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29.

「美味しいですよね。カフェオレ。」


にっこり笑って言うルーに、ご令嬢たちも笑顔で答えています。


「ええ。私、コーヒーは飲めないのですが、カフェオレなら美味しくいただけましたの。」

「私もカフェオレを初めて知ったときは、驚いたものですわ。」

「今では、図書館に行くたびにカフェオレをいただいておりますの。」

「最近良く図書館に行くと思っていたら、そちらがメインなのか、ライラ。」

「まあ、お父様。お父様はカフェオレの美味しさを知らないからそうおっしゃるのよ。でも、安心して。

今日は、マスターに教えていただいたカフェオレを、リーゼロッテ様に飲んでいただく約束をしておりますの。お父様もお飲みになってくださいな。」

「今流行りの『カフェオレ』ですか。」

「女性を中心として、王都で流行っていると妻が言っておりましたな。」

「コーヒーとは違うのですかな?」

「違いますわ、お父様!せっかくいらしたのですから、ぜひいただきましょうよ。」


「ささ、こちらに用意させておりますわ。皆様、ぜひ、いらして。」


そう言うチェブリアンヌ公爵令嬢が指し示す先に、いつの間に用意されたのかお茶の用意がされていました。

しかも、私と、ルーと侯爵令嬢たちとその親の分の10人分です。

そして、私は有無を言わさずルーの隣に座らされました。なんでだ。


「いかがですか?リーゼロッテ様。」

「ええ。美味しいですわ。」

「まあ、皆様お聞きになって?お墨付きをいただきましたわ!」

「ええ、確かにカフェの味と同じですわ。」

「美味しいですわ、ライラ様。」

「王太子殿下はいかがですか?」

「ええ。優しくて甘くて、まるでリーザのような味ですね。」

「なっ」


何て事を言うんだ、この5歳児は!!

私が絶句したのを良いことに、ルーは更に畳みかけて来ます。


「ねえ、リーザ。貴女は私だけではなく、この国の国民全ての幸せを考えているのですね。」

「な、何を…」

「皆がこのカフェオレをリーザが作ったと知ったら、こんなに皆のことを考えていると知ったら、これほど国母にふさわしい人は居ないと考えるでしょうね。」

「え?」

「私は皆に言いたいのですよ。私の婚約者はこんなに素晴らしい人だということを!」

「ちょ、ちょっと待ってください!!」


何か話が斜めに行き過ぎていませんか?

私がカフェオレを作ったのは、私が飲みたかっただけなのですよ?


「まあ!!そうだったのですか、リーゼロッテ様!!」

「私感動してしまいましたわ!」

「そのお年でしっかりしていらっしゃる。」

「さすが、王太子殿下が選んだ方ですね。国王様も王妃様も鼻が高いでしょう。」

「ますます、ファンになってしまいましたわ!」


ダメだ、誰も聞いてくれない…。

私だけが取り残されているこの空間から、どうしたら逃げられるでしょうか…?


「!!」


私が意識を遠くに飛ばしそうになった瞬間、手を握られました。

驚いて(実際ちょっと飛び上がってしまいましたが)、そちらを見ると握っているのはルーでした。

良かった。生きている人間で…。


「ねえ、リーザ。」


ほっとしたのもつかの間でした。

握っているルーの手が、思った以上に強い力なんですけれど…?

そう思ってルーを見ると、声も表情もとても優しい人みたいですけれど、目が笑ってないじゃないですか。


「私、リーザに言っておきたいことがあるんですけど、この後時間ありますよね?」

「え?ええ…っと、この後はライラ様たちとお話があって…。」


どうにか回避したい私はそう答えたのですが、


「あら?今日はこのカフェオレのお話が出来ただけで十分ですわ。」

「ええ。私たちより忙しい王太子殿下を優先させてくださいな。」

「私たちはまた、図書館で会えますしね。」

「またお話する機会はありますわ。」


何て事!!一気に敵に回るとは!!


「皆さん、ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えて、リーザは連れて帰りますね。」

「ええ、お気を付けてお戻りくださいませ。」

「ありがとうございます。ああ、リーザは今まで女性の友達がいなかったので、良ければこれからもリーザと仲良くしてあげてくださいね。」

「もちろんですわ!!」


って、ちょっとルー!!なぜそんなに上から目線なのですか!

貴方に心配されなくても、私はお友達を見つけてきたのですよ!!

そう言いたかったのですが、ルーが私を引っ張る力が強すぎて、付いて行くのが精一杯です。


「ごきげんよう、リーゼロッテ様。」

「今度は、ぜひ邸にもお越しくださいね。」

「私の邸にも来ていただきたいですわ。」

「ええ、もちろんですわ。…っで、では皆様、お先に失礼致しますわ。」


とりあえず、皆様に挨拶だけはしておかないと…と、引っ張られながらも淑女の礼を…したつもりですが、形になっていない気がしました。

そのまま、ルーが乗って来た馬車に一緒に乗ることになりました。

乗った途端に出発するとか、どれだけ急いでいるのでしょう?


「ルー。あの、私の乗って来た馬車が居ないのですけれど…。」


ちらっと見た感じでは、馬車止めに私の乗って来た馬車が居なかったので、ルーに知っているかを尋ねました。

どこか別の場所に居るのであれば、先に帰ると連絡しておかなければ、いつまでも待っていることになると思ったからです。


「ああ。私と一緒に帰るから、先に帰るように伝えておきましたよ。」

「そうですか。それなら良いのですけれど。それで、私に話があるとおっしゃっていましたが?」

「ええ。リーザには色々聞きたいことがあるのですよ。」


そう言い切ったルーの目は、いつもとは違っていました。

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