがバレるから問い詰めることも出来ないし…。

その後3人で、今後もお嬢様と王太子殿下をなるべく合わせないようにという意見で一致しました。


見てなさい、王太子殿下!!私たちの目が黒いうちは、簡単にお嬢様に会えるとは思わないことね!!

今回出てきたお揃いのものが何だったのかは、またじっくり書きたいと思います。

これから王太子殿下はマリー、レイラ、ルドルフの包囲網を抜けることが出来るのか!?

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