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25.

本を返却するまでの2週間、私は本を隅から隅まで調べました。

白紙となっている紙の裏まで調べました。


しかし、結局、風魔法しか発見できませんでした。

風魔法が出来たときの感動を返して欲しい、切実に。

まさか、最後のページまで調べ終わったときに、他の魔法のヒントすら見つからないとは思いませんでしたよ、著者さん!!


そして、今日も私は図書館で調べものです。

古い本を片っ端から調べて、あの本と同じ紙で出来た本を探しているのですが、やはりそう簡単には見つかってくれません。


「少し休憩しようかしら。」


何度も梯子を上り下りし、テーブルと本棚を行ったり来たりしていた私の体は、そろそろ限界に近いです。5歳の体にも堪えますねえ。


貴重な本もあるため、図書館は飲食禁止ですが、図書館の隣には、カフェが併設されているのですよ。

このカフェのカフェオレが美味なのです!!

注文を聞いてから煎って、挽いたコーヒーを出してくれるのです。

私の味覚では、コーヒーはまだ無理だったので、ミルクと砂糖を入れてもらってカフェオレにしてもらっています。

どうやら、それが口コミで評判になったらしく、いつの間にかメニューに加えられていました。

まあ、美味しいものが増えるのは良いことですね。


ドアベルのカランカランという音に迎えられて入るカフェは、落ち着いた雰囲気の隠れ家風です。

カウンターには、このお店のマスターが居て、いつものようににこやかに迎えてくれます。


「いらっしゃいませ、アルフバルド様。」

「今日は、マスター。今日もカフェオレをいただけるかしら?」

「ええ、もちろんですよ。いつものお席で良いですか?」

「はい。ありがとうございます。」


私のお気に入りはカウンターの入り口とは逆の、奥の席です。

自分の姿は他のお客さんからは見えませんが、こちらからは見えるというすぐれ場所です。

大人サイズのその椅子は、子供の身長では少し高いですが、足置きを使ってぴょんと飛び乗ります。

私が来るときは必ずこの席は空いているのですが、まさか、専用とかになってないですよね?

恐ろしくて聞けません。


マスターが準備してくれているのを見ながら、私はゆったりした雰囲気を満喫しています。

サイフォンにコーヒー豆がセットされましたよ!!

前世ではインスタントコーヒーというものがあったので、ドリップとかしなかったのですよね。

何度見てもワクワクします。

そして、コーヒーが出来るのを待とうとしたとき、カフェの入り口が開きました。


「いらっしゃいませ、お客様。」

「今日は。」


そう声を返した人を見て、びっくりしました。

そこには居たのは、貴族のお嬢様4人でした。皆。10歳くらいに見えますが、年齢当てに正解したことがないので、何とも言えません。

確か、公爵令嬢と伯爵令嬢…。名前…何だっけ?


「カフェオレを4つ、いただけるかしら?」


シルバーブロンドの公爵令嬢が代表で言っています。彼女がリーダーでしょうか?


「畏まりました。…ランド、案内を。」


マスターの声で、ギャルソンのランド君が4人を席に案内しています。

私の居る席が、絶妙に見難いテーブル席です。

これは、マスターかランド君の配慮でしょうか?


「こちらでカフェオレをいただいて、私、コーヒーが好きになりましたの。」


そして、声は聞こえるおまけつき。さすがですね!

まあ、侯爵令嬢として盗み聞きはどうかと思いますが、そこは気にしては負けです。情報収集は必要ですからね!!


「今話題のカフェオレですものね。」

「私も一度飲んでみたいと思っておりましたの。」

「コーヒーは苦くて…。ですが、コーヒーとは違うのでしょう?」

「ええ、コーヒーの香りはするのですが、甘くて美味しいのですわ。」

「さすが、ライラ様。情報が早いですわ。」

「皆様も、タイミングが悪かっただけでしょう?今カフェオレは注目の的ですからね。」

「私も、図書館で調べものをしたいと父に言ってまいりましたの。本当の目的はこちらですけれど、図書館にも行きましたし。」

「私もですわ。嘘は言っておりませんものね。」


…というか、カフェオレの情報がこんなに貴族に広まっているとは思いませんでしたよ。

カフェオレを飲むために図書館に来たのかー。

調べ物をするという嘘まで作って。

やはり、女の子が流行に敏感なのは、どこでも一緒なのですね。

…なんて考えていたら、コーヒーが出来上がりましたよ!!

マスターがミルクと砂糖を加えてくれます。

目の前に出されたカフェオレの香りを吸い込んで、一口。


うまー!


「お嬢様のおかげで、新しい客層が増えました。」

「私は何もしておりませんよ?マスターのコーヒーが美味しいからです。」

「これからも、何か新しい組み合わせが気になったら教えてくださいね。」

「ふふふ。商売上手ですわね。」


そんな話をしていると、


「失礼ですが、アルフバルド公爵令嬢様ですか?」


何てこと!!後ろから声を掛けられてしまいましたよ!!

マスターとの話が聞こえてないと良いなあ…と思いながら、後ろを振り返ります。

そこには、シルバーブロンドが!!


「ええ、そうですわ。」


笑顔を顔に貼り付けて、頭の中で必死に貴族名を検索中です!


「私、ライラ・チェブリアンヌと申します。」

「私はリーゼロッテ・アルフバルドですわ。」


チェブリアンヌ公爵令嬢でしたか!


「アルフバルド様は、お一人ですか?」

「ええ。今日は図書館にまいりましたの。チェブリアンヌ様もですか?」

「私たちは…あちらに連れがおりますの。みんなでここのカフェオレをいただきに来たのですわ。」

「そうでしたか。私もこちらでカフェオレをいただいておりましたの。」

「まあ、そうなのですね。あの、私以前からアルフバルド様とお話したかったのですが、隣に座ってもよろしいでしょうか?」

「ええ、どうぞ。お連れの方は良いのですか?」

「断って来ますわ。お待ちになっていてくださいね。」


そう言うと、チェブリアンヌ公爵令嬢は席の方へ戻って行きました。

どうやら、名前の呼ばせ方を勘違いしていたようで、修正致しました。

これで合っていると良いのですが…。

変だなと思われたら教えてください。

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